著者
中川 敦寛 工藤 大介 園部 真也 麦倉 俊司 久志本 成樹 冨永 悌二
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.955-963, 2021-09-10

Point・現在の神経集中治療では二次侵襲を最小限にとどめ,生体の自己回復能力を最大限に引き出す環境を作ることに主眼が置かれている.・神経学的所見やモニタリングから得られる情報を統合し,頭蓋内圧亢進を的確に評価して治療のタイミングを逃さない.・今後,インフォマティクスなどがモニタリングや管理の質の向上を支援することが予想されるが,生理学,病態生理を深く理解することが本質であることには変わらない.
著者
中江 竜太
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.946-953, 2021-09-10

Point・頭部外傷患者の20〜35%は凝固線溶系障害を伴い,転帰と相関する.・特に線溶系が亢進して出血傾向となることが特徴であり,線溶系マーカーのD-dimerは予後予測因子となる.・凝固線溶系マーカーのモニタリングを行いながら刻々と変化する病態を把握し,治療を進めていくことが望ましい.

2 0 0 0 画像診断

著者
前田 剛
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.934-945, 2021-09-10

Point・急性期頭部外傷における初期診療で第一選択とする画像診断法は単純頭部CTである.・初回CTでは,緊急開頭術が必要な頭蓋内出血の有無を評価する.・二次性損傷を評価するためrepeat CTを行う.・軽傷頭部外傷では,放射線被曝を考慮して神経学的随伴症状などを確認してCTの適応を決める.
著者
横堀 將司
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.922-933, 2021-09-10

Point・外傷診療は時間との勝負である.迅速な初期蘇生はもちろんのこと,正確な重症度,緊急度の評価は必須である.・根治的治療がシームレスに継続されるための情報伝達項目を明確にしておく.チーム医療(戦略,戦術,チームワーク)の確立は必須である.・搬送を急ぐあまり,気道,呼吸,循環の安定化を怠ってはならない.付加的な二次的脳損傷は患者転帰をむしろ悪化させる.
著者
松村 勝 児玉 麻亜子 下河辺 久陽 田代 恵太 西村 太郎 竹谷 園生 吉本 裕紀 林 享治 和田 義人 谷脇 智 明石 英俊 宗 宏伸 今村 鉄男
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1362-1366, 2019-11-20

【ポイント】◆膀胱ヘルニアは膀胱壁の一部分,もしくはすべてが脱出する病態で,成人鼠径ヘルニアの1〜4%と報告されている.◆鼠径ヘルニア同様の症状に加え,頻尿・夜間尿・二段性排尿・血尿・排尿障害など,泌尿器系症状を有する場合は膀胱ヘルニアを疑う必要がある.◆術前画像検査により膀胱ヘルニアと診断することで,術中膀胱損傷を回避できるが,外鼠径ヘルニア/内鼠径ヘルニアともに膀胱滑脱の可能性があることを念頭に置き手術を行うことで膀胱損傷を回避しうる.*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年11月末まで)。
著者
小関 宏和 村山 雄一
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.888-897, 2021-07-10

Ⅰ はじめに 脳動脈瘤は,発生から増大,破裂に至るまでの経過を予測することが極めて困難な疾患であることから,その病態機序の解明には臨床像を模倣した疾患モデルが不可欠である.臨床での動脈瘤壁の病理学的・遺伝学的所見,および血管画像を用いた流体解析などから,脳動脈瘤が血流ストレス依存的な疾患であり,血管壁に炎症を伴う病変であることが示唆されてきたが1-4),それらの因果関係や,炎症に至るまでの機序については未だ不明な点も多い.この課題を解決すべく,70年ほどの間に実験的な脳動脈瘤モデルの開発が進み,それと相まって疾患に対する理解が深まり,そこから生まれてくる新たな課題に対してそれらのモデルが進化を遂げてきた,あるいは新たなモデルが生み出されてきた. 本稿では,実験的脳動脈瘤モデルの歴史を紐解きながら,それらのバリエーションや特徴について概説する.詳細な病態機序の解説については他稿に譲るが,これらの実験的脳動脈瘤モデルによって得られた最新の知見について紹介する.
著者
内山 卓也 髙橋 淳
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.858-872, 2021-07-10

Point・痙縮の病態を理解し,症状を見逃さず適切な時期に治療に結びつけることが重要である.・選択的末梢神経縮小術(SPN)の適応には,痙縮罹患筋肉と神経支配を理解することが重要である.・バクロフェン髄腔内投与(ITB)療法は調節性に優れた治療法であり,さまざまな疾患や病態に適応ができることを理解する.
著者
堀澤 士朗 平 孝臣
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.838-845, 2021-07-10

Point・高周波熱凝固手術は,振戦・ジストニアなどの不随意運動に対して長期的に改善をもたらすことができる.・高周波熱凝固手術における後遺症を呈する脳出血は極めて稀であり,安全性は高い手術である.・振戦に対する両側脳凝固手術以外の安全性は確立されておらず,構音障害や声量低下などの症状が重篤に生じる可能性がある.・両側脳凝固手術による手術リスクが懸念される場合は脳深部刺激療法(DBS)の適応を検討する必要がある.
著者
中里 道子 児玉 和宏 佐藤 甫夫 佐藤 真理 宮本 茂樹
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1237-1239, 1997-11-15

