著者
山口 智子 大樌 春菜 小谷 スミ子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.63, pp.101, 2011

【目的】小麦粉の代替品として米粉に注目が集まる中、昨今、米粉パンから製造した米パン粉が開発されている。縁者らはこれまでに、市販されている種々の米パン粉と小麦パン粉について、フライ調理過程における吸油率の比較を行い、米パン粉の吸油率が小麦パン粉に比べて低いことを明らかにしている。本研究では、パン粉の粒度による吸油率や着色度の相違を明らかにすることを目的とした。<BR>【方法】試料として、米パン粉(生)、小麦パン粉(生)、市販小麦パン粉(乾燥)2種を用いた。米パン粉(生)と小麦パン粉(生)は、原材料とその配合割合ができるだけ同じになるようにパンを焼成し、常温で72時間経過後にフードプロセッサーで粉砕、粒度2、3、4mmのパン粉を作成した。水分は常圧乾燥法で、吸油率は全国パン粉工業協同連合会2008による簡易測定法で、着色度は色彩色差計で測定した。また、米パン粉と小麦パン粉を用いたハムカツについて、5段階評点法による官能評価を行なった。<BR>【結果】米パン粉(生)の吸油率は約30%であり、小麦パン粉(生)より吸油率に低い傾向がみられた。米パン粉(生)では粒度によって吸油率に相違はみられなかったが、小麦パン粉では粒度の小さい方が吸油率が低かった。フライ調理後の着色度については、米パン粉(生)は小麦パン粉より明度L<SUP>*</SUP>が低く、赤味a<SUP>*</SUP>が強く、黄味b<SUP>*</SUP>が弱くなる傾向があった。また、全パン粉において粒度の小さい方が明度L<SUP>*</SUP>が高く、黄味b<SUP>*</SUP>が強い傾向がみられた。粒度3mmのパン粉を用いたハムカツの官能評価の結果、米パン粉のフライは小麦パン粉のフライに比べて衣の色が濃く、衣がかたく、口当たりがやや悪いものの、味が良く総合評価も高かった。
著者
本田 順美 和田 せつ
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.81-83, 1957

牛肉のやわらかさについて予備的に機械的測定を行つた<BR>1) 牛肉の部位によるやわらかさについて-<BR>生の場合は部位によつてあまり差がみられないが、ビフテキ用肉中ヒレーは最もやわらかい。煮た場合にはこの程度の加熱時間では一般に市販のビフテキ用肉が煮込用肉に比べてやわらかいようである。焼いた場合はこの程度では大差ない。<BR>2) 調味料添加による牛肉のやわらかさについて-<BR>調味料添加により生肉のやわらかさが増し、特にテンダライザー・砂糖に於いて著しい。<BR>加熱した場合は、煮た場合も焼いた場合も三種類の肉を通じて醤油がやわらかさを増しているようである。又加熱による水分の減少は約20~30%前後にある。しかし醤油は全部の場合を通じてその減少は少く、20%以下であつた。
著者
堀 光代 鈴木 徹 長野 宏子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.63, no.12, pp.771-780, 2012 (Released:2014-02-14)
参考文献数
26
被引用文献数
2

SDS electrophoresis and antigen-antibody reactions were carried out in order to investigate the effects of bacterial enzymes isolated from Indian nan and chapati on the decomposition of allergenic proteins in wheat flour.  The salt-soluble and -insoluble fractions of the allergenic proteins were treated with the crude enzymes produced by microorganisms isolated from Nan and chapati. The results of antigen-antibody reactions indicated that only three microorganisms isolated from chapati, 00-IND-016-1, 00-IND-016-3 and 00-IND-016-4, could decompose the allergenic proteins.  These three also exhibited 99% similarity to B. subtilis and B. amyloliquefaciens when analyzed with an API 50 CHB/E medium kit. A phylogenetic tree based on the 16SrRNA sequences showed that the three microorganisms were close to B. methylotrophicus and B. amyloliquefaciens.
著者
團野 哲也 川口 順子 鳥居 隆司
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.232, 2006

