著者
森井 俊廣
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

これまで単なる「捨石」として,斜面表面における雨水浸食防止の役割しか与えられてこなかったリップラップ工に対し,オーバートッピング(堤体越流)に対する水理抵抗機能を開発し,その設計法を明らかにすることを目的とした。リップラップを構成する粗粒礫材を対象に,越流条件下における通水性能と水理学的特性を明らかにするとともに,リップラップ工の基盤となる土砂層の透水性の測定法の開発に取り組んだ。2年度にわたる研究により次の成果を得た。ア)室内水路実験により,締固められた捨石(粗粒材)構造体を通過する流れの水頭損失モデルを明らかにした。このモデルの特徴は,流れの非線形水頭損失特性を記述するパラメータを,粗粒材構造体に分布する間隙の水理学的平均径とユニークに結びつけた点である。これにより,土質材料の浸食によって生じる捨石工の目詰まりとそれに伴う流れの変化を適切に予測することが可能となった。イ)また流量の測定値から上記のパラメータを精度よく推定する数理計算システムを開発した。ウ)リップラップ工の安定性は,礫構造体自体はもちろん,基盤となる土砂層部の安定性と密接な関連性を持つ。後者の侵食性は透水性能に支配されることから,礫混じり土砂の透水性能を原位置で精度良く推定できる透水係数モデルならびに試験法について検討した。2年間にわたる研究とその成果を通して,今後検討を加えていく必要があると考えられる課題が明らかとなった。つまり,(1)流水条件下での礫材個々の粒子安定性に関する力学的・水理学的モデルの開発と設計法への導入,ならびに(2)礫構造体を通過する流れと慣性力を伴う構造体の越流を考慮したThrough+Overflowの数理モデルの開発と設計法への導入の2点である。これらについて,今後,鋭意,検討を進めていく予定である。
著者
荻 美津夫
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

平成21年度は中国甘粛省の炳霊寺石窟、麦積山石窟等において北魏~北周時代の音楽文化資料の調査研究、韓国百済の都扶余等において音楽文化資料調査を行った。平成22年度は遼寧省瀋陽とその周辺における魏晋墓画像磚・壁画等にあらわされた音楽関係資料の調査研究、続いて吉林省集安において、中国の影響を受けた高句麗古墳群に画かれた壁画資料等による音楽関係資料について調査研究し、多くの資料を蒐集した。また韓国慶州・大邱等において、新羅関係の音楽文化の調査研究を行った。平成23年度は中国新彊ウィグル自治区亀茲のキジル(克孜爾石窟)石窟、クムトラ石窟(庫木吐拉石窟)、およびトルファン(吐魯番)のベゼクリク千仏洞(柏孜克里克千仏洞)・アスターナ古墳群(阿斯塔那古墳)等の調査を行い、多くの音楽文化関係資料を蒐集した以上3年間に中国西北部から東北部、朝鮮の旧新羅・百済の存在した地域の調査研究を行い、極めて多くの音楽文化関係資料を蒐集するなどの大きな成果を得た。
著者
山本 正信
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