インスリン依存型糖尿病(Insulin-dependent diabetes mellitus;IDDM)は,血糖値測定,インスリン自己注射,食事療法など,長期にわたる身体管理を要する慢性疾患である。ケトアシドーシスや低血糖などの急性合併症,網膜症,腎症などの慢性合併症を予防するためには,厳格な血糖値コントロールが必要とされる。 IDDMに精神障害を伴う場合,精神症状の管理が身体合併症の予防や長期的な予後にとって,極めて重要である。精神障害を伴ったIDDMに関する報告は少なく,精神分裂病の合併は極めてまれであると言われている。近年,幻覚・妄想を伴ったIDDMの2症例を経験した。この2症例では,小児科,精神科の協力体制が治療上有効であり,精神症状が著明に改善し,血糖値のコントロールも安定し,糖尿病の長期予後も良好に保たれている。
著者
木下 康仁
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.194-197, 1988-02-01

人手不足だけが原因ではない老人ケアの“しんどさ” 家庭においてであれ医療・福祉施設であれ,自立した生活が困難になった老人のケアが大変であることは,実際にケアを担っている人々は言うに及ばず,社会一般も等しく認めるところである.確かにこうした老人には手がかかるし,ケア従事者は心身共に消耗しやすい.しかし,ケアの大変さの中身については必ずしも十分に理解されていないのではないだろうか. 例えば,一般の人々は具体的なケア内容についてはあまり知識がないから,ケア従事者の身体的疲労や片時も目を離せない場合などの心理的負担をこの中身と考えがちである.ケアを量的な問題と理解し,この意味で老人のケアは大変であると理解する.そして,この問題が解決されれば「福祉の心」にあふれたケアが可能になるだろうと考える.老人ケアの問題は現在このような論調で語られている.
著者
宇野 昌明
出版者
医学書院
雑誌
Neurological Surgery 脳神経外科 (ISSN:03012603)
巻号頁・発行日
vol.39, no.10, pp.933-934, 2011-10-10

最近の医学生が(医学生には限らないらしい)教科書を買わないことは,皆さんもよく知っていると思う.医学生に講義や実習でどんな教科書をもっているかを尋ねると,『year note』,『ステップ』,『チャート』などを見せてくれるが,私が指定した教科書をもっている学生に遭遇することは少ない.当大学の1学年は100~110人前後であるが,基本である内科の教科書(朝倉書店の『内科学』がほとんど)をもっている学生は60人前後であり,大学の書店で売れる脳神経外科の教科書数は大体40冊/年であるという.先日,各学年の学生代表との懇談会があり,なぜ教科書を買わないのか,との話題になった.学生の言い分は①教科書は値段が高い,②先輩から,教科書は買わなくても試験は通ると言われた,③試験勉強は授業プリントと過去の試験問題を復習するだけでよい,④教科書の改訂版がすぐに出て情報が古くなる,などであった.このような言い訳を学生がしている状況で,いつも私が授業後に学生から指摘されるのは,①授業プリントの字が小さくて読みづらいところがある,②写真が見にくい,などである.私もそのようなことがないように授業プリントを改訂してきたが,よく考えると,プリントの内容は教科書の内容のpick upであり,代表的な写真は教科書にきれいなものが掲載されている.要するに学生が自分で教科書を復習すれば問題ないことである. しかし,教える側にも問題があることが指摘されている.例えば,①Power Pointのスライドのみの授業スタイルでよいのか?,②長年にわたり同じ内容の授業をしていないか?,③学生が授業中にどう反応しているのかを確認しているか?,そしてこれが一番の問題点かもしれないが,④そもそもなぜ指定された教科書が必要なのか?,どのような使い方をすべきかを学生に説明しているか?,臨床や研究が忙しくて,つい教育にかける時間をサボっていないか,自分も大いに反省する必要がある.
著者
大村 敏郎
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1958, 1988-12-20

師走になると街に慌しさが増してくる.その中を縫うようにして走る救急車の警笛をきき,屋根で回る赤ランプを見ると,白衣を着ていない時でも臨床医はつい職業意識を呼びさまされるのが常である. 今月はその救急車のルーツに触れてみたい.最初の救急車は,ライン川流域で活動していたフランス軍団の26歳の軍医ドミニク・ジャン・ラレー(Dominique JeanLarrey,1766〜1842)によって1792年に開発された.まだフランス革命の混乱からぬけきれていない時期である.このあとナポレオン(Napoléon,1769〜1821)が登場してきて,ラレーはその殆んどの戦役に従軍し,首席外科医としてナポレオンからも兵士たちからも大きな信頼を寄せられることになる.
著者
圓尾 知之
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.750-759, 2021-07-10

