著者
東本 裕美 岩崎 弥生 石川 かおり 野崎 章子
出版者
千葉大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

最終年度にあたる本年は、これまでの調査で得られた結果をもとに高齢者の精神的健康の維持、増進を図るため健康教室を企画した。これまでの研究より「お互い楽しく話し合える場や、協力できる友達が必要」等の意見をふまえ、地域在住の高齢者を対象にグループ活動を実施した。このグループは参加を希望し研究の承諾が得られた6名の女性高齢者(60代~80代、平均年齢73.3歳)を対象とし全8回実施した。グループにはグループ回想法の技法を用い、1.回想を通じての情緒的交流の機会の提供、2.共有体験の分かち合い、3.孤立感の軽減、4.生活の活性化を目的とした。各セッションのテーマは参加者と話し合って設定したが、それにこだわることなく毎回自由な雰囲気で進行した。また、話し合いばかりではなく1回は「散歩」を取り入れた。結果としては、グループの中でお互いの情報を交換したり、悩みについてアドバイスをしあう様子がみられた。そして、実施後の参加者の感想としては、「楽しかった」、「だれかと話をする時が紛れる」、「また参加したい」、「最初はうまく話せるか不安だったけど、会が進む間に楽になった」と肯定的なものであった。また、実施前後でQOLを比較したところ、グループでの話し合いは高齢者のQOLを高める一定の効果があった。さらに、今後は「戦争体験について若い人たちに話したい」や「若い人たちに役に立つことは何か、自分たちができることは何か」ということをテーマに話したいという、高齢者自身が地域づくりのためにできることは何かを模索する姿勢が見られた。今後の課題としては、グループの中で、個々のプライベートや心的外傷体験に関する内容が話された場合に、その取り扱いについて十分な配慮が必要であり、今後は進行の方法などの運営側の体制づくりが必要となると考える。
著者
砂上 史子
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

幼稚園での観察とそこで得た事例の詳細な分析から,幼児の人間関係における同型的行為の役割について検討した。その結果として(1)保育実践現場における観察と記録のあり方,(2)幼稚園における仲間関係の発達と身体を通してのかかわり,(3)幼稚園の葛藤場面における子どもが他者と同じ発話をすることの機能を明らかにした。
著者
竹内 清己
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教養部研究報告. A (ISSN:03862127)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.31-66, 1986-12-27
著者
水野 修孝 孟 仲芳 金 士友
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要. II, 人文・社会科学編 (ISSN:13427415)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.137-169, 1997-02-28

前回は巨視的な視点で3人の音楽家の基本的な方法意識と述べたのであるが,今回は,前回に基づいてより具体的な問題に迫っていきたいと思う。今回は陳明志に代って同じく私の研究室の共同研究者である作曲家の金士友と前回につづいて中国琵琶の孟仲芳とでそれぞれの直面している問題に深入りして行きたい。(水野修孝)
著者
近江屋 一朗 中村 攻 齋藤 雪彦 鳥井 幸恵 田中 史郎
出版者
千葉大学
雑誌
食と緑の科学 : HortResearch (ISSN:18808824)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.59-69, 2008-03

