著者
大村 英史 柴山 拓郎 高橋 達二 澁谷 智志 岡ノ谷 一夫 古川 聖
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.954-966, 2012-10-15 (Released:2012-11-05)
参考文献数
20
被引用文献数
2 2

本稿では,人間の認知バイアスのモデルを用いた音楽生成システムを提案する.音楽は期待の満足や裏切りによって情動豊かな作品として構成されている.このような音楽における期待の形成とその期待に対する満足や裏切りのダイナミクスを実現するために,緩い対称性(LS)モデルを使用した.このモデルは人間の思考や推論に特徴的な非論理的な対称性バイアスと相互排他性バイアスに基づいた確率モデルである.本システムは,(1)音から音への遷移を音楽におけるメロディの最も単純なイベントとみなし,既存の楽曲から音の遷移の特徴量を抽出し,(2)LS モデルにより「人間的な」改変,汎化を行い,(3)新たなメロディを生成する.メロディ生成に用いられる汎化後の確率分布の平均情報量を調べた結果,LS モデルがほどよい複雑性を作り出していることが確認された.さらに,生成されたメロディの評価のために心理実験を行い,LS モデルが期待に関する満足(音楽的まとまり)と裏切り(意外性)をバランスよく含んだメロディを生成していることを確認した.この結果は,音楽生成における期待感生成に関する認知バイアスの適用の有効性を示唆する.

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著者
柏木 雅英
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.147-154, 2003-04-15 (Released:2017-05-29)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1
著者
矢野 良和 原 和道 江口 一彦
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第29回ファジィシステムシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.50, 2013 (Released:2015-01-24)

カメラを利用した文書や書籍情報のメモが日常的に利用されるようになった。撮影される画像は、対象の正面から撮影されるとは限らず、背景など不要な情報も含む。必要情報を記録するため、用紙領域を投影変換で引き伸ばし、画像情報の可読性を向上させる。しかしこの手法では、撮影対象が平面である必要があり、曲面画像では適用が容易ではない。そこで、本研究では対象の曲面を推定し平面展開を行う手法を提案する。
著者
柴尾 一成 本田 あおい 大木 真
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.734-743, 2016-08-15 (Released:2016-09-28)
参考文献数
15
被引用文献数
2 1

本論文では,クイックソートの概念を利用して効率的に順序関係を調べる新しい相対評価法を提案する.人の主観的な疼痛を客観的な数値として表すことができれば,人の感じている痛みについて他者と共有することができ,医師(医療従事者)と患者との問診を支援することが可能になる.主観的な疼痛を客観的な数値で評価するためには,多くの年代や地域の方,さらには非健常者や妊婦,高齢者の方まで幅広くアンケート評価を行う必要がある.しかし,現状の評価法では,1人当たりにかかる検査時間(1~3時間)が長すぎるため,多くのデータを得ることが難しい.さらに,非健常者や妊婦,高齢者の方に対しては,身体的・精神的な理由から負担の大きい調査の実施が困難である.本論文で提案する整列比較法は,一対比較法の判断の容易さを残したまま,問題点である比較回数と検査時間を大幅に改善できる.また,比較を行う実験刺激の個数に関係なく各実験刺激を定量化する数値化手法についても記述する.これにより,比較を行う実験刺激の個数を調整することが可能となり,より被験者の負担を減らすことができる.
著者
岡本 雅史 大庭 真人 榎本 美香 飯田 仁
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.526-539, 2008-08-15 (Released:2008-11-10)
参考文献数
20
被引用文献数
2 3

本研究は,漫才対話が二者間での対話形式を取りながら第三者である観客への情報伝達を可能とする〈オープンコミュニケーション〉構造を持つことに着目し,発話・視線・姿勢などのマルチモーダルな要素間の相互作用の分析を行うことにより,二体の擬人化エージェントの対話を通じてユーザに効果的にインストラクションを行う対話型教示エージェントモデルを構築する上で有用な知見を得ることを目的とする.特にオープンコミュニケーションの大きな特徴の一つであるコミュニケーションの「外部指向性」に焦点を当て,非明示的な観客への情報伝達である「外部指向性」と直接的に観客への働きかけを行う「内部指向性」の両者が,どのように演者内のマルチモーダルな振る舞いと演者間のインタラクションによって実現されているかをプロの漫才師の対話映像の分析から探った.結果として,オープンコミュニケーションにおける指向性の顕在化は,今回分析対象とした二組の漫才コンビ間で異なる形式を持つことが明らかとなり,オープンコミュニケーションの指向性を捉える上でマルチモーダルなチャネル間の相互関係が重要な役割を果たしていることがわかった.
著者
氏家 徹 松下 健嗣 鈴木 秀和
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第27回ファジィシステムシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.234, 2011 (Released:2012-02-15)

