著者
大島 郁葉
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、スキーマ療法の概念である早期不適応的スキーマと発達障害(自閉症スペクトラム障害)の関連性を調べ、認知行動療法の効果を検討した。媒介分析を行った結果、早期不適応的スキーマが媒介すると成人の自閉症スペクトラム障害のメンタルヘルスが損なわれることがわかった。したがって、成人の自閉症スペクトラム障害には早期不適応的スキーマの介入がターゲットとなりうることが示唆された。
著者
中澤 潤 小林 直実
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要. I, 教育科学編 (ISSN:13427407)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.119-126, 1997-02-28

事象や行為の時系列的な知識はスクリプト(Schank & Abelson,1977)や一般的事象表象(Generalized event renresentation:GER; Nelson,1986)とよばれる。スクリプトは,「特定の時空間的な文脈に適切な,順序だてられ目標に組織化された行為の流れ」と定義される(Schank & Abelson,1977)。スクリプトは目標(例えばレストランスクリプトであれば,食事をする)の達成に関わる登場人物(ウエイターやウエイトレス,食べる人),行為(入る,座る,注文する,食べる,支払う),小道具(メニュー,食器,請求書,お金やクレジットカード)といった要素からなる。そしてスクリプトにはスロットが想定されており,登場人物や小道具,行為が明示されていないとき,これらを推論できるようなデフォルトがそのスロットに入っている。そのため,レストランの話を聞いた人は,明示されていなくてもそこにメニューがあることをデフォルトから推論できる。またスクリプトには状況に応じて多様なパスがある。外食スクリプトにおいて,支払は重要な要素だが,高級なフランス料理のレストランとマクドナルドのようなファーストフードでの支払い方は異なる。このようなスクリプトの差異を子どもは経験を通して形成していくものと考えられる。スクリプトは人が持つスキーマの一つである。それは他のスキーマと同様に,階層をなしている一般的な構造である。階層構造については,例えば幼稚園生活のスクリプトの中にはお弁当のスクリプトやお帰りの会のスクリプトが下位構造として埋め込まれている。またスクリプトは一般的であるが故に,多様な状況に適用可能である。一方,スクリプトが他のスキーマと異なる点は,その基本要素が行為であるということと,行為の間に時間的因果的結合があるという点である。さて,人はスクリプトを持つことにより,上述のように,情報の欠けたメッセージからもその背景を推測できる。スクリプトに従うことでごっこ遊びにおいてルーチン的なやり取りのパターンを構成することもできる。また,幼稚園や保育園などでは園生活のスクリプトの獲得が園での適応に繋がる(藤崎,1995;無藤,1982)。例えば,中澤・鍛治・石井(1995)は幼稚園のお弁当活動における教師の発語を分析し,教師は入園当初お弁当活動におけるスクリプト形成を促す発語が多いことを見出した。生活上のスクリプトを初期に形成させることで幼稚園生活への適応援助を行っているといえる。このようにさまざまな観点から,こどものスクリプトや一般的事象表象の形成やその利用に大きな関心が持たれている(Fivush & Hudson,1990;Hudson,1993;Nelson,1986)。幼児は抽象的な知識の伝達から学ぶ存在ではなく,具体的な日常体験から学ぶ存在である。中澤・小林・亀田・鍛治(1993)は遠足体験が重なることにより,幼児の遠足知識が次第に一般的事象表象化していくことを示した。このような,日常体験を基にした事象知識の獲得やスクリプトの形成過程は,その意味で幼児期の認知機能の解明にとって重要な課題である。幼稚園で初めて経験することに,集団で行う活動がある。入園以前,個々の家庭で過ごしていた生活は,入園と共にその園・クラスにおける集団生活に変る。例えば,「食事をする」ことは家庭でも幼稚園でも行われていることで,食べる行為そのものは共通している。しかし幼稚園の食事は自分たちで食べる準備をして,みんなでそろっていただきますのあいさつをし,食べ終わってからはお片付けをしなければならない。その内容は家庭での食事とは大きく異なるであろう。このように,子どもはそれまでもっていた家庭での生活パターンから幼稚園における生活パターンを作るために,新たな知識を獲得していかなくてはならない。Nelson(1978)は場面に不慣れな子どもがどのようにして経験を組み立てていくのかをスクリプトの観点から検討した。対象は保育園の新入園児(3歳児)7人と2年目の在園児(4歳児)7人であった。場面として保育園での昼食を取り上げた。実験者はインタビューによって「あなたが保育園でお昼を食べるときにどんなことがありますか。」「それから何がありますか。」と尋ね,さらに細かな点や,他者の役割についても尋ねた。このインタビューを新年度が始まってから1週間以内と3ヶ月後の2回行い、子どもが挙げた昼食時の事象数と系列的な長さが比較された。新入園児より在園児が,1回目よりは2回目の方が,事象数は多く,系列も長かった。また数値の比較に加えて個人の発話プロトコルを事象構造的に図示した。それによると,在園児は事象間の順序を接続詞を使って正確に述べ,昼食活動の基礎的な事象(手洗い,食べる,片付けなど)にも多く言及していた。それに対し,新入園児は系列化が少なく,食事よりも食事後の昼寝に言及する事が多かった。このように,在園児はより適切な昼食スクリプトを構成していた。しかし,この研究では在園体験と年齢とが交絡しておりスクリプトの形成における経験と一般的な認知的発達の効果を分解できていない。そこで本研究では,4歳新入園児,4歳在園児,5歳在園児を対象とし,年齢と経験の双方から子どもの事象知識の獲得をみていく。特に,初めての経験から5ヶ月後まで3回にわたり調査するごとにより,知識の広がりやスクリプトの形成過程を検討する。場面は,1.園生活の中で流れが明確である,2.毎日繰り返される,3.家庭に基盤がある,4.新入園児にとって初めての体験であるの4点を考え,幼稚園のお弁当場面とした。
著者
酒井 伸也 近藤 春樹 高相 豊太郎
出版者
千葉大学
雑誌
千葉医学雑誌 (ISSN:03035476)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.141-145, 1992-06-01

