著者
景山 一郎 栗谷川 幸代
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ドライバの注意低下や脇見運転に対し運転支援システムを考える場合、車両側からドライバの状態監視を行う必要があり、本研究はその可能性検討の立場から実施した。まず台上試験によりドライバの注意の深さおよび認識範囲等に関する検討を行い、動体に対する注意力の範囲低下および注視対象物からの情報獲得により、注意力低下が表れることを示した。次にドライビングシミュレータを用いた実験により、飛び出し等の注意力に対する実験を行った。最後に実車を用いた実験により、注意力低下による影響を同定ドライバモデルのフィードバックパラメータを用いて表現できることを示した。
著者
山田 三郎 大石 敦志 板垣 啓四郎 POAPONGSAKOR ニポン 下渡 敏治 比嘉 輝幸 NIPON Poapon 上原 秀樹
出版者
日本大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

本研究の目的は、近年ダイナミックな経済成長を続けるアジア諸国における「食料システム」の変化を、現地調査に基づいて実証的に比較検討するとともに、アジア全体としての食料需給に関する国際リンケージの進展を明らかにすることにある。「食料システム」とは、人々の食生活を巡る経済諸活動、即ち、(1)多様化し拡大する食料の供給を担う「川上」の農業・水産業、(2)食材をより需要に適する食品に加工しより円滑な流通を図る「川中」の食品加工産業・食品流通業、そして(3)所得向上によって多様化・高度化する「川下」の消費者の食品需要と彼らが望むサービスを提供する外食産業・食品小売業、更に、(4)それらの国内諸活動のそれぞれの段階でますます関わりを高めている海外直接投資・貿易をも包括した全体としての相互関係の全体系を意味する。本年度は、前年度の調査対象国の内のタイ・中国・台湾に、新たにインドネシア・ベトナム・韓国を加え、それぞれの国に於いて食料システムを構成する食料消費動向、食品加工業、食品流通業、外食産業、農業などに関する現地調査を実施した。その結果、2年間にわたる海外現地実態調査によって、アジア諸国の食料システムの実態を全体として把握することが出来た。本研究によってえられた成果の概要は以下の通りである。1.現地調査の結果明らかにされた対象地域での経済発展の進展と食料システムの変化のスピードは、われわれの予想をはるかに上回るもので、外資系ファースト・フードや大型スーパーマーケットの普及の中で、加工食品・外食の消費支出が増大するなど、何れの国の食生活も大きな変化が生じていた。2.しかし、こうした食料消費の変化には各国とも地域的なラグがあり、食料消費の変化は、特に、首都圏や経済活性化中心部(上海・ホ-チミン市等)で著しい。農村部では基本的には自給自足的な食生活ながら、それなりに新飲料の普及など結構加工食品の需要も増え、また、外食化の進行も認められた。3.他方、大都市でも在来的なバザ-ルは依然賑わっており、所得階層間格差を伴いながら、庶民の食生活は旧来のもと新食品の二重構造消費となっている。4.食料需要の増大は、特定の食品についてはアジア諸国での海外からの食料輸入をも増加させており、食料の調達がアジアでもグローバル化している。5.こうした食料需要変化に対して、農業生産、食品加工、食品流通・食料サービス産業などもそれに対応して多元化・多様化するなど大きなインパクトを受けており、特に、都市での加工食品や外食の普及は、食品産業に大きなビジネス・チャンスを与えるなど、食料システムにドラスチックな変化を与えた。6.急速な経済発展の誘引により、アジア諸国に進出する日本その他の国からのアグリビジネスが増加し、それがまた、現地でのさまざまな生産活動への関与を通じて、アジア諸国の食料システムの変革を促しいる面も明かとなった。7.こうしたアジア国内食料需要の変化の外に、日本など海外市場からの加工食品や生鮮野菜輸入需要が強まり、海外向けの食品加工が海外直接投資によって進められている。日本向け食品の場合、手巻海苔あられ・冷凍たこ焼きなど労働集約的な食品の加工生産輸出が各国で著しかった。8.しかし、急激な経済成長と国内外の需要拡大にともない、各国で、少なくとも地域的・時期的に人手不足と良質の原材料不足が深刻化し、雇用のサブコントラクトや食材輸入を促進させている。9.このような食料システムを構成する経済諸活動の変化によって、従来の一国での自己完結的な食料システムから、複数国とのリンケージを強めた国際的食料システムへと大きく変化しつつある。なお、2年間にわたる研究の成果は、「アジアの経済発展と食料システムのダイナムズム」(仮題)として刊行を予定しており、1997年2月にタイの研究分担者ニポン博士も参加して東京開催したワークショップでは、研究分担者達の個別報告をベースにして刊行の内容についても論議され、直ちに全分担者による中間報告論文の推敲と新論文の執筆準備がスタートした。
著者
岡田 智秀 横内 憲久 川田 佳子
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究目的は海岸構造物に依存しない新たな海岸まちづくり方策を導くため、その先進事例である米国ハワイ州の「海岸線セットバックルール」の運用実態や、日本国内の伝統的海岸防災施設の成立要件・土地制度等の分析を通じて、日本型セットバックルールのあり方を導く。本成果としてハワイ主要4島の「海岸線セットバックルール」の制度的特徴,成功・失敗例の要因,促進方策,ハワイ島津波セットバック(KAIKO Project)の実態を明らかにし,当制度のわが国への導入可能性を考究するため,東北被災地の復興まちづくりにおける「海岸線セットバックルール」の適用可能性や,当制度非導入地域における海岸まちづくり方策を導出した.
著者
伴 周一
出版者
日本大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

