著者
依藤 光代 松村 暢彦 澤田 廉路
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.487-492, 2011-10-25 (Released:2011-11-01)
参考文献数
10

地方都市の商店街ではにぎわいを喪失しており、商業の活性化が課題となっている。長期間にわたる商店街活性化に関する活動や組織の変化を追跡するだけではなく、まちづくりの担い手間の関係に着目することにより、まちづくり活動の担い手の継承の要因について考察した結果、次のように考えられた。(1)1993年以降、担い手となるセクターは、行政組織、地元市民組織、新規市民組織、広域市民組織の順に変遷してきた。(2)担い手が継承されるための要因は、地縁・志縁の担い手間のネットワークや、問題意識および課題解決の方向性が担い手間で共有されること、課題を解決するためのスキルを担い手が提供できること、活動の場としての組織の存続が担保されていること、の4つが考えられた。共通して重要であるのは、志縁の関係が行われるような、実践的な活動が積み重ねられることである。
著者
宮脇 勝
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.607-612, 2012-10-25 (Released:2012-10-25)
参考文献数
7
被引用文献数
1

本論では鎌倉市中心部を取り上げ、広がりのある景観の歴史性をエリアで特定し、景観保全に役立てる歴史的景観特性アセスメント手法として、「歴史的景観キャラクタライゼーション」と呼ばれる方法、つまり、土地利用の年代特定により、エリア単位で年代特定を地図上で行い、景観の「時間的奥行き(Time-depth)」から歴史的価値を評価する方法を採用する。さらに、本論の特徴は土地利用の歴史的評価に加え、道路、街区、水路も歴史的景観キャラクタライゼーションに取り込む点にある。本研究により鎌倉市中心部で抽出された1875年以前の歴史的な土地利用エリアに歴史的価値があり、宅地を含む歴史的景観キャラクタライゼーションにより、土地利用について、調査エリアの56%以上に及ぶエリアを地図上に特定し、歴史的価値(持続性の価値及び希少性の価値)を示した。また、歴史的な街区は全街区面積の約45%(約91ha)、歴史的な道路は全道路面積の63%(約70ha)、水路は1875年時と比較して62%(約4ha)が残されており、その位置も特定した。多くは寺社の分布とも重なることを明らかにし、より広範囲の歴史的景観保全を提言している。
著者
宮木 祐任 森 英高 佐藤 剛 古山 守夫 高橋 護 谷口 守
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:13482858)
巻号頁・発行日
vol.10-4, pp.193-198, 2012 (Released:2012-03-10)

東日本大震災からの復興に向け、被災市町村の多くは、復興計画の策定と同時に住民意向把握のための説明会を実施している。本研究は、被災地の地形や被害の状況の異なる東松島市を対象に、これまでに集落毎に実施した延べ45回、約3500人が参加した説明会で出された住民意見等より抽出したキーワード分析から、住民意向の変容や行政からの効果的な情報提供の在り方について考察することを目的とした。その結果、集団移転対象地区においては時間の経過や復興に関し提供された情報の増加に伴い、住民意見は集団移転に対する質問から災害公営や復興の時期等のより具体的な質問や要望へと遷移したことが分かった。
著者
菅沼 雄介 北村 眞一
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:13482858)
巻号頁・発行日
vol.10-4, pp.170-174, 2012 (Released:2012-03-10)

創意工夫を生かした地域を形成するために、多様な主体との協働によるまちづくりの必要性が高まっている。したがって、地域の将来を担う人材を育成する高校教育において、地域住民との協働活動のあり方について学ぶことは重要であると考える。山梨県立富士北稜高校建築デザイン系列では、まちづくりを題材とした実習課題を設定し、協働活動に必要な思考力、表現力、調整力の育成を試みている。本稿では、2008年度から2011年度までの実習内容と学社連携によるまちづくりの取り組みを紹介することを目的とする。
著者
天野 裕 土肥 真人
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.733-738, 2008-10-15
参考文献数
14
被引用文献数
1

本研究の目的は、迅速かつ大量に住宅供給を可能とした復興政策の立案過程と、市民社会の台頭の契機となった復興活動の生成過程を具体的に把握し、震災以前のメキシコシティの住宅政策、借家人運動の系譜を参照しつつ、市民セクターがメキシコ震災復興に果たした役割を明らかにすることである。結論として、メキシコ大地震の復興プロセスにおいて民衆セクターが果たした役割を、以下の2点に集約した。1. 震災以前に借家人運動の前史を持つ組織が、被災者の動員型要求運動を牽引し、公布後半年間停滞していたRHP実施のための要件を、政府と民衆セクターの協定という形で具体化した。2. 協定の締結により、低所得層に属する被災者の経済状況に配慮した大量の住宅供給と、少数ではあるが民衆セクターの自助努力による包括的コミュニティデベロップメントを達成した。
著者
田村 光司 浅野 光行
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.39.3, pp.667-672, 2004-10-25 (Released:2017-08-02)
参考文献数
7