Point・パーキンソン病は振戦,筋強剛,無動・寡動,姿勢反射障害などの運動症状と,多様な非運動症状を呈する疾患である.・2015年にMDS(International Parkinson and Movement Disorder Society)から新たな診断基準が提唱され,支持的基準の項目にMIBG心筋シンチグラフィと嗅覚検査が挙げられている.・薬物治療は症状出現早期から開始することが推奨され,患者背景を考慮した薬剤選択が必要とされている.・外科的治療のタイミングはwearing offやジスキネジアなどの運動合併症が出現し,かつon時のADLが保たれている時期が効果的である.
著者
秋下 雅弘
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.28-31, 2015-01-20

要旨 加齢に伴い低下するテストステロン分泌は,認知機能の低下や認知症発症とも関連することがわかってきた。地域住民を対象とした疫学研究や認知機能障害を有する患者を対象とした観察研究では,血清テストステロン濃度が低い高齢男性のほうが認知機能は低く,発症・進行が早いことが報告されている。一方,テストステロン補充療法の効果を検討した研究は少ないものの,小規模研究で認知機能の改善効果が報告されている。今後は対象を絞り込んで臨床試験を行うことと,作用機序を解明する研究が求められる。
著者
大野 治俊 堀越 陽子 堀越 敏子 落合 玲子 本誌編集室
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1386-1393, 1986-12-01

昨年8月12日,羽田発大阪行日本航空123便,ボーイング747SR機か群馬県多野郡御巣鷹山山頂付近に墜落,乗員15名,乗客509名のうち‘奇跡の生存者’4名を除く520名の犠牲者を出した惨事はまだ記憶に新しい. 4名の生存者のうち吉崎博子・美紀子さん親子と落合由美さんの3名が藤岡市内の病院に収容ざれ,川上慶子さんはその病院で応急処置を受けたあと,すぐ国立高崎病院に転院となった.

2 0 0 0 死別と躁病

著者
出村 紳一郎 南光 進一郎
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.39-45, 1991-01-15

【抄録】 近親者,友人との死別後に躁病が発現した4症例を報告した。症例1:43歳,女性。すでに躁うつ病の既往があったが,夫の死亡後軽躁状態となり,さらに父の死亡後躁状態となった。症例2:17歳,女性。うつ病相の既往がある。軽躁状態にあったが,自殺した友人の葬儀に出席した後,躁状態となった。症例3:38歳,女性。すでに躁うつ病の既往があったが,伯父の死亡後,うつ状態を経て躁状態となった。症例4:42歳,女性。躁うつ病の既往があった。うつ状態にあったが,友人の葬儀を手伝った後,うつ状態が増悪し自殺を企図した。その後,躁うつ混合状態を経て躁状態となった。 いわゆる「葬式躁病」(Funeral mania)の名称はよく知られているが,文献上の報告例は意外に少ない。これまでの報告例をみると,英語圏では死別した相手は,実父母,夫,息子が多く,一方,我が国では義父母が多く,両者の間に差が認められた。死別により躁病が初発した例は少なく,既往にすでに躁うつ病相があり再発した例が多かった。
著者
山口 智 三枝 英人 中村 毅 小町 太郎 粉川 隆行 愛野 威一郎
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.549-552, 2009-07-20

Ⅰ.はじめに 唾液分泌過多症は唾液分泌の絶対量が多い真性のものと,嚥下障害や上部消化管の占拠性病変による通過障害に伴い唾液が貯留した仮性のものとに分類される1,2)。真性唾液分泌過多症の原因には,薬物性のものや消化器疾患に伴うもの,脳血管障害,パーキンソン病に伴うものなどが報告されており,治療の原則はおのおのの原因に応じたものが中心となる1,2)。一方,原疾患の制御が困難である場合や,特発性の真性唾液分泌過多症の場合には,治療に難渋することが多い2)。今回,われわれは,種々の治療に抵抗性であった特発性の真性唾液分泌過多症に対して,漢方製剤である茵蔯五苓散®が著効した1例を経験したので報告する。
著者
古川 智之
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.380-381, 2013-05-15

Case MAO阻害薬とデキストロメトルファンの併用で副作用が生じた例 ●患者:年齢不明の女性. フェネルジン15mgを1日4回服用中であったが,デキストロメトルファンを含む咳止め薬,約55mlを服用した30分後に,吐き気とめまいを訴える.4時間にわたり42℃の高熱で,最高血圧が70mmHgとなり,意識不明の状態が続いた後,心臓停止で死亡した. ●患者:15歳の少女. チオリダジン,プロシクリジンおよびメトロニダゾールとともに1日3回フェネルジン15mgを飲用していたが,1カプセル中に臭化水素酸デキストロメトルファン15mg,酒石酸フェニンダミン6.25mg,塩酸フェニレフリン5mgおよびアセトアミノフェン120mgを含むカプセルを13個服用した.彼女は昏睡状態で,異常高熱(40℃),血圧100/60mmHg,脈拍160bpmの後,心臓停止で死亡した. ●患者:28歳の女性. フェネルジンとグアイフェネシン(去痰薬)100mgを含む臭化水素酸デキストロメトルファン15mgを服用後,ミオクローヌスと硬直を発症し,無反応に至った. 比較的MAO阻害作用の強いフェネルジン(わが国では未発売)と,デキストロメトルファンの併用によって副作用が惹起した症例が,海外で数例報告されている1, 2).