箱の底面を透明または穴を開け撮影面とし、この箱に書籍を半分開いた状態で保持し、箱上部に取り付けたカメラから1頁を撮影する、アマチュアユーザーでも簡単に使用可能な書籍撮影専用装置を発明した。この方法を用いた箱形書籍デジタルアーカイブ作成用撮影装置の研究を行った。多数の書籍に対応した装置を研究し、アマチュアユーザーによるモニターテストも行った。その結果、この装置は誰でも簡単に多くの書籍のデジタル化が行えることがわかった。またタブレットPC・スマートフォンのカメラ機能やwifi通信機能をもつデジタルカメラを有効活用することで、撮影と同時にデータ処理が行えることがわかった。
著者
高須 俊明 高島 郁夫 上村 清 橋本 信夫 高橋 三雄 土井 陸雄 五十嵐 章 ANWAR Wagar 石井 慶蔵 磯村 思〓 吉川 泰弘 山内 一也 近藤 喜代太郎 YASMEEN Akba MUBINA Agbor AKRAM D.S. SHAISTA Rauf AKHTAR Ahmed AKBANI Yasmeen AGBOATWALLA Mubina AHMED Akhtar RAUF Shaista WAQAR Anwar
出版者
日本大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1988

研究代表者らは、昭和57年度以後の調査研究で、カラチでは亜急性硬化性全脳炎(SSPE)の発生頻度が日本や欧米の大多数国に比べ数十倍以上高く、また血清学的にみて日本脳炎(JE)が疑われる患者が発生していることを知った。この事実に立脚して、今回SSPE多発の要因解析とJE様脳炎の病原研究に取り組んだ。成果の概況としては亜急性硬化性全脳炎(SSPE)については著しい進展があり、特にSSPEおよび麻疹の疫学やウイルス学での成果が目立っている。しかし、日本脳炎(JE)様脳炎については目立った進展は得られなかった。1.パキスタンにおけるSSPE多発の要因解析SSPEは麻疹ウイルスが個体に持続感染している間に生じた変異株が遅発性に脳を侵して起こる疾患である。今回の研究で、パキスタンにおけるその多発の要因は、以下の点でかなり明らかになった。(1)疫学的成果:SSPE患者の麻疹罹患年齢がパキスタンでは日本や欧米の大多数国と異なりearly measles(EM;2歳未満罹患麻疹)0.353、late measles(LM;2歳以上罹患麻疹)のうち5歳未満罹患麻疹(LM5>)0.340、5歳以上罹患麻疹(LM5≦)0.307(いずれも全measlesに対する比率)とLMが大多数を占めているという事実が判明した。これに基づき麻疹罹患年齢層別に計算されたパキスタンにおける麻疹罹患者からのSSPEの発生率は、EMからは308.1×10^<-6>、LM5>からは197.4×10^<-6>、LM5≦からは585.2×10^<-6>、麻疹罹患者全体からは280.2×10^<-6>と推定され、いずれも日本におけるそれぞれの数値に比べ高く、特にLM5>は46倍、LM5≦は296倍と著しく高いことがわかった。一般人口からの麻疹発生率のパキスタン対日本比は麻疹罹患年齢で層別しても高々2倍に留まる。したがって、パキスタンにおけるSSPE多発の最大の理由は、麻疹罹患者からのSSPEの多発、特にlate measlesからの多発にあると考えられた。[高須]第2に、SSPEのcase control studyの結果、患児は対照に比べて生下時体重が低く、出生後頭部外傷やけいれんに罹患している頻度が高い傾向がみられたことから、麻疹罹患前および後の環境因子がSSPEの発生に何らかの役割を果たしている可能性が示唆された
著者
彭 國義 清水 誠二 TRYGGVASON Greater 小熊 靖之 西方 博紀 石﨑 賢至 岡田 邦宏 伊藤 隆之 和久井 彩香
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