目的 巡航高度に達した旅客機の機内は,0.8気圧,相対湿度10%程度と,通常の生活環境からは大きく隔たっていることが知られている.このような外部環境の変化に伴って,衣服気候も相当の変化を伴うと予測されるが詳細については不明な点が多い.長時間のフライトにおいても健康で快適な衣環境が提供されることは,旅客にとって重要である.そこで本報告では旅客が機内へ搭乗開始してから目的地へ到着するまでの,外部環境と衣服気候を詳細に記録する方法とその問題点について述べる.また,得られたデータについての解析も一部行う.<BR>方法 データロガーとして,TANDD社製Thermo Recorder TR-72Uを2台用い,それぞれ機内環境,衣服気候測定用とした.温湿度ジャンプ方により求めた温湿度プローブ(TR- 3110)の時定数(63%)は,それぞれ180秒(温度),150秒(湿度)であった.測定は2005年7月30,31日ANA高知,東京間の往復にて行った.被験者は49歳男性で,衣服気候測定プローブを田村の方法1)により,みぞおちの皮膚に固定した.測定間隔は1分とした.測定時の服装には,内衣として半袖Tシャツ,上衣には半袖のカッターシャツを着用した.<BR>結果 機内温度は離陸直前から巡航高度にいたる約15分間に3.5℃低下し,その後は徐々に上昇した.機内湿度は離陸直後から下降直前までに約50%低下し,最低値は13%であった.衣服気候も機内環境の変化に伴い同様に下降上昇を示したが,温度は環境変化に良く追随したのに対し,湿度変化は環境変化よりも緩慢であった.環境変化が短時間で起こるので,レスポンスの早い測定プローブを使用する必要があると考えられる.<BR>文献 1) 田村,基礎被服衛生学,p78,文化出版局(1988)
著者
松尾 量子 武永 佳奈
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.68, 2016

<b>目的 </b>ビジネス・シーンにおいて着用することを前提としたマタニティウエアを開発することを目的とする。 <br> <b>方法 </b>マタニティウエアについての現状リサーチをもとに検討を行い、体型が大きく変化する妊娠中期から後期にビジネス・シーンにおいて着用することができるパンツ・スーツについてプロトタイプを制作した。制作用のボディは、妊娠6ヶ月のサイズで作られたものを選定し、シーチングと詰め物を使用して制作したベストを着用させることで妊娠後期の体型に対応した。ジャケットは、胸ポケットを左右につけることで、視線を上部に集め、ダブルの打ち合いと前端の斜めのラインによって、腹部のふくらみが目立たない工夫をした。パンツは、体型変化に対応するためにウエストサイズの調節が必須であること、着脱のしやすさを考慮して、後ろウエストにゴムを入れ、前部は面ファスナーを使用している。シーチングによる試作を繰り返した後に、細かなストライプの入ったダークグレーの布地を用いてプロトタイプを制作し、インタビュー形式によるモニタリングにより、インターネット・ショップにおける販売を前提とした商品化に向けての検討を行った。 <br> <b>結果 </b>マタニティウエアは限られた期間のみの着用であるため、着用者側には価格帯や産後も着用できるかなどを意識する傾向がある。今後はよりユニバーサルな視野から開発を進めることで商品化への糸口を探る必要がある。
著者
三野 たまき
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 68回大会(2016)
巻号頁・発行日
pp.118, 2016 (Released:2016-08-04)

目的 肥満は成人病などの様々な病気の原因とされ,健康的な生活を送るためには,普段から食生活に気を配るとともに運動習慣を身につけ,体脂肪を適量に保つ必要がある.誰でもが無理なく行える有酸素運動条件下で体脂肪が燃焼しやすい運動負荷強度について調べることを目的とした.方法 被験者は健康な若年成人女性18名であった.測定前夜7時間の睡眠を取った被験者は毎朝5時に起床し,6時に規程食を摂食した.綿100%の半袖Tシャツとポリエステル100%のハーフパンツに着替え,環境温度24.5±0.3℃,相対湿度50.3±2.5%,照度827±27lx,気流8.0±0.1cm/sに設定した人工気象室7時に入室した.椅座位安静を1時間保った後,呼吸代謝と心拍数を8時から40分間測定した.運動負荷は,最高心拍数から年齢を差し引いた値のHRMAXの30,40,50,60,30%の強度で6分間ずつ自転車エルゴメーターをこがせた.運動負荷の前後には5分間の無運動負荷のコントロールを測定した.結果 エネルギー・糖・脂質消費量と相対心拍数は,ともに前コントロールに比べ,各運動段階及び後コントロールよりも有意に増加した.エネルギー・糖消費量と相対心拍数は有意に1<2<3<4段階であったので,運動強度を増せば,エネルギー・糖消費量や相対心拍数が増した.一方脂質消費量は,どの運動段階の組み合わせでもい有意な差がなかった.このことから,有酸素運動下では運動強度を高めても脂質消費量は増さないので,敢えて運動負荷強度を大きくする必要がないことがわかった.
著者
ガンガ 伸子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.244, 2018

