著者
伊藤 寿 市ノ木山 浩道
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.329-333, 2005-09-15
被引用文献数
5 8

三重県で栽培されているニホンナシ'幸水'の生育相および果実糖度の年次変化と気象要因との関係を解析した.データを解析した1981年から2004年までの24年間で, 年平均気温は1年間に約0.07℃の割合で上昇していた.気温の上昇は, 9月から2月の間で大きかった.自発休眠覚醒期の推定値は, 1年間に0.49日の割合で遅くなった.満開期は年々早くなっており, その程度は1年間で0.37日であった.満開期は, 2月上旬から4月中旬の旬平均気温と負の相関を示し, これらの旬平均気温の中には年次と正の相関を示すものがあった.収穫最盛期は, 満開期と正の相関を示し, また, 1年間に0.32日の割合で早くなった.果実生育期間の長さの年次変動には傾向は認められなかった.これらのことより, '幸水'の生育相は, 地球温暖化の影響を受けていると推察された.一方, 果実糖度は, 7月中旬から8月中旬の旬平均気温および日射量と正の相関を示し, 7月下旬から8月上旬の降水量と負の相関を示した.しかし, 果実糖度と年次との間には相関が認められなかった.
著者
文室 政彦 上田 和幸 沖嶋 秀史
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.364-372, 1999-03-15
被引用文献数
4 6

1995年に, 被覆条件下の根域制限ベッド(培地量160 liter/樹)に植栽した5年生ニホンナシ'幸水'と'豊水'を供試し, 乾物生産および分配の季節的変化を検討した.11月初旬の1樹当たり全樹体新鮮重は, '幸水'が約18 kg(82t/ha), '豊水'が約21 kg(96 t/ha)であった.収量は'豊水'が'幸水'より多かった.2品種とも生育が進むにつれて, 器官別乾物増加量が有意に増加し, 1年間の1樹当たり乾物生産量は, '幸水'が約3.37 kg(15 t/ha), '豊水'が約3.75 kg(17 t/ha)であった.単位葉乾物重当たりおよび単位葉面積当たり乾物生産量は, 生育が進むにつれて有意に増加した.1年間の単位葉乾物重当たり乾物生産量は, '幸水'が約6.33 kg・kg^<-1>, '豊水'が約6.59 kg・kg^<-1>, 1年間の単位葉面積当たり乾物生産量は, '幸水'が0.54 kg・m^<-2>, '豊水'が0.53 kg・m^<-2>で, いずれも品種間差異はなかった.2品種とも生育初期には, 新梢, 葉および細根への分配率が高く, 果実肥大期には果実への分配率が高かった.収穫後は旧枝への分配率が増加した.1年間の乾物分配率については, 品種間差異はなく, 果実に31%前後, 新梢に18%前後, 旧枝に16%程度, 葉に15%程度, 台木部に19%前後であった.2品種とも1日間の単位葉乾物重当たり乾物生産量は生育初期から9月初旬まで高く, その後は徐々に低下した.1日間の単位葉面積当たり乾物生産量も7月初旬から8月初旬まで最も高く, その後は徐々に低下した.'幸水'では1年間の乾物生産量が7月初旬までに42%, 9月初旬までに79%, '豊水'ではそれぞれ44%, 85%が生産された.
著者
大川 克哉 小原 均 栗田 由紀 福田 達也 Khan Zaheer Ulla 松井 弘之
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.129-134, 2006-03-15
被引用文献数
1

