著者
新津 富央
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

薬物治療中かつ抑うつ状態にある気分障害(双極性障害及び大うつ病性障害)患者において、血清中グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)濃度が健常者よりも低下していることを報告した。この知見に基づいた本研究の目的は、①治療抵抗性気分障害における血清中GDNFのバイオマーカーとしての可能性を、縦断的観察研究により探索すること、②GDNFを治療抵抗性気分障害の新規治療ターゲットとして捉え、GDNF発現増強作用を有する既存薬の効果を自主臨床試験により探索することである。本研究により、治療抵抗性気分障害の病態解明と新規治療薬開発への応用が期待される。
著者
新津 富央 伊豫 雅臣 橋本 謙二 橋本 佐 佐々木 剛 小田 靖典 木村 敦史 畑 達記 井手本 啓太
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

注意障害を伴う精神疾患(気分障害、注意欠如/多動性障害:ADHD)患者を対象に、生体サンプル採取と注意機能測定とを行い、血液中のグリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)濃度と注意機能との関連を探索した。その結果、血清中GDNFは成人ADHDにおける注意障害の病態に関連している可能性が示唆された。また、血清中GDNFはうつ病と双極性障害における臨床的重症度と関連していた。血清中GDNFは、ADHDや気分障害のバイオマーカーになる可能性が示唆された。
著者
坂井 進一郎 PANG Peter K STOCKIGT Joa PONGLUX Dhav TONGROCH Pav 北島 満里子 堀江 俊治 高山 廣光 矢野 眞吾 渡辺 裕司 渡辺 和夫 相見 則郎 KTPANG Peter JOACHIM Stoc DHAVADEE Pon PAVICH Tongr JOACHIM Sto PETER KT Pa DHAVADEE Po PAVICH Tong PETER KT Pan 池上 文雄
出版者
千葉大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

アカネ科植物ミトラガイナ・スペシオ-サ(Mitragyna speciosa)葉部は、タイ国内では"Kratom"、マレーシア国内では"Biak Biak"と呼ばれる伝承民間薬であり、麻薬様作用:中枢神経抑制効果(阿片様作用)と中枢神経興奮効果(コカイン様作用)及び止瀉作用が知られていた。本植物に含まれる有効成分に焦点を当てて、日本、タイ、ドイツ、カナダの研究者がそれぞれの専門領域の研究分野で協力することにより、化学と薬理の両面からの究明研究を行なった。化学面では、タイ産植物葉部の詳細な成分検索を行ない、主塩基Mitragynineと共に新化合物を含む数種の微量塩基を単離構造決定した。更に、主塩基Mitragynineの集約的ルートによる不斉全合成法を開拓することができた。また、Mitragynineの菌代謝産物として報告されたプソイドインドキシル体やMitragynineオキシインドールも化学変換により合成し、これらの立体化学を明らかにすると共に、薬理活性評価用検体として供した。更に、マレーシア産Mitragyna speciosa葉部のアルカロイドについても化学的研究を行い、新規化合物の単離と共にピリドン型ミトラガイナアルカロイドの基本骨格合成を達成することができた。一方、薬理面での成果としては以下の点があげられる。主成分Mitragynineの中枢作用について検討を行い、Mitragynineに強力な鎮痛作用を見い出した。さらに末梢作用として、平滑筋収縮抑制作用を見い出した。輸精管標本を用いた検討から、末梢作用の作用機序としてMitragynineが神経の節後線維に作用し、神経伝達物質の放出を抑制することが考えられた。神経由来細胞を用い、パッチクランプ、蛍光色素法などを駆使して解析した結果、Mitragynineの神経伝達物質遊離抑制作用には神経のT型およびL型Caチャネル遮断作用が関与していると推定した。また、モルモット回腸標本に用いた検討から、Mitragynineはオピオイド作用も有していることが判明した。その効力はMorphineの1/6であった。Mitragynineの微生物代謝物Pseudoindoxyl体にもオピオイド作用が認められ、その効力はMorphineの約20倍強力であった。そこで、これらの化合物についてオピオイド受容体結合実験を行い、両アルカロイドは特にμ受容体に親和性が高いことを見い出した。これらのMitragynineの末梢作用はその鎮痛作用機序に関連していると考えられる。Mitragynineの構造に類似する釣藤鈎アルカロイドおよび母核のIndoloqunolitidine誘導体を用いて、オピオイド作用の構造活性相関的検討を行った。該結果、Mitragynineの9位メトキシル基が作用発現に必須であることが明らかとなった。また、そのメトキシル基と4位の窒素の位置関係が効力を左右していると推察した。また、Mitragynineの中枢作用に関する研究で以下の成果を得た。脳内5-HT2A受容体作動薬をマウスに投与すると"首振り行動"が発現する。本行動に対するMitragynineの影響を検討した結果、Mitragynineは用量依存的な抑制効果を示した。Mitragynineの抑制作用はNoradrenaline枯渇薬及び5-HT枯渇薬の影響を受けず,α2受容体拮抗薬で解除されたことから、Mitragynineがシナプス後膜α2受容体刺激作用または5-HT2A受容体遮断作用を有することが示唆された。Mitragynineをマウスに腹腔内あるいは脳室内投与(i.c.v.)すると顕著な鎮痛作用が認められた。i.c.v.投与したMitragynineの鎮痛作用はオピオイド拮抗薬Naloxone(i.c.v.),α2受容体拮抗薬および5-HT受容体拮抗薬(i.c.v.,orくも膜下腔内投与)で抑制された。従って1)Mitragynine自身が脳内で作用して鎮痛作用を発現しうること,および2)この鎮痛作用に上位オピオイド受容体及び下降性モノアミン神経系が関与することが推察された。この様に、ミトラガイナアルカロイドに種々の特異的かつ有効な薬理活性が見出された。これらアルカロイドは今後、医薬品の開発、薬理作用機序の観点から興味深い素材と考えられる。上記研究と平行して、タイ産Uncaria,Nauclea,Hunteria、及びVemonia属植物の化学的検索及び薬理学的評価も実施した。
著者
孫 旻愷
出版者
千葉大学
巻号頁・発行日
2015

