著者
加藤 敏
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.719-727, 2013-08-15

はじめに グローバル化が加速度的に進む現代の高度資本主義は,就労者にとって大きな試練になっている。多くの職場はコンピュータ管理を通し,就労者に対し間違いを許さない厳密性と完全主義を徹底し,消費者,あるいは顧客に落ち度がないよう細やかな気遣いを徹底する他者配慮性を前面に打ち出す。つまり,職場自体が完全主義で他者配慮,良心性を旨とするようになっている。このような規範は,職場の「(偽性)メランコリー親和型化」と特徴付けることができるだろう。それは確かに正しいものだが,平均的な人が従うには心身の限界を超える危険を内包し,生きる意味を剝奪しかねない点で,「過剰正常性」あるいは「病的規範」という性格を帯びている。このハードルの高い課題に応える途上で,うつ病,ないし双極障碍の発症を来す事例が増えているのは由々しき事態である。 筆者は,このような問題意識のもとに,気分障碍の一亜型として「職場結合性気分障碍」(職場結合性うつ病,および職場結合性双極障碍)を提唱している2)。暫定的な診断指標の概略を挙げる。①発病の主な誘因が職場での過重労働にある。過重労働の判断は,労災認定の判断基準において定められた,1か月あたり100時間を超える時間外労働をしているという基準を目安にしている。②対人関係や自己同一性の双方でのパーソナリティ機能の上で問題を来す明らかなパーソナリティ障碍はなく,基本的にはもともと安定した社会機能を持っている。③伝統的診断で内因性うつ病,ないし躁うつ病と診断される。 職場における気分障碍のなかには,DSMやICDの公認の診断体系では,うつ病や双極障碍とすぐに診断するのが難しい病態を呈する事例が少なくない。そこで,本稿ではこの種の病態の代表例をいくつか挙げながら,職場における気分障碍の臨床的特徴を浮き彫りにし,その上で,職場連携を含む治療の要点を述べたい。
著者
淺井 仁
出版者
医学書院
雑誌
理学療法ジャーナル (ISSN:09150552)
巻号頁・発行日
vol.39, no.8, pp.703, 2005-08-01

ロンベルグ徴候(Romberg's sign)とは,閉足立位時に開眼から閉眼することによって,開眼時よりも身体の動揺が大きくなり最後には転倒に至る現象を指す.ロンベルグ徴候は,ドイツの神経内科医であるMoritz Heinrich Romberg(1795-1873)によって著された「Lehrbuch der Nervenkrankheiten des Menschen(英名:A Manual of the Nervous Diseases of Man)」の中に記述されている1).この本は,彼の仕事が最も充実した時期と考えられる1840年から1846年の間に書かれ1853年に英訳されたものであり,各種の神経症状が神経学や神経生理学に基づいて体系化されて詳しく記述,解説されている1). ロンベルグ検査は,厳密には失調症の原因の鑑別に用いられてきており,ロンベルグ徴候が陽性の場合には,脊髄性の運動失調を疑うことになる.これに加えて平山は,閉眼閉足起立試験をロンベルグ試験とすると,前庭機能障害にみられる閉眼立位時の動揺も一種のロンベルグ徴候と考えたほうが実際的であると述べ,閉眼閉足起立試験によって身体の動揺が起こる場合をすべてロンベルグ徴候陽性とし,これを脊髄癆型後索性ロンベルグ徴候,前庭性ロンベルグ徴候,および下肢筋力低下による末梢性ロンベルグ徴候に分類している2).前庭性ロンベルグ徴候は閉眼後の身体動揺は次第に増強するが転倒することは少ないというものであり,下肢筋力低下による末梢性ロンベルグ徴候は特に腓骨筋の筋力低下により閉眼時の横方向の動揺が増えるというものである3).
著者
矢吹 朗彦
出版者
医学書院
雑誌
臨床婦人科産科 (ISSN:03869865)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.735, 1999-05-10

単純子宮全摘において,肥大した子宮腟部を正確に摘出することは案外難しい.例えば側方をかじるように取ってしまうとか,逆に傍腟結合織内に深く入り込んで,腟と傍腟結合織の切断端が離れ,出血が心配されるなどはよく経験することである. 切離がうまくいかない最大の理由は,仙骨子宮・膀胱子宮靱帯を一括挟鉗,切離することが困難なためである.しかし,仙骨子宮靱帯と膀胱子宮靱帯を別々に切離すると腟断端と靱帯が離れてしまい,その間からの不愉快な出血に遭遇することがままある.
著者
岡田 靖雄
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.657-660, 1998-06-15