ジャスモン酸誘導体であるn-propyl dihydrojasmonate (PDJ)のニホンナシ'豊水'に対する摘果効果とその作用機構について調査した.1996年には,満開17日前,12日前,満開日および満開7日後の4時期に500,1000および2000ppm PDJを,1998年には満開18日および14日前の2時期に500および750ppm PDJを花そうに散布処理した.PDJ処理は落果を誘起し,摘果効果を示した.その摘果効果は処理時期が早いほど,また処理濃度が高いほど高く,500〜750ppmの濃度で満開17〜18日前に処理すると適度な摘果効果が得られた.これらのPDJを処理した果そうでは,果そうあたりの着果数が0〜2果の果そうの割合が約64%となり,無処理果そうの16%と比べて著しく高くなった.さらに,落下した果実の花序軸上の位置についてみると,PDJを処理した果そうでは,基部から1〜3番目の果実が落下しやすい傾向があり,特に1および2番目の果実では約90%の果そうで落下が認められた.果重,果肉硬度,糖度および酸含量には処理間で大きな差は認められなかった.花柱内での花粉管伸長はPDJ処理花と無処理花とで差は認められなかったものの,満開時における胚珠の発育状態について観察したところ,PDJ処理花では胚のうが萎縮した異常な胚珠が多く認められた.これらのことから,PDJはニホンナシ'豊水'に対して開花前に処理すると高い摘果効果を示すことが明らかとなり,摘果剤として実際栽培で利用できる可能性が示唆された.また,PDJが落果を誘起する原因は,胚珠の正常な発育を阻害することによる受精阻害に起因するものと考えられた.
著者
菊地 郁 金山 喜則 若本 由加里 金浜 耕基
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.446-448, 2000-07-15
被引用文献数
3 7

デルフィニウムの抽だいと花序の品質に及ぼす苗齢の影響を調べるため, 展開葉数2&acd;3, 4&acd;5, 6&acd;7枚の苗を, 8および24時間日長下で栽培した.抽だいまでの日数は長日下で短くなったが, 苗齢による一定の傾向はみられなかった.小花数は, 長日下では展開葉数2&acd;3枚の苗を用いた場合, 20花程度と少なかった.一方, 短日下での小花数は苗齢にかかわらず40あるいはそれ以上となった.次に, 抽だいおよび花序の品質に及ぼす温度と日長の組み合わせ処理の影響を調べた.温度・日長処理は昼温/夜温が24/19および17/12℃に設定されたファイトトロン内で, 8&acd;24時間日長下において18週間行った.抽だいと開花までの期間, 抽だい時の葉数はいずれの温度区においても短日下で増加したが, 日長の影響は24/19℃に比べて17/12℃において著しかった.24/19℃では16時間以上の日長下で抽だい率が100%に達した.一方, 17/12℃では16時間日長による抽だい率は50%にとどまったが, 20時間以上の長日下では100%に達した.16&acd;20時間の日長下で, 小花数においては日長の影響は小さかったが, いずれの日長でも24/19℃に比べて17/12℃で多かった.
著者
上田 悦範 池田 英男 今堀 義洋
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.446-452, 1998-05-15
被引用文献数
5 1

夏季および冬季に養液栽培(Nutrient Film Technique : NFT)されたホウレンソウの品質および貯蔵性を調べた.1. 温暖地の高温期においてもホウレンソウの高温条件に適応する品種を選ぶことと, 培養液温度を冷却すること等により十分な生長が期待できた.2. 夏・冬季栽培ホウレンソウの収穫時のアスコルビン酸含量, クロロフィル含量とも差異はなかった.3. 貯蔵中(8℃)の外観よりみた鮮度の低下は夏季と冬季に栽培したものの間に差異はなく, 貯蔵12日程度で商品性の限界に達した.貯蔵中のアスコルビン酸含量は冬季で栽培されたものでは鮮度低下や, クロロフィルの損失に伴って徐々に低下するが, 夏季のものの貯蔵中のアスコルビン酸含量は鮮度低下よりも速く, 短期間(5日以内)に低含量になった.
著者
張 偉 深井 誠一 五井 正憲
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.347-351, 1998-05-15
被引用文献数
3 1

日本産野生ギク7種(キクタニギク, シマカンギク, リュウノウギク, サツマノギク, アシズリノジギク, イソギク, ナカガワノギク)について頭状花序の分化・発達過程を走査型電子顕微鏡で観察した.頭状花序の分化は, 未分化, ドーム形成, 総包形成前期・後期, 小花原基形成前期・後期, 花冠形成前期・中期・後期の9段階に区別できた.頭状花序の分化時期, 発達スピードおよび開花時期は種によって異なった.筒状花の発達過程において, 雄ずいの分化前に花筒が閉じる種と分化後に花筒が閉じる種が見られた.
著者
矢羽田 第二郎 野方 仁
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.987-992, 1999-09-15
被引用文献数
3 6