本研究では、複雑な街路構造が生み出す性質を迷路性と定義し、迷路性の有用性を考察し、迷路性のある商業地の魅力を求めることを目的とする。各商業地の街路構造を解析することで、街路構造の複雑さをあらわす指標を独自に求め、それをもとに、迷路性のある商業地の魅力を、景観要素、歩行者意識、事業者意識の3つの観点からアプローチしていく。
著者
田中 伸彦 梶田 佳孝 平沢 隆之 髙橋 美里 霜田 孝太郎 中村 麟太郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:24364460)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.245-249, 2023-09-07 (Released:2023-09-07)
参考文献数
12

日本の地方におけるMaaSシステムの高度化を念頭において、高知県室戸地域の9市町村を対象に、「ある地域の来訪目的地(destination)と宿泊地(accommodation)の集積状況は地理的に異なる部分がある」という操作仮説を置いて、5×5フィルタリング法を用いた分析を行った。その結果、操作仮説は支持され、両者のメッシュ得点の相関係数は0.041と低い値になることを示すことができた。ただし、この相関関係の低さは、宿泊地(accommodation)の集積地は来訪目的地(destination)の集積地と対応するが、逆は真ならずという関係性にあることに起因することが示唆された。つまり、地方におけるMaaSを高度化するためには、導線としての二次交通(transportation)について、この様な地理的分散に配慮した計画が必要であるということが提言できた。
著者
松場 拓海 石橋 澄子 谷口 守
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:24364460)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.450-455, 2023-12-11 (Released:2023-12-11)
参考文献数
21

高密な都市ほど自動車CO2排出量が少ないという関係性に基づき、脱炭素型まちづくりが推進されている。しかし、自動車CO2排出量を削減するためには、その経年変化を追跡する必要がある。そこで本研究では、COVID-19流行による交通行動変化を踏まえた自動車CO2排出量の長期的変遷を明らかにすることで、市街化区域人口密度が自動車CO2排出量の変化に与える影響を検証する。本研究では、全国都市交通特性調査を用いることで、1987年から2021年の34年間にわたる自動車CO2排出量の長期的変遷を追跡した。その結果、2015年までの全体的な増加傾向から転じて、2015年から2021年にかけては、COVID-19などの影響により自動車CO2排出量は全体的に転じたことが明らかとなった。さらに、自動車CO2排出量の変化要因としては、都市構造などの他の要因の存在が示唆された。
著者
大塚 和徳 越山 健治
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
日本都市計画学会関西支部研究発表会講演概要集 (ISSN:1348592X)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.121-124, 2016 (Released:2017-05-31)
参考文献数
15

災害救助法による避難所は原則的に公的施設を用い、それらは無償とされている。しかし、阪神・淡路大震災や東日本大震災では多くの民間施設を含めて避難所として利用され、今後予想される首都直下地震や南海トラフ大地震のような広域災害では帰宅困難者問題も懸念されており、避難者の収容には民間施設の利用も不可欠とされている。民間施設の利用を拡大するためには現状の費用の掛からない避難所という概念では対応ができない。民間施設の所有者にとっては、施設の提供は社会からその社会貢献としての認識が十分になされることが必要な条件であると考え、阪神・淡路大震災を例に神戸市内で利用された避難所のコスト算定を試みた。
著者
渡辺 公次郎 近藤 光男
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.44.1, pp.50-55, 2009-04-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
14

我が国に残る歴史的市街地では、景観保全と防災性能向上の両立を図る必要がある。中でも住宅の耐震化は重要であるにも関わらず費用面の問題もあり遅々として進んでいない。そこで本研究では、歴史的景観保全に配慮した耐震化を促進させるための行政補助金の効果を分析する。研究対象地域は徳島県南部地域とする。まず、仮想市場法(CVM)を用いて、住宅耐震化と、歴史的景観保全に配慮した耐震化に関する支払意思額(WTP)を調べた。この値をもとに、ランダム効用モデルを用いて許諾率関数を推計し、それを用いてWTPを推計した。その結果、徳島県南部地域における歴史的景観の価値は24億7,544万円であった。次に、推計した許諾率関数を用いて「歴史的景観保全に配慮した住宅の耐震改修を行う際に補助金を支給する」政策を想定し、最適な補助金額を算定したところ、1戸当たり280万円であった。
著者
竹内 義和 村木 美貴
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:24364460)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.251-254, 2018-09-10 (Released:2022-06-08)
参考文献数
5