福島第一原発など廃炉に決まった原子炉の解体作業に水中構造物の切断工法が不可欠となるが,強力なアブレシブ・サスペンション・ジェット(以下,ASJ)を水中切断に用いた場合,スタンドオフ距離の増加に伴ってその加工能力が急激に衰えることが課題になっている。水中ASJ の性能向上を図るため,本研究では,通気鞘付きノズルを用いて気泡流被覆水中ASJの生成手法を確立し,流れの構造解析および水中切断実験によって通気鞘の寸法と通気流量等の使用条件を検討した。
著者
藁谷 哲也 江口 誠一 竹村 貴人 羽田 麻美 石澤 良明 三輪 悟 宋 苑瑞 梶山 貴弘 比企 祐介 前田 拓志 林 実花 神戸 音々 佐藤 万理映 LOA Mao BORAVY Norng
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では,アンコール遺跡からアンコール・ワット,バンテアイ・クデイ,およびタ・プローム寺院を選定し,寺院を構成する砂岩材のクリープ変形と風化環境を有限要素解析や高密度の熱環境分析をもとに明らかにした。その結果,砂岩柱の基部に見られる凹みの形成には,従来から指摘されていた風化プロセスに加え,構造物の自重による応力集中が関与していることが判明した。また,寺院は日射による蓄熱のため高温化,乾燥化が進み,砂岩材に対する風化インパクトの増大が生じていることが推察された。アンコール遺跡保全のためには,日射を和らげる緑地の緩衝効果を見直すことが必要である。
著者
小泉 寛恭
出版者
日本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本年度は摩耗モデルの構築と各光重合条件の設定をおこない、歯ブラシ摩耗を行った際の経時的変化を解明した。摩耗モデル:前装用硬質レジンに対し精密低速切断機を用いてφ10.0×10.0mmの寸法に調製する。メーカー指示によるものを比較対照として、光強度、照射時間を変化させた試料を作製した。光強度をさらに変化させるために、メーカー指示の光照射器のほかに、メタルハライドランプを使用している多目的光重合器を使用した。照射時間は、上下両面から30,60,90,120,180秒間照射を行った。重合後、レジン表層を耐水研磨紙、アルミナ懸濁液とバフの順で研磨し、実験試料とした。歯ブラシ試験:この摩耗モデルに対し歯ブラシ摩耗試験を行った。摩耗試験条件は、歯ブラシとしてナイロン毛のものを使用し、歯磨材として研磨剤の含有したものを選択し、ストローク式摩耗試験機を用いて、荷重条件2.9N、ストローク幅60mmの条件下で10万回まで行う。摩耗面の測定、観察は1万回ごとに走査型レーザー顕微鏡にて行った。さらに歯ブラシ摩耗後の表面粗さの測定として3次元測定器の使用を検討し、さらに臨床においての歯ブラシ摩耗の現状について報告した。
著者
小笠原 喜康 中里 勝芳
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、科学教育を幼少期から進めるために、科学博物館で教材を貸し出すことを目的としてローンキットを作成し、それを幼稚園・保育所、小学校などで、実践試行して利用を推進するための条件などを検討することを目的として進められた。これを進めたのは、OECDの国際学習到達度調査(PISA)において、日本の子どもたちが科学に全く興味を持っていないことがあげられる。かたやまた、科学博物館をはじめ博物館があまり学校教育に利用されず、「総合的学習の時間」が始まったものの、教師達は十分な教材を準備できずに苦労をしている。そこで本研究では、なるべく早い時期から科学的現象に親しんでもらい、科学館なども利用してもらうきっかけをつくために、科学館内外で利用できる光を題材としたローンキットを作成した。キットは、全体を「杉並ゆめたまご」と命名して、「光のへや」「鏡のへや」「光と影」の三つのキットを作成した。そしてそれを、「杉並科学館」「青砥福祉保育園」「湘南学園小学校」で試行して、その活動を記録して、その開発課題を検討した。キットの試行の結果、年齢の違いによって、この教材へのアプローチに違いがあることは当然であるが、こちらの予想以上に、多くの遊びを考案することがわかった。中でも「カラーシール」は、単にガラスなどに貼って色を楽しむことから、それを様々に重ねて新たな色の光を作りだすことに多くの子どもが挑戦していたのは印象深かった。また予想外に、保育所や小学校の教員達が興味を示し、今後とも使っていきたいという意志を示していたのも収穫であった。しかし同時に、ランプ類の耐久性やテントや局面鏡の設置の問題が見つかった。費用との関係もあるが、もう少し耐久性のあるものを開発したり、修理の道具もキットに含めることが必要であることが了解された。
著者
澤田 充
出版者
日本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では戦前の銀行のデータを用いて、銀行間ネットワークの構造を明らかにし、それがどのようなインプリケーションを持つかについて実証的な観点から検証を行なった。実証分析の結果、戦前期の約半分の銀行が役員兼任を通じて他の銀行とのネットワークを構築しており、銀行間ネットワーク持つ銀行は持たない銀行と比べ、生存確率が高いことが明らかになった。また、銀行間ネットワークの質をネットワーク先の銀行の平均的なパフォーマンスで定義し、銀行間ネットワークの構造としてネットワーク統計量を用いて分析を行なった結果、ネットワークの質は銀行の生存確率に有意な影響を与えているのに対し、ネットワークの構造については銀行の生存確率に強い影響を与えていないことが実証的に確認された。さらに、昭和金融恐慌期のデータを用い、銀行間ネットワークを通じて預金の引き出しが伝播するかについて分析を行なった結果、預金の伝染効果について強い確証は得られなかった。
著者
谷田部 光一
出版者
日本大学
雑誌
政経研究 (ISSN:02874903)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.329-360, 2013-01-20
著者
安福 悠
出版者
日本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