【目的】わが国では、高齢者世帯の増加を背景に、消費市場では高齢者消費の割合が増加傾向にあり存在感を増している。その一方で、貧困化する高齢者が増加の一途をたどり、生活保護世帯の半数以上を高齢者世帯が占めるに至っている。現役引退後の高齢者世帯は、消費が所得を上回り、貯蓄の取り崩しによって赤字を補填するという生活になる。しかしながら、晩婚化の進行等により、十分な老後の資産形成ができないまま高齢期を迎える世帯が拡大し、金融資産の保有状況により消費生活の内容に大きな違いが生じるという高齢者世帯の二極化が進んでいる。そこで、高齢者世帯のバランスシートを作成し、他の年齢階級との比較から、その特徴を明らかにしていく。<br>【方法】総務省統計局「全国消費実態調査」から世帯主の年齢階級ごとにバランスシートを作成し、高齢者世帯(世帯主が60-69歳、70歳以上)の特徴を明らかにする。その他、就業状況や住宅の所有等の違いによる比較も行う。さらには、時間の経過とともに、どのように高齢者世帯のバランスシートが変化してきたかについても明らかにする。<br>【結果】世帯主の年齢階級間でバランスシートを比較すると、世帯主が60歳代の世帯の純資産が最も大きく、その後貯蓄の取り崩しにより70歳以上では減少している。負債は世帯主40歳代以降年齢とともに減少していくものの、60歳代や70歳以上になっても住宅・土地のための負債が残っているという現状であった。
著者
布施谷 節子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.551-558, 1991

第1報の因子分析の結果をふまえて, 子どもの衣生活の現状をより具体的に把握することを目的として地域別, 年齢別, 出生順位別に質問項目の頻度分布を検討した.資料ならびに調査対象者は第1報と同じである.<BR>おもな結果は, 以下のとおりである.<BR>(1) 地域別の頻度分布では家庭状況質問群について, (1) 家庭内の大人の数, (2) 子どもの数, (3) 子どもの世話をする人, (4) 母親の学歴, (5) 家庭の職業, (6) 年収, (7) 住宅に差がみられた.また, 衣生活質問群について, (1) 子ども用のブランドものの購入, (2) 母親用のブランドものの購入, (3) キャラクターものの購入, (4) 親子ペアルックの着用, (5) 子どもの衣服費のかけ方, (6) 翌日着用する衣服の準備, (7) 外出着と普段着の区別に差がみられた.<BR>(2) 年齢別の頻度分布では, 子どもの成長に伴って変化傾向のみられたものは, (1) 現在着用している衣服のサイズ, (2) 母子のおしゃれ志向, (3) 子どもの意志の反映についてである.子ども服のサイズについては, 現在の身体の実際のサイズより1サイズ大きいものを着用させていることがわかった.また, 3歳ないし4歳から母子ともにおしゃれ志向が上昇していく傾向がみられる.衣服に対するこだわりは, 女児のほうが強いようである.<BR>(3) 長男・長女とその他の子どもたちに分類して男女児別の出生順位による頻度分布の差をみると, 男女児とも共通して, (1) 子どもに試着させるかどうか, (2) サイズ選択のさいにどのサイズを選ぶかに有意な差がみられ, さらに女児については, (3) 子どもの意見や希望の取り入れ方, (2) 衣服の色へのこだわりについて有意な差がみられた.
著者
布施谷 節子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.545-550, 1991