人間の動作を測定しコンピュータグラフィックス上で再現するシステムは,モーションキャプチャーと呼ばれている.モーションキャプチャーは,ゲームやアニメーションなどでのキャラクタの動作生成,スポーツにおけるトレーニングの評価,リハビリテーションにおける治療の評価など広い領域で使用されている.しかし,それらの多くは人体に特殊な装置を取りつけたり,予めマーカーを貼りつけることが多く,自然な状態で人間の動作を測定することが難しい.そのため,非接触に人間の動作を測定できる装置が望まれている.本研究では,市販のビデオカメラを使用することにより,人体に接触することなく自然な動作を測定する手法を提案した.一つのカメラからでは,人体全体を観測することが難しいため,複数のカメラを使って身体動作を測定するシステムを構成した.このシステムを使って野球の投球動作のような素早い動きの測定に成功した.さらに,この測定システムの応用を試みた.一つは動作認識である.測定した人体全体の運動パラメータを動作の特徴を失うことなく2個に圧縮した.これは動作を2次元平面上に視覚化して表せることを意味し,文字認識の技法を用いて動作の認識を行うことが狩野である.実際,ラジオ体操第1に含まれる9種類の動作の認識に成功した.もう一つの応用は,パフォーマンスアニメーションである.この動作測定装置を組み込んだアニメーションシステムを構成し,代表的な演技を測定し動作データベースを作成した.動作をこのデータベースから引用することによりアニメーションを楽に作成することができる.実際,グリム童話の一つを題材に4分程度のコンピュータアニメーションを楽に作成することができる.実際,グリム童話の一つを題材に4分程度のコンピュータアニメーションを制作した.このシステムでは,キャラクタのモデルを動作の測定とアニメーションの作成に共用しているので,動作データのフォーマット変換が不要である.
著者
井上 誠 山村 健介 山田 好秋
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は、(1)咀嚼に関わる運動神経のプレモーターニューロンの神経生理学的特徴を調べる,(2)咀嚼運動に関わる中枢神経系の制御を受けている顎筋,舌筋,舌骨下筋に注目し,リズム性の顎運動が遂行される際に,これらの運動神経がどのような協調運動を行っているかを調べることであった.麻酔下の動物の大脳皮質咀嚼野を電気刺激してリズム性顎運動を誘発した後に上下歯根膜からの入力の変化が協調運動に与える影響を調べた.これらの結果は,閉口筋とともに,舌牽引筋である茎突舌筋は歯根膜からの入力を受けてその興奮性を高めることにより咀嚼時の顎舌協調運動を維持させて,食塊の形成・維持に関わることが明らかとなった.次に覚醒動物が食物を自由に咀嚼・嚥下するときの顎舌協調について,さまざまな物性をもつ食品を摂取したときの顎筋舌筋,舌骨上筋の筋電図を同時記録することにより評価した.その結果は歯根膜からの刺激が舌筋活動に大きな影響を与える可能性があることを示唆していた,しかし,試験食品のうち,最も硬い食品である生米を用いたときよりも飼料用のペレット咀嚼時のほうが茎突舌筋の活動は大きかった.このことは,顎筋のように歯根膜や閉口筋筋紡錘だけでなく,舌活動に大きな影響を与えている口腔粘膜や舌の受容器などのような他の末梢性入力の可能性が大いに考えられることを示唆している.咀嚼運動に関わると思われる顎口腔顔面領域の運動神経核に投射するプレモーターニューロンの神経生理学的性質を検索した結果では,末梢からの投射を受け,さらに複数の運動核に投射するプレモーターニューロンを見つけることができなかった.このことは,咀嚼運動に関わる制御機構は末梢の入力により変調は受けるものの,その制御は主にプレモーターよりも上の脳幹領域で行われ,それぞれの運動神経に出される指令は独立して行われていることを示唆するものである
著者
佐藤 洋樹 田宮 洋一 伊藤 寛晃 角田 和彦
出版者
新潟大学
雑誌
新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.121, no.7, pp.404-408, 2007-07
被引用文献数
1

症例は18歳,女性.2003年4月18日下腹部痛と嘔吐を主訴に当院受診.下部消化管内視鏡で直腸S状部に巨大な粘膜下血腫を認め,月経に随伴する病態から腸管子宮内膜症と診断した.保存的治療と偽閉経療法にて腫瘤は縮小し経過観察されていた.2005年7月7日下腹部痛と嘔吐が再度出現し7月8日腸閉塞にて入院.肛門縁から10cmに完全狭窄を認めた為,7月12日低位前方切除術施行した.本疾患は狭窄や消化管閉塞を呈し悪性腫瘍との鑑別を要するが,確定診断が困難なことも多い.今回我々は若年者で巨大粘膜下血腫と直腸狭窄を伴った手術例を経験したので報告する.
著者
黒野 弘靖 菊地 成朋 伊藤 裕久
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