首都直下地震や南海トラフ地震は大都市に甚大な被害をもたらすと予測されることから、被害軽減に向けた体制を構築する必要性が高まっている。こうした中、2011年の東日本大震災や2014年の大雪災害では大規模な渋滞が災害対応に支障を来し、道路交通機能を早期に確保することが重要であると認識された。これに対応し、国や自治体は災害時の道路交通に関する制度の改正や計画の改定に取り組み、迅速な災害応急対応が可能な体制を目指している。本研究は、大規模災害時の道路交通に関する制度の現状を整理し、今後の防災体制の構築に向けた課題を考察するものである。
著者
今村 真樹子 佐藤 宏亮
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.210-217, 2022-04-25 (Released:2022-04-25)
参考文献数
10

まちづくりにおいて地域固有の課題に対応するため、行政との協働を担う主体の形成が欠かせない。さいたま市では行政主導による住民自治組織「区民会議」が平成30年度まで設置されており、本研究は、区民会議を対象とし、16年間の活動における位置付けとその変遷、廃止に至った要因、廃止後の取り組みとの関連性に焦点を当て、都市部における住民自治組織の役割と意義について考察することを目的としている。文献調査とヒアリング調査をもとに得た主な考察は以下の通りである。1) 広域での効果的な区民会議の活動を実現することは、議会や予算、条例などとの兼ね合いもあり、容易ではない。2) 区民会議は要綱改正毎に方向性や立場が不明確になっていった。3) 活動や協議範囲の限定、位置付けを変更し、行政とうまく連携させる取り組みであれば、都市部でも住民自治を実現できる可能性があると推察される。
著者
村居 真緒 轟 慎一
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:24364460)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.188-193, 2023-09-07 (Released:2023-09-07)
参考文献数
8

本研究では、伊吹山から近距離・中距離・遠距離にある滋賀・岐阜の小学校からみた景観構造について、校歌を用いたテクスト景観分析、景観構成と平面・断面からみた視覚構造分析、経験と意識からみた居住者イメージ分析の3分析をもとに考察をはかった。滋賀では幼少期に伊吹山に直接登るなど身体的経験を持つ場合が多く、また教育的側面からの認知が少なくないことが校歌からもうかがえる。空間構造の特性から、滋賀側では独立峰として眺望される小学校が多い。一方、岐阜では、伊吹山ドライブウェイがあることもあって身体的経験が多くはない。山地から奥まった位置となり連嶺の1つ、奥山の景として眺望される。校歌においても、遥かな景として謳われている。
著者
長井 香南 伊藤 史子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.1148-1155, 2023-10-25 (Released:2023-10-25)
参考文献数
10

携帯情報端末は数十年の間に急速な進歩を遂げ、ここ数年ではスマートフォンの所持が一般的になってきた。それに伴い「歩きスマホ」という言葉が生まれ、歩行中のスマートフォンの利用は危険であるという議論もなされている。2010年代に登場したARゲームアプリは、ゲーム上の仮想都市を見ながら実際の都市を移動できる。本研究では、スマートフォンのアプリケーションの中でもARゲームに着目し、通常の歩行と比較して歩行者の歩行行動や空間認知にどのような特徴があるのかを明らかにすることを目的とする。歩行時の視線の動きや立ち止まり行動、直後の空間認知に関するデータを取得するため歩行実験を実施し、得られたデータをもとに歩行行動と空間認知それぞれの分析を行った。その結果、ARゲームの利用によって実空間を見る時間が低下し、空間認知を都市の場面記憶と捉えれば低下させる可能性があるが、都市空間構造の把握と考えれば、ARゲームの利用は影響がない可能性があることが示唆された。
著者
矢澤 知英 後藤 春彦
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.697-702, 2001-10-25 (Released:2017-12-01)
参考文献数
5

Recently many cases of shopping district revitalization have been carried out under the circumstance that declining shopping districts are increasing. This study aims to clarify the problems and issues of revitalization in consideration of the opinions of storekeepers and actual working organization officers that cause nonparticipation in the revitalization. In this study, through hearings, the opinions of these people are classified. As a result, four problems are clarified. These are the consciousness of the traditional human relations, disagreement with the results, shortage of invitation to participate for storekeepers in the revitalization, and the shortage of key information to storekeepers.
著者
山石 季沙 松本 邦彦 澤木 昌典
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
日本都市計画学会関西支部研究発表会講演概要集 (ISSN:1348592X)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.121-124, 2022 (Released:2022-07-25)
参考文献数
4