学位:千大院園博甲第学52号
著者
鶴田 幸恵
出版者
千葉大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
巻号頁・発行日
2020

本研究は、女と男に二元化されない新しい性別概念である「ノンバイナリー」というアイデンティティ・カテゴリーがどのようなものかを、カナダでのフィールドワークとトランスジェンダー、ノンバイナリーの活動家へのインタビューをもとに明らかにする。インタビューによって得たデータを、社会学の一つの手法であるエスノメソドロジー・会話分析の方法を用いて分析することで、ノンバイナリー概念が相互行為の中でどのように使用されているのか、またそれによって性別という現象にどのような新たな理解がもたらされているのかを析出する。
著者
坂部 貢 立道 昌幸 遠藤 整 清島 大資
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

ネオニコチノイド系農薬(NN)と同様にフルピラジフロンおよびスルホキサフロルの作用機序は、昆虫のニコチン性アセチルコリン受容体にアゴニスト作用をもつ事によって、神経を異常興奮させる事で害虫を駆除しており、種選択性でヒトには安全であるとされている。申請者らはNNをマウスに投与した実験を行い、中脳に蓄積しやすい事、造精機能やテストステロン合成酵素のmRNA発現量が低下する事などをすでに発表している。NNと同様の毒性があると考えられるフルピラジフロンおよびスルホキサフロルをマウスに投与し、精巣や神経に与える影響を検討し、標的害虫以外の生物にとって安全かどうかの検討する。
著者
上原 浩一 伊藤 元己 渡辺 洋一
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究はアザミ属植物について次世代型DNAシークエンサーを用いた遺伝解析と形態形質の計測をおこない、現在適用されている分類の妥当性を検討した。アザミ属の系統は、葉緑体ゲノムのシークエンス等を進めた結果、従来の節・亜節の区分とは一致せず、日本産のアザミ属は北海道の系統と、本州以南に分布する系統の2つに大別されることが示された。また、近縁種間で、形態形質を比較解析した結果、種の識別ができない例が見られたほか、カガノアザミ亜節の2倍体種についてRAD-seq法による解析では、集団内の遺伝的変異が大きく、種間変異には有意性が認められなかった。この結果からアザミ属全体の分類の再検討が必要と考えられた。
著者
江草 浩幸
出版者
千葉大学
巻号頁・発行日
2000