イチジク果実の糖含量と糖組成比について, 秋果および夏果の品種間差異, 果実の部位, 結果節位による相違を検討し, 以下の結果を得た.1. 供試した普通型10品種の秋果と, サンペドロ型3品種および普通型1品種の夏果のすべてで, 小果の全糖含量に占める果糖, ブドウ糖の合計値の割合が90&acd;95%以上に達し, ショ糖の割合は低かった.しかし, 糖組成比の品種間差異はショ糖で顕著に認められた.2. '桝井ドーフィン'と'蓬莱柿'の秋果では, 成熟期に小果, 果托の果糖, ブドウ糖含量が急増するとともに, 全糖含量に占めるブドウ糖の割合が低下して果糖の割合が高まった.収穫期における糖組成比は, 両品種とも小果, 果托の間に有意な差がなかった.3. 小果, 果托の重量は, 収穫前の約2週間で急激に増加し, その際, '桝井ドーフィン'は果托, '蓬莱柿'は小果の重量が大きくなった.小果, 果托の重量から換算した部位別の糖含量は成熟期に急増し, とくに小果の重量が大きくなった'蓬莱柿'では, 小果の各組成糖の含量が果托に比べて顕著に多くなった.4. '桝井ドーフィン'と'蓬莱柿'の秋果では, 結果節位が高い果実で, 小果の全糖に占めるショ糖の割合が高くなった.結果節位の上昇に伴う糖組成比の変化には, 秋季の気温低下が影響していると考えられた.
著者
二宮 千登志 高野 恵子 笹岡 伸仁
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.417-423, 2007-07-15

周年生産されているグロリオサの塊茎肥大と休眠の様相を把握するため,12月2日,4月3日,7月3日にそれぞれ'ミサトレッド','トロピカルレッド'および'ローズクイーン'を定植し,新塊茎の肥大と休眠の推移を調査した.その結果,新塊茎は7月に定植して栽培した場合に最も短期間で肥大し,12月に定植して栽培した場合には肥大が緩慢であった.しかし,4月や7月に定植した場合には二次肥大塊茎が生じ,特に'トロピカルレッド'や'ローズクイーン'で多かった.新塊茎の休眠は,12月に定植した場合には品種にかかわらず,定植後徐々に休眠が深まり,開花期前後に最も深くなった後,再び浅くなった.しかし,4月や7月に定植した場合には,'トロピカルレッド'では開花期頃に深くなった休眠が時間の経過とともにさらに深くなり,'ローズクイーン'では開花期頃に深くなった休眠がその後の立毛中により深くなったり,浅くなったりと一定の傾向を示さなかった.
著者
鈴木 誠一 金浜 耕基
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.97-101, 2002-06-15
被引用文献数
2 2

シンテッポウユリを種子親, ヒメサユリを花粉親とした交雑で育成されたユリの新品種'杜の乙女', '杜の精', '杜のロマン'の花芽分化と休眠覚醒の時期について調べた.無加温パイプハウス内で栽培した場合, 新球根の形成時期は三品種とも親球根の開花直前であった.供試した三品種とも, 花芽の分化はヒメサユリと同様に萌芽前の新球根内で開始したが, 花芽の分化開始時期は11月1日頃で, ヒメサユリよりも遅かった.供試した三品種の新球根からの萌芽時期はいずれも12月1日頃で, ヒメサユリよりも早かった.供試した三品種には, 萌芽前の新球根内で花芽が分化するというヒメサユリの特性と休眠が浅いというシンテッポウユリの特性が導入されていた.新球根を掘り上げて昼温20℃/夜温16℃で育てると, 7月3日までに掘り上げた場合に花芽は分化しなかったが, 8月1日以降に掘り上げた場合は花芽を分化した.新球根の休眠は浅く, 11月1日以降には三品種とも萌芽した.
著者
田尾 龍太郎 羽生 剛 山根 久代 杉浦 明
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.595-600, 2002-09-15
被引用文献数
8 12

