著者
鈴木 亜香音
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学総合研究所紀要 (ISSN:13405942)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.95-113, 2015-03-25

本稿は,元安寧学区絵図群,特に大工町を中心に,絵図から地籍図,そして旧公図への系譜を検討したものである。先行研究で指摘されてきた9種類の絵図のうち,記載項目の変化や加筆の有無を指標として検討した結果,大工町では「町組改正絵図」,「軒役改正絵図」,「大工町絵図」(「壬申地券地引絵図」と推定),「地租改正地引絵図(等級)」,「地籍編纂地籍地図」,「旧公図」の6種類が確認できた。その6種類の系譜的関係から,近世町絵図を出発点として,近代初期の町絵図から地籍図的な要素をもつ絵図,地籍図,そして旧公図への流れが確認できた。このことは,近代の地図として理解されてきた地籍図が,近世町絵図を近代的な土地管理への移行にあわせて改変したものであったことを意味している。また,近代的な地籍図への転換点が「壬申地券地引絵図」から「地籍編纂地籍地図」への変化にあったことが明らかになった。これは,図面と台帳との分化がここから進んでいったことにも現れているのである。
著者
坂井 健
出版者
佛教大学
雑誌
文学部論集 (ISSN:09189416)
巻号頁・発行日
vol.90, pp.1-10, 2006-03-01

没理想論争時に森鴎外がハルトマンの思想によったのは、ハルトマンの『無意識の哲学』に反ダーウィニズムの発想を読み取ったからだといわれるが、ドイツ滞在時にはまだ本書をひもといてはいない。ではなぜ鴎外はハルトマンを選んだのか。それはドイツ滞在時にシュヴェーグラーの『西洋哲学史』を読み、そこで紹介されているハルトマンの考え方、すなわち、現象世界に理性的なものが現われているとの主張に感銘したからである。
著者
安達 泰盛
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学大学院紀要. 教育学研究科篇 (ISSN:18833993)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.55-72, 2009-03-01

現在の民間機関での犯罪被害者支援の主な担い手はボランティアとなっている。しかし、犯罪被害者支援の研究の中でそのボランティアに着目した研究はまだ見られない。本論文では、ボランティア参加者の語りに着目し彼らが活動を通してどのようなことを感じているか、その体験の意味づけがどのように変容しているかという点に注目し、その流れを明確化させることを目的とした。ある犯罪被害当事者の会の主催する集会にボランティアとして参加した人を対象としインタビューを実施し、データとした。データの整理はKJ法を参考した。整理の結果、参加者の語りの内容は、参加前、参加している間、参加後、現在、得たもの、その他という6つの段階に分かれることが明らかになった。6つの各段階において参加者の態度変容を詳細に図示し、その結果から見えた参加者の態度の変容について考察を加えた。
著者
渡邉 秀司
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学大学院紀要. 社会学研究科篇 (ISSN:18834000)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.37-54, 2014-03-01

本稿はオタクと自ら意識する人たちについて考察をおこなうものである。現状さまざまなオタク論があり,本稿では代表的な論者である大澤真幸,大塚英志,東浩紀のそれを整理し,それらが「大きな物語」という概念に関わる議論である事を述べた。そのうえで,オタクを考えるためには個別的なデータの収集が重要であるとして,インタビュー調査の内容を述べた。オタクと自認しオタクアイデンティティを獲得した人がオタクであるという田川隆博の見解を評価しつつ,オタクと自認する人とそれ以外の他者との緊張感が,オタクを考える上では重要なのではないかと結論づけた。オタクはオタクという特殊な人種ではない。オタクとは現代社会で爛熟した文化を享受する「普通の人」たちであり,オタクを考えることは現代社会を考えることにもつながるのである。
著者
中野 加奈子
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学大学院紀要. 社会福祉学研究科篇 (ISSN:18834019)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.33-44, 2013-03-01

近年,ホームレス支援現場では,ホームレス状態に陥った人のなかに精神障害者や知的障害者が含まれていることが指摘されるようになった。この背景には,非正規労働者が増加するなど雇用条件が悪化し,貧困状態に陥りやすい状況となっていることがある。しかし,雇用問題だけではなく,我が国の知的障害者への教育や福祉においては,軽度の知的障害は見逃されやすかった,という問題もあると思われる。例えば,療育手帳制度は,身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳と比べると法的根拠が曖昧で判断基準も都道府県によって異なっているなど,特殊な状況となっている。そうした制度が抱える課題とともに,貧困の世代間連鎖や家族問題が関連し,より障害が潜在化する傾向があるのではないだろうか。本稿では,実際にホームレス状態に陥った知的障害者のライフコースから,彼らが抱えてきた問題や,彼らをホームレス状態に追いやる社会や制度的課題について検討する。
著者
角田 尚子
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学大学院紀要. 社会学研究科篇 (ISSN:18834000)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.19-36, 2011-03-01