本研究では、歴史的町並みを有する観光地において、域外資本店舗が画一的な印象を与えるファサード構成要素の状 態を明らかにすることを目的とした。評価構造を把握するため、評価グリッド法を用いた印象評価実験を行った。実験の結果、被験者は観光地景観に「特別感」と「安心感」が感じられたときに景観を「好ましい」と評価することが明らかになった。域外資本店舗による、地区のイメージと合致しない商品の取扱、写真やキャラクターを使用した過剰に内容を演出した広告とその過剰な掲示が、「宣伝が誇大だ」「工夫が感じられない」「安っぽい」と感じられ、これらの評価項目が「特別感」に反する「どこにでもある」という印象形成に寄与していることが明らかになった。
著者
石川 幹子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.133-138, 1996-10-25 (Released:2018-06-20)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

PREVENTION OF DISASTERS IS ONE OF THE IMPORTANT PROBLEMS IRE CITY PLANNIG. SINCE THE GREAT FIRE IN CHICAGO (1871), THE METHOD OF PARKS, PARKWAYS AND BOULEVARD SYSTEM (PARK SYSTEM) WAS ESTABLISHED. THE CONCEPT OF PARK SYSTEM IS TO COMBINE PARKS AND OPEN SPACES WITH BOULEVARD SYSTEM, AND CREATE SAFE CITY WHICH IS IMMUNE FROM FIRE DISASTERS. THIS METHOD WAS SPREAD OUT NOT ONLY OTHER CITIES IN UNITED STATES, BUT EUROPE AND JAPAN. IT IS IMPORTANT TO NOTICE THAT RECONSTRUC-TION PLANS IN JAPAN WERE IMPLEMENTED BASED ON THE CONCEPT OF PARK SYSTEM.
著者
薄井 宏行
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.570-577, 2023-10-25 (Released:2023-10-25)
参考文献数
17

本稿では,基本単位区,町丁目,250mメッシュ単位(基本単位区等)において,建物当たり平均人口,建物当たり平均世帯数,そして平均世帯人員(各建物利用強度)を算出し,その空間的な分布の特徴を基本単位区等の集計単位の違いに着目して解明した.主な知見はつぎの二点である.第一に,千葉県北東部や南部では,建物当たり平均人口と世帯数は1未満となる基本単位区が連坦する一方,北西部を中心に人口集中地区(DID)とその周辺では,建物当たり平均人口と世帯数は1以上となる基本単位区が連坦する.第二に,基本単位区における各建物利用強度を町丁目や250mメッシュ単位で推定する際の差分の空間的分布をみると,千葉県北東部や南部では,差分は0近傍となる基本単位区が連坦する一方,北西部を中心にDIDとその周辺では,差分の絶対値は1以上となる基本単位区が連坦する.とくに,同一の町丁目において戸建住宅と高層住宅が立地する場合,戸建住宅で主に構成される基本単位区では,町丁目単位や250mメッシュ単位ですると10以上の過大推定となるおそれがある.逆に,中高層住宅で構成される基本単位区では,10以上の過小推定となるおそれがあることに留意すべきである.
著者
内海 ありさ 阿部 大輔
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
日本都市計画学会関西支部研究発表会講演概要集 (ISSN:1348592X)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.61-64, 2021 (Released:2021-07-24)
参考文献数
10

本稿では、京都市の市営住宅の縮小再編について立地の変容に着目して考察した。立地の変容に関しては、①戸 数にあまり変化が見られない区、②総住戸数の半数が減少する区、③総戸数が 3/4 となるが市内に 1 団地しか立地 しておらず、今後住戸数が増加する可能性のある区という 3 つの特徴に分類できる。これを踏まえ、京都市におけ る市営住宅の縮小再編によって、①郊外部と都心部で市営住宅の立地の二極化が起こること、②主に都心部では、 団地数の減少により、区内での住宅確保要配慮者の集住を促す可能性があることが明らかとなった。市営住宅の縮 小再編により、今後、更に住宅確保要配慮者の住宅の選択肢がより一層限定され、集住が加速し、住み分けが発生 する可能性がある。
著者
中島 弘貴 馬塲 弘樹
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.719-726, 2023-10-25 (Released:2023-10-25)
参考文献数
31

本研究では、松戸駅周辺の「MAD City」プロジェクトの事例研究を通して、地域起業家および社会的企業の起業エコシステム通じた既成市街地の再生の実態把握を行った。ここでいうエコシステムとは、起業を生み出すための相互に関連した人々の集団や支援環境を指す。本研究では、地域起業家の中には、地域サービスの向上に貢献する事業を展開しながらも、地域内の社会環境に依存しない起業家が存在することを明らかにした。また、性別や子どもの有無によって、地域起業家が重視する環境、依存する環境に違いがあることも明らかになった。社会的企業は、自社で展開する事業の中で起業家と協働することで、地域に必ずしも依存しない起業家と地域の主体との関係構築に寄与し、更なる起業や付随する地域サービスの充実に貢献することで、市街地再生に資する事業展開を促進する起業エコシステムを醸成していた。