ウメ(Prunus mume Sieb. et Zucc.)の多くの栽培品種は, 他の多くのバラ科果樹類と同様にS-RNaseの関与する配偶体型の自家不和合性を示す.しかしながら, 中には自家和合性の品種も存在し, これらの品種はいくつかの点で自家不和合性品種に比べて優れている.我々は, 以前の研究で, ウメの自家和合性形質の分子マーカーとして利用可能なS-RNase遺伝子(S_f-RNase遺伝子)を見い出した.今回は, 自家和合性品種である'剣先(S_fS_f)'と自家不和合性品種の'南高(S_1S_7)'のS-RNaseを比較検討することでS_f-RNaseの性質を明確にしようとして, 以下の実験を行った.'剣先(S_fS_f)'と'南高(S_1S_7)'の花柱からcDNAライブラリーを構築し, S_f-, S_1-, およびS_7-RNaseをコードするcDNAをクローニングした.これらcDNAより推定されるS_f-, S_1-, およびS_7-RNaseのアミノ酸配列にはT2/S型RNase特有の2つの活性中心とバラ科植物のS-RNaseに共通してみられる5種類の保存領域が存在した.RNAブロット分析を行ったところ, ウメのS-RNase遺伝子は, 他のPrunus属のS-RNase遺伝子と同様に葉では転写されておらず, 花柱のみで転写されていることが明らかになった.また, '剣先'のS_f-RNase遺伝子と'南高'のS-RNase遺伝子の転写産物量に差異は見いだされなかった.花柱粗抽出液の2次元電気泳動を行ったところ, S_f-RNaseは他のS-RNaseと同様の分子量や等電点, そして免疫学的特性を持つことが示された.本研究の結果は, ウメのS_fハプロタイプの個体の示す自家和合性はS_f-RNase遺伝子に強く連鎖したpollen-S遺伝子の作用によって生じている可能性を示唆するものであろう.
著者
藤岡 唯志 藤田 政良 宮本 芳城
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.117-123, 1999-01-15
被引用文献数
4 8

エンドウの試験管内での世代促進技術を開発するため, 種子を無菌は種して培養し, 開花率, 結莢率が高くなる培養容器, 容器の栓, 温度, 照度, 照明時間, 培地成分などの培養条件を明らかにした.1. 試験管内の培養条件においても, エンドウは生育, 開花に関して, ガラス温室で栽培した時と同じ品種特性を示した.早生で短節間である'美笹'など絹さや品種では開花率, 結莢(結実)率がともに100%であったが, 晩生で節間の長い'きしゅううすい'などの品種では, 開花率, 結莢率が低かった.2. 開花率, 結莢率が最も高くなる培養容器と栓は, '美笹', 'きしゅううすい'ともに, φ30×200mm試験管と綿栓であった.3. 25℃で培養した場合, 20℃区に比べて, '美笹'では, 開花および結莢が早くなった.'美笹', 'きしゅううすい'ともに, 10, 000lxの照明は3, 000lxに比べて, 開花率, 結莢率が高く, 開花が早くなった.また, 'きしゅううすい'では24時間照明は16時間に比べて, 開花率が高く, 開花が早く, 結莢率が高くなった.4. 'きしゅううすい'の結莢率が最も高くなる培地組成は, MS培地の窒素濃度が標準, ショ糖濃度が3%, ホルモンはNAA0.5mg・liter^<-1>添加又は無添加であった.5. 'きしゅううすい'の培養において, 培地へわい化剤ウニコナゾール10mg・liter^<-1>やアンシミドール10mg・liter^<-1>を添加することにより, 無添加に比べ, 茎長と節間長が短く, 節数が少なくなった.また, ウニコナゾール添加区は, 開花率, 結莢率が高く, 開花および結莢が早くなった.
著者
土師 岳 八重垣 英明 山口 正己
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.97-104, 2004-03-15
被引用文献数
19

