著者
山根 宏彰
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.202, 2015-12-15 (Released:2017-12-15)

病理学的な見地から脳の構造を解明しようという動きは古くから存在していたが,昨今では計算機科学の側面からのアプローチに注目が集まっている.このような背景から,米国では90年代のDecade of the Brainを皮切りにBRAIN Initiative,ヨーロッパではHuman Brain Project,我が国ではBrain/MINDS(革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト)が発足する等,脳機能の解明及び応用に多額の資金及び人的リソースが投入されている.「脳のエンコーディング」は,人間の知覚体験や精神活動を計測可能な脳活動に変換することであり,「脳のデコーディング」は,逆に計測された脳活動から,知覚体験や精神活動の再構築を行うことである.近年では,脳計測技術の進歩が著しい.様々な手法があるが,例えばfMRI(機能的核磁気共鳴画像法)は,脳内における数ミリスケールの直方体(ボクセル)で表現される部位の活性度合いを計測することが可能である.このような進歩に伴い,具体的な目覚ましい成果として,脳情報からの視覚像の再構成,思い浮かべている単語の予測,また夢の解読等が実現されている.ニューラルネットワークが再び脚光を浴びている現在において,視覚情報処理においては,畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いて画像認識を行う手法が普及している.音声認識でもCNNが高い性能を示している.言語処理ではword2vec等のニューラルネットワークを用いて単語ベクトル化を行う手法が提案され,広く用いられてきている.特に,これらの情報を統合した,複数の知覚の統合,マルチモーダル化が急速に進みつつあり,脳情報との統合が今後のトレンドになる可能性がある.ここで構築された柔軟な知識表現は,汎用的人工知能を構築する上で大きな課題であったシンボルグラウンディング問題の一つの解になるとも考えられる.つまり,「りんご」を字面のりんごだけではなく,画像的,触覚的,比喩的感覚を含めた情報までも同時に扱えるようになると期待できる.これにより,美しさ等の形容詞的,主観的で曖昧な感性的な問いに対しても,以前よりクリアな解が得られる可能性がある.
著者
木下 雄一朗 鈴木 圭佑 郷 健太郎
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.987-997, 2020

<p>本論文では,ペーパークラフトの一種であるシャドーボックスに着目し,ユーザの表現したい印象に適合したシャドーボックスの貼り重ね方を自動生成する感性ファブリケーション支援システムを実装した.このシステムは,デザイン生成ユニットによる複数の設計データの生成と,印象変化量評価モデルに基づく表現したい印象への適合度評価により実現した.システムの実装に先立ち,様々なシャドーボックスが鑑賞者に与える印象を調査する目的で,印象評価実験を行った.そして,この実験結果をニューラルネットワークに学習させることで,印象変化量評価モデルを構築した.デザイン生成ユニットは,進化的計算のアプローチで実現し,構築した印象変化量評価モデルを評価関数として用いた.最後に,実装したシステムの出力結果に基づいて作成されたシャドーボックスの印象評価実験により,このシステムの有効性を確認した.</p>
著者
石井 康夫
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第34回ファジィシステムシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.821-824, 2018 (Released:2019-01-09)

本論では、J-REITの「投資口価格」に影響を与える要因を実証的に分析し、最終的に投資口価格を簡便に予測するため、多変量解析手法を用いた、システマティックなアプローチ手法を試みる。すなわち、「重回帰分析を活用して、モデルの適用可能性と各指標の寄与度を分析する。次に、投資口価格に影響を与える主要な要因を主成分分析によって抽出し考察を加える。その後、得られた主成分の得点を対象にクラスター分析を行い、投資法人自体を分類し、その特徴を分析する。最後に、重回帰分析、主成分分析及びクラスター分析による結果をあわせて総合的な考察を加える。
著者
服部 雄市 野津 亮 本多 克宏
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第30回ファジィシステムシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.420-425, 2014 (Released:2015-04-01)

本研究ではマルチエージェントシステムを用いて,SIRモデルを参考にした感染症の流行過程を仮想的に観察するためのシミュレータを作成した.SIRモデルは数理モデルの一つであり,感染症の流行過程を記述するモデル方程式である.このモデルをマルチエージェントシミュレータに用いる事により,創発的な現象である感染症の流行過程を表現することが出来る.またこのシミュレータでは,相互に関係しつつ,通勤経路,住居を決める.このシミュレータを通じて,都市モデルの違いにより感染流行の様子の違いを検証した.
著者
隅山 淳一朗 橋山 智訓 田野 俊一
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第31回ファジィシステムシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.1-4, 2015 (Released:2016-02-26)

