著者
大上 耕作 今村 友香 八木 玲佳 井上 直美 門 恵子 加藤 貴雄 白井 由紀
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.119-126, 2022 (Released:2022-09-30)
参考文献数
17

【目的】心不全患者と医療者の間で行われる人生の最終段階を意識した対話(EOLd)の現状と関連要因を明らかにする.【方法】京都大学医学部附属病院循環器内科で2015年4月から2020年3月に死亡した患者を対象に診療記録調査を行い,「予後説明」と「人生の最終段階の医療の話し合い」の有無と関連要因を検討した.【結果】109名中,予後説明は40名(36.7%),人生の最終段階の医療の話し合いは25名(22.9%)に実施されていた.予後説明の実施には,年齢(若年)・入院回数の多さ・緩和ケアチームの介入・人生の最終段階の医療の話し合いの実施が関連していた.人生の最終段階の医療の話し合いの実施には,性別(男性)・入院回数の多さ・心不全入院歴があること・緩和ケアチームの介入・予後説明の実施が関連していた.【結論】心不全患者のEOLdは重症および末期心不全患者を中心に行われている現状が示唆された.
著者
橋詰 淳哉 龍 恵美 能勢 誠一 宮永 圭 岸川 礼子 中村 忠博 室 高広 兒玉 幸修 山下 春奈 石井 浩二 佐々木 均
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.101-109, 2020 (Released:2020-04-30)
参考文献数
25
被引用文献数
1 5

【目的】ナルデメジンは消化管のµオピオイド受容体に拮抗してオピオイド誘発性便秘(opioid-induced constipation: OIC)を改善するが,副作用として下痢が知られている.ナルデメジン導入後の下痢発現の予測因子についてオピオイド鎮痛薬投与期間に着目して解析した.【方法】2017年6月1日から2019年3月31日の期間に長崎大学病院においてナルデメジンをはじめて導入した患者を対象に後方視的調査を行った.【結果】調査対象は132名であり,下痢は33名(25.0%)に発現した.多変量ロジスティック回帰分析の結果,ナルデメジン導入前のオピオイド鎮痛薬投与日数8日以上は下痢発現と有意に関連した(オッズ比:3.76, 95%信頼区間:1.53-9.20, p=0.004).【考察】OICに対してナルデメジンを使用する場合,オピオイド開始後7日以内に使用することで,下痢の発現を回避できる可能性が示唆された.
著者
田中 雄太 加藤 茜 伊藤 香 五十嵐 佑子 木下 里美 木澤 義之 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.129-136, 2023 (Released:2023-05-10)
参考文献数
24

【目的】緩和ケアの実践には,現場の医療者の認識や受容性などを考慮することが重要である.本研究の目的は,救急・集中治療領域の医師の緩和ケアに対する認識や緩和ケア実践の障壁を明らかにすることである.【方法】集中治療室および救命救急センターに勤務する医師を対象に緩和ケアに関する質問紙調査を実施し,自由記述データを質的に分析した.【結果】873名に質問紙を送付し,436名から回答を得た(回収率50%).そのうち,自由記述欄に回答した95名(11%)を分析対象とした.【結論】本研究の結果から,わが国における救急・集中治療領域の医師は緩和ケアを自らの役割と捉え,日常的なケアの一部と考えて実践している一方で,緩和ケア実践の難しさや不十分さを感じていることが推察された.実践の障壁として,緩和ケアチームのマンパワー不足と利用可能性,救急・集中治療領域における緩和ケアに対する認識が統一されていないことなどが存在していた.
著者
畑中 知笑美 間瀬 広樹
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.501-504, 2014 (Released:2014-02-17)
参考文献数
9