■島村俊一の狐憑病調査 憑きものに関心をもつものにとって,本誌の「シリーズ・日本各地の憑依現象」はありがたい。その第2回「山陰地方の狐憑き」3)は島村による現地調査にふれていないので,『東京医学会雑誌』の第6巻(1892年)から第7巻に8回にわたり連載された「島根県下狐憑病取調報告」8)の内容を紹介したい。 島村は1891年(明治24年)7月8日に出張を命じられて14日に東京を出発。尾道で1名の狐憑病患者をみ,23日松江着。出雲・石見・隠岐の3国をめぐり啓蒙講演もし,8月29日に松江をたって9月2日帰京。その間に人狐憑き29名(男9,女20),犬神憑き(外道憑き)2名(男女各1),狸憑き1名(男),野狐憑き2名(男)の計34名をみた。名称はちがっても同病なので狐憑きと概称すると島村はいう。診断は錯迷狂〔パラノイア〕4,躁狂4,ヒステリー狂およびヒステリー15,酒精中毒症3,続発痴狂1,老人痴狂1,マラリアおよびチフス3,関節炎1,肺癆1,卵巣のう腫1。狐憑きとされた状態像は,躁状8,錯迷5,熱性譫妄5,ヒステリー発作15,腫物1である。患者が狐憑きとみとめられたのは,責めをうけたのちに自白してが10名,他よりただちに狐憑きと目されたのが24名である。
著者
平井 覚
出版者
医学書院
雑誌
理学療法ジャーナル (ISSN:09150552)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.45-55, 2019-01-15

はじめに 医療機関における転倒・転落はインシデント報告のなかでも頻度が高く,日本医療機能評価機構医療事故防止事業部1)の報告では2015年に発生した医療事故3,654件中,転倒・転落事故は793件(21.7%)である.そのうち影響度分類レベル3b以上となる例は10%(2.1%が死亡,7.9%が障害残存の可能性が高い)を占め,入院期間の延長に加え,入院に至った原因疾患よりもさらに深刻な状況に陥る可能性もある. 松山市民病院(以下,当院)での転倒予防対策は2004年から「職種横断・多職種で取り組む」ということをテーマに活動を展開してきた.入院から退院まで患者・家族そして病院にも不利益が生じないよう病院全体で取り組むという姿勢が対策の基本理念である.ただし,対策を展開していくのに最も問題になるのが転倒・転落事故に対する職種間の意識の温度差である. 病院内で起こる転倒・転落事故の約80%は病棟(病室,廊下,トイレ)で発生する.したがって初動対応を行うのはほとんどが看護師であり,それに対する危機意識が高いのも事実である.理学療法士は院内で直接患者の転倒・転落事故に遭遇する機会が少ない.日々の業務で,患者の療養生活における転倒へのリスク回避へ強い危機意識をもって業務にあたる理学療法士がどれほどいるであろうか.理学療法士は,病院組織のなかで動く医療技術スタッフとして,患者の低下した身体運動機能を可能な限り改善することを業としている.患者の入院生活上の移動能力にも視点を置き活動度の判断を病棟スタッフと協議・判断していくこと,またチームとして転倒予防対策に寄与できることが特に望まれていることではないだろうか. 本稿では患者の安全を各職種の専門性を超えて包括的に考慮し,チームとしての行動に反映できる理学療法士像について筆者自身の経験を通しての知見を述べたい.
著者
野辺地 郁子 松川 るみ 永井 堅 永井 宏
出版者
医学書院
雑誌
臨床婦人科産科 (ISSN:03869865)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.1434-1437, 2002-12-10