主として, 子どもの成長に伴う既製服の選択と社会的文化的側面から子どもの衣生活の現状把握をすることを日的として質問紙調査を行った.対象者は, 1988年10月に, 東京近郊, 新潟市, 鹿児島市3地域所在の八つの園に在園する幼稚園児・保育園児 (0~6歳男女児合計約800例) の母親である.質問項目42項目について正準相関分析を行い, 家庭状況質問群と衣生活質問群の関連性を確認した.ついで, 42項目について因子分析を行い, 抽出された因子の解釈を行った.<BR>おもな結果は, 以下のとおりである.<BR>因子分析の結果, 男女児とも7個の因子が抽出された.これらの因子を解釈すると, それは, (1) 家庭での子どもの出生順位や子どもの数により, 子どもの衣服への手のかけ方が異なることを表す因子, (2) 母子のブランド志向, 流行志向, ペアルックを含めたおしゃれ志向の因子, (3) 子どもの成長に伴う体型と着用サイズの認識の因子, (4) 地域や家庭のステイタスにより衣服費のかけ方が異なることを表す因子, (5) 持ち家率と老人同居を含めた家族構成などの家庭状況の因子, (6) 経済性を考慮するサイズ選択の因子, (7) 子どもの意見や希望に対する母親の衣服選択のあり方の因子と解釈される.
著者
馬場 まみ
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.715-722, 2009

The purpose of this research is to clarify the process leading to the widespread use of the school uniforms and their role.The study is done in relations to the social situation after World War II.The results show that school uniforms were made mandatory at public junior high schools in the 1960s for economic reasons.The policy was effective in keeping order in schools.Uniforms were regarded as a convenience by both teachers and parents. In the 70's, uniforms were useful in controlling school life. Teachers forced students to wear uniforms.Some students refused to wear them. School uniforms were worn because teachers and parents regarded them as necessary, and the role of school uniforms changed.
著者
青野 篤子 金子 省子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.135-142, 2008

本研究は,幼稚園・保育園の保護者(父親は少数のため分析から除外された)を対象に子育ての方針や保育環境のあり方についてジェンダーの観点からその意識を探るための調査を行い,今後のジェンダー・フリー保育の指針を得ようとするものである。母親たちは,全体として脱伝統的な女性像・男性像をイメージしており,ジェンダーにとらわれない子育ての方針をもっている。また,身体的な差異に配慮しつつも,幼稚園や保育所の環境はできるだけ男女の区別がない方がよいという意見をもっている。一方,母親がとらえた保育環境には一部ジェンダー・バイアスが存在し,とくに,習慣化・制度化された保育の営みについては,実態が強く認識されているにもかかわらず,一部許容的な態度が示されている。また,母親のジェンダー(・フリー)についての関心は低く,男女共同参画社会における幼稚園・保育園への期待は大きくない。今後,保育者・保護者の一体となったジェンダー(・フリー)についての学習や取り組みが必要である。
著者
五十嵐 由利子 萬羽 郁子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.281, 2006

【目的】 2004年10月に発生した新潟県中越地震による住宅被害は全壊3,185棟、大規模半壊2,157棟、半壊11,546棟、一部損壊103,503棟で、多くの被災住民が応急仮設住宅に入居した。この仮設住宅建設に当たっては阪神淡路大震災での教訓を生かし、また積雪寒冷地への対応についても考慮された。このような配慮が夏季の温熱環境にどのように影響しているかを実測調査から明らかにすることを目的とした。<BR>【方法】 新潟県内に建設された仮設住宅について新潟県の資料から配置計画の特徴を捉え、居室の向きの異なる住戸(2DKを中心に)を対象に調査協力を依頼し、10戸を対象として各室の温湿度を2005年6月24日から8月21日まで計測した。<BR>【結果】 仮設住宅では各戸の1室にはエアコンが設置されており、その室はほとんどの住戸で居間として使用されていた。エアコンの使用時間については被災前の住宅での使用状況が影響し、各住戸での違いが見られた。6月から居室の日最低温度が25℃以上、最高が30℃を超えているところが多く、8月の夏日が続いたころは、エアコンのない部屋の日平均温度が30℃を超えている住戸が多かった。また、東向きの居室では午前中の温度上昇が大であった。
著者
松下 幸子 寺尾 京子 石間 紀男
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.75-83, 1980