ディオファントス幾何とは多変数多項式の整数解や有理数解について研究する分野で,ボエタ予想はその中での最重要予想の一つである.本研究では,ボエタ予想を射影空間のブローアップ上で新たに証明することに成功した.また,一つの写像を固定し,その多重合成により一つの点がどのように動かされていくか記録したものを軌道と言うが,軌道上の整数点があまりないこと,及び軌道と部分多様体の共通部分には,アーベル多様体の時と異なり規則性が皆無であることを証明した.
著者
大和 雅之
出版者
日本大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

プラスチックやガラスのような可塑性をもたない培養基質上に接着した細胞は、細胞底面のごく限られた部分でのみ基質と接着し、この接着部位は接着斑と呼ばれる。接着斑には、細胞外マトリックスリセプターが濃縮し、細胞骨格としてアクチン線維の末端が繋留する。接着斑には、ビンキュリンやテーリンなどの接着構造を維持するのに必要な分子の他に、情報伝達に関与することが知られているPLC-_γなどの分子群も濃縮している。しかし、生体内ではこのような硬質の接着基質は存在せず、血管内皮などの例外を除いて、接着斑は観察されていない。本研究では生体内で細胞と細胞外マトリックスとの接着構造を検討することを最終目標に、そのモデル系として三次元コラーゲンゲル内培養を用いて、I型コラーゲンと線維芽細胞の間の接着構造について、螢光抗体法により共焦点レーザー走査顕微鏡を用いて検討した。線維芽細胞は、三次元培養系では二次元培養の接着斑のような局所的な接着部位を形成せず、細胞表面全面にわたって接着斑よりも小さなバッチ状の接着部位を作った。ここには、α2β1インテグリンの他、ビンキュリンも濃縮しており、接着構造を構成する分子は、基本的に二次元培養と同一であると思われる。現在、他の構成分子についても検討中である。線維芽細胞は、三次元コラーゲンゲル内で、きわめて細長い紡鐘形をとるが、このときストレスファイバーは細胞長軸に両末端を接続するように並走する。ストレスファイバーとインテグリン、ビンキュリンの共局在は、共焦点レーザー走査顕微鏡の解像度では、観察されなかった。ストレスファイバーよりも微細なアクチン線維の組織化状態との関係については、今後、電子顕微鏡レベルでの検討を加えたい。アクチン線維を断裂させるサイトカラシンを低濃度で培地に添加すると、アクチン線維が断裂するにも関わらず、細胞形態はほとんど変化しない。断裂の結果、アクチン線維はパッチ状に細胞膜直下に観察された。この断裂したアクチン線維のパッチとインテグリン、ビンキュリンの濃縮する接着構造の共局在が認められるかについて現在検討中である。
著者
大和 雅之
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