38歳の男性が1985年肺門,頸部,鼠径部リンパ節腫脹で入院。リンパ節,肝生検でサルコイドーシスと診断した。以後無治療で経過観察していたが,1990年発熱,貧血で再入院した。入院時検査所見ではRBC 142×10^4/μl, Hb 5.5g/dl, Retics. 17.2%, Plt 25.3×10^4/μl, WBC 5300/μl, Bilirubin 2.07mg/dl, LDH 1305IU/l, Haptoglobin 10mg/dl以下,Coombs試験が陽性であり,骨髄では赤芽球系が過形成だった。以上の所見より自己免疫性溶血性貧血(AIHA)と診断し,60mg/dayのプレドニゾロン(以下プレ)治療を開始,貧血は漸次改善したが,満月様顔貌,ざ瘡,股関節の無菌性壊死などのプレの副作用が出現した。溶血の再発と上述の副作用を防ぐ目的でプレを減量し,400mg/dayのダナゾール(以下ダナ)を加え治療した。プレ減量にても溶血の進行が認められなかったので,両薬剤量を徐々に減量,最終的に1991年5月,プレ中止,ダナ50mg/dayでRBC, Hb, Ret.共に正常域にあり,プレの副作用も消失した。サルコイドーシスに合併したAIHAは稀であるが,基礎にある免疫学的異常が両疾患を引き起こすと考えられ,今後その機序の解明が待たれる。プレを長期使用せざるおえないようなAIHAに,その副作用を防ぐ意味でもダナ療法は有効と考えられるが,ダナのAIHAに対する作用機序も未だ十分解明されておらず,将来本症例のような貴重な症例の蓄積によって解決されるのが望まれる。
著者
岡田 聡志
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、高等教育機関内の教育改善に資するデータの収集・分析・報告を担うIRの機能に着目し、特に医学領域を事例として、機関別質保証と分野別質保証との関係性およびその中でのIR機能のあり方を明らかにすることを目的としたものである。研究の結果、1)機関別質保証と分野別質保証の関係性は、前者から後者へ重心が移行しつつあること、2)分野別質保証におけるIR機能については、各専門領域・専門職関連団体の各種の取り組みが、IR機能の標準化と効率化の役割を果たすという相補性が確認されること、3)日本の分野別質保証が、卒後から卒前へではなく、逆向きの方向で進展している特質が明らかになった。
著者
首藤 久義
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.49-55, 2004-02-28
被引用文献数
2