はじめに 近代の医療進歩は目覚しく,日々刻々と発展し続けている.周産期医療においても同様であり,周産期死亡率の低下は,医療技術の発展により,より安全に分娩を迎えることができていることを証明している.これに伴い最近,妊産婦自身の分娩に対するニードも高まり,分娩の安全性のみでなく,満足度や快適性を求める妊産婦が増えてきているのが現状である. 近年では,フリースタイル分娩という考え方が医療従事者のみならず,妊産婦のなかでも定着しつつある.しかしフリースタイルバースとの表現は日本のバースエデュケーターによる国産英語で,外国の文献などによると分娩体位の自由に関してはfree positionが一般的であるが,分娩時の行動を合わせてフリースタイルと表現しているものと思われる.すなわち,陣痛時から分娩時に至るまで産婦の好む体位で自由に動き出産を迎えることである.このため,産婦は自分の意思が尊重され,自分も分娩に参加したという意識を高めることができる.産婦が自分自身の分娩を知り,分娩中の不快や苦痛を上手く緩和することにより,身体的にも精神的にもリラックスへとつながる.リラックスは分娩の進行に対してとても大切な要素であるといえる.当院では座(坐)位分娩を中心とした分娩管理を行っている.そこで,いわゆるフリースタイル分娩をからめて当院の分娩管理について述べたい.
著者
古野 真実子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
2019-10-10

はじめに 取り組みの背景 静岡県伊豆の国市は伊豆半島の付け根に位置している(図1)。2019年4月1日現在,高齢化率:32.6%(地区幅:25.5〜52.6%),65歳以上ひとり暮らし世帯率:18.2%,高齢者のみ世帯率:31.5%,高齢者に占める要介護認定率:13.9%で,65歳以上の12人に1人は認知症(介護認定を受けて把握している者のみ)である。 また,1つの市とはいえ,市街地・中山間地・山間地と区分けられ,人口・産業・移動問題と地域課題が地区により分化されている特徴がある。そのため,地区課題は市内51地区(住民自治組織単位)により全く異なり,個別性を持った対策が各地区単位で必要となっている。 静岡県伊豆の国市では,地域コミュニティ再生のきっかけとして,市内に「手づくりベンチ」を設置するベンチプロジェクトを進めてきた。「地域の見守りの目の発掘」やベンチの製作者と活用者との出会い・交流も意図したこの取り組みを紹介する。
出版者
医学書院
雑誌
臨床眼科 (ISSN:03705579)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.718, 2017-05-15

「水族館にいる魚には白内障が多い」ことを,ずっと以前この欄に書いた。仙台で学会があったときの経験からである。 たまたまこの話を思い出して,急に気になった。「なぜ?」という疑問からである。
著者
古川 誠志 斉藤 仲道 丸山 義隆 小田 東太
出版者
医学書院
雑誌
臨床婦人科産科 (ISSN:03869865)
巻号頁・発行日
vol.50, no.8, pp.1091-1094, 1996-08-10

薬剤性膵炎のなかでエストロゲン製剤の占める割合は約5%であり,また高脂血症が膵炎に合併する頻度は4〜53%と報告されている.なかでもIV型高脂血症の患者にエストロゲン製剤投与後に急性膵炎を発症している報告が多い1).近年トリグリセライドと凝固線溶系,動脈硬化との関係やエストロゲン投与がもたらす血清脂質変化が明らかにされた.本症例は高トリグリセライド血症の患者に起きたエストロゲン誘発性急性膵炎であるが,エストロゲン,高トリグリセライド血症.膵炎の関係を考えるうえで興味ある症例と思われた.また本例を通じて,エストロゲン製剤を多用する産婦人科領域でもその適切な使用と代謝に及ぼす影響についての調査の必要性を感じた.
著者
本田 久樹 小林 大介 細見 新次郎 藤井 正司 戸祭 正喜 宇野 耕吉 司馬 良一
出版者
医学書院
雑誌
臨床整形外科 (ISSN:05570433)
巻号頁・発行日
vol.31, no.9, pp.1083-1086, 1996-09-25

抄録:多発性翼状片症候群(multiple pterygium syndrome,以下MPSと略す)とは多発性皮膚翼状片,先天性多発性関節拘縮と特異顔貌(眼瞼下垂,眼瞼裂斜下,耳介低位や小顎症など)を3主徴とし,他にも四肢の変形を合併する稀な疾患である.現在までの報告例は国内と海外を含めて約60例である.しかしMPSの中には,生下時には頚部の翼状片はそれほど顕著でないために先天性多発性関節拘縮症の診断にて報告されている例もあると思われる.本疾患は実際には今までの報告例よりも多数存在しているものと思われる.今回,筆者らは生後間もなく先天性多発性関節拘縮症と診断し,治療をしたが成長するにつれて,しだいに多発性皮膚翼状片が顕著となったことにより同症候群と考えられた2症例を経験した.
著者
小林 慧子 井上 千栄子 高田 満智子 小池 恵 荒島 真理子 船田 柳子 相馬 ふみ子 松山 セツ 條島 康代 伊沢 栄子 松浦 二枝 長坂 美奈 後藤 義英
出版者
医学書院
雑誌
保健婦雑誌 (ISSN:00471844)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.228-240, 1979-03-10