日本の伝統的な街路や水路沿いの景観である、上越市高田の「雁木通」、柳川市の「掘割水路」、国分寺市の新田村「並木道」を対象とし、その景観を、住まいと公的空間との間で利用と所有の関係が調整された結果もたらされたものと捉え、それが現在まで持続してきた住み手の側の論理を把握した。屋敷地の利用、建物や樹木の配置に、住居と共用空間の相補関係が表れている。
著者
崎村 建司 夏目 里恵 阿部 学 山崎 真弥 渡辺 雅彦 狩野 方伸
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、グルタミン酸受容体の発現と安定性、さらにシナプスへの移行と除去が細胞の種類や脳部位により異なった様式で調節され、このことが単純な入力を多様な出力に変換し、複雑な神経機能発現の基礎課程となるという作業仮説を証明することである。この解析ために、4種類のAMPA型グルタミン酸受容体、4種類のNMDA型受容体はじめとして複数のfloxed型標的マウスを樹立した。また、GAD67-Creマウスなど幾つかのCreドライバーマウスを樹立した。これらのマウスを交配させ解析した結果、海馬CA3では、GluN2BがシナプスでのNMDA型受容体の機能発現に必須であることを明らかにした。また、小脳TARPγ-2とγ-7がAMPA型受容体の発現に必須であることを見出した。さらに発達期のシナプスにおいて、GluN2AとGluN2Bが異なった様式でAMPA型受容体を抑制することを単一神経細胞でのノックアウトを用いて示した。
著者
宗田 聡
出版者
新潟大学
雑誌
新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.117, no.7, pp.359-366, 2003-07-10

Angiotensin-I変換酵素遺伝子(以下ACE遺伝子と略す)のintron 16における欠失Deletion/挿入Insertion多型(以下D/I多型と略す)については,これまで虚血性心疾患,糖尿病性腎症との関連が報告されて来たが,近年2型糖尿病との関連が報告された.しかしその機序については不明であり,インスリン抵抗性との関連については一定の見解が得られておらず,またインスリン分泌能との関連についても報告がない.そこで今回我々は,2型糖尿病患者63名(男性45名,女性18名)を対象として,ミニマルモデル解析を施行し,ACE遺伝子D/I多型とインスリン抵抗性およびインスリン分泌能との関係を検討した.II,ID,DD型3群間において年齢,BMI,推定糖尿病罹病期間,合併症頻度,平均血圧,HbA1c,空腹時血糖,空腹時インスリン,総コレステロール,中性脂肪,HDL-C,LDL-Cに有意差は認められなかった.インスリン感受性はII群(1.6±1.4×10^<-4>・min^<-1>・μU^<-1>・ml^<-1>),ID群(1.0±0.8×10^<-4>・min^<-1>・μU^<-1>・ml^<-1>),DD群(0.4±0.7×10^<-4>・min^<-1>・μU^<-1>・ml^<-1>)と低下した(p<0.05).一方インスリン分泌能はII群(45.4±91.4μ1/ml)vs DD群(16.7±16.7μ1/ml)(p<0.002)およびID群vs DD群(p<0.001)でDD群が低価であった.DD型は他の遺伝子型より約2倍のACE活性を持つとされ,アンギオテンシン-IIの増加およびブラジキニンの不活性化によって末梢組織血流の低下,ひいてはインスリン抵抗性の増悪に関与すると考えられる.また,アンギオテンシンIIは膵臓の血流を減少させ,ブドウ糖に対するインスリン分泌を遅延させることが知られていることから,DD型においてはアンギオテンシンIIの増加により膵血流量の低下,ひいてはインスリン分泌能の低下をもたらしている事も推測された.
著者
小林 昭三
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

