著者
辻 照彦
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

『ハムレット』の3種類のテキストのうち、Second Quarto (Q2)とFirst Folio (F)の間に見られる3行を超えるパッセージの異同に注目し、異同発生メカニズムの解明を試みた。First Quartoも含めたテキストの詳細な比較分析の結果、Fのみに見られるパッセージはFolioへの新たな加筆ではなく、Q2の基になったマニュスクリプトに存在していた可能性が高いこと、そして、現在までに提出されてきた作者改訂説は、シェイクスピアがQ2をFのように改訂したと考えられるほど説得的でないことを明らかにすることができた。
著者
宮崎 裕助
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、当該研究者がこれまで独自に練り上げてきたテレコミュニケーション概念の視点から、その民主主義論の討議倫理的な可能性を解明し、デリダの民主主義概念の系譜学の意義を提示することができた。
著者
落合 秋人
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

研究代表者は近年、イネの種子から歯周病菌の増殖阻害に関与する2種類のタンパク質成分OsHsp70N (Hsp70ホモログ)とAmyI-1 (α-アミラーゼ)を見出した。本研究課題では、ヒト病原菌に対するこれらのタンパク質の増殖阻害活性の効果範囲(スペクトル)を明らかにした。また、X線結晶構造解析によりそれぞれのタンパク質の立体構造を決定した。得られた構造生物学的知見と分子間相互作用解析などにより、AmyI-1はグラム陰性菌細胞壁外膜を構成するリポ多糖(LPS)と相互作用することを明らかにするとともに、AmyI-1と可溶性デンプンの分解物が協奏的に作用して歯周病菌の増殖を阻害する可能性を示した。
著者
和泉 薫 遠藤 八十一 小林 俊一
出版者
新潟大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1998

雪崩危険地を多く抱える市町村に残る、地名、言い伝え、伝説、災害体験記録、慰霊碑、山林禁伐の掟など雪崩の災害文化に関しての調査研究を行った結果、平成11年度には次のような知見が得られた。江戸時代から、山林の乱伐によって集落が雪崩に襲われ被害を受けたために、集落背後の森林の伐採を厳しく禁じてきた歴史が各地に残されている。そのような災害文化も長年月経って風化してしまうと禁伐林が伐採され、そのため集落雪崩災害が再び発生していることがわかった。禁伐林の歴史は、雪崩災害発生防止には森林が有効であり、その保存・管理が大切なこと、それを忘れて伐採するといつか雪崩災害が発生することを伝えている。かって雪崩災害で多数の犠牲者が出た日を忌み日として精進したり、その日に犠牲者を弔う「講」を行ったりする行事が各地にあることがわかった。また雪崩に襲われても助かるという謂われから旧暦の11月晦日・12月朔日に団子や餅を食べる年中行事を行っている所があることもわかった。これらの行事の時期は雪崩の危険性が考えられる頃で、昔の人はこうした行事を通して雪崩を意識し警戒を喚起したものと考えられる。雪崩にまつわる伝説も各地に数多く残されており、雪崩の発生場所、雪崩埋没時の対処法、表層雪崩の恐ろしさなどを伝承している。実在の雪崩災害の話に誇張やフィクションを交えて作られたこれらの伝説は、単なる雪崩災害の事実だけよりも興味を引くため代々語り継がれ、人々の災害意識を高めてきたものと考えられる。現代では地域社会が大きく変容し、過去の貴重な災害文化が忘れ去られようとしている。本研究でも、すでに文献上でしか把握できない災害文化も多いことがわかった。こうした雪崩の災害文化を、本研究によって可能なかぎり収集し現状を把握できた意義は大きい。今後は雪崩の災害文化の体系化をさらに進め、雪崩防災・減災のための基礎的情報として活用したいと考えている。
著者
澤村 一
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