日待ち性が異なる生食用モモ品種について,果実の肥大,成熟および老化の過程を通して果実重,果皮の地色のa値,果肉硬度,糖度,滴定酸音量,エチレン生成量の推移を調査し,熱度の指標の相互関係すなわち成熟特性の差異とエチレン生成特性との関連を検討した.溶質品種の'あかつき','櫛形白桃'および'長沢自派'はいずれも満開後日数の経過とともに果実肥大,地色の抜け,桧皮の上昇,滴定酸音量の低下が進み,特定の日以降収穫によりエチレン生成と軟化が明瞭に促進されるようになった後,樹上でのエチレン生成が認められるようになった.しかしエチレン生成と熱度の指標の進行との間には大きな品種間差異が見出され,'櫛形白桃'は果実肥大の途中で地色が残り,精度が急速に増加する前であってもエチレンを多く生成し軟化が進んだのに対して,軟化が遅延する'長沢自派'では果実肥大と植皮の上昇を終え地色が抜けた後にエチレン生成が始まった.また硬肉品種の'有明'ではエチレン生成と収穫後の軟化が認められず,樹上での果肉硬度は4.0kg前後までしか低下しなかったものの,果実肥大,地色の抜け,糖度の上昇,滴定酸音量の低下は溶質品種と同様に進んでいた.以上の結果から,モモでは果実の軟化特性とともに成熟特性にも大きな品種間差異が認められ,その発現にはエチレン生成開始時期の遺伝的差異が重要な働きをしていると考えられた.
著者
小森 貞男 副島 淳一 工藤 和典 小松 宏光 京谷 英壽 伊藤 祐司 別所 英男 阿部 和幸 古藤田 信博
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.73-82, 1999-01-15
被引用文献数
2 3

前報までに品種との対応のつかなかった(S_Ja, S_Jc), (S_Ja, S_Je), (S_Ja, S_Jf), (S_Jb, S_Jc), (S_Jb, S_Jd), (S_Jb, S_Je), (S_Jb, S_Jf), (S_Jd, S_Je)の各S遺伝子型に対応する品種・系統を選抜するため, 'はつあき', 'レッドゴールド'および'金星'のS遺伝子型の解析, 'はつあき'戻し交雑実生群, 'いわかみ'と'ゴールデン・デリシャス'の交雑実生群, '国光'X'紅玉'の交雑実生群の解析を行った.その結果, 以下に示した15種類のS遺伝子型に対応する品種・系統が決定された.そのうち下線を施した品種・系統のS遺伝子型が本報告で新たに判明したものである.(S_Ja, S_Jb)'ゴールデン・デリシャス' (S_Ja, S_Jc) <(4)-424>___-, <(4)-425>___- (S_Ja, S_Jd) '東光' (S_Ja, S_Je) <'レッドゴールド'>___-, <'金星'>___-, <カロ不明>___-, <レロ18>___- (S_Ja, S_Jf) <(4)-4186>___-, <(4)-4195>___- (S_Jb, S_Jc) <'はつあき'>___-, <盛岡52号>___-, <(4)-511>___- (S_Jb, S_Jd) <(4)-300>___-, <(4)-330>___-, <(4)-725>___-, <(4)-4189>___-, <(4)-4190>___- (S_Jb, S_Je) <(4)-150>___-, <(4)-743>___- (S_Jb, S_Jf) <盛岡53号>___-, <(4)-1>___-, <(4)-6>___-, <(4)-15>___-, <(4)-516>___-, <(4)-4187>___-, <(4)-4270>___-, <(4)-4271>___- (S_Jc, S_Jd) '紅玉', 'ひめかみ' (S_Jc, S_Je)'デリシャス', <(4)-161>___-, <(4)-247>___-, <(4)-267>___- (S_Jc, S_Jf) 'ふじ', <'新光'>___-, <イ-661>___-, <(4)-69>___-, <(4)-104>___- (S_Jd, S_Je) <東北5号>___-, <イ-172>___- (S_Jd, S_Jf)'千秋', 'いわかみ', <イ-687>___- (S_Je, S_Jf) '国光'
著者
松本 省吾 小森 貞男 北原 健太郎 今津 里美 副島 淳一
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.236-241, 1999-03-15
被引用文献数
3 30