はじめに 最近,母乳栄養について医療関係者の関心も高まり,目をむけられるようになった。昭和50年5月の業務研究会で,私達は保健婦として,母乳分泌を高め,母乳栄養を確立させるためにどのような働きかけをすべきか,ケースをとおして具体的な援助の方法を研究し,今後の保健指導に役立たせたいと考えた。 すでに周知のことと思うが,初乳にはラクトフェリン,各種免疫抗体,分泌型IgA,マクロファージ等,新生児の腸管に強力な感染防御機構を与えるという大きなメリットがあることで注目されている。厚生省では50年度から,母乳育児運動に本腰を入れ,2月1日に"母乳育児の効果に関する研究班"を発足させ,あわせて妊産婦への啓発,人工乳の誇大広告規制等,多角的に母乳復権運動が開始された。ちなみに昭和50年5月,当所における3か月健康診査時(200名)の母乳栄養率は20%とかなり低い値を示している。この事実を見極め,母乳栄養を継続し得ない諸因子を探究し,保健婦として援助の方法を研究・考察し,まとめたので報告する。
著者
横堀 將司 金谷 貴大 横田 裕行
出版者
医学書院
雑誌
medicina (ISSN:00257699)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.1991-1996, 2017-11-10

Point◎意識障害患者において,脳波異常がみられるてんかん患者が稀ならず存在する.◎最近のガイドラインでは「可視的な症状(発作)の有無によらず,臨床的あるいは電気的(脳波で確認できる)てんかん活動が少なくとも5分以上続く場合,あるいはてんかん活動が回復なく反復し,5分以上続く場合」をてんかん重積状態(SE)と定義している.◎SEは,全身痙攣が主体の痙攣性てんかん重積状態(CSE)と,痙攣を伴わない非痙攣性てんかん重積状態(NCSE)に分類される.また,抗てんかん薬2剤により適切に治療してもてんかん発作が治まらないSEを難治性てんかん重積状態(RSE)と分類する.◎持続脳波モニタリングは,集中治療中においても脳波異常の確認からNCSEの診断と治療に有用である.
著者
林 祐太郎 黒川 覚史 水野 健太郎
出版者
医学書院
雑誌
臨床泌尿器科 (ISSN:03852393)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.332-335, 2015-04-05

Point ●乳幼児の包皮が翻転できないのは,病的な状態ではない。 ●無症状であれば,原則として小児包茎は治療を要しない。

1 0 0 0 深頸部膿瘍

著者
西野 宏
出版者
医学書院
雑誌
耳鼻咽喉科・頭頸部外科 (ISSN:09143491)
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.158-163, 2015-02-20

POINT ●深頸部膿瘍は,気道狭窄,縦隔炎,敗血症などの合併症をきたし,死に至る可能性がある。頸部の腫脹と圧痛,皮膚の発赤を認めた場合,深頸部膿瘍の存在を強く疑う。 ●発症の原因は歯性感染,抜歯,扁桃周囲膿瘍,唾石症による顎下腺炎,耳下腺炎,外傷(異物,内視鏡検査)がある。 ●造影CTの撮影範囲は頸部から横隔膜のレベルまで撮影する。 ●広域の感受性を示す抗菌薬を投与し,膿瘍腔の開放排膿処置のタイミングを逃さない。
著者
海老名 敏明 金上 晴夫 桂 敏樹 青沼 賢治 白石 晃一郎
出版者
医学書院
雑誌
呼吸と循環 (ISSN:04523458)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.401-409, 1959-04-15

I.まえがき 機能的残気量(Functional Residual Capa—city,以下F.R.C.と略す)の測定は,慢性肺気腫の診断並びにその程度の判定上大切であるばかりでなく,慢性肺疾患に於ける代償性肺気腫の有無,肺葉切除術後の残存肺膨脹の状態を知る上にも重要である。 F.R.C.の測定はかなり前から行われ,1932年のChristie1)の論文では当時まで発表されたF.R.C.の測定に関する約47篇の論文の詳細な考察を行いVan Slyke and Binger2)の方法が最も信頼性の高い方法であると述べている。この方法は水素をIndicator Gasとして用いているがChristieは之を改良し,爆発の危険性を除くために窒素をIndicator Gasとして用いる閉鎖回路法を発表した。この方法はその後かなり長く用いられ,閉鎖回路法としてはわが国では現在も尚行われている。1939年J.McMichaelはChristieの方法を追試しKatharometerを用い水素をIndicator Gasとして用いるConstant Volume Modificationを初めて発表した。1940年Darli—ng4)は酸素による開放回路法を発表し,その正確さ,再現性の高い点から米国その他に於て現在も尚広く用いられている。
出版者
医学書院
雑誌
公衆衛生 (ISSN:03685187)
巻号頁・発行日
vol.26, no.8, pp.447-458, 1962-08-15