議論は知的エージェントに必要な推論機構と通信機構が初めから内在している計算機構であり,社会的知能を計算機上に実現するための有力なメカニズムとなっている.これまでこれを支える理論として Dung による抽象議論フレームワークとその意味論が最も有力視されてきた.しかしながらこ れをハイダーによる社会科学の視点および知見から再考すると,一つの側面からしか議論の正当性,受理可能性を捉えていないことがわかる.本研究では,ハイダーの均衡理論を十分に反映した,新しい議論の受理可能性の概念を探求し,それに基づいて,より精度の高い議論の理論を構築した.さらに,その実装も行なった.
著者
橋本 博文
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

当初企画していた群馬県赤堀茶臼山古墳の家形埴輪群と毒島城遺跡の豪族居館との対応関係の調査・研究は、後者が中世の城館址として伊勢崎市指定遺跡となっているということで残念ながら計画変更せざるを得なくなった。それを承けて、同じ地域圏に存在する今井学校遺跡の豪族居館の発掘をとおして渡来人の存在形態が明らかになった。奈良県極楽寺ヒビキ遺跡と室宮山古墳の家形埴輪のように対応関係がつかめるものが存在する。
著者
金子 友厚
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

歯髄組織再生においては、血管新生も重要な因子と考えられるが、これに関与するバイオマーカーは多数あり、その関与の実態に関する詳細は不明である。そこで、ラット臼歯の歯髄腔内で血管新生関連バイオマーカーが歯髄再生に対して果たす役割を、免疫組織化学、分子生物学的手法を用いて検索したところ、血管内皮細胞増殖因子や線維芽細胞増殖因子が、歯髄組織を速やかに再生するための重要な因子であることがわかった。主な研究成果 第35回日本歯内療法学会ワカイ賞受賞。第140回日本歯科保存学会優秀ポスター賞受賞。
著者
西海 理之
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

以前の研究から、高圧処理による筋肉内コラーゲン並びに結合組織の脆弱化には筋肉内デコリンの分解もしくはコラーゲン線維からの解離が関することを予想し、ウシ骨格筋から実際に単離・精製したデコリン分子の高圧下での立体構造を解析し、高圧処理に伴う筋肉内結合組織の脆弱化との関連性を検討し、以下のようなような結果を得た。(1)高圧処理はデコリンコアタンパク質の分解、GAG鎖の解離及びGAG鎖の分解を引き起こさなかった。(2)高圧下蛍光スペクトル測定及び表面疎水性測定により、400 MPaまでの高圧処理で可逆的にデコリン分子の立体構造が変化した。(3)デコリン分子表面のSH基量は高圧処理に影響されなかった。
著者
Kim Minseok 青柳 貴洋
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では,人体周辺の無線センサネットワーク(BAN)において,複数のセンサから取得した伝搬路の時間変動と人体の状態(動作や姿勢)との関係を実験的に明らかにし,人体の状態を高精度で同定する手法の開発を行った.また,人体の状態と伝搬路の状態との関係性(通信品質を決定する特徴量)を具体化し,人体の状態に応じたコーディネータの送信電力の最適化するコンテキストアウェアネス通信法を開発し評価を行った.具体的な実施内容は次のようである.「伝搬路測定系の構築」,「信号設計と伝搬路測定法の開発」,「伝搬路の時間特性による人体状態の同定法の確立」,「人体状態による伝搬路状態の分類とモデル化」などを実施した.
著者
崎村 建司
出版者
新潟大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2001