ロボットに関連する様々な技術を促進させる試みとしてロボカップがある.当研究室が出場している中型リーグの場合,あらゆる方向に同じ姿勢で移動することが望ましく,一般的に広く用いられる独立二輪機構では実現は困難である.これを解決する方法として,オムニホイールを用いる全方向移動機構が有効である. これは近年,あらゆる方向への移動性能が求められる工場や病院など限られた作業空間において注目されている機構である.全方向移動機構の車輪数は3輪,もしくは4輪が一般的であり,当研究室では重心安定範囲を考慮して4輪駆動型を採用している.また,4輪駆動型は3輪駆動型よりもモータ数が多いため,トルクが高いといった利点がある.しかし,4輪駆動型の特徴として重心移動時に車輪が空転してしまう欠点がある.そこで,本研究では,全方向移動機構にサスペンションを搭載し,重心移動の際の車輪の空転を防ぎ,移動性能の向上を試みる.
著者
鴨志田 芳典 菊池 浩明
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第26回ファジィシステムシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.245, 2010 (Released:2010-11-05)

ウェブサイトへの迷惑メールの投稿の様な悪意を持った目的で, 人工的に合成された文章が多用されている.我々は,マルコフチェイン によって生成された文章と自然文章を区別する問題を研究する. この問題の困難性に基づいて,チャレンジレスポンス型の機械を 判別のテストであるCAPTCHAへの応用を検討する.
著者
齋藤 智子 椎塚 久雄
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集
巻号頁・発行日
vol.23, pp.158, 2007

現代は悩みを持たない人はいないと言っても過言ではないほど,ストレスに溢れた社会である.ストレスを抱え込みすぎないためにも,人それぞれ様々なストレス発散方法がある中で,本研究では「会話」に着目した.親しい人に話を聞いてもらうとすっきりした経験をした人が多いように,ロボットと会話がストレス軽減に繋がるのではないかと考えた.本研究ではロボットの会話部分を中心に研究し,「大学生の学校に関する悩み・愚痴」に関するシナリオを作成した.作成したシナリオデータをロボットに出力し,実験を行った.実験にはPOMS(気分プロフィール検査)を用いて,会話前後の気分を測定して結果を分析した.その結果,ロボットとの会話による混乱・怒りなどのストレス因子が軽減し,活気の因子が高くなるという良好な気分プロフィールを得ることが出来た.
著者
中津山 幹男
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第23回ファジィシステムシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.431, 2007 (Released:2009-01-14)

絵画から音楽に変換する準客観的な手法として、絵画を適当な区画に別けて平均的なRGBの成分を抽出して、音符を割り当てる。これにより作成された音楽のフラクタル次元が存在し、また和洋の音楽のフラクタル次元と、ほぼ似た値がでることが判明した。
著者
山ノ井 髙洋 豊島 恒 山﨑 敏正 大西 真一 菅野 道夫
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.639-646, 2016-06-15 (Released:2016-07-12)
参考文献数
12

著者らは,クラブのトランプAからKまでの13枚の画像をCRT上で被験者に提示し,認知時またそれを想起した際のEEG計測を行なった.著者らが従来から試みている正準判別分析法をこれらのシングルトライアルEEGに適用した.従来から判別に用いている右中前頭回に対応する国際10-20法に対応するEEG計測位置であるFp2とF4,C4,F8の4チャネルからのEEG出力を判別に用いた.サンプリング区間は潜時400msから900msを25ms間隔でサンプリングし,84次元のベクトルデータを構成した.さらに,データを3倍とするサンプリング方法も検討した.ジャックナイフ統計を用いた正準判別分析の結果9人の被験者の判別率は90パーセントを越えた.これにより.トランプカードの推定マジックがトリックなしで90%以上の確率で行えた.
著者
永田 将人 佐々木 俊介 山野辺 将太 野本 弘平
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第34回ファジィシステムシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.670-673, 2018 (Released:2019-01-09)