1) 児童, 青年, 中年, 老年の年齢階層別の320名を調査対象として, 71品目の調理食品について嗜好調査を行った.調査には嗜好尺度による調査用紙を使用した.<BR>2) 嗜好調査の結果, 嗜好度の高かったものは, 児童では, 焼きそば, ホットドッグ, コロッケ, コーンスープ, 肉まんじゅう, ホットケーキ.青年ではすきやき, 野菜サラダ, シュークリーム, わかめのみそ汁, 白菜の漬け物.中年ではすきやき, 茶わん蒸し, 雑煮, わかめのみそ汁.老年ではひじきと油揚げの煮つけ, わかめのみそ汁, 白菜の漬け物, 赤飯などであった.<BR>3) 嗜好調査の結果について主成分分析を行ったが, 調理食品に対する嗜好には, 年齢階層別に明らかな区別があることが認められ, 主成分軸の上で児童から老年の方向へ, 嗜好が系統的に変化していくことが見られた.<BR>4) 主成分軸の意味づけを行うために, 第1主成分軸と第2主成分軸をそれぞれ64°直交回転した結果, 第 1主成分は児童の嗜好を意味し, 第2主成分は老人の嗜好を意味することが明らかになった.<BR>5) 嗜好調査の結果について, ミニマムスパンニングトリー法によりクラスター分析を行った結果, 71品目の調理食品は, 嗜好性によって6群に分類することができた.第1群はビーフシチュー, ハンバーグステーキなどの肉類を材料とするもの.第2群はコロッケ, カレーライスなどの児童の好む食品.第3群はシュークリーム, チョコレートなどのおやつ類.第4群はこぶまき, ひじきと油揚げの煮つけなどの伝統的和風そう菜類.第5群は赤飯, 雑煮などの和風料理.第6群はきゅうりのピクルス, ふろふき大根など日常の食生活では使用頻度の低いものである.その他にうなぎの蒲焼き, マーボー豆腐, 五目とり飯のように, 他の食品の嗜好に左右されずに嗜好がきまる食品がいくつか見られた.
著者
広井 勝
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.243-246, 1977
被引用文献数
3

キノコ脂質の脂肪酸組成をガスクロマトグラフィーにより測定し, 以下のことを明らかにした.<BR>1) キノコ脂質を構成する脂肪酸は, リノール酸, オレイン酸, パルミチン酸, ステアリン酸が主であり, 特殊なものを除いては脂肪酸の種類は比較的限られている.<BR>2) キノコ脂質を脂肪酸組成の特徴から分けると次の5つのタイプに分類される. (1) リノール酸が主体を占めるタイプ, (2) オレイン酸が主体を占めるタイプ, (3) ステアリン酸含量の多いタイプ, (4) リノレン酸含量の多いタイプ, (5) 特殊な脂肪酸を含むタイプ.<BR>3) 脂肪酸組成の特徴と分類との関連では, 同一傾向を示すもの (テングタケ科) と, 種々のタイプが入り混っているもの (ベニタケ科) があることが示される.
著者
藤本 明弘 服部 香名子 大矢 勝
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.67, no.9, pp.491-496, 2016

<p>  The effect of microbubble addition on the removal of surfactant (LAS) adsorbed on the skin surface by shower rinsing was examined. First, a rinsing test with four substrates was performed, and it was found that the residual property of the surfactant was significantly affected by the hydrophobicity and unevenness of the washed surface. When the substrates were rinsed with a shower containing microbubbles, the residual amount of the surfactant was decreased in all substrates. Therefore, we can assume that the microbubbles are effective in removing surfactant from a substrate surface during rinsing. The effect of surfactant removal from skin was examined and the result shows that the surfactant adhered on the skin was effectively rinsed with a shower containing microbubbles. It was supposed that the adsorption phenomenon of surfactant to the bubble surface was effective for rinsing.</p>
著者
花輪 由樹 岸本 幸臣 宮﨑 陽子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.97, 2018

■研究背景:近年、SNSを利用した「資源」と「ニーズ」を繋ぐシェアリングエコノミー(以下SEと称す)が流行している。SEは、主に「お金」「スキル」「空間」「モノ」「移動」を対象に、顔見知りの範囲を越えて行われるシェアをいう。例えば旅先で他人の部屋を借りる「airbnb」や、移動手段として個人の車に乗る「uber」等が有名で、基本的には個人間で取引が行われる。<br>■研究目的と方法:本研究では、このようなSE現象を家政学的視点からそれが大量生産・大量消費型生活の再考に提起する意義と可能性を探ることを目指した。なお方法として、「安全・安心で持続可能な豊かな家庭生活」の実現にどう寄与するのかという側面に着目し、SE現象を分析した。<br>■研究結果:身近な資源の有効活用は、生活者にとって金銭的効率性や今までにない新たな人間関係の構築ができ、また生活者がスキルを活かす新たな活躍の場を得るなど、充実した生活への萌芽的試みとなりうる。一方、やり取りが個人間であるため、子育てサービスなど「安全・安心」への信頼度が必要な行為は、それを保障する情報が欠かせない。したがって、SE利用が私達の生活をどう充実させるのか、また「安全・安心」で持続的な利用をするためにはどうしたらよいかを考えられるSEリテラシー育成の社会的担保も必要である。また「安全・安心」の基準を探ることも、見知らぬ人どうしで新しい繋がりを形成するSE社会の課題といえる。
著者
小見山 二郎 宮崎 由伊 中野 麻子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.247, 2006

