著者
江川 賢一
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.39-43, 2017

目的:2016年10月26日に大阪で開催された第75回日本公衆衛生学会総会,日本健康教育学会共催シンポジウム「ヘルスプロモーションのための人材育成:アドボカシー能力をいかに高めるか?」を総括した.<br>内容:神馬征峰氏はヘルスプロモーションにおけるアドボカシーの概念を整理した.国際保健の成功事例から,国際組織と連携した公衆衛生アドボカシー人材育成の重要性を指摘した.春山康夫氏は2015年から実施している日本健康教育学会の研修事例から,学術団体が保健医療スタッフ・研究者のアドボカシースキルの向上を全面的にサポートする必要性を強調した.中村正和氏はわが国のたばこ対策を例に,アドボカシーにつながる政策研究において学術団体,行政および研究者によるPDCAサイクルを通じた人材育成について提言した.盛山正仁氏はバリアフリー法の成功事例を紹介し,健康政策においても研究者や学術団体が積極的に政策提言することが行政府や立法府の認識を変え,政策実現に貢献できる可能性を示唆した.<br>結語:学術団体が連携してアドボカシーへの関心を高め,積極的に政策提言し,公衆衛生分野での研究者,専門職,実践者のアドボカシー能力を高めることが急務である.
著者
江川 賢一
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.39-43, 2017 (Released:2017-02-28)
参考文献数
4
被引用文献数
1

目的:2016年10月26日に大阪で開催された第75回日本公衆衛生学会総会,日本健康教育学会共催シンポジウム「ヘルスプロモーションのための人材育成:アドボカシー能力をいかに高めるか?」を総括した.内容:神馬征峰氏はヘルスプロモーションにおけるアドボカシーの概念を整理した.国際保健の成功事例から,国際組織と連携した公衆衛生アドボカシー人材育成の重要性を指摘した.春山康夫氏は2015年から実施している日本健康教育学会の研修事例から,学術団体が保健医療スタッフ・研究者のアドボカシースキルの向上を全面的にサポートする必要性を強調した.中村正和氏はわが国のたばこ対策を例に,アドボカシーにつながる政策研究において学術団体,行政および研究者によるPDCAサイクルを通じた人材育成について提言した.盛山正仁氏はバリアフリー法の成功事例を紹介し,健康政策においても研究者や学術団体が積極的に政策提言することが行政府や立法府の認識を変え,政策実現に貢献できる可能性を示唆した.結語:学術団体が連携してアドボカシーへの関心を高め,積極的に政策提言し,公衆衛生分野での研究者,専門職,実践者のアドボカシー能力を高めることが急務である.
著者
小澤 千枝 石川 ひろの 加藤 美生 福田 吉治
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.266-277, 2021-08-31 (Released:2021-09-03)
参考文献数
30

目的:「健康無関心層」と呼ばれる集団の特徴を明らかにし,効果的なアプローチを検討することを目指し,健康への関心の概念整理と健康関心度尺度の開発を行った.方法:30~69歳の400名(30代,40代,50代,60代の男女各50名)を対象にインターネット調査による横断研究を実施した.調査項目は先行研究などから選定された健康関心度尺度の候補項目に加えて,健康行動(食習慣,運動習慣,飲酒習慣,喫煙状況)実施の有無などである.解析は構成概念妥当性検証のための探索的および確証的因子分析,再テスト法による一貫性,内的整合性の確認を行った.また,健康行動実施の有無による尺度得点の違いについてt検定を行った.結果:因子分析の結果,3因子,全12項目の尺度となった.各々の因子名は「健康への意識」「健康への意欲」「健康への価値観」とした.また,確証的因子分析において概ね許容できる適合度指標が得られた(GFI=0.932, AGFI=0.896, CFI=0.936, RMSEA=0.079).再テスト信頼性,内的一貫性は,尺度全体,下位尺度とも十分であった.尺度得点と健康行動の有無は,第1, 第2因子で概ね正の関連が見られたが,第3因子ではほとんど関連が見られなかった.結論:健康への関心を多面的な概念として整理し,3因子から成る健康関心度尺度を開発した.今後「健康無関心層」の把握と効果的な教育介入の検討に活用されることが期待される.
著者
喜屋武 享 仲井間 憲志
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.95-101, 2021

