著者
奥 俊信
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.44.3, pp.799-804, 2009-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
10

六角格子内にランダムに打った点を連結したグラフを利用して、近似的なボロノイ図を作成する方法を提案する。この方法は、生成元として、点、線、面図形を同時に扱うことができる。また、障害物がある場合も扱うことが出来るので、汎用性の高い方法である。六角格子は正方格子よりも異方性が少ないのでより良い近似ボロノイ図がえられる。ボロノイ図には基本的に次の3種類があり、それぞれに適した別々の方法が用いられてきた。1)空間全域を生成元の領域に分割するボロノイ図。垂直二等分線が用いられる。2)線パターンで構成されたボロノイ図。グラフ理論が用いられる。3)障害物のあるボロノイ図。グラフ理論の最短経路が用いられる。本研究は以上3種類のボロノイ図を同一の手法で求めようとするものである。その基本的アイデアは次の通りである。つまり、1)空間を六角格子で分割されたセルの集合とする。2)セルの位置をセル内部のランダムな位置で代表させる。以上の方法によって実際にコンピュータを使ってボロノイ図を作成する。
著者
乾 康代
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.1156-1162, 2017-10-25 (Released:2017-10-25)
参考文献数
26

イギリス,福井県,新潟県における原発立地地域への支援状況を明らかにした。イギリスとの比較から,立地自治体にとって,廃炉決定過程における立地自治体の権限が確保されること,原子力事業者との廃炉協定が法定化されること,地域再生のための経済的支援が保証されること,原子力事業者の経済支援が重要であること,これらを包括した立地地域再生支援が法定化されることが重要であることを指摘した。
著者
清水 浩晃
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.1043-1050, 2019-10-25 (Released:2019-11-06)
参考文献数
10

日本の各地域の伝統的な町並みは近代化の過程において建物材料や工法の多様化などにより地域の建物像と異なる更新が連続することによって急速な崩れを経験してきた。これに対して、地域型住宅、すなわち地域の気候風土・伝統文化に適合した住宅への更新を促進することによって地域らしさを持ったまとまりある町並みを再生させる動きがHOPE計画を中心に始まった。本研究では、1987年のHOPE計画において「町並の復権」をうたい八尾型住宅を提唱、その普及によって町並みを劇的に再生させてきた富山市八尾町を対象に、その計画・手法、成果、そしてそれを実現した社会背景・地域特性的要因を明らかにすることで、「地域型住宅への更新による町並み再生」のモデルを提示する。この例では、「八尾型住宅」が、住民が居住性の向上を意図して行う建物更新に対して、その意図に干渉せず、うまく噛み合いながら町並みの美化も行えるような規範として提唱されたことで、規制的手法を用いていないにも関わらず無理なく八尾型住宅を普及させたこと、敷地拡大や別荘需要などの内部的要因が土地建物の流通・更新を促進したためにそれによって町並みが改善されてきたことなどがわかった。
著者
原 洪太
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.593-599, 2019-10-25 (Released:2019-11-06)
参考文献数
26

1967年から1970年にかけて一楽照雄によって5編の論考として発表された農家による住宅供給を意図する農住都市構想はその後いくつかの施策として結実する。本稿では、中でも農住都市構想の概念をよく取り入れた農林省による農村住宅団地建設計画、およびその下で策定された柿生地域農村住宅団地建設基本構想を取り上げる。そして一楽照雄が提唱した農住都市構想の内容を整理し、比較可能な枠組みを作ったうえで、その構想と農林省の助成事業である農村住宅団地建設計画との関係性を、施策理念およびその実践としての具体地域での計画内容という二つの視点から見る。両者が共に農住都市構想の概念を色濃く反映する中でも、農住都市構想の要素のうち、助成事業段階では反映しきれていなかった部分まで反映する計画を立案していた地域が存在していた。
著者
谷本 翔平 氏原 岳人
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.1253-1259, 2019-10-25 (Released:2019-11-06)
参考文献数
5

本報告では、スポーツ観戦者に対するMM(Mobility Management)として、Jリーグのファジアーノ岡山の試合観戦者を対象として、自家用車から徒歩や自転車、公共交通などに行動変容させるための複合的な施策を提案し、実施した。その結果、2017年(初年度)は自家用車来場者かつMMに関する本プロジェクトを認知している試合観戦者のうちの10%(全自家用車来場者の7%)が自家用車以外の手段に転換した。転換者の属性は、30代~40代が多く、サポーター歴が長いこと、単独での観戦者である傾向があった。また、手段転換のきっかけとしては「ワンショットTFP」が最も多く挙げられていた。その一方で、二年目には、プロジェクト認知度と手段転換者割合ともに減少しており、継続的な効果につなげるための課題も見えた。
著者
久保 勝裕 西森 雅広 加藤 健介
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.44.3, pp.547-552, 2009-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
2