<目的>昨年、表題の現象について社会心理学的に考察した。ジーンズのボロ化現象は続いているが、今回、各社会的要因、個人化、アメリカ化、環境意識などの重要度とこれらと個人の意識の連関について、少し深く再考した。また前回はこれらを取り上げた理由を直感としか説明しなかったが、少し詳しい説明が必要と考えた。実践女子大学生活科学部紀要43号(2006)に投稿するに際し、これらのことを再考したのでお話したい。<方法>その後の文献調査により、この取り扱いは、デカン「流行の社会心理学」岩波書店(1981)の亜流といってもよいことがわかった。戦後の日本社会の変化はいろいろの視点で捕えられるが、本説の捕え方は50年間に書物と経験から得た知識の集大成としか言いようがない。当日要点を説明する。またボロ化が前近代への突き抜けであるとの考察では、柳田國男の視点を参考にした。現代の個人の意識については、聞き取った言葉から抽象した。<結果>衣服文化論を離れて、戦後の日本社会の変化が、人々の心にどういう変化をもたらしたかを概括した。ジーンズのボロ化に対する影響における重要度の順に、個人化、アメリカ化、環境意識とした。ボロ化における個別性、下から上への流行の波及、自然化と前近代化、がこれらの3つのそれぞれの影響であると考えた。個人の意識と社会的意識を納得できるように結ぶことも重要で、この点は当日説明する。さらにボロ化の3分類、すだれ状の破れ、脱色、つぎはぎ、の今後についても議論する。
著者
後藤 昌弘 岩田 惠美子 大久保 郁子 森 一幸 中尾 敬
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2014

<b>[目的]</b>ジャガイモは,栄養学的に優れた食品であり,様々な調理や加工に用いられている。本研究ではジャガイモの品種による調理方法と食味の構成要因を解析することから様々な調理法に適した品種を探求することを目的とし,西南暖地の主要産地である長崎県産の品種・系統について種々の物理化学的調査及び官能検査を実施した結果について報告する。 <br><b>[方法]</b> 平成25年度秋作のニシユタカ,デジマ,アイユタカ,さんじゅう丸,西海31号の育成品種,品種登録前の育成系統西海37号,西海40号の7品種系統をそれぞれ,蒸す,ゆで,レンジ,焼き,揚げ加熱で調理した。加熱試料について「ニシユタカ」を標準試料として色,香り,口当たり,甘み,苦み,おいしさ,総合評価の項目について官能検査(評点法)を行った。また,加熱前後の試料の遊離還元糖,アミノ酸,フェノール物質含量と加熱試料のテクスチャーの測定を行い,これらの関係を調べた。<br><b>[結果]</b> 「デジマ」は揚げ加熱で還元糖含量が多かった。「アイユタカ」(黄肉)は蒸し加熱で他の品種に比べ色の評価,総合評価が高かった。「さんじゅう丸」は加熱法による差はみられなかった。「西海31号」(赤肉)は全ての加熱法で色の評価が低かった。「西海37号」は揚げ加熱で還元糖含量が多く,レンジ加熱で色の評価が高かった。「西海40号」はレンジ加熱を除くと標準試料に比べ,口当たりの評価が高かった。
著者
大久保 洋子 長尾 慶子 松本 祥子 松本 時子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.123, 2003