ゲーム分野における人工知能は、近年急速に進化しており、1997年にはチェスのグランドチャンピオンに勝利し、2013年には将棋のプロ棋士に勝利するなどの成果を挙げている。このことは、ゲームAIの長年の目標であった「人間を超える」人工知能を作ることを達成しつつあることを意味している。強さを追求したAIの次の段階として、人間を楽しませるための人間らしいAIの追求に焦点を当てる必要がある。本稿では、不完全情報ゲームの一つであるぷよぷよを用いて、人間のプレイを模倣するゲームAIの作成を目的とする。ここでは、熟練者のプレイデータからプレイ特徴量を抽出し、その特徴量を用いて、人間の模倣AIを作成する。
著者
広内 哲夫
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本ファジィ学会誌 (ISSN:0915647X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.736-755, 1994
被引用文献数
1

L.A.ザディーは、人間中心のシステムに数理モデルを適用するのは不適切であり、本質的には言語モデルを用いるべきであるという「不適合性原理」を提唱した。野球の外野手が球を追跡し捕捉するという人間が演じる行動は、ザディーが主張するところの典型的な人間中心のシステムと言えるであろう。外野手はただ球の飛ぶコースを眺めながら、過去の訓練で身に付けた技能だけを頼りに、自分の走る速さより遥かに高速で飛ぶ球を難なく捕捉するのである。S.チャップマンは、外野手の捕球行動の観察から、捕球のための簡単な規則を見い出した。そこで、筆者はチャップマンの経験則をファジィプロダクション規則として構成し、外野手の捕球行動をファジィ制御的にシミュレートするファジィエキスパートシステムBS-SIMを開発した。そのシステム内に設定された外野手ロボットは、刻々と変化する球の状況をファジィ観測し、チャップマン経験則をはじめ、いくつものファジィプロダクション規則群を用いて、適切な走行速度を推論し、落下地点に到達する能力を持っている。このような能力を持った外野手ロボットは、現実に近い3次元シミュレーション環境(例えば風が吹く環境)において、非常に高い(場合によっては100%)確率で球を捕捉することが出来た。外野手ロボットの捕球行動は、言語モデルをベースにしているため、大局的な観点からすれば、人間の捕球行動をシミュレートしていると言ってよい。
著者
岩満 優美 竹村 和久 松村 治 王 雨晗 延藤 麻子 小平 明子 轟 純一 轟 慶子
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.651-658, 2013-04-15 (Released:2013-06-05)
参考文献数
16
被引用文献数
3

精神医科学や臨床心理学においては,投映描画は個人の人格的理解と行動の全般的理解のために用いられている.特にコッホによって開発された樹木画(バウムテスト)は,医学的診断の補助や心理学的評価のために用いられることが多い.投映描画の解釈では客観性に乏しく,信頼性が低いため,われわれは,いくつかの画像解析技法の手法を統合した方法を用いて,精神障害患者の描画を解釈することを試みた.本研究で提案された方法は,下記のとおりである.(1)濃度ヒストグラム法(GLHM 法),(2) 空間濃度レベル依存法(SGLDM),(3)濃度レベル差分法(GLDM),(4)矩形行列を実行列または複素行列に分解する特異値分解,(5)画像の波形成分を分解するフーリエ解析,(6)画像解析をもとにした描画の臨床心理学的解釈である.これらの投映的樹木テストの画像解析諸技法は,精神障害の心理学的過程を解釈するために利用された.
著者
黒須 亮成 清水 博貴 橋本 智己
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.501-506, 2017-02-15 (Released:2017-02-22)
参考文献数
16
被引用文献数
2

本稿では,人間とロボットの間で自然なコミュニケーションの実現を目指し,コミュニケーションエージェントの感情モデルを提案する.提案モデルは,「怒り」,「嫌悪」,「恐れ」,「悲しみ」,「幸福」,「驚き」の6感情を持ち,ファジィ認知マップで構成されている.6感情を相互に結合することで,幸福だが悲しい,悲しくて恐ろしい,恐ろしくて嫌悪するといった複数の感情を同時に表現することができる.提案モデルは,時間的に変化する重みと時間遅れの要素を組み込んでいて,情動と気分,サーカディアンリズムを表現する.感覚遮断を模して1週間放置した実験では,周期的に過去の感情が励起する反応が観察された.
著者
鬼沢 武久 風見 覚 高橋 千晴
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.127-141, 2003-02-15
被引用文献数
2