本研究は子どもの遊び環境の一つとして,現在その遊び環境としての機能が低下していると考えられる,下校路の将来あるべき像を描くためのものである.そのために50代以上,30代・40代,20代以下の回答者それぞれの下校行動の特徴を(1)下校ルート(2)下校時の行動と環境(3)下校ルートにおける仲間の有無から明らかにした.その結果,直帰型,Uターン型,選択型,複合型の5つに分けられた下校パターンは世代によって割合が変化しており,若い世代では下校ルートを能動的に使い分けない直帰型やUターン型の帰り方が多くなっていた.また,下校パターンと下校時の行動にも関係性が見られ,複数の道を使う帰り方で下校時の行動は活発であった.40代以下から増え始めた遠回り型や複合型は遊びや友達を得るために子どもたちが遠いルートでも利用しているということを示していると考えられた.これらより,今後の下校路には遊び環境の充実と共に幅広い道の選択を許容することの重要性が示された.
著者
山本 嘉彦
出版者
千葉大学
雑誌
千葉医学雑誌 (ISSN:03035476)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, 1990-10-01
著者
北神 正人
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究ではフラッシュメモリを用いたディスク装置の高信頼化と長寿命化手法を提案した.高信頼化手法として隣接誤り訂正符号を提案し,長寿命化手法としてガーベージコレクションを用いたデータ移動法を提案した.隣接誤り訂正手法では多レベルメモリセルに記憶された値が隣接値に誤る確率が高いこと考慮して,訂正する誤りを隣接値に限定することにより効率の良い符号を提案している.ガーベージコレクションでは書き換え頻度の高いデータと頻度の低いデータを分別し,頻度の高いデータを定期的に移動することにより書き換えが特定のセルに集中することを防止して寿命を延長している.
著者
陳 金霞
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学社会文化科学研究 (ISSN:13428403)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.93-107, 2004-10-01

医療保障は、人々の生命と健康の維持に直接関連しており、社会保障の重要な一部である。如何に質の高い医療サービスを提供していくかということは、先進諸国だけではなく、世界各国の共通の課題である。本稿においては、欧米の先進5カ国、ドイツ、フランス、スウェーデン、イギリス、アメリカの医療保障制度の沿革、現状及び制度改革の動向について概観すると共に、これらの国々の共通点と相違点を検討した上で、これらの国々の医療保障制度改革が日本に対する示唆について考察している。グローバル化の中では経済的な国際競争と同時に文化的・社会的な国際協力が求められる。異なった欧米先進諸国の医療制度改革の特徴と問題点の比較は重要な課題である。医療制度の国際比較の観点からは、イギリス(NHS)とアメリカ(メディケア・メディケイド及び民間保険)を両極として、他の国は中間的な位置づけにあると考えられる。
著者
本多 〓
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.73-91, 1972-12-25

1.植栽による遮音施設の開発のために,その基礎研究として緑地の防音機能について各種の調査と実験とを行った.2.実態調査は東京都内の大緑地について,指示騒音計,高速度レベルレコーダーを用いて音の分布を測定し,なお重要な地点では24時間測定を行った.実験には,125, 250, 500, 1,000, 2,000, 4,000, 8,000の各周波数毎に音を発生させ,各種条件下の樹木を通過させてその減衰度を調べた.3.大緑地(明治神宮境内)の実側で常時発生している80ホン前後の騒音が,森の中央部では40ホン前後となり,また季節的にみれば,夏季には45ホン以下の静穏地域が最大に拡がり,冬季にはその面積が縮少することよりみて,樹木の存在が遮音に役立ち,また樹葉が防音に大きく関与していることが認められた.4.同一樹種が100m以上連続する樹林での実験によれば,高い周波数帯の音ほどカットされやすく,その減衰曲線は急カーブとなる.5.アベリア(Abelia grandiflora)では,1,000Hzにおいて100ホン前後の音を70ホンに低下させるために,植栽のない場合(アスファルト舗装)60mを要したが,林の中では17mで足りた.6.各種の生垣の遮音効果試験によれば,樹種や周波数により影響を受けるが,例えば2,000Hzの音が,アオキ(Aucuba japonica)の厚さ35cmの生垣を通過すると,4.6ホンの低下がみられた.7.コンクリートなどの壁体の反射音に対する植栽の効果をみると,樹種と植栽の厚味によって異るが,例えばカイズカイブキ(Juniperus chinensis var. kaizuka)の4列植では,1,000Hzの音では2.2ホン,8,000Hzの音では5.9ホンそれぞれ低下した.8.交通騒音に対する実態調査では,道路は周辺地域と同一レベルにある場合よりも,高いか低い場合に周辺地域における音の減衰度は大きい.9.道路際に設けられた高さ1mの土塁上に,草丈約1mの密生したススキ(Miscanthus sinensis),ヨモギ(Artemisia vulgaris var. indica),クズ(Pueraria hirsuta)などの草木またはつる性樹の植生が加わる程度でも,その背後では10ホン前後の低下がみられた.10.道路際で80ホン前後の騒音を,環境基準に準拠して50ホン前後に低下させるためには,大面積の緑地を設ければもちろん可能であるが,そのための幅を多くとれない場合には,まず道路を周辺地域より低くし(切通し道路),その法肩(斜面上端)に小土塁,コンクリート塀などの構造物と植栽とを組合せた複合施設を施せば,30ホン前後の騒音の減衰を得ることば困難ではない.
著者
多賀谷 一照
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学法学論集 (ISSN:09127208)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.1-27, 2005-07-15
著者
岩田 美保
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.39-42, 2005-02-28