<p>目的:本稿では,オンデマンド型ポスター発表形式にて実施した小児疾病に関する大学の授業実践を報告するとともに,その授業評価から本授業形式によって得られる教育効果の特徴を明らかにすることを目的とした.</p><p>活動内容:対象者は,一短期大学で保育士・幼稚園教諭の必修科目である「保育内容 健康」を受講した学生136名(女子学生130名)であった.学修内容として受講者には関心のある小児疾病についてまとめたポスターの作成とプレゼンテーション動画の提出を求めた.本授業形式に関する授業評価として1)発表者からみた本授業形式についての感想,2)聴講者からみた本授業形式についての感想,3)全体的な良かった点,4)手こずったことに関する記述を求めた.潜在ディリクレ分配モデルによるトピックモデルによりその自由記述を解析し,成果と課題を抽出した.</p><p>活動評価:本授業形式の特徴的な成果として,発表に際して補足説明が加えられることや動画の撮り直しができること,動画編集により視覚情報を追加できることなどが抽出された.聴講者として繰り返し学修できることがオンデマンド型ポスター発表の大きな利点であり,知識の定着が見込めることや自己調整学習につながる可能性がある.</p><p>今後の課題:今後の課題として,プレゼンテーションの際の不安や緊張を解消する手立て,機器やソフトウエアの使用方法に関する指導,双方向的な意見交換が可能な環境整備が必要である.</p>
著者
井土 ひろみ 赤松 利恵
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.89-99, 2007

【目的】TPBの枠組みを用い, 中学生における菓子の過食行動に関する心理社会学的要因を検討し, 菓子類の摂取に関する新たな栄養教育の方法を提案する.<BR>【方法】2005年5月下旬から7月末, 東京都内の8つの公立中学校の生徒1, 936人を対象に, 横断的質問紙調査を実施した.質問紙の内容は, 態度, 主観的規範, 行動コントロール感, 行動意図, 行動, 食べ過ぎないための対処法等の項目であった.<BR>【結果】1, 796人から回答を得た (回収率93%) .菓子をよく食べ過ぎる生徒はそうでない生徒に比べ不定愁訴が多かった.TPBに基づく重回帰分析は, 男女ともに態度が行動意図に与える影響が最も大きかった (男子: β=.44, 女子: β=.34) .態度の項目別得点では男女で違いがみられ, 男子の1位は「お金がかかること」, 女子は「太ること」であった.行動コントロール感が高い生徒は, 対処法をよく実施していた.<BR>【考察】心理社会学的要因には性別による違いがいくつかの項目において確認されたことから, 男女の違いを考慮した栄養教育のプログラムの必要性が示唆された.また, 従来の栄養教育は知識伝達型のものが多かったが, 本研究からは, 菓子の過食を防ぐためのスキル教育が提案できた.
著者
福田 洋
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.378-386, 2019-11-30 (Released:2019-11-30)
参考文献数
8