リンゴ(Malus x domestica Borkh.) 13品種と'恵'後代10個体のS遺伝子型を, S複対立遺伝子群に特異的なPCR-RFLP解析法により同定した.また, 本解析法により, 'ガラ', 'ふじ'のS遺伝子型を再確認した.'金星'および'きざし'のS遺伝子型は両親から予想されるいずれの遺伝子型とも一致しなかった.'金星', 'きざし'の作出には, それぞれ, S_9, S_3遺伝子をもつ花粉親が用いられた可能性が示唆された.'あかぎ', 'つがる', '陽光'は花粉親が不明であるが, それぞれ, S_7, S_7, S_9遺伝子をもつ花粉親が作出に用いられたと考えられた.自家和合品種'恵'のS遺伝子型はS_2S_9と同定され, 両S遺伝子上に変異は見られなかった.'恵'とS遺伝子型の異なる'千秋'(S_3S_9)の正逆交雑により種子形成が見られたことから, '恵'の雌ずい, 雄ずいともに正常であることが判明した.一方, '恵'と同じS遺伝子型である'レッドゴールド'または'金星'との正逆交雑では全く種子形成が見られなかったことから, これらは, S遺伝子型に基づく不和合性を示したと考えられた.これらの結果から, '恵'の自家和合性はS対立遺伝子群の変異によって獲得されたものではないことが示唆された.
著者
近泉 惣次郎
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.306-311, 2003-07-15
被引用文献数
4 3

'清見'果実のこはん症の発生に及ぼす原因を明らかにすると共にその防止対策を確立する目的で本研究を行った.'清見'の貯蔵中の果実に発生するこはん症は,果実が樹上で受けた日射並びに日照が原因の一つであることを初めて明らかにした.すなわち,収穫時には肉眼的にみて健全な果実であるが,果実が樹上で受けた果面の陽光部に,貯蔵中にこはん症が発生し,日射を受けていない日陰の果実ではその発生がほとんど認められなかった.陽光部の果面温度は同じ果実の日陰部のそれより10℃以上高かった.快晴の日における果実からの蒸数量は陽光却で日陰部の3倍,夜間でも25%も高かった.このことから陽光部の蒸散量とこはん症の発生は密接な関係があるものと思われた.果皮の陽光部と日陰部における無機成分含量には有為な差は認められなかったが,デンプン含量と全糖含量はわずかであるが陽光部のブラベドで高かった.果皮のa^*値およびカロチノイド組成については,こはん症の発生した陽光部でわずかながら高かった.観察の結果,陽光部の果皮表面は滑らかであるが日陰部の果面は油脂と油脂の聞か陥没した粗い果面であり,果面の滑らかな部分に主にこはん症が発生し,果面の粗い果実にはその発生が少なかった.
著者
荒川 修 塩崎 雄之輔 菊池 卓郎
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.297-301, 1999-03-15

リンゴ樹の樹冠内の光条件の測定方法について, 樹冠内の全天光に対する割合を, 照度(lx), 光合成有効光量子束(μmol・m^<-2>・s^<-1>)および日射量(W・m^<-2>)の測定から求め, その違いについて検討した.照度の測定による相対照度と光合成有効光量子束の測定による相対光合成有効光量子束との間には高い正の相関が認められた.しかしながら, 両者の値は明らかに異なり, 相対光合成有効光量子束は相対照度の値に比べて6.0%高かった.このことは, 1日の積算の光合成有効光量子から求めた相対光合成有効光量子と相対照度との関係にも認められ, その差は曇天日で6.7%, 晴れの日で6.8%だった.日射計による1日の積算日射量から求めた相対日射量と相対光合成有効光量子との間にも高い正の相関が認められたが, 相対日射量の値が相対光合成有効光量子の値に比べて11%高かった.
著者
久保田 尚浩 山根 康史 鳥生 幸司
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.467-472, 2002-07-15
被引用文献数
1 4