科学概念の形成を効果的に実現する最先端のIT利活用で力学分野、又は圧力・熱分野、等を詳細に記録し分析・検証する授業法を研究開発し、DVD教材集やウェブ資源に集大成して広く普及した。1.抵抗が極小な教材(超軽量台車、スペースワープ機材、ホバークラフト)活用で、運動法則、運動量、エネルギーなどの分野でも効果的な概念形成をするIT based授業を新展開した。2.ドライブレコーダーという装置で車の日常的な運動を記録して位置・速度を風景動画と同期・提示する(エクセル活用も可能)授業モジュールを開発をした。3.GPS装置で多様な運動(飛行機、新幹線、自転車、ランニング等)の3次元位置情報から効果的な速度概念の形成を可能にした。4.無線LANセンサー・PC装置、携帯センサー装置等の先進的IT活用で効果的授業法を開発した。5.空気抵抗や水の粘性抵抗が支配的な「空中や水中での物体の運動」の教材を研究開発した。6.最先端の動画DVDやMeb資源を蓄積し生徒・学生・教員への実習で初中高理科の改善に寄与した。2005PCカンファレンスの実行委員長として「情報教育の課題と展望一アジア諸国と日本」でASPEN韓国NPC・キム教授、前ASPEN議長代理・リー教授の招待講演を企画成功させた。ICPE2005インドでの講演、ICPE2006東京会議(8月13日〜18日)やASPEN香川Workshop(8月10日〜12日)の組織者として講演やワークショップを企画、等で上記諸成果を発表して国際的にアピールし、超軽量台車・紙カップ教材などを国際的に広く普及した。日本物理学会シンポでは「ICPE2006東京会議の報告と世界の物理教育の動向」の招待講演をした。国内外の学会や教育現場の教員研修・研究会や生徒・学生への実習を広く行ない、初・中・高教育における最先端のIT活用理科の新展開と再構築を進めた。
著者
宮坂 道夫 藤野 豊
出版者
新潟大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

ハンセン病問題を「物語的正義」論の観点から再検討することが、本研究の目的である。そのために、(A)資料・文献研究と(B)聞き取り調査を併用しながら、以下の点について理論構築を行った。1)パターナリズムとしての絶対隔離政策、2)患者団体による患者の権利運動の展開とその社会的受容、3)<語り手>としての患者と<聞き手>としての知識人の乖離と責任の所在、4)<伝え手>としてのマスメディアの責任、5)病者に対する社会的な<無関心>と<偏見>の形成と存続、6)医療についての<正義>に求められるべき特質(<語り手><伝え手><聞き手>それぞれの立場の責任、および公正な意思決定の手続きとはいかなるものか)。本年度の実績としては、理論研究と資料研究の双方で順調な成果を見た。研究代表者の宮坂は、単著『ハンセン病重監房の記録』を来年度初め(平成18年4月14日予定)に刊行する予定である。これは、本研究で行った聞き取り調査、資料調査などの結果を盛り込み、特にハンセン病療養所に設けられていた懲罰施設(とりわけ収監者が多数死亡した過酷な懲罰施設であった栗生楽泉園の「重監房」)に焦点を当てて概説したものである。そのような施設において、患者に保障されるべき裁判を受ける機会が与えられず、療養所職員の裁量罰として不当な監禁が行われた実態を明らかにし、さらには、それらがメディアや国会等でいかに論じられ、廃止に至ったかを検証した。患者らは、こうした不当な人権侵害について、戦前から訴え続けていたのだが、保健医療などの専門職、マスメディア、国会議員、および一般国民が、それを聞き入れるまでに長い時間がかかった。共同研究者の藤野は、『近現代日本ハンセン病問題資料集成 補巻』(全8,9巻)を刊行した。これは、『近現代日本ハンセン病問題資料集成 戦前編』(全8巻)および『同 戦後編』(全10巻)に引き続き、ハンセン病問題研究の一次資料の集成であり、この問題を研究する上での重要な基礎的資料となるものと考えられる。
著者
佐藤 亮一
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、地震で崩壊した建築物領域の識別を可能とするために、散乱電力分解法の一つであるNNED(Non-Negative Eigenvalue Decomposition)と偏波回転補正を組み合わせる手法を提案した。PolSARデータの画像解析結果より、提案手法が有効であることを示した。また、NNEDで生じる「余り電力」も、補助指標として有効活用できることも示した。さらに、円偏波相関係数と正規化した相関係数の組み合わせは、積雪時かつ様々な方向に配置された被災住宅の観測に有効であることも明らかにした。
著者
坂井 淳一
出版者
新潟大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