本研究は,一組の児童3人きょうだいの縦断的家庭観察データにおける夕食場面の自然な会話のうち,他者(自己含む)に関する因果性についての会話や発話に着目し,それを手がかりとして児童期における子どもの他者理解について検討を行った。今回のデータ(2003年7月および11月/Sが小学5年次)におけるSの夕食場面における因果性についての発話は,他者に関する発話では一貫した友人の人格特性などを客観視,評価する内容の言及がみられてくることが特徴としてみられた。また,他者に関する発話と比較して,特に自己に関する発話の増加がこの時期に顕著にみられたことが特徴的であった。すなわち,小学校4年次から5年次にかる時期にそれ以前からみられていた他者への言及に加え,自己への言及がみられること,それにより同時期には自他理解が複雑に絡み合い助長されるであろうことが示唆された。
著者
高橋 安雄
出版者
千葉大学
雑誌
千葉医学会雑誌 (ISSN:00093459)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.343-360, 1953-11-28

Chikazono-village in Nasu-district of Tochigi-prefecture is a pure rural village with 812 houses and 5316 inhabitants (census 1950). Over 70 27777656000f the houses were equipped with Koseisho'privies in 1941-1942. At that time 41 27777670260f the villagers held eggs of parasites (ascaris 30.4 %, ancylostoma 10.8 %). But in recent years, only 17〜18 15332264103f the villagers hold eggs of ascaris and a few ancylostoma. Pupils of elementary and middle schools near the village hold ascaris at the rate of 50〜70 %, whereas the pupils of this village hold the eggs at the rate of only 17〜24 %.0 From this fact it is presumed that the reformed privy is extremely effective for prevention of parasitic worms. Showing the holding rate of ascaris-eggs low, it is a remarkable fact that the eggs are mostly not fertilized. In a microscopic examination of feces, it was found that 32 in 42 pupils of A-class, 6th grade of the elementary school of this village held eggs of ascaris. Pursuing the cause of the sudden rise of the holding rate of ascaris-eggs, the author found out that it was due to a mass-infection during a day-trip of the class. Next the author selected 12 persons and subjected them to the experiment of the infection with ascaris-eggs (50〜200). The ascaris-eggs used in the experiment are as follows. For 1stgroup of subjects : ascaris-eggs separated frme the feces of one of the pupils m ass-infected by the day-trip. For 2nd group : eggs separated from a man holding the eggs for a long time in the village. For 3rd group : eggs of pig-ascaris. On the 2nd group the symptoms are most serious, on 1st group comparatively slighter and on 3rd group slightest. The main feature in symptoms is cough, which is paroximal with difficulty of breathing as asthma, but not attended with sputa. The persons, whose symptoms were serious, had high fever, but the fever lasted only 3 or 4 days and not as long as usual with pneumonia and penicillin was not effective to the fever. The period from the infection to excretion eggs was 65〜7Through the treatment, on each subject of the 2 former groups 30〜92 worms were got out, but on the examples infected with pig-ascaris-eggs, 1 in 3 men got out only one worm.
著者
石神 靖弘
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、近年拡大しつつある大規模温室での安定的な周年生産における複合環境制御技術の確立のために、園芸施設の環境制御に必要なコスト、具体的には夏季に蒸発冷却法の一種である細霧冷房を用いた場合の冷房効果、および冬季における暖房にかかるコストを推定するモデルを開発し、年間を通じた運用コストの推定をおこなった。その結果、年間の環境制御にかかるコストを地域ごとに推定することが可能となった。
著者
沖中 健 野島 義照 小林 達明 瀬戸 裕直
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.125-134, 1994-03-25
被引用文献数
17