目的:本稿では,2019年4月7日~11日にニュージーランド・ロトルア市で開催された第23回IUHPE国際会議の概要とNPWP(北部西太平洋地域)の動向について紹介する.内容:国際会議のテーマは「WAIORA: Promoting Planetary Health and Sustainable Development for All(すべての人々に地球規模の健康増進と持続可能な開発を)」で,約1200人(日本からは約40人)が参加した.基調・準基調講演では,健康格差,健康の社会的決定要因,気候変動,世代間の健康,ヘルスリテラシー,デジタル時代のスマートヘルスプロモーションなどが取り上げられた.シンポジウムや口演,ポスターに加え,Master Classなどの新しい議論形式も用意された.最終日には「健康の公平性の確保」「都市・居住環境の持続可能な開発」「気候変動への適応戦略」「参画・平和・正義・人権・世代間の健康の平等のための包括的なガバナンス・システム・プロセスを構築」の4つの戦略への行動を呼びかけたロトルア声明が採択された.3年に1度の理事選挙及び地域副会長選挙が行われ,会長にMargaret Barry氏,NPWP地域副会長に神馬征峰氏が選出された.次回2022年はカナダのモントリオールで開催予定である.結語:第23回IUHPE国際会議の概要を報告した.今後も日本からの積極的な情報発信が期待される.
著者
國本 あゆみ 菊永 茂司 岡崎 勘造 天野 勝弘 佐川 和則 新宅 幸憲 積山 敬経 井上 裕美子 成山 公一 山崎 先也 岡本 啓 石井 信子 田子 孝仁 土岡 大介 福田 隆 林 恭輔 小倉 俊郎 東條 光彦 三村 由香里 松枝 睦美 上村 弘子 津島 愛子 加賀 勝 酒向 治子 土井 真由 鈴木 久雄
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.74-84, 2017 (Released:2017-05-31)
参考文献数
35

目的:本研究は大学生男女個々および交互,相互におけるBMIと体型不満の関連について検討することを目的とした.方法:対象は全国14大学に在籍する18-22歳の男性学生4,118名,女性学生2,677名であり,体組成測定およびボディーイメージに関する質問紙調査を用いた横断研究を行った.体組成は健康診断の結果もしくは実測した.結果:対象の平均(SD)BMIは男性21.7(3.3)kg/m2,女性は20.9(2.7)kg/m2であった.BMIが18.5未満の者の割合は男性11.1%,女性14.6%であり,BMIが18.5-24.9の範囲の者の割合は男性76.1%,女性78.9%であった.BMIに対する理想不満度(理想のシルエット-現在のシルエット)と健康不満度(健康的なシルエット-現在のシルエット)の間に男性は交互作用が認められなかったけれども,女性では有意な差が認められた(p<0.001).魅力的な男性のシルエット値は,男女間に有意な差はみられなかった(t=1.231,p=0.218,d=0.04).一方,男性からみた魅力的な女性のシルエット値は平均4.65,女性が思う男性からみた魅力的な女性のシルエット値は平均3.97であり,女性は男性に比べ有意に低い値を示した(t=25.08,p<0.001,d=0.70).結論:女性大学生の考える健康的な体型は理想体型より太い体型であった.魅力的な男性のシルエットは男女間に差がみられなかった.しかしながら,魅力的な女性のシルエットは男性より女性においてより細い体型と考えていることが示唆された.
著者
渡邊 晶子 福田 吉治
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.3-11, 2016 (Released:2016-02-27)
参考文献数
25

目的:行動経済学のヘルスプロモーションおよび疾病予防への応用が期待されている.本研究は,行動経済学の考え方のひとつであるナッジに基づき,ビュッフェ方式の食事における料理の並ぶ順番が食の選択や摂取量に影響を与えるかどうかを検証した.方法:山口大学医学部保健学科学生(男性63名,女性436名)から参加を希望した61名を無作為に2群に割り付け,昼食時にビュッフェ方式の食事(16品目)を提供した.野菜先行群は,手前から順に,生野菜,果実,野菜料理,主食,肉・魚料理と並べた.もう一つの群はこれとは逆の順番とした(肉類先行群).20代の女性54名(野菜先行群27名,肉類先行群27名)を分析対象者として,摂取品目数と摂取数(品目および料理の種類ごとの個数)を比較した.結果:野菜先行群では肉類先行群に比べ,野菜料理(4品目)の品目数が有意に多かった(3.5個対3.0個).また,野菜先行群より肉類先行群は主食以外の品目に占めるタンパク質料理の品目の割合が有意に多かった(30.4%対34.8%).さらに,料理の種類ごとの摂取数については,野菜先行群に比べ,肉類先行群はタンパク質料理の摂取数が有意に多かったが(3.8個対5.4個),野菜先行群が肉類先行群よりも有意に多くの量を摂取した料理の種類はなかった.結論:料理の種類ごとの品目数の比較において,野菜料理を先に並べると野菜料理の摂取品目数が多くなり,逆に肉料理を先に並べるとタンパク質料理の割合が高くなっていた.日本人大学生においても料理の順番は食の選択や摂取量に影響を与えることが示された.
著者
脇本 景子 岡本 希 西岡 伸紀
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.319-329, 2019-11-30 (Released:2019-11-30)
参考文献数
21