胚性幹細胞(ES cell)は、胚盤胞の内部細胞塊を起源とする株化細胞で、多分化能を持ち遺伝子組換えマウスの作成に必須である。現在ノックアウトマウス作成に利用されているES細胞株のほとんどは、株化が容易で生殖系列遺伝するキメラが得やすい129系統由来のものである。しかし、129系統は脳に奇形があり脳の機能解析には不向きであるため、膨大な時間と手間をかけて他の系統のマウスに戻し交配する必要があった。そのため129系統以外の系統由来のES細胞が世界的に求められているが、他のマウス系統由来の高効率で生殖系列遺伝するES細胞株はほとんどないのが現状である。本研究の目的は、様々な系統のマウスからES細胞株を系統的に樹立する方法を開発し、今後の発生工学を利用した研究に供することである。まずC57BL/6系統マウスより再現性良くES細胞株を樹立する方法を確立するために、細胞を採取する胚の培養条件と多分化能を持つ細胞の採取の時期と方法を詳細に検討した。その結果、特定の時期に物理的な方法で内部細胞塊を分離することが、ES細胞株樹立に重要であることが明らかになった。この方法を用いてC57BL/6N由来ES細胞株「RENKA」を樹立することに成功した。さらにこのES細胞株から生殖系列遺伝をするキメラマウスを効率的に作成する方法を検討した。その結果、ES細胞を導入する胚の成長時期と導入するES細胞の数が重要な要素であることが明らかになった。これらの研究成果は、「近交系C57BL/6由来ES細胞株RENKA及びこの細胞を用いたキメラマウス作製法」として特許出願中である。
著者
青柳 かおる
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

現代のムスリムによるイスラームの生命倫理、特に中絶や初期胚に関する議論を分析し、近代以前の伝統的な古典の死生観と比較することにより、古典思想の現代的意義を解明した。
著者
澤村 明 渡辺 登 松井 克浩 杉原 名穂子 北村 順生 加井 雪子 鷲見 英司 中東 雅樹 寺尾 仁 岩佐 明彦 伊藤 亮司 西出 優子
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、新潟県の中山間地域を中心に、条件不利地域での居住の継続に必要な要素のうちソーシャル・キャピタルに焦点を当ててフィールドワークを行なった。対象は十日町地域、村上市三面地域であり、他に前回の基盤研究費Cから継続して観察を続けている村上市高根地区、上越市桑取地区についても蓄積を行なった。十日町地域では2000年来3年ごとに開催されいている「越後妻有大地の芸術祭」のソーシャル・キャピタルへの影響を質問紙調査によって捉えた。その結果は2014年6月に刊行予定の『アートは地域を変えたか』で公表する(慶應義塾大学出版会)。
著者
岩瀬 昭雄 土井 希祐 佐久間 哲哉 吉久 光一
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

本研究では、積雪面上の音響特性を実測調査することを研究の基盤と考え、新潟県南蒲原群下田村において1998年1月と1999年1月の2回に渡り、約50cmと1mの積雪を対象として音響伝搬特性、積雪面の吸音率さらに、積雪中における音響伝搬特性など積雪の音響特性を規定する諸特性の計測実験を行った。積雪面上の2つの音響実験では、自然積雪とカンジキで踏んだ圧雪条件、音源高さとして低い0.3mや1.5mの場合に加え、約4mや6mの場合の伝搬実験も行った。その結果として、積雪面上で肉声で会話することを想定すると、音声帯域(250Hz〜500Hz)は非常に音波が伝わり難いことがわかった。スピーカによる拡声を想定して音源の高さを高く配置した場合の音響伝搬特性は、音声の帯域での幅広い減衰は無くなり全般的に改善されるが、激しい凹凸の含まれる音響伝搬特性であることも判明した。また、積雪条件が整わない春季から秋季の期間には積雪の音響的なアナロジーに着目し、多孔質材料を雪に見立てた1/50縮尺模型実験を実施した。すなわち、1998年度に作製した高電圧発生回路を利用し、放電超音波パルス音源を用い、この音源からの放射音を音源高さと受音点までの距離の組み合わせを様々変えて音響伝搬周波数特性をFFT分析器により観測した。前年度に得られている積雪面上での音響伝搬特性の実測結果の再現を試み、積雪面に対応する構造として目の粗いジュート麻と目の細かいタオル地を重ねて対応可能なことがわかった。また、畳込みによる可聴化による聴取試験でも上記の周波数依存性が確認された。また、積雪の基本的な音響物性値である衰減定数と位相定数も観測でき、単位厚さ当たりのdB減衰値の周波数依存性や低周波で音速が遅く、周波数が高くなるに従って音速が増し、空気中の音速に近づくなどの多孔質材料としての特性が確認された。
著者
猪俣 賢司
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