就活生の情報取得の認知的技能を明らかにするために,どの情報に興味を示すのかを知ることは重要である.著者らは,企業データを見ている間の眼球運動を測定する実験を行った.その結果,企業を選ぶ際に,経験者は入社してから続けられるかどうかに注意を払い,未経験者は,待遇が良いかどうかに注意を払うことが明らかになった.
著者
濱田 真樹 鬼沢 武久
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.696-708, 2008-10-15 (Released:2009-01-05)
参考文献数
16
被引用文献数
3 2

本論文では,同音異義語の使用頻度に加えて,因果関係の成立しやすさを構造に含むなぞなぞを対象とし,そのなぞなぞ生成システムの構築を目指す.提案システムは生成部と2つのデータベースから成っている.1つ目の動詞データベースは,動詞とその使用頻度,格関係の情報をもつ.2つ目の因果関係データベースは,動詞が表す事象間の因果関係とその成立しやすさの情報をもつ.生成部は,動詞および因果関係データベースから言葉を参照することで,人が作るようなおもしろいなぞなぞを生成し,なぞなぞとその答え,解説文を提示する.本論文ではまた,提案システムからおもしろいなぞなぞが生成されるかどうかを検証するための被験者実験についても述べる.
著者
井岡 惠理
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.113, 2014-06-15 (Released:2017-11-18)
被引用文献数
1

ニューロン(神経細胞)は連続的な刺激の印加によって短い時間幅のスパイクを発生させる.この現象は発火と呼ばれ,脳内の情報処理において重要な役割を担うことは近年の脳科学における基本的な認識となっている.この発火による情報のコーディング方法としては,ニューロンの発火頻度,集団(グループ)の発火活動によるコーディング,短い時間間隔での発火パターンによる符号化などが考えられている.一方で複数のニューロンが同時(あるいはある一定の間隔を保って)に発火するなどニューロン同士が見せる発火のタイミングの関係性が重要であるとも考えられている.このような発火現象は同期発火(Synchronous firing)と呼ばれている.同期発火はとくに結びつけ問題(Binding problem)と非常に深い関わりがあると考えられている.結びつけ問題とは脳科学における未解決問題の一つである.通常,視覚や聴覚などの感覚器が受ける情報は脳に伝わると形や色,運動方向やその速度などの細かな情報に分割されそれぞれについて処理される.そしてこれらを再統合するのだが,細分化された情報をどのようにして統合しているのかというメカニズムの詳細は解明されていない.もしもニューロンの発火にのみ情報がコードされていると考えると複数の入力情報を再統合する際に,元の入力情報とは異なる情報が再現され結果として脳はあるはずがないまぼろしを見ることとなる.同期発火によるニューロン同士の関連性を持った発火現象は分割された情報と情報との関連を持たせる役割があると考えられている.実際に生理学実験においてもこの同期発火現象は視覚野や嗅覚野で観測されている.さらに,同期発火はパーキンソン病などの神経性の病症との関連も示唆されている.したがって同期発火現象のメカニズムに関する関心は今後も高まると考えられる.
著者
宮田 真宏 大森 隆司
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.712-721, 2019-06-15 (Released:2019-06-15)
参考文献数
23

従来,人の推論には直観的推論と論理的推論の2種類があるとされる.これまでに直観的推論はベイズ推論に代表される確率的な手法により,論理的推論はTree探索に代表されるシンボル的な手法により,それぞれモデル化されてきた.一方で,推論と脳部位とを対応付けた研究はあるが,脳の神経回路を考慮した論理的推論のメカニズムについて言及したものは少ない.脳における論理的推論過程のモデルは未解決である.そこで本研究では人の推論過程は直観的推論と論理的推論に明確に分かれているのではなく,一つの分散ニューラルネットワークのモード切り替えで実現されると考え,そのモデルを提案する.そのモデルでは連想記憶を用い,現在状態より関連する記憶を連想的に探索し,その記憶に価値を紐づけることで行動選択をする直観的推論を実現し,直観的推論にて見出された価値状態に対し,その利得に繰り返しバイアスをかけることにより論理的推論に見える動作を実現した.迷路探索シミュレーションでは,直観的推論に相当する確率的な行動選択と,論理的推論に相当する枝刈りを含むTree探索のような振る舞いが同一モデルのパラメータ変更により表出されることを確認した.