北海道の鉄道は、廃線により大きく減少した。廃線から約20年が経過し、現在の旧駅周辺地区の実態を検証する必要がある。本論では、都市構造と廃線後の跡地活用との関係から、旧駅周辺地区の実態を明らかにする。研究対象は、52の廃線自治体であり、アンケート調査を実施した。分析の結果、かつて駅と商店街が近接していた中規模以上の廃線自治体において衰退が特に顕著であり、駅舎跡地に集客施設を導入しても、駅の代替施設になりえていない実態などが明らかになった。
著者
馬場 美智子 岡井 有佳
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.610-616, 2017-10-25 (Released:2017-10-25)
参考文献数
15
被引用文献数
2 3

近年、水害が頻発、激甚化する可能性がある中、河川の氾濫による水害リスクの高まりが懸念され、水害対策へのより一層の取組みが求められている。河川整備による限界がある中、土地利用・建築規制などのソフトな対策も合わせた複合的な水害対策が求められている。そのような状況の中、滋賀県は流域治水条例を制定し、総合的な治水対策に取り組んでいる。本論文では、土地利用・建築規制に焦点をあて、滋賀県の流域治水条例について都市計画制度の側面から分析を行った。また、フランスの水害対策に関わる都市計画と比較し、制度と運用面から(1)適用地域の範囲、(2)一貫した都市計画制度、(3)国と自治体の役割と責務の3点から課題を明らかにした。
著者
鳩山 紀一郎 藤原 裕樹 岩永 陽
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.295-300, 2005
被引用文献数
3

本研究は、 PDCAサイクルの考え方による継続的な協働型まちづくりスキームを提案し、世田谷線沿線地域を対象として、地域発案型まちづくり団体である「世田谷線とせたがやを良くする会」を通じてこれを試行することによって、まちづくり手法において継続性と協働性が重要であること、本スキームによって参加者間の意識共有化効果がなされることを検証することを目的とする。結果として、継続性と協働性の重要性を確認できたとともに、点検地図などを利用した本スキームを通じて短時間ではあるが参加者間で意識が共有化されることが確認できた。今後は、一般住民へのアンケートなどを実施しつつワークショップを継続し、特に関心の高かった世田谷線の魅力向上方策を中心に具体化し、実施計画を行う予定である。近年、地域発案型のまちづくり活動団体を各地で登場している一方、行政側でも地方分権の構想が本格化しつつあり、自治体の自主性と自己決定能力が問われる時代になりつつある。従って今後は住民と行政が協働し、継続的に方策を検討し実施しては評価・診断を行っていくという構造が、まちづくり活動に一層必要なものとなると考えられる。
著者
松浦 健治郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.583-588, 2012-10-25 (Released:2012-10-25)
参考文献数
13

本稿では、巡行型祝祭の代表例として日本三大曳山祭の一つである岐阜県高山市の秋の高山祭りを対象として、都市空間と祝祭空間との関係性を都市形態学的に明らかにすることを目的とする。明らかとなったのは、第1に、都市空間の変化に応答するように祝祭空間も柔軟に変化してきたこと、第2に、高山祭の特徴のひとつとして、建築の内部空間と街路空間とを簾や垂れ幕により明確に分離することにより、ハレの空間(街路空間)とケの空間(建築の内部空間)を演出していること、第3に、祝祭空間を都市空間と祭行事の内容により類型化することにより、特徴的な都市空間に合わせて効果的に祝祭空間を演出していることを理解できること、第4に、都市空間整備の一部は祝祭時の利用も考慮して行われていたこと、である。
著者
北浪 健太郎 岸井 隆幸
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.85-90, 2003-10-25
参考文献数
4
被引用文献数
5