日本の入門期読み書き教育は,文字法>単語法>センテンス法>物語法と変遷してきた。1886年,片仮名先習・読み書き同時方式が確立。1932年には児童の生活経験を重視する画期的なセンテンス法が出現。1947年の教科書から平仮名先習・読み先習に転換。敗戦直後は占領下で語形法的色彩が濃厚。その後,語形法的色彩が徐々に減少し,今日では絵物語法が主流。1964年,音声法による非検定教科書が出現。検定教科書に強い影響を与えた。しかし音声法には,入門期に提出可能な読み物が制約されるという問題があった。2001年にはその制約を打破する教科書が出現。同時に,自分の名前を書くことから,平仮名を書く学習を始めるという画期的な方法も出現。これは,全国共通の教科書で個に応じる学習を提示した先駆である。生活経験に根ざした言語運用の学習と,表記に関する知識の学習とが相補・並行的に行われる方向が展望されるが,その方向の芽が既に出ている。
著者
羽間 京子
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.77-83, 2005-02-28

主として現職教員を中心とした社会人を対象とした大学院において,将来,心理援助職に従事することを志望している学生が何を学ぶかを探索して明らかにするために,千葉大学大学院教育学研究科学校教育臨床専攻の修了生10名(質問によっては在校生2名を加える)に自由記述を中心とした質問紙調査を行った。その結果,心理援前職志望者の場合,(1)「現職教員等さまざまな学生とともに学んだからこそ得られた知見」が現在の職務遂行にもたらす効果が高いこと,(2)現職教員とともに学ぶことで教育現場の実態や現職教員の考え方などにリアルに触れる機会を通して,「視野の拡大・深化」がもたらされること,が明らかとなった。同時に,現職教員とともに学ぶことの否定的側面についても検討された。
著者
柳澤 悠 井上 貴子 杉本 良男 杉本 星子 粟屋 利江 井上 貴子 杉本 良男 杉本 星子 粟屋 利江
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、耐久消費財の浸透など消費パターンの変化が、インド農村の下層階層においても生じていること、変化は単なる物的な消費財の面に限らず、教育、宗教活動などに広がっていること、消費の変化は階層関係など社会関係の変容や下層階層の自立化によって促進されていること、またその変動は1950-60年代から徐々に生じていると推定されること、農村消費の変化が産業へ影響を及ぼしていることなどを、明らかにした。
著者
磯崎 育男
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.227-233, 2006-02-28

本論文は,前回の紀要論文で展開した,より現実主義的な合意形成学習の方向性を,アメリカにおけるNational Issues Forumsのモデルに見出そうとする試みである。わが国の合意形成学習は,これまでディベートを基本として展開してきたといってよいが,それでは,授業展開において対立から和解への相反した指示になってしまうとともに,政策選択肢の柔軟な発想が抑えられてしまう可能性が高い。また,問題をどう捉えるかという視点が政策案を形成する場合,重要であるが,ディベート形式ではそれが深められない難点がある。本論文では,そのような問題を解決するためデリバレーションという概念に基づき,その代替的アプローチをNational Issues Forumsのプログラム,具体的には,人々が熟議し,議論する仕組みを多様なレベルで構成し,知識習得のみならず,態度形成につなげていこうとしているモデルを説明し,その効用等について議論している。
著者
増田 敦子 須永 清
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学看護学部紀要 (ISSN:03877272)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.11-17, 1985-03

正常なICR系マウスの7週齢の雌を用いて,摂食量を増加させることなく肥満化をもたらす因子として,摂食時間の制限及び摂食時間帯について検討した。まず,制限摂食群の体重,摂食量,体比重及び腹腔内脂肪量について調べ,24時間摂食群(対照群)と比較検討し,次のような結果を得た。1)マウスの場合,1日1回の摂食で開始時の体重を維持するには最低3時間必要であった。2)1日の摂食時間を3時間以上にした場合,制限摂食群では1日総摂食量は対照群の90〜70%に減少するが,両群ほぼ同じ体重維持を示した。制限摂食群の1時間当たりの摂食量は対照群の0.5g以下に対して,0.5g以上2.7gまでと逆に数倍の増加を示した。3)体比重は対照群に比べて,いずれの制限摂食群も低下が見られ,肥満化の傾向を示した。4)腹腔内脂肪量は摂食回数が1日1回の制限摂食群では対照群に比べて減少を,1日2回,3回,4回の制限摂食群では増加を示した。このことは体比重のみで肥満化を判定することには問題があると考えられる。次に,制限摂食の場合の摂食時間帯について検討し,次のような結果を得た。同じ摂食時間,摂食回数でもその摂食をより活動期後半の時間帯,特に就眠期直前に行わせた方がより強い肥満化傾向を示した。
著者
宮宗 秀伸
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