ラット背部皮膚および人工的に作成した創傷部位について、共焦点レーザー走査顕微鏡を用いて、免疫組織学的検討をおこなった。培養細胞では高度の組織化が観察されるアクチン線維は、正常真皮中に存在する線維芽細胞ではまったく観察されなかった。β1インテグリンは、表皮細胞や毛包細胞では発現していたが、その局在は細胞-基質間接着ではなく細胞-細胞間接着に関与することを強く示唆するものであった。正常真皮中の線維芽細胞ではβ1インテグリンは検出されなかったが、創傷治癒部位の線維芽細胞では、血球系の細胞と共に強く発現していた。創傷治癒部位の線維芽細胞はアクチン線維の組織化も観察された。正常真皮中の線維芽細胞は、大量のコラーゲン線維によって三次元的に覆われているため、抗体が認識するエピトープがインテグリン細胞外ドメインにある場合、コラーゲン線維によるマスキングの可能性を否定できないが、インテグリン細胞質ドメインを認識するポリクローナル抗体を用いても同一の結果がえられたので、マスキングはないと結論した。有限寿命をもつ正常二倍体線維芽細胞を用いた、基質接着部位に濃縮する種々の分子の抗体染色の結果は、これまでに用いられてきた無限寿命をもつNIH3T3やSwiss3T3と同様であった。培養細胞では非常によくその発現を検出できるFAKは、正常組織では、ほとんど検出できなかった。以上の結果は、培養細胞系は、創傷治癒部位の線維芽細胞とは似ているものの、正常真皮中の線維芽細胞とは大きく異なることを示唆している。
著者
高綱 博文
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、戦時期(1937~45年)上海の経済・社会の変容と日本の国策会社・中支那振興株式会社の関連性を歴史的に検証することを目的とする。日本政府により華中地域の占領地開発を目的に、1938年11月に設立された中支那振興株式会社に関する史料を調査・蒐集し、その組織と活動の全容を解明するための以下のような基礎研究を実施した。第一に、中支那振興株式会社に関する史料調査・蒐集を国内外で行い、「中支那振興株式会社関係文献目録」を作成する作業に従事した。第二に、中支那振興株式会社の概要については、「戦時上海の経済・社会変容と中支那振興株式会社に関する基礎的研究」等をまとめた。
著者
小島 智恵子
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、日本とフランスの原子力教育の歴史について比較した。初等・中等教育に関しては、日本が学習指導要領に基づき原子力教育を推進してきたのに対し、フランスでは原子力教育に積極的に関与してこなかった。一方原子力技術者教育に関しては、フランスは原子力庁付属機関の核科学技術研究所にて、半世紀以上徹底した専門家教育を遂行してきた。原子力大国である日本とフランスは、異なったアプローチで原子力教育を行ってきたが、その歴史的背景を分析した。
著者
石部 尚登
出版者
日本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ベルギーにおける「方言」の復権運動には、復権の目標の違いに起因する標準語の形態に対する立場の違いが存在するものの、教育への導入の目標、ICTを利用した活動、さらには公用語政策の影響により、他の地域語・少数言語の復権と同様に「標準語」の必要性が立場の違いを超えて共有されていることを明らかにした。ただし、そこで志向される「標準語」とは、他の地域語・少数言語の復権の場合とは異なり、複数の中心を持つことが可能な、より柔軟かつ寛容な形態であることを示した。
著者
安齋 寛 岩田 隆太郎 砂入 道夫
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

カブトムシ幼虫の腸内細菌叢は、1齢から2齢の間に腸内に定着し、その菌叢は、飼料に含まれる多糖類の種類によって変化し、特異的な菌叢が定着することが推定された。カブトムシ幼虫腸内や糞からは、キシランを分解する細菌が単離された。
著者
西出 利一
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

Petal Effectを示すハフニア薄膜表面の集水性を調べ、それをモデルとして親水-撥水パターン膜をスクリーン印刷法で作製しその集水性を調べた。Petal effectを示すハフニア薄膜(5cm×5cm)の集水性能を水蒸気中で2時間調べたところ、0.47~0.49g集水した。超親水性アルミナ膜と撥水性ハフニア膜を用いて、親水-撥水パターン膜を作製した。この試料の集水性能は0.47gであった。これらは比較(ガラス基板)のそれ(0.23g)の約2倍であり良好な集水性である。これらの膜では水蒸気中の水分が撥水面上から親水点や親水パターンに移動し、水滴がすみやかに形成されて良好な集水性を発現した。