中山間過疎地域の住民の高齢化に伴う作業の容易な転換作物、耕作放棄地への対策として大豆、ヒマワリ、エゴマ、ツバキ等の油料作物の栽培、搾油が試みられている。しかしながら地域住民などが少人数、小規模で活動している場合は、栽培はともかく搾油作業や採れた油の精製、品質管理に問題があり、製品油の成分分析などもほとんど行われていない。本研究は、このような村おこし活動としての小規模、萌芽的な植物油生産活動に関して、有機機器分析によるその製品油の分析を通して、それぞれの油種の特性を確認し、品種、栽培方法、搾油、精製条件等による差異について科学的なデータを提供する事を目的とした。分析は試料として、産地別にのエゴマ8種類(内、市販品1種類)、落花生油2種、ツバキ油(ヤブツバキ系8種類:内市販品4種類、ユキツバキ系:10種類)を用い、搾油法、精製法、保存期間の別に種々の分析を行った。その結果、構成脂肪酸分析(メチルエステル誘導体化法)では、県内産のエゴマ油は心疾患低減効果が謳われているω3脂肪酸であるα-リノレン酸が85%程度含まれ、中国産と思われる市販エゴマ油(80%)より高い価を示した。ツバキ油では本県特産のユキツバキから搾油した雪椿油にもヤブツバキ由来の市販椿油と同程度(80~85%)のオレイン酸(悪玉LDL低減作用)を含有することを確認し、地場産植物油の特性を科学的に確認することができた。この他に吸着剤による精製の有無によるビタミンE(トコフェロール類)の含有量の差異や、原料種子の保存期間、搾油後の保存期間による品質低下の有無について検討を続けている。
著者
高橋 正道
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

白亜紀の花化石の直径はわずかに1mm前後であり、その中の構造を非破壊的に明らかにすることは容易なことではない。被子植物の花化石の内部構造を、Spring-8およびシカゴの大型加速器(APS)のビームライン2-BM-BのマイクロCTによる解析を行った。大型加速器のビームラインで得られた透過データをトモグラフィー法にて、3次元データに再構築した。これらの3次元構築データの解析によって、これまで、花芽の内部に隠れていた各器官の状態を解明することができた。大型加速器は、広視野・高分解能撮影が可能なビームを有し、サイズや形状も多様な白亜紀の花化石の構造解明のために、極めて有効な装置である。その結果、従来は解明できなかった、白亜紀の微小な花や果実の内部の情報を高分解能で明らかにすることができるようになった。これらの研究成果を取りまとめつつ、それぞれの花化石について、研究論文を作成している。
著者
星 勝広
出版者
新潟大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

ホログラム技術は、立体像の記録技術として広く知られているが、視覚を介して強いインパクトを与えることができるため、光技術の教育素材として大変魅力的である。しかし、ホログラム記録用銀塩乾板の入手が困難になったため、代替品として高感度・高解像度フォトポリマー薄膜を開発し、光技術教育への利用可能性について考察を行うこととした。記録材としては、回折効率・解像度に優れたアクリルアミド系フォトポリマー(ポリビニルアルコール[以下、PVA]、アクリルアミド[AA]、トリエタノールアミン[TEA]、メチレンブルー[MB]の混合液)を研究対象とし、各薬品の添加量を変えた混合液を板ガラスに塗布し乾板を作製した。記録方法は、レーザビーム(He-Neレーザ:出力10mW)をハーフミラーで2本に分け乾板面のある一点で干渉させ位相型ホログラム記録した。測定は、シャッターをコンピュータ制御し、露光開始から5s毎に干渉部からの回折光強度を測定し300sまで行った。また、レーザ光の強度・乾板面に対するレーザ光の入射角(対乾板面法線)等を変え同様の測定を行った。結果、薬剤分量として重量比10%のPVA水溶液100mlに対しAA(7.11g)、TEA(14.92g)、MB(9mg)で最大回折効率80%以上を達成した。また、露光条件としてレーザ光強度15mWで露光時間5s、光の入射角10~30°で露光時間が短く高回折効率が得られた。これらの結果を元に、過去に行っていたホログラム記録用光学系を用い物体の記録を行った結果、観察可能な再生像が得られ、光技術教育への利用可能性が確認できた。また、記録像の観察時、乾板がほぼ透明で膜表面が滑らかなこともあり乾板表面の反射光や乾板背後からの背景光が意外と気になり、再生像が観察しづらいことも分かった。
著者
皆川 昌広 黒崎 功
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