代表者はこれまでに、代表的な臭素系難燃剤の一つであるデカブロモジフェニルエーテル(DecaBDE)への曝露が、マウスにおいて精子数を減少させることを明らかにしてきた。本研究ではDecaBDE曝露が引き起こす精子数減少の分子メカニズムの解析を行った。本研究課題によって、新生児期マウスへのDecaBDE曝露は、1) 血中テストステロン濃度の減少、2) 精巣におけるアンドロゲン受容体や甲状腺ホルモン受容体の減少を引き起こし、さらに3) 甲状腺ホルモンのスプライシング産物の比率に影響をおよぼすことが明らかとなった。これらの結果は、DecaBDEが精子数減少を引き起こす分子機構の一端を明らかとした。
著者
山崎 文雄 小檜山 雅之
出版者
千葉大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

研究代表者らは地震時の車両走行安定性に関して,数値解析とドライビングシミュレータを用いた走行実験を行い定量的な検討を行ってきている.その結果,地表面地震動の計測震度が6.0程度に達した場合,震動の影響で走行車線をはみ出す被験者が多く見られ,周囲の交通状況によっては他車との接触事故を起こす可能性があることが示された.そこで,気象庁などが導入を検討している地震動早期警報である緊急地震速報の高速道路ネットワークへの応用を目指し,運転者に地震動早期警報が与える影響をドライビングシミュレータを用いた走行実験で検討した.1995年兵庫県南部地震における地震データ,観測点位置などをもとに,現在運用が検討されている地震動早期警報をシミュレーションしたところ,最も震源に近傍なJR西明石観測点でP波検知を行い,「0次情報」が発信されたと仮定すれば,JR宝塚付近では主要動到達前に約5.9秒の余裕時間があることが分かった.したがって,JR宝塚観測点における兵庫県南部地震の地震記録を地表面地震動とし,早期地震情報を運転者に伝えるためのシステムの作動時間を考慮に入れ,主要動到達5秒前から3秒間の減速及び路肩への侵入を促す音声通報を地震動早期警報として運転者に提供した.地震動早期警報の有無で地震時の車両走行の様子を比較すると,早期警報を行わなかったときは走行車線をはみ出したり,車線内を蛇行して走行する被験者が多かったが,早期警報を与えると蛇行走行は見られなくなり,走行速度が120km/hのときは,警報開始時から300m程度車両が進むとほとんどの被験者が路肩に待避を始めていることが分かった、震動による道路変状を想定し,自車前方の障害物回避の対応状況を地震動早期警報の有無で比較した.その結果,地震動早期警報が行われない場合は回避困難な位置(11名中9名が障害物に衝突)にある障害物に対して,早期警報の効果で11名の被験者のうち9名が回避に成功した.
著者
童 鳳環
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学ユーラシア言語文化論集
巻号頁・発行日
vol.2, pp.121-131, 1999-03-27

金子亨先生退官記念号Homage to Prof. Tohru Kaneko
著者
長根 裕美 鈴木 潤 藤田 正典 隅藏 康一 富澤 宏之 永野 博 安田 聡子
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究では、日本の科学研究の低迷をもたらした研究システムの負のメカニズムを解明し、日本の科学研究界にブレークスルーをもたらす改善策を提案する。日本の科学研究の凋落がセンセーショナルに報道されている。その主な原因としては、経済の低迷のほか、近年の大学改革の失敗が挙げられるが、実際のところ、確たるエビデンスがあるわけでなく、あくまで示唆にとどまっている。なぜ日本の科学研究力は低下したのか?本研究は定量的に研究力低下の負のメカニズムを解明するとともに、定性的なアプローチでもってその定量分析の結果の確からしさを検証していく。
著者
趙 景達 佐藤 博信 久留島 浩 須田 努 慎 蒼宇 檜皮 瑞樹 小川原 宏幸 宮本 正明
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

近世の薩摩藩には、豊臣秀吉の朝鮮侵略の際に連行されてきた朝鮮人の村があった。苗代川である。本研究は、この村の歴史を近世から近代にかけて明らかにすることによって、幕藩体制の性格を地域から照射するとともに、民族差別の性格を長期的視野のもとに解明しようとしたものである。その結果、薩摩藩の分離主義的傾向と朝鮮人差別の近代的様相が明らかになった。
著者
築地 茉莉子
出版者
千葉大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