ゲームには相手と自分の手がわかる完全情報ゲームとお互いに相手の手が完全にはわからない不完全情報ゲームとがある。将棋やチェスのような完全情報ゲームでは強いアルゴリズム開発を目指したコンピュータ将棋やチェスの研究が盛んで、世界チャンピオンやアマ有段者並みの強さを持つアルゴリズムが開発されている。一方、不完全情報ゲームでは不確実な情報のもとで相手の手の強さやゲーム戦略を推論しなければならず、その推論結果には不確実性が伴い、完全情報ゲームと比べると強いアルゴリズムを開発するまでにはいたっていない。本論文では、不完全情報ゲームとしてセブンカードスタッドポーカーを例にして、そのプレイングシステムを構築することを目的とする。本システムでは対戦相手の傾向に応じた意思決定を行うために後件部が確定していない、そして閾値をもった変則のファジィルールを用い、対戦相手の傾向に応じてルールを修正する。本システムは、この変則的なファジィルールを用いたファジィ推論によって、相手の見えているカードと相手の賭け金とから、自分の手の優劣推定やゲームを続行するかどうかの判断、自分の賭け金の判断を行う意思決定システムである。本システムの有効性を確認するために、人間プレーヤと1対1のゲームを行い、そこから得られたデータを解析している。
著者
大曽根 圭輔 鬼沢 武久
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第26回ファジィシステムシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.14, 2010 (Released:2010-11-05)

本稿では,セブンカードスタッドポーカーにおいて、プレーヤと対話しながらゲームを攻略するパートナーエージェントの構築を目指す.セブンカードスタッドポーカーは不完全情報ゲームであるため,最適な戦略をとる事が難しい.そこで,パートナーエージェントが,ゲームに関するアドバイスを提示し,また,プレーヤからパートナーエージェントに対しても戦略を提示するという対話を通じて,協調し,ゲームを進めることを考える.パートナーエージェントはプレーヤに,ゲームの状況に応じた自身の意思決定および,顔表情を併せて提示し,アドバイスをする.そして,プレーヤが,パートナーエージェントの意見に反論がある場合にはプレーヤからの意見を事例という形で保存し,後のゲームに利用できるようにする.本稿では,評価実験を行い,提案したパートナーエージェントの有効性およびプレーヤから得られたルールについて検証する.
著者
山田 クリス孝介 平田 華奈子 野村 忍
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集
巻号頁・発行日
vol.26, pp.237-237, 2010

感情喚起時の脳の活動メカニズムを明らかにすることは、うつ病や不安障害などの精神障害を理解するために重要な問題である。脳の前頭前皮質は感情の制御に重要な役割を担っていると考えられ、大きな注目を集めている。本発表では、感情と脳に関する先行研究を概観し、我々の研究について紹介する。我々の研究では、健常な大学生を対象に、感情喚起時の前頭前野活動を近赤外線分光法(near-infrared spectroscopy: NIRS)により測定した。NIRSは大脳皮質の血流量を非侵襲的に測定できる装置である。感情喚起にはInternational Affective Picture System(IAPS; Lang et al., 1995)を使用し、IAPSの中から不快、中性、快画像をそれぞれ15枚ずつ選定した。各画像(不快、中性、快)をブロック計画で提示し、各ブロックにおける前頭前野活動を比較した。
著者
浦井 教輝 奥中 大地 徳丸 正孝
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第28回ファジィシステムシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.876-881, 2012 (Released:2013-07-25)

本論文では,衣服の感性検索のための類似画像検索を提案する. 感性検索はユーザの感性を用いて衣服を検索するシステムである. 感性検索システムには感性検索エージェントを用いている. 感性検索エージェントはユーザの感性を模倣しユーザが好む衣服を検索する. しかしながら,衣服の検索を行うには衣服画像の情報量が多いため感性検索エージェントの構造が複雑化してしまう問題点がある. したがって,感性検索システムには類似画像検索が必要である. 類似画像検索は感性検索エージェントが検索した衣服デザインを基に衣服画像を検索する. 衣服デザインは衣服が人に印象を与える要因から作成されるため,衣服画像と比べ情報量が少ない. また感性検索エージェントは衣服デザインを評価し,その評価によりユーザが好む衣服デザインを検索する. そのため,感性検索エージェントの複雑化を防ぐことができる. この研究において,類似検索の有効性を確認するために類似検索アプリケーションを作成した. 類似検索アプリケーションはユーザが選択した衣服デザインから衣服画像を検索する. その実行結果において,提案手法の類似画像検索は衣服デザインに類似した衣服画像を検索することができた.
著者
三藤 博
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本ファジィ学会誌 (ISSN:0915647X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.364-369, 2001
参考文献数
9

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著者
鈴木 秀和 西 仁司 瀧 晃司
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.653-662, 2009-10-15 (Released:2010-01-12)
参考文献数
21
被引用文献数
1