日本ではまだ認知が低いベジタリアンであるが,何がベジタリアンの妨げになっているのか,その妨げが後のベジタリアンとしての成長にどのような影響を及ぼすかを考える。本稿では8人のベジタリアンにインタビュー調査を実施し,彼ら/彼女らへの近親者の干渉と,それに対するベジタリアンの反応や対応を読み取った。その結果,欧米のベジタリアンには見られない傾向があることが分った。それは近親者が日本的な食の常識に基づき善意の干渉をすることによって,ベジタリアン自身が食の常識に合わせてしまうという傾向である。また,近親者からの干渉が大きいほど「日本的ベジタリアン」として極めて狭い範囲の行動・活動しかできず,自身の望む食生活が送れないことが分った。他方,近親者からの干渉が少ないほど「欧米的ベジタリアン」として自身の望む食生活を送り,更にはベジタリアン活動を広めていこうとする動きがみられた。
著者
吉丸 雄哉
出版者
佛教大学
雑誌
京都語文 (ISSN:13424254)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.104-121, 2012-11-24

虚像としての忍者は、忍術がつきものであり、それが登場する忍者の話は一定の型を持つ。浅井了意『伽婢子』(寛文六年(一六六六)刊)は「飛加藤」と「窃の術」の二つの忍者の話を収める。該話はそれぞれ中国の『五朝小説』の構成を参考にしたが、原話に出てくる剣侠のかわりに、超人的な忍術を使う忍者を登場させた。「超人的な忍術を駆使して忍者が大事なものを奪うために潜入する」という構成の話の嚆矢にあたる。その後、この話の型は井原西鶴『新可笑記』などに継承され『賊禁秘誠談』で一定の完成を見た。この形式の話は広く膾炙し、史実を述べることが前提の由緒書に記された忍者像にもその影響が見える。
著者
田中 由貴乃
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学大学院紀要. 文学研究科篇 (ISSN:18833985)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.1-17, 2012-03-01

自由党総理板垣退助は、明治十五年末から翌年六月にかけ、フランスをはじめとするヨーロッパを巡見した。八年後に迫った国会開設を控えて、先進諸国の実情を視察するためであった。しかし、その時期や、費用の出資者をめぐり、先ず党内の反対派から疑惑が指摘され、内訌を招き、自由新聞からも馬場辰猪らが退社する結果になった。さらに、紛争は党外にも飛び火し、改進党からも批判を浴び、自由党との間に、それぞれの機関紙上で、論争が展開した。本稿では、以上の紛争と新聞論争の実態を明らかにしたい。
著者
太田 修
出版者
佛教大学
雑誌
歴史学部論集 (ISSN:21854203)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.83-110, 2015-03-01

本資料は、日韓会談文書全面公開(「日韓会談文書開示決定処分取消等請求控訴事件」)について東京高等裁判所で行われた裁判のために書いた陳述書である。最初に、日韓国交正常化交渉の歴史をふり返り、植民地支配・戦争被害が清算されなかったことを論じた。次に、この植民地支配・戦争被害を不問にする枠組みは、その後もそのまま維持されたわけではなく、1990年前後の東西冷戦の崩壊後には、日本政府の立場は、植民地支配不当論へと変化したことを明らかにし、その上で、今日の日韓間、および日朝間の植民地支配・戦争被害の問題における現状と課題について述べた。最後に、日韓会談文書非開示の問題点とその公開の公益性および必要性について論じ、日韓間、および日朝間にある植民地支配・戦争被害の問題を真に解決するためにも、日韓会談文書の全面公開が必要であることを訴えた。
著者
青山 忠正
出版者
佛教大学
雑誌
歴史学部論集 (ISSN:21854203)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.55-66, 2015-03-01