ブドウ'マスカット・オブ・アレキサンドリア'および'巨峰'の1芽に調整した挿し穂を用いて, 休眠打破に及ぼす数種アリウム属植物のペーストおよび揮発性物質の影響を調査した.5種のアリウム属植物(ニンニク, ニラ, ラッキョウ, タマネギ, ネギ)のペーストを挿し穂の切り口に塗布したところ, 発芽は促されなかった.しかし, 揮発性物質の気浴処理では発芽が促進され, その程度は黄ニラで最も大きく, 次いでニラ, ラッキョウ, ニンニクおよびタマネギの順であった.これら植物の揮発性物質の休眠打破効果は, ニンニク中の休眠打破有効成分である2硫化ジアリルや3硫化ジアリルよりも小さかった.ニンニク, 黄ニラおよびラッキョウを煮沸し, それらの揮発性物質で気浴処理したところ, 発芽は促進されなかった.挿し穂をニンニク, 黄ニラおよびラッキョウの揮発性物質で12時間あるいは24時間気浴処理したところ, 市販のガーリックオイルの揮発性物質と同程度に発芽が促進された.挿し穂をニンニクおよび黄ニラの揮発性物質で, 温度を変えて24時間気浴処理したところ, ニンニクでは高温条件で発芽が促されたが, 黄ニラでは温度の影響は認められなかった.以上のことから, ニラとラッキョウはブドウの芽の休眠打破に有効であること, 休眠打破に有効な物質はニンニクと同様に揮発性であることが明らかとなった.
著者
谷川 毅 高儀 雅俊 一井 眞比古
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.249-251, 2002-03-15
被引用文献数
3 19

タマネギ品種の品種識別並びに品種間の類似度を評価するために, タマネギ22品種を用いてRAPD分析を行った.RAPD分析に100種類のプライマーを供試したところ, 17種類で再現性のある多型バンドが得られた.17種類のプライマーで合計88本の増幅バンドが得られ, その内35本のバンドが多型を示した.数種類のプライマーから得られた多型バンドを組み合わせることにより22品種全てを識別することができた.類似度は, 0.836-0.979の範囲であり, 品種間の遺伝的距離が近いようであった.類似度に基づくデンドログラムでは, タマネギ22品種は大きく6群に分かれた.'スーパーハイゴールド'は他品種と遺伝的に離れていた.各群に含まれる品種の形態的および生態的特性並びに遺伝的背景には一定の傾向は見いだせなかった.一方, 培養細胞からの植物体再分化能が高い品種では欠失し, 低い品種では存在するRAPDマーカーOPD-03-850が得られた.
著者
稲葉 幸雄 家中 達広 畠山 昭嗣 吉田 智彦
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.209-215, 2007-04-15
被引用文献数
1

夜冷短日処理によって8月上旬に頂花房を分化させた苗に対して,継続して夜冷処理を行なうことで頂花房の花芽発育と一次側花房の花芽分化を同時に促進させる育苗法を検討した.頂花房分化後に8日〜10日の夜冷処理中断期間を設けることで,栄養成長が促進され頂花房着花数が増加した.また夜冷処理中に追肥を行うことで一次側花房の花芽分化が促進されることが明らかとなった.本処理方法で一次側花房を分化させた苗を9月上旬に定植することによって,10月上中旬から頂花房の収穫が可能となり,一次側花房も頂花房に引き続き連続的に収穫できることから年内収量が大幅に増加することが明らかとなった.
著者
黄 建成 田辺 賢二 板井 章浩
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.259-264, 2003-12-15
被引用文献数
2

アジアハス(Nelumbo nucifera),アメリカハス(Nelumbo pentapetala)ならびに種間の雑種を含むハス85品種を供試して,品種識別法としてISSRマーカーによるバス品種のDNAフィンガープリントを行った.5種類のISSRプライマ-(UBC811, 818, 840, 855, 857)から品種間の多数なバンドパターンが得られた.黄花色系をもつアメリカパスはアジアハスに比べて独特な多型バンドを示し,または中国からの紅蓮および日本由来の品種も多型バンドが存在することが示唆された.さらに85品種を識別できる最少のISSRプライマーのセットを選んだ.その結果,5種類のプライマーから得られた20本のISSRマーカーを用いて85品種の識別が可能となり,各品種に特異的なDNAフィンガープリントが得られた.