- 著者
-
泉 吉紀
- 出版者
- 富山大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2010
本年度は,多数の遺跡探査(古墳や城郭を対象とした)に取り組み,文化財科学における電磁気調査の発展に力を入れた.まず,富山県砺波市に位置する安川城跡において,城郭の遺構や縄張りの様相を非破壊で探ることを目的に地中レーダ探査を実施した.その結果,主郭の旧地形は高台であり,それらを削平して,現在の平坦面を造成したと考えられる.また,石と見られる反射が得られており,礎石を捉えた可能性がある.三ノ曲輪では,曲輪の形状沿って,土塁状の高まりがあることがわかった.土塁の周囲は,空隙の多い土壌で構成されている可能性が高いことから,盛土を施して平坦面を造成したと考えられる.堀切では,現地形での横断方向,縦断方向それぞれの探査結果に堀と見られる反応が得られ,現地表面から約0.8mに築城時の堀の底があると考えられる.また,古池を対象とした探査では,水による多重反射が得られ,古池を捉えた可能性が高い.今後,分解能の高い500MHzアンテナを用いたレーダ探査や遺物の検知を目的とした磁気探査等の併用による詳細な探査が望まれる.また,雪氷学分野の研究では,融雪型火山泥流の発生機構について実験を行った.積雪地域にある火山が積雪期に噴火した場合,高温の火山噴出物によって融雪型火山泥流が発生する可能性がある.火山噴出物による融雪やその融雪水の積雪への浸透・流下過程は融雪型火山泥流のハザードマップ等を想定する上でも必要であるが,詳細には把握されていない.今回,地中レーダ探査を用いて,その基礎データを取得するため,熱源を積雪表面に置き,融雪過程を把握する実験を行った.実験結果では積雪内部での,融雪水の浸透域が,高精度で検出できた.今後,土壌への水分の移動について研究を進める予定である,