目的:本研究は,学校給食の残食に関わる要因として,献立内容,栄養量,気温を取りあげ,主食及び牛乳の残食量との関連を明らかにし,これら要因を変数とした残食推計モデルを得ることを目的とした.方法:兵庫県宝塚市の市立小学校12校(喫食者数は約7,000人)の学校給食の記録(2013~2016年度の593日分)を調査対象とした(横断調査).調査内容は,学校給食の残食量,献立,栄養量,気温である.米飯,パン,牛乳の1人当たりの残食量を従属変数とし,気温,提供時期,給食の提供量及び栄養量,ダミー変数に変換した献立の種類を独立変数として,ステップワイズ法による重回帰分析を行い,関連を検討した.結果:米飯の残食では,気温(.56),炊き込みご飯(-.40),カレー(-.39)等が関連し,調整済み決定係数R2=.62であった.パンの残食では,校内調理パン(-.55),セルフサンド(-.36),気温(.34),加工パン(-.33)等が関連し,R2=.53であった.牛乳の残食では,気温(-.63)が関連し,R2=.39であった.(括弧内 標準化係数β)結論:学校給食の主食の残食は,気温,主食の味付け,喫食方法の工夫と関連していた.牛乳の残食は気温と関連していた.米飯,パン,牛乳の残食量についてそれぞれ約6割,5割,4割の説明力を有する残食推計モデルが得られた.
著者
林 芙美 坂口 景子 小岩井 馨 武見 ゆかり
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.245-258, 2020-11-30 (Released:2020-12-08)
参考文献数
34

目的:児童を対象に食に関する主観的QOL(subjective diet-related quality of life: SDQOL)を用いて食生活の満足度を総合的に評価し,食行動・食態度や児童の食事中に本人や家族がスマートフォン等(以下,スマホ等とする)を使用することがSDQOLとどう関連するかを検討する.方法:研究デザインは横断研究である.2019年3月,埼玉県S市内の公立小学校3校に在籍する5年生全員を対象に自記式質問紙調査を集合法により実施した.当日欠席者等を除く255名(男子114名,女子141名)を解析対象者とした.食行動・食態度およびスマホ等の使用状況別に対象者を4群に分け,クラスカル・ウォリス検定を用いてSDQOLの合計得点を比較した.結果:食行動・食態度が良好で且つ食事中に児童本人や家族のスマホ等の使用がまったくないと回答した児童でSDQOLは高かった.しかし,食行動・食態度が良好であっても,家族がスマホ等を使用することがある児童のSDQOLは低かった.また,児童本人や家族が食事中にスマホ等を使用していても,夕食時に自発的な会話があるなどの食行動が良好な児童のSDQOLは高かった.結論:SDQOLの向上においては,児童の食事中に家族がスマホ等を使用しないこと,また,スマホ等を使用することがあってもコミュニケーションが活発になる環境を整えることが重要であると示唆された.
著者
朴 ソラ 増田 知尋 村越 琢磨 川﨑 弥生 内海 建 木村 敦 小山 慎一 日比野 治雄 日野 明寛 和田 有史
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.100-110, 2014 (Released:2015-01-13)
参考文献数
15