わが国最大規模の開発面積を誇る多摩ニュータウンも既に入居開始から30年が経過した。この多摩ニュータウンは高度経済成長期に「東京で働く勤労者向けに良質な住宅を大量に供給すること」を目的として出発したが、その後、時代の要請に対応しながら役割を見直し、今日では様々な機能を取り込んだ複合都市として整備されている。そして今、東京都施行の新住宅市街地開発事業が終了する等ニュータウンの開発に関する事業はいよいよ終息期をむかえようとしている。しかしながら一方では、初期に建設された住宅や施設の老朽化と居住者の急速な高齢化が進み、建築物の更新、増加する単身老人世帯への対応、学校の余剰・廃校問題等、新たな課題が顕在化しつつある。また、近年では転出者数が転入者数を上回る状況が続いており、都市機能の維持・成熟という観点でも陰りが見受けられる。 こうした事態の背景には、そもそもニュータウン入居者が一定の年齢層に偏っており、結果としてニュータウン全体の人口構成も「団塊の世代」(第1世代)と「その子供世代」(第2世代)に偏在していることがあるが、加えてこの第 2世代が近年、世帯分離のタイミングをむかえていることも状況を複雑にしていると考えられる。新しい課題に対応し、多摩ニュータウンを今後とも継続的に成長ないし成熟化させてゆく具体的な施策を検討するためにはこの第2世代の動向を的確に把握することが非常に重要である。 しかしこれまで地方都市の分析や世帯主に関する研究は行われているが、大都市ニュータウンの第2世代の住み替えを対象とした研究は実態把握の困難性もあってほとんど行われていない。そこで本研究では、第2世代が世帯分離後どのように住み替えを行っているのかを明らかにするために、アンケート調査を実施し、 (1)第1・第2世代の同別居状況 (2)第2世代の世帯分離後の住み替え先の傾向 (3)現在も第1世代と同居している第2世代のニュータウンへの定住意向、居住性の評価等 を明らかにし、ニュータウンで育った第2世代の住み替えの動向を把握することを目的とする。 調査方法としては、多摩市内のニュータウン区域には 59町丁目が存在するが、入居開始後に町名変更・編入が行われた町丁目並びに未だ人口定着が浅い人口 100人未満の町丁目と土地区画整理事業区域内の町丁目を除くと、結果的に19町丁目を抽出し、アンケートは各戸のポストへ投函・郵送回収で行った。また、アンケート記入対象者と主な質問内容は記入者の属性と同別居状況、別居の場合はその理由を聞いた上で、既に別居している場合は現在の世帯主(第1世代)に対して第2世代の住み替え先を、同居している場合は18歳以上の第2世代に対してニュータウンの居住性等を問う質問に答えて頂くように設定した。 分析方法としては、 (1)把握できた724人の第2世代に対して数量化_III_類を用いて類型化し、同別居状況についての特徴を導く。 (2)別居者の住み替え先と、多摩市全体の転出者の転出先を比較する。また「年代」と「別居理由」から特徴を導く。 (3)第1世代と同居している第2世代のニュータウンの居住性評価の特徴を分析する。 調査結果としては、 (1)第2世代の別居時期は、住宅所有関係で違いがあり、「借家」の方が「持家」に比べて別居する時期が早い。 (2)多摩市の転出者は一般に「23区以外の東京都」に多く移り住んでいるのに対して、第2世代は、「周辺県」や「都内23区内」にも多く移り住んでいる。 (3)年齢が「20代」「30代」の第2世代で「一人暮らしを希望」して別居した人は「都内 23区内」に住み替える割合が高く、特に多摩ニュータウンまで直接乗り入れている京王、小田急線沿線に住み替えている人が多い。 (4)現在も同居している第 2世代のニュータウンに対する愛着や住み良さの評価は高い。特に「10代」「40代」の居住性評価は非常に高い。しかし「20代」「30代」になると都心の利便性等との比較において否定的な評価が増加する。 また、同居第2世代の定住意向は多摩市政世論の結果よりも低い水準であり、今後も引き続き「20代」「30代」となった第2世代が多摩ニュータウンから離れて行く可能性は高い。その際にはニュータウン区域から「都内23区内」、「京王線小田急線沿線」への住み替えが起こる可能性が極めて高いことがわかった。
著者
姥浦 道生 小泉 秀樹 大方 潤一郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
no.37, pp.811-816, 2002-10-15
参考文献数
11
被引用文献数
2

本研究においては、ドイツ・ノルトライン-ヴェストファーレン州において大型小売店舗の建設誘導計画を通じた立地コントロールの実態を調査・分析している。結論としては、まず立地コントロール規準の適合性の判断に関し、判断資料となる数値の導出過程が明示的ではないこと、及び規準が抽象的なため主体によって適合性の判断基準が異なることが、明らかになった。また、これらの帰結として異なる結論の意見書が出されていたが、それらを専門的観点から調整する場は存在していないことが明らかになった。さらに、一方ではこの立地コントロール規準が、実質的には政治的な裁量の枠を限定していることも明らかになった。
著者
遠藤 亮 中井 検裕 中西 正彦
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.39.3, pp.319-324, 2004-10-25 (Released:2017-08-02)
参考文献数
7