いわゆる破約攘夷論は、文久二年(一八六二)から三年にかけて最盛期を迎えた。しかし、その主唱者、長州毛利家の言動を見ても、それは一般に理解されているような、一方的な外国艦打ち払い論ではない。むしろ、現行の条約をいったん破棄してでも、日本側が主体的な性格を持つ条約に改めようとする意図を持っていた。孝明天皇においても、その点は同様である。その天皇は、慶応元年(一八六五)十月、条約を勅許するに至った。そこに至る経過を、下関戦争の国際的な背景などを踏まえ、言葉の意味を再吟味しながら考察する。
著者
笹部 昌利
出版者
佛教大学
雑誌
鷹陵史学 (ISSN:0386331X)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.165-189, 2005-09-24
著者
斎藤 英喜
出版者
佛教大学
雑誌
歴史学部論集 (ISSN:21854203)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.79-102, 2014-03-01

高知県の民間信仰、いざなぎ流には「金神の祭文」が伝えられている。金神忌は、平安時代末期から陰陽道と明経道のあいだで、その禁忌をめぐって議論されてきた、恐ろしい遊行神である。本論では平安期の古記録に見られる金神忌の記事の分析、中世における金神の神格をめぐる「神話」、そして民間系陰陽道書の『内伝』の解読を通じて、いざなぎ流の「金神の祭文」の独特な儀礼世界を読み解くで、その歴史的な特質を明らかにしていく。
著者
河野 俊彦
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学大学院紀要. 社会学研究科篇 (ISSN:18834000)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.53-70, 2012-03-01

わが国の離婚率は,戦後一貫して上昇している。とくに1990年バブル景気の崩壊後から強い増加の傾向にある。普通離婚率でみると,1988年のバブル絶頂期に1.26であったものが2002年には2.30となる。その数は,わずか15年たらずで1.8倍にも増加した。そこで,離婚率の年次変化と経済変化を照らし合わせてみると,日本の経済成長率と離婚率の変化には密接な関係のあることがみえてくる。近年の急激な景気変動と社会環境の変化は,家計経済に大きな影響を及ぼしている。昨日までは当たり前と思っていた結婚生活の水準(人並みの生活)は,いつまでも容易に維持できるとは限らない。期待と実生活とのあいだに生じたギャップは,やがて夫婦間に言い知れぬ不満を蓄積させることになり,夫婦関係の安定性において潜在的に大きな影響を与えることになるのである。
著者
アンダソヴァ マラル
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学総合研究所紀要 (ISSN:13405942)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.71-81, 2014-03-25

本稿は、古事記および日本書紀における崇神天皇の段を取り上げ、オホモノヌシの登場をふくめ、両書におけるシャーマニズムの考察を試みるものである。古事記ではヤマトは異界として位置付けることができ、その中で崇神天皇によるオホモノヌシの祭祀が描かれる。それに対して、日本書紀では中国を意識した天皇像が描かれつつも、天皇が神々の祭祀を自ら行っていくというシャーマニズムの在り方がうかがえるのである。
著者
荻原 廣
出版者
佛教大学
雑誌
京都語文 (ISSN:13424254)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.1-30, 2014-11-29

個人の語彙量(理解語彙、使用語彙)がどのくらいあるのかについての調査は、現在に至るまで決して多く行われてきたとは言えず、中でも使用語彙についての調査は、幼児対象の調査を除くと、ほとんど行われていない。そこで本稿では、過去の理解語彙、使用語彙の調査がどのように行われ、そこにどういった問題点があるのかを明らかにし、そのうえで、個人の理解語彙、使用語彙を調査するにはどうすればいいかについて述べ、最後に、現在、筆者が行っている理解語彙、使用語彙の調査について触れる。
著者
坂本 卓也
出版者
佛教大学
雑誌
鷹陵史学 (ISSN:0386331X)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.83-114, 2013-09-28
著者
篠原 由利子
出版者
佛教大学
雑誌
福祉教育開発センター紀要 (ISSN:13496646)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.37-52, 2015-03-31

精神保健医療福祉領域にあって、当事者の心理・社会的支援を深めていく視点として不可欠なものが生活者の視点であり、障害特性(生活のしづらさ)であることは言うまでもない。疾患や障害が医学的記述やチェックシートによって計測され、計量化される時代にあって、福祉支援は「生きづらさ」「付き合いづらさ」等々、生活面、人生面に及ぼす影響がどのようなものかという当事者理解はことさらに必要である。しかし体験を理解するのはなかなか難しいものである。当事者の体験記や教育教材も出版されつつあるが、この稿では映像(映画)による共感的理解の深まりの可能性を論じた。
著者
隅河内 司
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学大学院紀要. 社会福祉学研究科篇 (ISSN:18834019)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.1-17, 2015-03-01