緒方正規先生に師事 編集部 どうもお忙しいところをありがとうございます,今まて石原先生,及川先生等の名誉会員の先生のお話を伺って参りましたが,きょうは松村先生に,いろいろ先生のご経験あるいはご意見をお伺いしたいと思います。先生が大学を卒業されましたのは,大正5年ですか。 松村 そうです。
著者
木村 彰男
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.945-949, 1992-09-10

筋再教育・筋力増強訓練の1つの方法として,最近のリハビリテーション医療の分野でしばしば用いられる方法として筋電図(EMG)バイオフィードバック療法がある. バイオフィードバックとは,通常では人が意識することができない生体内で起こるさまざまな生理的現象を,なんらかの手段を用いて知覚できる信号に変換することにより,その情報を再び生体内に戻し,生理的現象の随意的操作がある程度可能になることと定義される,この定義に従えば,本来不随意的に行われている自律神経系の機能を意識下にコントロール可能にすることが,もともとのバイオフィードバックの意味であるといえるが,一般的には物をつかむような際の触覚や視覚を用いた随意運動の調御もバイオフィードバックとして広く捕えられている.
著者
温 忍 岡野 久恵
出版者
医学書院
雑誌
看護学雑誌 (ISSN:03869830)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.667-671, 1989-07-01

はじめに 毎日の申し送りに費やされる時間や労力と,そこで伝達される情報の量は膨大なものである.しかし,これまでの申し送りは,単なる記録の確認や情報の伝達に終わっており,その効果はあまり上がっていなかったのではないだろうか. 本病棟では,申し送りの伝達内容の分析を基に記録の充実と業務分担の明確化から,看護体制の改善,情報収集の最低基準を統一,明確化する中で申し送りの廃止に踏み切った.この経過などについては,先の学会で報告した1).
著者
鎌田 智有 塩谷 昭子
出版者
医学書院
雑誌
胃と腸 (ISSN:05362180)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.854, 2012-05-24

シドニー分類は,1990年にオーストラリアのシドニーで開催された第9回世界消化器病学会で提唱された胃炎の国際的表記法1)である.これまでの胃炎分類を基盤として,さらにHelicobacter pylori(HP)感染を主体とした胃炎診断であり,histological division(組織学的部門)とendoscopic division(内視鏡部門)の2部門から構成されている(Fig. 1)2). 組織学部門 組織学部門では,etiology(成因),topography(局在),morphology(形態)の3項目に分類され,病因としては,HP,自己免疫性,薬剤性,特発性,感染性などが挙げられている.局在として,幽門部胃炎,体部胃炎,汎胃炎に分類され,形態学的には,炎症(単核球浸潤),活動性(好中球浸潤),萎縮,腸上皮化生,HPの5項目を診断し,さらにこれらの程度をnone(なし),mild(軽度),moderate(中等度),severe(高度)の4段階で評価する.さらに1996年,組織学的所見についてはThe undated Sydney System3)として改訂されている.主な改訂点は,胃内の5点生検(前庭部小彎,前庭部大彎,胃角部小彎,胃体部小彎,胃体部大彎)を行い,先の5項目について定量化することにある.
著者
武田 伸一 平田 彰
出版者
医学書院
雑誌
臨床検査 (ISSN:04851420)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.467-478, 2002-05-15

筋ジストロフィーの分野では,分子遺伝学の発展をもとに原因遺伝子とその産物の解明が進んでいる.原因遺伝子の解明は,各病型の診断を確実にしたばかりでなく,従来,用いられてきた遺伝形式と臨床症状に基づいた病型の分類に対して,ジストロフィノパチー,サルコグリカノパチー,ジスフェルリノパチー,カルパイノパチーなどの原因遺伝子に基づく新しい疾患概念の提唱に結び付いた.今後は分子病態の理解を背景に根治的治療法の開発が求められている.