近年,AIBOやParo等に代表される動物型ロボットが話題を集めており,その愛らしい仕草によるエンターテインメント効果のみならず,ロボットセラピーにおけるヒーリング効果が注目を集めている.ヒーリング効果への影響を考えた場合,ロボットが動物らしく行動することが重要であるが,実環境では複雑な動的干渉の影響を受けるため,歩行等の複雑な行動を動物らしく実行することは難しい.そこで本報告では,人が「動物らしい」と感じる4脚歩行ロボットのための歩容生成を目標に,AIBOを用いた地面での動物的な歩容の生成を試みる.脚式ロボットの歩容生成が多次元時系列空間における軌跡の最適化問題であることに着目し,複合特徴領域から成る最適歩容領域への到達方法として,特徴群を1つずつ最適化して辿る手法を提案する.具体的には,動物の歩容に基づいた基本形状とGAによる中間軌道の最適化により,効率よく推進力を発生できる単脚軌道の生成を4脚歩容生成の導入として行う.生成された単脚軌道の連携のために動物学における歩容分類を適用し,人間が動物らしいと感じる感性を取り入れるためにデューティ比と周期を変えたアンケートを実施した.さらに,アンケート結果より得た動物的な歩容に対し,GAを用いた地面での適応学習を行うことにより,人が動物らしいと感じる歩容形態を維持したまま効率よく前進できる歩容の実現を試みる.
著者
長坂 英明 川中 普晴 山本 晧二 鈴木 清詞 高瀬 治彦 鶴岡 信治
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第28回ファジィシステムシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.739-742, 2012 (Released:2013-07-25)

近年,認知症を患う高齢者数の増加が医学的・社会的な問題となっており,認知症の予防・改善は重要な課題である.これらの課題を解決する手法の一つとして,現在,ロボットセラピーが注目されている.一方,認知症の進行度を評価する方法として対面式の認知症チェックテストが実施されている.しかしながら,これらの方法では「テストである」ことを対象者が意識してしまうため,緊張等から普段とは異なる回答を行う可能性がある.また,対象者の中にはテスト自体に嫌悪感を抱く人も少なくない.そのため,認知症チェックテストは対象者に意識されることなく実施できることが望ましい.そこで本研究では,対象者にテストを行っていることを意識されないような認知症の進行度評価システムの構築について検討する.ここでは,会話型ロボットとの簡単な会話から被験者の認知症の進行度を評価するシステムを試作し,評価実験を行った.本稿では,試作したシステムについて紹介するとともに,その有効性と問題点についても議論した.
著者
石岡 卓也 米田 貴雄 吉井 伸一郎 古川 正志
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.680-688, 2007-12-15 (Released:2008-03-17)
参考文献数
17
被引用文献数
2

本研究は,実社会の情報伝播の一部分を成すブログ上の情報伝播に着目し,その特性として特に重要であると考えられる情報伝播規模がどのように分布するか,またその分布を決定付ける要因が何であるかを明らかにすることを目的とする.そのため,実ネットワークで観測したブログ上における情報伝播の規模分布の結果と,その数理モデルによる結果を比較し,適切なモデルを得る.情報伝播の規模は,トラックバックの連鎖によって情報が幾つのエントリへ伝播したかを採用した.数理モデルとしては複雑ネットワーク上のパーコレーションを適用した.結果として,ブログ上の情報伝播規模は,スケールフリーネットワーク上のパーコレーションと類似することが分かった.
著者
堀川 慎一 古橋 武 内川 嘉樹
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本ファジィ学会誌 (ISSN:0915647X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.5, pp.906-928, 1992-10-15
被引用文献数
56

最近、ニューラルネットワークをファジィ推論におけるファジィルール等の同定に応用する研究が盛んに行われている。本論文では、このようなニューラルネットワークをファジィニューラルネットワーク(Fuzzy Neural Network : FNN)と呼ぶ。 著者らはこれまでに、ファジィルールの後件部が定数および一次式で表されるファジィ推論を実現した2種類のFNNを提案してきた。これらのFNNは、ファジィルールの同定とメンバーシップ関数の調整を自動的に行うことができ、学習結果をファジィルールとして容易に把握できるという優れた特徴を持つが、同定されたファジィルールや学習時の結合荷重に対する学習率設定に問題があった。 本論文では、上記のFNNに対して前件部に規格化演算を行うユニットを導入することにより重心法を実現する手法を提案する。重心法によれば、ネットワークの入出力関係や対象システムの特性を正確に表したファジィルールの同定が可能となる。さらに、後件部がファジィ変数で表される推論法に基づく新しいFNNを提案する。そして、学習における学習率設定の煩雑さを低減する手法について述べ、簡単な数値例により本FNNの有用性を示す。本FNNの前件部メンバーシップ関数は学習において優れた特徴を持ち、バックプロパゲーション法により適切に調整される。また、同定されたファジィルールは対象システムの特性をよく表している。