障害者相談支援により,市町村の障害者福祉事業を充実させるためには,社会資源の改善・開発を推進する実践として,生活問題を把握し,地域課題を明確化するとともに,それを解決する計画化・事業化に取り組む「実践課題の政策化」が必要である。本研究では,障害者相談支援システムにおける「実践課題の政策化」の現状について,そのシステムの中核となる基幹相談支援センターを対象にした調査をもとに探求した。結果としては,「一般的な相談」を含めた安定的な相談支援体制の構築,相談支援事業所等関係機関の緊密な連携のための環境づくりや技術向上に対する福祉専門職の意識と行動,自立支援協議会の活性化などの必要性が課題として明らかになった。今後,「実践課題の政策化」に向け,基幹相談支援センターの充実・強化が求められる。
著者
永和 良之助
出版者
佛教大学
雑誌
社会福祉学部論集 (ISSN:13493922)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.19-36, 2008-03-01

介護保険の実施により高齢者介護事業は激変したが,本稿は,措置の時代から高齢者介護をほぼ一手に担ってきた社会福祉法人経営が,この介護保険の実施によりどのように変化したのかを明らかにする目的の下に著したものである。研究方法としては,公文書公開制度を活用し,社会福祉法人が経営する高齢者介護事業の内部資料を入手・分析する方法を採った。資料分析の結果,高齢者介護事業を営む社会福祉法人の多くが,介護保険実施以降,事業収入を大きく伸ばし,高利益を得,事業拡大していることが明らかとなった。だが,それは,人件費抑制,利用者のサービス経費の抑制によるものであり,これまでの「労働集約型産業」である社会福祉事業の姿を大きく歪めるものである。のみならず,かかる法人経営の高齢者施設(特別養護老人ホーム)では,利用者の生活は一層貧しくなり,介護職員の労働環境も荒廃していることを具体的に論証した。無論,すべての社会福祉法人が営利主義的傾向を強めているわけでも,利用者の生活が貧しくなり,介護労働が荒廃しているわけでもなL、。むしろ,介護保険になり,営利主義的社会福祉法人と非営利社会福祉法人の二極分化は,一層顕著になった。介護保険で「経営の自由」を得た社会福祉法人は,「自由」を得たがゆえに自己の本当の姿を露わにせざるを得なかったからである。本稿では,「経営の自由」を得た社会福祉法人(経営者)がその「自由」をどのように行使したかも論述した。本稿は,介護保険制度それ自体を論じるものではないが,社会福祉法人の経営変化,利用者の生活変化,介護労働の変化を通して,介護保険制度の持つ問題点にも言及している。
著者
田中 みどり
出版者
佛教大学
雑誌
京都語文 (ISSN:13424254)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.223-251, 2011-11-26

古代のアサガホはカホガハナのうちの、朝に咲くことが特徴である花である。このアサガオには、現在の朝顔、桔梗、槿、昼顔、のあさがおなどの説がある。朝顔は十月十一月に咲くこともある。源氏物語のアサガホは、長月に咲いている例もあるが、つる性の植物で、現代と同じ朝顔と考えてよい。桔梗説について。源氏物語にも枕草子にもキキヤウとアサガホとが出てくるので、この時代には別の植物をさしていたことは明らかである。薬草としてのツルニンジンの根あるいは食用としての若芽をトトキと呼ぶが、古代のキキヤウは、そのトトキの一種でヲカトトキと呼ばれていたものであるだろう。槿説について。ムクゲは和漢朗詠集に「槿」の詩と「あさがほ」の歌とが並べられているが、これは命の短い花ということで並べられたもので、「槿」がアサガホであるのではない。萬葉集のアサガホは朝に咲く花であることが明らかであるので、桔梗、槿、昼顔、のあさがお説は否定される。夕まで咲いている例があるが、朝顔は、早朝つぼみを開いて夕刻まで咲き続けることも、ないわけではない。よって、萬葉集のアサガホも、現代の朝顔と同じ牽牛子である。すなわち、牽牛子は、奈良時代に将来されたものである。アサガホの諸説は、古辞書や和漢朗詠集を文証とするものであるが、古辞書には出典を記してないものが多く、その記述をそのまま信じることができないものもある。また、和漢朗詠集は同じ趣の漢詩と和歌とを並べているものであって、必ずしも同じ風物を集めたものでもないので、注意を要する。