『ゴジラ』(1954年)に始まる「ゴジラ映画史50年」という“もう一つの文化史”には,成瀬巳喜男,小津安二郎などの戦後日本映画とも連動し,戦前の「帝国」日本と戦後の「敗戦国」日本の連続した昭和史が表象されている。ゴジラは,「東京」と「南洋」を往復する存在であり,(a)ゴジラ映画が描き続けてきた首都東京の歴史的・地理的特質,及び,(b)『モスラ』(1961年)にも痕跡が残されている戦前・戦後の日本と深く係わった「南洋憧憬」(南洋史観)という二つの観点を交差させ,その「帝国の残映」を浮き彫りにすることによって,「郷愁と鎮魂の空間」としてゴジラ映画の描いてきた日本の戦後比較文化史を明らかにした。
著者
錦 仁 志立 正知 渡邉 麻里子 志立 正知 平林 香織
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

これまで和歌は、中央に住む貴族・僧侶・武士の文学として研究されてきた。また、地誌は地理学や民俗学の資料と見なされてきた。この研究では、地誌の中に大量に記載されている和歌に関する記事を分析した。そして、東北地方の藩主や藩士の和歌に対する思想を明らかにした。新しい観点と方法を導入することによって、これまでの和歌研究の常識をくつがえした。
著者
西原 亜矢子 佐山 光子 渡邊 登 小浦方 格
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

研究目的は「新潟大学保健学研究科『GSH(性差保健)研究実践センター』の事業展開過程を継続的に関係者と共同省察することにより、GSH研究・実践を通じた大学の地域貢献事業の意義と課題を三つの観点から抽出することである。結果は以下の通りである。①大学教員が事業参画により、住民ニーズ、研究・教育活動をとらえ直し、専門職集団へ働きかけを行う等、大学研究にも実践的還元が見出せた、②関係機関が蓄積する実践的知識の集約が事業展開に寄与する、③「研究データに基づく説明」「男性の健康問題へのアプローチ」が男女共同参画に寄与する要件となる。
著者
佐藤 貴保
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

11~13世紀に、中国西北部のユーラシア大陸の東西を結ぶ交易路を支配していた西夏王国が実施していた交通制度、特に西夏の公的な使者が所持していた身分証(符牌)の制度について、西夏時代の遺跡から出土した西夏語の文献を用いて研究を行なった。本研究によって、西夏の身分証の制度のいくつかが、前近代の中央ユーラシア諸国家の制度と共通している点があること、またいくつかの制度には西夏独自のものもあることが明らかになった。
著者
丸山 智
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

唾液腺多形性腺腫の間質表現は多彩であるが、乏血管性であることも特徴である。したがって間質をふくめて多形性腺腫組織は低酸素状態であるという仮説をたて、これを証明するために多形性腺腫由来細胞の増殖における低酸素依存性を試験管内で検討した。その結果、多形性腺腫由来細胞では、低酸素下でのHIF-1α蛋白質の高発現およびVHL遺伝子・蛋白質の低発現によりHIF-1αの分解抑制機構がはたらいており、低酸素状態で核移行したHIF-1αによりVEGFの高発現レベルを維持されることが示された。試験管内でえられた以上の結果は、ヌードマウス移植腫瘍組織・ヒト多形性腺腫組織手術材料の生体組織でも追認され、ヌードマウス背部皮下移植腫瘍内酸素分圧は周囲皮下組織に比して有意に低いことも確認された。以上の機序によって、低酸素環境で増殖さらには転移形質が誘導されている可能性が示唆された。
著者
西海 理之
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

高圧処理によって筋肉内結合組織は軟化し、特に筋周膜および筋周膜-筋内膜接合部のコラーゲン線維の脆弱化が明らかになった。また、高圧処理に伴うコラーゲン分子の分解は認められず、コラーゲン分子の会合もしくはコラーゲン細線維同士の接着の解離が示唆された。したがって、高圧処理は、コラーゲン分子を分解するのではなく、コラーゲン分子やコラーゲン細線維の会合状態を脆弱化させ、筋肉内結合組織の軟化に結びつくことが推察された。