最近夏期における建物の冷房を中心として,省エネルギーや都市のヒートアイランド現象がクローズアップされてきた.この対策としては,つる植物によって建物を被覆することが先ず考えられる.筆者等は,東京都心部のコンクリートアパートにおいて,ナツヅタ被覆の有無によって,夏期に壁面や室内温度がどのような影響を受けるかを,熱電対等によって計測した.その結果,気温特に日射の変動による壁面や室内温度の変化を知る事が出来た.同時にナツヅタの蒸散量や樹液流速と温度緩和との相関を探った.
著者
高橋 英吉 喜々津 哲男 中村 正博 永沢 勝雄
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.19-23, 1974-03-15

1.千葉県のような雨の多い火山灰土壌で栽培された巨峰の,著しい花振いを防止するために,gibberellin (GA)処理の効果をB-995との比較において検討した.2. GA処理によって無着粒の果房数は減少し,着粒数は増加した.GA_<4+7> 100ppmは着粒数の増加に非常に効果を示した.7月8日の着粒率は,GA処理によって5〜6倍に増加していた.3. GA処理によって果梗重および果梗径が増し,特に100ppmでその効果が大きかった.果梗重はGA処理によって2.5〜3倍に増加していた.4. GAは果粒の単為結果を誘起し,それを肥大させた.しかし,このGAによって誘起された単為結果果粒は有核果よりも小さく,その約80%は中(5.5〜6.4g),小(5.4g以下)果粒であった.この単為結果果粒はdouble sigmoidの生長曲線を示した.5.可溶性固形物および酸はGA処理によってあまり影響されなかった.しかし,果皮の色素はGA_<4+7> 100ppmで最も多かった.
著者
桑木野 幸司
出版者
千葉大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

本年度は、三年間の研究作業のまとめとして、資料の最終分析作業を徹底するとともに、過去の分析過程を整理し、論文ないしは著作として発表する作業を中心に行った。まず、16世紀末のフィレンツェで活躍した修道士Agostino Del Riccio(1541-98)が執筆した農業百科全書『Agricoltura sperimentale』(経験農業論)および『Agricoltura teorica』(理論農業論)の手稿を、テキストデータに起こし、校訂版出版に必要な作業および注記を施した。その分析結果をもとに、この農業論中で語られる理想庭園構想の空間を再構築し、そこに見られる百科全書的知識の表象方法が同時代の記憶術やエンブレム文学と強い関連を持つことを指摘し、当時の建築空間の持っていた知的密度の剔抉に成功した。その成果は、『地中海学研究』誌上にて2009年に掲載されることが決定している。また西欧初のミュージアム理論書として知られるSamuel Quiccheberg『Inscriptione vel tituli theatri amplissimi』(1565)の分析をさらに深め、著者が本書で展開する理想ミュージアム空間の構成を再構築したうえで、その中で展覧される百科全書的知識と建築空間との密接な影響関係を明るみに出した。その成果をまとめた英語の論文を、科学史雑誌『NUNCIUS』(Olschki)に投稿中である。さらにやはり16世紀末に執筆された記憶術著作Cosma Rosselli『Thesaurus memoriae artificiosae』(1579)を詳細に分析し、同著で提示される、記憶の基盤として機能するさまざまな仮想空間の特性を分析した。とくに、修辞学の理論と建築空間の構成の通底を明らかにした。その成果は、2009年出版予定の論文集『鈴木博之先生退官記念論文集』に掲載されることが決定している。