[目的]食生活指針に「食文化や地域の産物を活かし・・」とうたわれているように食事に対する知識や料理技術の伝承が失われつつあり、その存続が危惧されている。そこでその実態を知り、今後の食物教育に役立てることを目的に調査を行った。[方法]神奈川・秋田・山形3地域の短大生の親世代40~50代について、留置き式で調査を行い(1)現在作られている行事食の種類(2)手作り食品名および作り方を知った手段、(3)伝承料理の意識、(4)存続させたい伝承料理名、(5)伝承させたい料理技術を検討した。[結果]調査対象者は神奈川109、山形83、秋田176名であった。結果は(1)年越し蕎麦と雑煮は地域、年代に関わらず8割以上で食べていた。おはぎが次いで多く約7割、7草粥は約5割を占めた。(2)手作り食品では赤飯、おはぎ、漬物が地域差がなく、特に白菜漬けは秋田・山形に多く、神奈川では糠味噌漬けが多かった。伝承の手段は祖母と母からが多くを占めた。(3)日本の伝承料理を引き継ぎたい意識が神奈川(5割)山形(7割)秋田(3.5割)、新旧とりまぜて安全な手作り食品を伝えたい意識が神奈川(6割)山形(7割)秋田(6.5割)、それに対して加工食品及び流行の料理を取り入れたい意識が神奈川(2割)山形(4割)秋田(2割)とわずかな地域差がみられた。(4)存続させたい伝承料理は煮物・赤飯・雑煮(神奈川)、赤飯・漬物・きりたんぽ・梅干・おはぎ(秋田)、煮物・漬物・赤飯・雑煮・笹まき・ぼたもち(山形)が多かった。(5)伝承させたい料理技術は庖丁・食器の手入れ、食材の選び方、調味の仕方、衛生面の知識(神奈川)、山形では調味の仕方、魚のおろし方、食材の選び方、食事のマナー、献立の知識、秋田では調味の仕方、魚のおろし方、だしの取り方、箸使いが多かった。
著者
久世 妙子 中村 喜美子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.95-102, 1996

少子化が子どもの発達に及ぼす影響を, 子どもの家族認識の視点から考察した.最初に人口動態統計から少子化の実態を家庭の子ども数の変化の面から明らかにした.次に, 1978年に行った「児童の家族に関する認識」の調査を1995年に実施し, 17年間の変化を資料として少子化が児童の発達にどのような影響を与えているかを考察した.<BR>その結果, 次のことが明らかとなった.<BR>(1) 「夫婦が生涯に産んだ子ども数」および「出生順位別出生割合」の推移からみると, 家庭の子ども数は, 少子化が問題とされるようになった1980年代以降でも, きょうだい数は2, 3人が多く, 一人っ子は必ずしも多くない.<BR>(2) 家族の年齢と仕事を知っているかについて質問した.その結果, 年齢を知っている児童の割合が増加していた.なかでも男児の増加率が女児よりも高かった.仕事については, 女児で母親の仕事を知っている児童の割合が増加していた.<BR>(3) 「おとうさん」, 「おかあさん」, 「おじいさん」, 「おばあさん」, 「あかちゃん」という家族名を普通名詞で提示し, 自由連想法によってイメージを記述させた.<BR>父, 祖父, 祖母, 赤ちゃんに対する「児童とのかかわり」のイメージが増加していた.<BR>1978年調査で多かった祖父の無記入が減少した.それに対し, 赤ちゃんに対する無記入は依然として高かった.<BR>(4) 児童の家事分担をその他を含めた30項目について調査した.家庭生活の合理化・近代化の影響を受け, 児童の家事分担の種類には変化がみられた.<BR>食事を作る, もりつける, 自分の部屋の掃除, 風呂を沸かすの参加は増加した.それに対して, 茶わんを洗う, 洗濯物を洗う, 干す, 玄関や庭の掃除, 便所の掃除, 雑巾掛けやからぶき, ふろの水入れ, 食品の買い出し, 戸締まり・火の元の注意, 壊れたところの修理, 花や植木の水やりなどへの参加が減少していた.<BR>(5) おとうさん, おかあさんに対する要望や主張を自由記述形式で記入してもらった.全体的に父母への要望や主張は減少していた.とくに, 父に一緒にして欲しい, 母に買って欲しい・作って欲しいという要望が減少していた.<BR>以上のように, 児童を中心にみた少子化は必ずしもきょうだい数の減少をもたらすものではない.家庭の子ども数は, 一人っ子より2, 3人が多い.さらに, 高齢化により, 身近に高齢者をみることができるようになったことから, 児童の家族の年齢や仕事の認知, 家族のイメージは豊かになった.しかし, 父や母への要望や主張が減少しているという結果からは, 積極的に自己主張をしたり, 日常生活を共にする父母に, 特別な要望や要求を持たなくなっている児童の姿が想像され, 家族関係のあり方が考えさせられる.