目的:残留農薬に関する知識が十分でない消費者に,適切な残留農薬量の理解を促すためのイラスト表記を開発し,その理解度を検討することを目的とした.方法:大学生および大学院生80人を対象に横断研究を行った.文章のみ,累積正規分布関数のグラフと文章,農薬量を一次元で示したイラストと文章の3種類の説明表記のうちどれか1種類を添付した質問紙を配布した.回答は,無毒性量,一日摂取許容量,残留農薬基準の3段階の残留農薬条件以下の農薬が残留している架空の農産物について,安全性に関わる3つの質問項目にビジュアルアナログスケールを用いて評定させた.安全性評価の相対的な大きさが残留農薬量の順序と一致した場合を正答として条件ごとに正答率を算出し,χ2 検定を行った.結果:すべての質問項目で正答率に有意な偏りがみられた(p<0.05).残差分析の結果,「文章+イラスト」条件では正答率が期待値よりも一貫して高かった(59.3~70.4%).一方で,「文章のみ」では正答率は期待値との差はなかった(41.4~55.2%).また,「文章+グラフ」では,どの程度安全であると感じるか,自分が食べようと思うかの質問で期待値よりも正答率が低かった(16.7~33.3%).結論:グラフは残留農薬量の適切な理解を促進しないが,一次元で表したイラストは促進することが示唆された.
著者
奥村 昌子 後藤 ゆり 新井 明日奈 玉城 英彦
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.3-12, 2014

目的:地域の教育行政に大きな影響力を持つ地方議会議員を対象に,彼らの性別役割分業意識からみたジェンダー視点と性教育に対する意識・関心との関連を明らかにすることを目的とした.<br>方法:北海道・市町村議会議員全2,731人を対象として,無記名・自記式質問票を用いて,青少年の健康教育,特に性教育に対する意識と関心および性別役割分業意識について横断調査を実施した(回収率55.9%).性別役割分業意識に関する3項目(「夫は外で働き,妻は家庭を守るべきだ」「男性も身の回りのことや家事をすべきだ」「母親が仕事をもつと小学校入学前の子どもによくない影響を与える」)へ否定的な回答ほど高得点になるように点数化し,ジェンダー視点の指標とした.議員のジェンダー視点から,彼らの性教育に対する意識と関心を性・年齢別に分析した.<br>結果:82.3%の議員(男性81.0%,女性92.7%)は北海道での性教育やエイズ予防活動への関心を示した.男性では,性別役割分業意識に否定的な回答者,すなわちジェンダーに敏感な視点を持つ議員ほど,議会で青少年の健康問題について質問する傾向があり,またコンドームの配布や使用方法の実演など,より実践的な学校保健活動を支持していた.<br>結論:議員のジェンダー視点は,性教育のような健康教育に対する彼らの関心度に影響し,議会での彼らの問題提起にも関連していることが示唆された.
著者
小笠原 佑吏 天野 方一 小川 留奈 福田 吉治
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.34-43, 2020-02-29 (Released:2020-02-29)
参考文献数
27

目的:都内のA国民健康保険組合では,大腸がんの早期発見のため,郵送による便潜血検査を行っているが,受診率は10%未満を推移していた.本研究は,受診率向上のため,どのような健康メッセージが有効であるかを明らかにすることを目的とした.方法:対象は満40歳以上74歳までの組合員とその家族であり,組合の支部を1つのクラスターとして,全26支部を無作為に2群に分け,それぞれの群に異なるリーフレットを添付した便潜血検査キットを配布した.A群のリーフレットは検査の容易さや家計負担などを強調した一方,B群のリーフレットは検査の重要性や健康影響などを強調した.主要評価項目は便潜血検査キットの回収率とした.また,性や年齢などの交絡因子を用いて多変量解析を行った.結果:A群は390人,B群は389人であった.2群間において性,年齢,過去の特定健診受診状況などに違いはなかった.便潜血検査キットは189人から回収された.回収率はA群及びB群で有意な差は認められなかった(A群22.6%,B群26.0%,P=0.278).また,多変量解析においても同様の結果であった.結論:健康メッセージの違いにより大腸がん検診受診率(便潜血検査キット回収率)に違いは認められなかったが,受診率は向上した.適切な健康メッセージを工夫することに加え,手順や方法を見直し,個別受診勧奨・再勧奨することも重要である.
著者
中川 陽子 宮本 信也
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.15-24, 2020-02-29 (Released:2020-02-29)
参考文献数
22