Auto-Fluorescence Imaging(AFI)は表層型の腫瘍描出に有効であることがわかった.特に血流の多い肝臓に関してはよいコントラストが得られることより,肝硬変など表面凹凸の強く腫瘍の触知が難しい臓器に対する鏡視下手術において有用な技術であることを確認できた.また,fluoroscein sodiumと呼ばれる蛍光剤を使うと,肝胆膵においける細径の脈管部を強く蛍光させることが可能であり,このシステムを使った術中ナビゲーションの可能性を示唆できた.
著者
伊藤 龍史
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、先進国諸企業による国境をまたいだアウトソーシング、すなわちオフショア化を分析するものである。具体的には、日本企業によるオフショア化を戦略レベルで検討し、その成否について分析した。本研究から得られた知見は以下の通りである。すなわち、企業のオフショア化戦略が、市民権を得ていないようなオフショア化の仕方に先鞭をつけようとしつつ策定され、その実行においては市民権を得ている仕方をとる場合には、オフショア化は成功的となる。
著者
中村 哲也
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

民法の展開は、杜会における人々の行動様式及び規範意識の変化を基礎にするものであり、法形成は常に変動のなかにある。明治31年施行の民法典においては、財産法と家族(制度の)法の2本柱の下、個人の存在は財産主体(妻は制限的行為無能力)としての意味が中心であった。第2次大戦後の「個人」の進出は、財産主体たる地位にとどまらない個人の意義の承認・拡大を要請するものであった。しかしこのことは財産・市場と個人、家族と個人の関係の緊張のなかにあることによって、人格権・人格的利益の単線的拡大を意味するものでないとくに、大量生産・大量消費社会を押し進めてきた技術革新が情報及び医療分野で飛躍的展開を果たしてきていることによって、個人がその成果を享受するというだけでなく、人格の商品化に拍車がかり、そのことによって、個人と市場との緊張関係が新たな段階を迎えることになった。本研究はこの現象の損害賠償法での現れを、情報と医療それぞれにおける具体的問題を手がかりとして観察し、民法における人格保護の今後の方向を検討しようとしたものである。本研究は次の内容からなる。第1部人格権侵害と損害賠償法第2部Wrongful life訴訟にみる損害賠償法第3部補論(1)遺伝子組換え作物問題とドイツイミッシオーン法補論(2)末期がんの家族等への告知と個人の尊厳
著者
田中 恵子 辻 省次
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

腫瘍隨伴性神経症候群のなかで、抗Hu・抗Yo抗体などの特異な抗体を有する群は、臨床像・拝啓腫瘍に一定の特徴を有し、自己抗体が患者の腫瘍と病変神経組織を共通に認識するなどの特徴から、抗体による神経組織障害機序が考えられている.我々はこれまで、これらの自己抗体を用いて様々な方法で動物モデルの作製を試みたが、抗体による組織障害は惹起できなかった.そこで細胞障害性T細胞(cytotoxic T cell:CTL)が関与する病態機序の可能性を考え、抗Hu抗体を有する患者の抹梢血を用いてCTL活性を検討した.標的細胞を患者自身から得た線維芽細胞とし、線維芽細胞のclass 1分子を利用し、HuDのrecombinant蛋白をmicroinjectionにより線維芽細胞の細胞質に注入することによりHu抗原分子断片を呈示させ、CTLの標的とした.同一患者から採取しIL-2下で培養した抹梢血リンパ球と共培養した結果、80%の線維芽細胞が消失した.この結果は、本症の組織障害にCTLが関与している可能性が推定された.一方、抗原分子のペプチド構造を明らかにするため、患者のHLA型を解析し、多くの例で共通であったA11分子をaffinity chromatographyにより精製し、HPLCで分取した後そのアミノ酸配列を決定した.今後この中から使用頻度の高いペプチドモチーフを調べ、Hu蛋白のアミノ酸配列との比較により、リンパ球の抗原決定基を推定する.