研究目的 : 治療抵抗性統合失調症の治療薬であるクロザリル(以下CLZ)は重篤な副作用の無顆粒球症を引き起こすことが知られ、アジア人では白人と比較して無顆粒球症の発現リスクが2.4倍であるという報告もある。血液毒性が発現する要因についてはいまだ解明されていないため、CLZの使用にあたっては白血球数のモニタリングが必須となっている。躁うつ病の躁状態改善薬である炭酸リチウム(以下Li)は、その副作用に白血球上昇作用を有する。千葉大学医学部附属病院(以下当院)ではCLZ投与患者においても、白血球減少を予防する目的で低用量のLiを使用しているケースが認められている。そこで本研究ではCLZ使用患者において、白血球減少をきたす要因ならびにLi投与による白血球増加の患者側の要因と白血球増多を目的としたLiの至適投与量を解明することを目的とした。研究方法 : 当院精神神経科においてCLZが投与開始となった症例について、患者背景、CLZ投与前後の白血球数〓iの使用の有無などを電子カルテより遡及的に抽出し、本年度は白血球減少をきたす患者の要因ならびにLi投与による白血球数の変動への影響の検証とその要因の検討を行った。研究成果 : 検討の対象となった症例は、2010年以降当院にてCLZが投与開始となった16例であった。このうちLiが投与された症例は10例であった。今回の検討により、CLZを投与された患者の白血球数は、長期的には減少傾向であったが、投与開始初期はCLZ投与前よりも白血球数が上昇する傾向が認められた。また、Liを併用した患者群のCLZ投与前の白血球数は、Liを使用しなかった患者群よりも低値であったことが明らかとなった。Liを併用した群では白血球減少の割合は軽度であったが、LiはCLZによる白血球減少を根治するものではなく、長期使用による副作用発現も懸念されることから、有効性と安全性の検証が必要であることが示唆された。
著者
鶴田 幸恵
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、トランスジェンダーの活動家にインタビューを行い、インタビューを対面的相互行為として捉え、その相互行為の場で参照される性別規範に焦点を当てる。トランスジェンダーの活動家は、トランスジェンダーにかかわる知識を、どのように配列し大衆に示しているのか。それを記述することで「トランスジェンダーがいかなる現象として理解されるのか、その理解に社会的な性別規範がいかにかかわっているのか」を明らかにする。
著者
横川 宗雄 吉村 裕之 金田 丞亮 鈴木 太郎 高相 豊太郎 吉田 貞利 門馬 良吉 酒井 章 寺畑 嘉朔 田崎 喜昭
出版者
千葉大学
雑誌
千葉医学会雑誌 (ISSN:00093459)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.516-522, 1963-03-28

The first case ; Male, 26 years old, employee. Shimizu city, Shizuoka prefecture. Chief complaints : stomachache, nausea, anorexia and slight fever since a few years ago. The general condition was rather good. The results of examinations of both urine and blood were almost normal. No helminth ova were found, but occult blood was positive in the fecal examination. Gastrectomy was carried out under the diagnosis of gastric ulcer. A cherry-sized and localized tumor was found at Pylorus of the stomach. Eosinophilic abscess surrounded with eosinophilic granulation in submucosa of the stomach, and two or three transverse sections of the parasite in the center of this abscess were observed histophathologically. The worm sections were examined morphologically. From the morphological characters of the cuticular spines, intestine and the other organs of this parasite, it was identified as the larva of 4-5 mm in length of Gnathostoma spinigerum Owen, 1836. The second case ; Male, 31 years old, employee. Kanazawa city, Ishikawa prefecture. The occult blood of gastric juice and feees were strong positive, but the results of examinetions of urine and pepipheral blood were normal and no helminth ova were found in feces. Gastrectomy was carried out under the diagnosis of gastric ulcer, like as the first case. A grapesized tumor was found in the ventral site of the greater curvature of the stomach. Histopathological finding was eosinophilic granulation with two transverse sections of the worm. Morphological observations of the cuticule, oesophagus, lateral lines, intestine on the transverse sections of the worm were carried out, and the worm was identified as the immature worm of 30〜35 mm in length of Ascaris lumbricoides.
著者
松葉 ひろ美
出版者
千葉大学
巻号頁・発行日
2014

学位:千大院人博甲第学22号