目的:本研究は,母親の「イライラ感」に着目し,子どもが泣いたりぐずったりする負の感情表出に対する母親の不適切な対処行動に影響を及ぼす要因を明らかにすることを目的とした.方法:首都圏の郊外の幼稚園,都市部の幼稚園と保育所の計3施設に在籍する1~6歳の幼児をもつ母親を対象に,2017年4~7月に無記名の自記式質問紙による横断的調査を実施した.回答の得られた687名(回収率57.3%)から無効回答等を除外し,444名を分析対象とした.子どもの育てにくさ,母親の認知様式,特性被援助志向性,被害的認知,イライラ感を点数化し,重回帰分析を行った.結果:子どもの負の感情表出に対する母親の不適切な対処行動に直接的に影響を及ぼす要因は,母親のイライラ感(β=0.32, P<0.001)と子どもの年齢(β=0.18, P<0.001)であった.イライラ感に影響を及ぼす要因は,子どもの育てにくさ(β=0.24, P<0.001)と完璧主義(β=0.17, P=0.001)であった.中でも,被害的認知(β=0.19, P=0.024)と完璧主義(β=0.23, P=0.005)は,イライラ感を高めやすく不適切な対処行動につながりやすいことが明らかになった.結論:母親の認知的要因と不適切な対処行動との間にイライラ感が介在しており,被害的認知及び完璧主義な認知的特性によってイライラ感が高まると,不適切な対処行動につながりやすいことが示唆された.母親がイライラ感を統制できるよう,認知的特性を踏まえた介入方法を検討することが重要である.
著者
高泉 佳苗 原田 和弘 中村 好男
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.197-205, 2013 (Released:2014-09-05)
参考文献数
27
被引用文献数
2

目的:本研究は,健康的な食行動と身体活動を促進するための情報発信において,有用なチャネルを明らかとするために,健康情報源と食行動および身体活動との関連性を検討することを目的とした.方法:社会調査会社の登録モニター898名(平均年齢41.5歳)を対象とし,インターネットによる横断調査を実施した.調査項目は,独立変数として健康情報源,従属変数として食行動および身体活動を調査した.健康情報源と食行動および身体活動との関連は,ロジスティック回帰分析を用い,年齢階層,最終学歴,世帯収入,同居人数を調整して検討した.解析は男女別に行った.結果:「朝食を食べている」という食行動と関連していた健康情報源は,男性において雑誌(OR=1.70,95%CI=1.01-2.86)および家族(OR=1.98,95%CI=1.05-3.73)であった.「バランスの良い食事を食べている」と関連していた健康情報源は,女性において新聞(OR=1.68,95%CI=1.04-2.71)と家族(OR=2.40,95%CI=1.35-4.27)であった.23 Ex(エクササイズ)/週以上の身体活動と関連していた健康情報源は,男性において雑誌(OR=1.77,95%CI=1.07-2.95)とインターネット(OR=1.55,95%CI=1.03-2.35)であった.結論:本研究で得られた結果から,1)食行動の促進に有用なチャネルは,男性では家族と雑誌,女性では家族と新聞であること,2)男性における身体活動の促進には雑誌およびインターネットからの健康情報が有用であることが示唆された.