地方行政の基盤強化や広域的な対応の必要性から、市町村合併に注目が集まっている。行政と住民とが連携してまちづくりを展開していく上で、住民の合併に対する意識を考慮することは重要な課題である。市町村合併のデメリットとして、地名の変更が挙げられている。本研究は、市町村合併による市町村名称変更が住民の地域帰属意識に与える影響を明らかにし、市町村名称変更の形態と地域帰属意識変化との関係を明らかにすることを目的とする。5年前に合併した兵庫県篠山市の住民を対象にアンケート調査を行い、その結果の分析から、旧名称を残す場合と消滅させる場合とで、地域帰属意識の変化に違いが出ることを突き止めた。
著者
福本 優 岡 絵理子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.323-328, 2017

ハノイにおいて、社会主義時代に建設された画一な集合住宅団地であるKTTは、経済開放を経て、現在までに大きな変化を遂げてきた。KTTは、過密な人口や市街地の住環境の悪化というハノイ市の社会問題の中で、再開発の必要性が訴えられている。そこで、本研究では、先行して再開発が始まったNguyen Cong Tru KTTを対象に、実測調査による全体像の把握と、オープンスペースの利用実態及び住民の意識を明らかにすることを目的とした。調査の結果、経済開放後、KTTにおいても様々な用途で団地のオープンスペースは利用され、その用途の分布の偏りが場所のイメージにも変化を与えていることが明らかとなった。また、住民はオープンスペースを占有しつつも、他の住民と相互に調整しながら利用することで、団地のオープンスペースに活気ある風景を生み出していることが明らかとなった。これらは、今後の再開発において、豊かな風景を生み出すためのマネジメントや土地利用の決定に示唆的な知見をもたらすと同時に、我が国の集合住宅団地の再生にも共通する新たな知見を与えた。
著者
松原 康介
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 第38回学術研究論文発表会 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
pp.155, 2003 (Released:2003-12-11)

本稿では、モスクの建設と利用を通した、新市街の現代モロッコ都市への再編過程の一端を明らかにし、モスクを核とした複合文化空間の意義の検討を目的とする。新市街は西欧型生活様式に即した空間であったが、今日の課題は既存ストックとしての新市街の、現代モロッコ本来都市への再編である。宗教生活の根幹としてのモスクは、小モスクの胎動期を経て少数で大規模な近代建築として普及したが、その存続のためにハブース店舗を埋設した点で、計画された複合施設としての発展形態をとっている。空間的特質としては、ブロック上で中庭をもたないが、複数の入口を通して外部へと開放されている。また、ハブース店舗が周辺の一般商店街と連坦し、かつ道路が露店スークとして利用され、商業を通した広場・道路との連携が見られる。バロック型の既存ストックを積極的に活用して、フランス文化とモロッコ文化の複合文化都市を目指すことが考えられる。
著者
川原 徹也 湯沢 昭
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.43.3, pp.427-432, 2008-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
8

本研究の目的は、大型店が市街地に立地した場合、中心市街地へどのような影響を与えるかを検討するものである。研究方法としては、始めに地方都市における大型店の立地状況の把握を行い、次に複合型大規模商業施設と中心商店街利用者を対象とした消費者意識と消費行動分析を通して、大型店と中心商店街との共存・競合関係を分析する。結論としては、大型店が中心市街地内に立地した場合には共存関係が認められたが、周辺に立地した場合は、競合関係が発生し、中心商店街の更なる空洞化が懸念される結果となった。
著者
香月 秀仁 川本 雅之 谷口 守
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.728-734, 2016-10-25 (Released:2016-10-25)
参考文献数
21

近年注目を集める自動運転技術を搭載した自動車(SDC)の導入は都市における人々の交通行動に大きな影響を及ぼし、結果的に都市構造も影響を受けることが考えられる.本研究では独自に実施した意識調査と全国都市交通特性調査による大規模な交通行動調査の結果を結合することを通じ,個人のSDC利用意向に影響を及ぼす要因,およびSDC利用意向と都市属性の関係について検証を行った.分析の結果,1)運転することが好きな人やステータスと感じている人はむしろSDCを利用しない傾向にある,2)現在運転をしておらず,自動車の安全性が改善されると感じる人はSDCを利用する傾向にある.3)個人の運転距離が長い疎な構造を持つ都市においてSDC利用意向率が高くなることが定量的に示された.
著者
福田 崚 城所 哲夫 瀬田 史彦 佐藤 遼
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.1070-1077, 2016-10-25 (Released:2016-10-25)
参考文献数
24