千大院自博乙第学30号
著者
福田 友子
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

中古車貿易は移民企業家が積極的に参入してきたニッチ産業であり,特に日本を起点とする右ハンドル中古車貿易においては,パキスタン人移民企業家が市場を牽引してきたことが知られている.本研究課題では,パキスタン人移民企業家が世界各地に形成した貿易拠点においてしばしば見うけられる,移民企業家の多民族/多国籍ネットワークに注目した.エスニック・ビジネス研究において基本原理とされてきた同胞ネットワークの活用とは様々な点で異なる,多民族/多国籍の移民企業家が連携したビジネス・ネットワーク構築の仕組みを明らかにした.
著者
大坪 紀之
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

数論的な多様体のL関数とモチーフ的コホモロジーとの関係、またその円分体論への応用を研究した。とくに、円分体のヘッケL関数の特殊値とフェルマー曲線のモチーフ的コホモロジーとの新たな関係を、一般超幾何関数を用いて示した。また、超幾何ファイブレーションという多様体族を新たに定義し、その周期に対するGross-Deligne予想を証明し、そのレギュレーターを一般超幾何関数を用いて表すことができた。さらに、フェルマー曲線塔の副有限ホモロジー群の構造を決定し、それを用いて、Ihara-AndersonによるJacobi和の普遍測度の、簡明な構成を与えた。
著者
中川 誠司 添田 喜治 西村 忠己 細井 裕司 大塚 明香 今田 俊明 クール パトリシア N. メロツォフ アンドリュー N.
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

骨導(骨伝導)で呈示された超音波であれば,聴覚健常者はもとより,最重度難聴者にも知覚される.この骨導超音波知覚の末梢処理過程には,通常の聴覚とは異なる特異なメカニズムの存在が示唆されるが,その詳細は明らかにされていない.本提案課題では,骨導超音波知覚を利用した重度難聴者のための新型補聴器(骨導超音波補聴器)の開発に有用な知見の獲得を目指して,骨導超音波知覚メカニズムの全体像の解明に取り組んだ.聴覚末梢機能を反映する各種の生理反応の計測および骨導超音波の頭部内伝搬特性結果に基づき,骨導超音波知覚の末梢~中枢処理モデルを提案した.得られた知見は骨導超音波補聴器の最適化や適用基準の策定に有用である.
著者
関谷 昇
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2023-04-01

本研究は、プロテスタントの拠点であった東フリースラントのエムデン(神聖ローマ帝国北西部)で活躍したヨハネス・アルトジウス(1557-1638)の政治思想を本格的に考察するものである。彼は、宿敵ボダンとは異なる新たな主権論の軸に、水平的・重層的・分権的な政治秩序を構想していた。そこには、アリストテレスやローマ法の受容、中世団体論の影響が色濃く見られ、絶対主権の支配ではなく、主権者(立法者)と統治者(執行者)との双方向的な関係のダイナミズムが見出される。究極的な価値対立の時代において、いかなる政治を通じて共生の秩序を具現化しようとしたのか、主権国家のオルタナティヴとして、その核心に迫る。
著者
米倉 修二
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

舌下免疫療法(SLIT)を施行していない薬物療法の症例と比較すると、スギ花粉飛散期およびヒノキ花粉飛散期において、いずれもSLITを施行した群の方が症状薬物スコアは低値を示していた。花粉飛散期前後の採血から抽出した末梢血単核球をスギ花粉抗原で刺激し2型サイトカイン産生量の比較を行うと、薬物療法群に比較してSLIT群では有意にサイトカイン産生量の上昇を抑制していた。同様にヒノキ花粉抗原で刺激した場合でも2型サイトカインの抑制を認めたが、スギ花粉刺激時より抑制の程度は少なかった。スギ花粉とヒノキ花粉は共通抗原をもつが、Cha 0 3などヒノキ花粉特有の抗原の影響が示唆された結果であった。
著者
永岡 紗和子
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、自閉スペクトラム傾向の高い若年層向けの強迫性障害の心理教育について描いた漫画を作成し、テキストによる心理教育との効果の比較を試みた。大学生56名を対象に質問紙調査を実施した結果、自閉スペクトラム傾向の高群は、テキストよりも漫画での心理教育の方が治療を理解しやすいと評価する傾向が示された。また、テキストのみの心理教育では、自閉スペクトラム傾向の高群は低群よりも理解度が下がる傾向が示された。これらのことから、自閉スペクトラム傾向の高い若者にとっては、治療を視覚的にイメージしやすい漫画での心理教育が、治療の理解を向上させる可能性があると考えられる。
著者
菅原 路子
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

リンパ浮腫は,皮下組織へのリンパ液滞留により四肢に強いむくみをきたす疾患である.現時点において病態メカニズムは不明であり,完治を目指すための指針はない.リンパ浮腫患者の皮下脂肪組織は,肥大化かつ繊維化することが報告されており,それに伴う細胞外基質の弾性特性の変化がリンパ浮腫病態に及ぼす影響を考慮することも重要である.しかし,以上の複合的要因を考慮したリンパ浮腫の病態メカニズム解明への取り組みは皆無である.そこで本研究では,リンパ浮腫組織を模した化学環境および力学環境を考慮し,皮下脂肪組織の肥大化・繊維化メカニズムを解明する.さらには,リンパ浮腫完治のための指針を確立することを目指す.
著者
竹内 清己
出版者
千葉大学
雑誌
語文論叢 (ISSN:03857980)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.22-36, 1975-05-31
著者
塚田 武志 末永 幸平 海野 広志 関山 太朗
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究では,近年著しい発展を遂げている機械学習技術を数理論理学的な問題に応用して,高効率な演繹的推論エンジンを構成することを目指す.機械学習技術は画像認識やゲームAIを含む様々な分野で著しい成功を遂げているが,証明などの演繹的推論が関わる分野には未だに古典的な演繹的推論技術が機械学習技術に優位である問題が多い.これまでの研究では解きたい問題を直接解く機械学習モデルを作る End-to-End の方法が主流であったが,本研究では解きたい問題ではなく機械学習に適した問題を学習させて,学習結果を演繹的推論エンジンで活用する.
著者
石橋 みゆき 吉田 千文 樋口 キエ子 丸谷 美紀 伊藤 隆子 雨宮 有子 諏訪部 高江 神谷 明美 平野 和恵 林 弥生 木暮 みどり
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究の目的は、療養の場の移行支援の構築を目指し、退院支援に係る看護技術を体系化することである。計26病院に勤務する協働して退院支援を実施している関係にある看護師ら計48名へ半構成インタビューを実施し、先行研究の枠組みを基盤に内容を分類・統合し計21の退院支援技術が明らかとなった。退院支援に係る21の看護技術は、#0本人の意向を見極めセルフケア能力を高める、#1家族への支援と家族との協働、#2医療福祉専門職との連携と協働、#3退院支援体制発展に向けたシステム構築という4段階で体系化でき、個への支援(ミクロ)から地域への貢献を意図した支援(マクロ)に向かって拡大する方向であると考えられた。
著者
篠原 彩子
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究の目的は、『全身麻酔覚醒時高炭酸ガス血症に維持された患者では、リドカイン静脈内投与が覚醒前咳反射を抑制する』という研究仮説を、二重盲検によるランダム化比較試験で科学的に検証することである。高炭酸ガス血症もリドカインも気道反射抑制作用が報告されているが、それぞれ単独では抜管直前の咳反射抑制効果は臨床的に求められるレベルではない。両者の相乗効果を抜管時の咳反射抑制効果として活用する。咳反射は、より重篤な呼吸循環合併症や再出血などの手術治療への悪影響を及ぼす。本研究は今後の抜管ガイドラインの科学的エビデンスを提供し、全身麻酔覚醒時の安全性向上のために大きく貢献することが期待できる。
著者
小暮 紀行
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、ヒカゲノカズラ科リコポジウム属植物とヒガンバナ科植物に含有されるアセチルコリンエステラーゼ阻害活性を有するアルカロイドにターゲットを絞り、その単離・構造決定と全合成研究を行なった。その結果、数多くの新規アルカロイドを単離・構造決定するとともに、これまでに当研究室にて単離された数種の新規アルカロイドの全合成を達成した。