東京一極集中を緩和・解消すべく企業を地方に移転する必要性が指摘されているが、産業活動の面から見れば東京に立地するメリットは大きく、その実現は容易ではない。既往研究では地方移転を惹起する様々なファクターが指摘されているが、定性的な分析に留まっており、また空間的な示唆に乏しい。本研究では、評価のために企業移転を用い、ルーチン的な観点から「非合理な」企業を抽出した上で、(1)ネットワーク(地域にの多様なリンク)(2)立地環境(魅力的な地域資源、それに敏感な主体)(3)中心市街地(集積による密度の高さと多様性)の三つのアプローチから定量的にこれらの移転を説明することを試みた。上の結果、「非合理な」企業は高度人材を志向して移転しており、それらの企業はイノベーションに重きを置いていることが多いことが明らかになった。また地域レベルで見ても、三つのアプローチいずれも流入企業を惹きつける誘因たりうることが示されたが、その中でも地域内のネットワーク構造が大きく影響していることが示唆された。
著者
李 〓遠 川原 晋
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.1166-1172, 2015-10-25 (Released:2015-11-05)
参考文献数
24

本研究は「共有」という概念を通じて都市の共同体の回復と雇用創出等の解決に取り組むソウル市の「共有政策」を対象とし、その政策の全体像を把握した上で、 「ソウル共有企業」へのアンケート調査から政策の有効性を評価することと、共有空間における行政からの支援の成果を明らかにすることを目的とする。結果として、まず、行政がソウル共有企業の認定および支援金の付与、そしてソウル共有企業の情報を市民に広報することで、ソウル共有企業やその活動に対しての市民からの信頼を生み出していることが分かった。また、柔軟な法制度の改正も共有活動を円滑にすすめる上で重要であることが明らかとなった。次に、共有空間に着目すると、共有空間認定型、共有企業認定型、共有空間整備型、自治区支援型の4通りの支援方法を通して、 共有概念を理解した市民によって積極的に利用されている。協力体制がよく構築されている共有空間委託型に関わる企業へのインタビューからは、今後この支援を受けた共有空間が若者たちの雇用創出や共同体意識の醸成に寄与するようなコミュニティ活動の拠点となることへの期待が高まっていることが確認された。
著者
清水 肇 小野 尋子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 第41回学術研究論文発表会 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
pp.36, 2006 (Released:2007-01-05)

那覇市首里金城地区においては、歴史的環境を有する地区としての景観整備が1980年頃から取り組まれてきた。その過程において、中央部を貫く石畳道を保全し、地区外に通過用道路を建設し、さらにアプローチ道路を整備することが行われてきた。その過程で生活環境を整備しつつ細街路の歴史的形態を保全・整備する方法について模索が行われてきたが。2005年に細街路の両側の石垣を含めて道路用地として石垣や石積の保全修復をはかり、道路自体は歩行者専用道路として整備して有効幅員を2?2.7mとする都市計画決定が行われた。これによって沿道敷地は幅員4m以上の道路に接することとなる。これは環境、利用、設置の三側面を実質的に評価して細街路の目標を定めることによって可能となった細街路整備の方法である。
著者
鈴木 春菜 榊原 弘之
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.53-58, 2014-04-25 (Released:2014-04-25)
参考文献数
9

本研究では、自動車を保有しないと不便であると考えられる地方都市における、移動格差がもたらす心理的諸影響について分析を行った。自動車を利用できる環境にあるが敢えて利用しない積極的自動車非利用者と、自動車を利用したいが利用できない状況にある消極的自動車非利用者がいると想定し、消極的な自動車非利用者は自動車利用者と比較して地域愛着・主観的幸福感・地域の地理認知の水準がいずれも低いという仮説を措定した。山口県宇部市において転入者と学生に対するアンケート調査を行い、仮説の検証を行った。その結果、地域愛着・主観的幸福感・地理認知のそれぞれについて仮説を支持する結果が得られた。また、地域愛着については一般居住者については自動車利用傾向が高いほど地域愛着が低下するという結果が得られ、自動車利用の積極性による影響の差異が示された。