【緒言】オキサリプラチンは, 結腸・直腸がんに対して有効な白金系抗がん剤である. しかしながら, 半数近くの患者に急性および蓄積性の末梢神経障害が生じ, 日常生活に及ぼす影響は甚大である. 末梢神経障害への対処は重要であるにもかかわらず, いまだ確立された方法はない. 【症例】60歳代, 女性. 再発大腸がんに対してSOX療法が施行されたが, 治療当初より末梢神経障害が発現した. ピリドキサールリン酸エステル水和物や牛車腎気丸を継続服用したが無効であったため, 患部へ1.35% l-メントール含有軟膏を1日3回, 1回につきおおむね0.5~1 gを両足裏に塗布するよう, 薬局で服薬指導した. 塗布開始当日より症状のすみやかな消失が認められ, その後SOX療法終了までの1カ月間塗布を継続したが症状の再発はみられなかった. 【結論】1.35% l-メントール含有軟膏の塗布は, オキサリプラチン誘導末梢神経障害の改善に効果的である可能性が示唆された.
著者
大坂 巌 坂下 明大 木澤 義之 細川 豊史
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.31-37, 2018 (Released:2018-02-16)
参考文献数
18
被引用文献数
2 4

【目的】非がん疾患に対する緩和ケアについて実態調査を実施した.【方法】日本緩和医療学会代議員196名を対象にインターネットアンケート調査を行った.非がん疾患の診療経験,緩和ケアに関する考え方,緩和ケアを実践するうえでの困難感,必要な教育内容について選択式の質問で尋ねた.【結果】111名(57%)より回答を得た.回答者の99%は非がん疾患の診療を経験していたが,63%は終末期の累計経験患者数が50人未満であった.回答者の80%は非がん疾患に対する緩和ケアに自信がなく,予後予測の難しさや緩和ケアに関する診療加算が算定できないことなどのために83%が困難感を感じていた.教育において重要なことは,コミュニケーション,多職種チーム医療の順であった.【結論】日本緩和医療学会代議員は,非がん疾患に対する緩和ケアの必要性を認識しているが,経験豊富な代議員は少なく,8割以上が自信のなさと困難感を感じていた.
著者
加藤 恭郎 德岡 泰紀
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.147-152, 2022 (Released:2022-11-07)
参考文献数
19

内服困難ながん終末期患者にオピオイド鎮痛薬の持続皮下注(以下,CSCI)を開始する場合,悪心・嘔吐予防にハロペリドール(以下,HPD)の混合が広く行われている.しかしHPDにはCSCI部皮膚障害の危険がある.そこで当院ではヒドロモルフォン塩酸塩(以下,HYM)CSCI時の悪心・嘔吐予防としてブロナンセリン経皮吸収型製剤(以下,BLO-P)を用いてきた.今回,オピオイド鎮痛薬使用歴がなく,他の制吐剤や抗精神病薬の併用がなく,1週間以上経過観察できた例を後方視的に検討した.BLO-P使用5例では悪心・嘔吐はなく,BLO-P貼付部,CSCI部の皮膚障害もなかった.HPD併用5例では,1例に悪心,2例にCSCI部皮膚障害がみられた.BLO-PはHYMのCSCI時の悪心・嘔吐予防として選択肢の一つになり得ると思われた.
著者
森川 美羽 石崎 武志 高野 智早 渡辺 享平 田畑 麻里 佐藤 義高 西本 武史 小坂 浩隆 片山 寛次
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.541-544, 2012 (Released:2012-08-21)
参考文献数
18

【目的】がんの診療に伴い, 吃逆はしばしば経験し, 治療に難渋することが多い. 化学療法に伴って出現した持続性の吃逆に対して, プレガバリンが奏効した2症例を経験したので報告する. 【症例】症例は共に進行肺扁平上皮がんであり, 症例1はカルボプラチン+パクリタキセル, 症例2はネダプラチン+イリノテカンの2剤併用化学療法を施行した. 2症例共に抗がん剤の投与に応じて吃逆の出現, 増悪を認めており, 薬剤が誘発したと考えられた. 吃逆はメトクロプラミド, クロルプロマジン, ガバペンチンに抵抗性であり, プレガバリン 150 mg/日の投与によりすみやかに改善した. 【結論】鎮痛補助薬として近年用いられるようになったプレガバリンは, その薬理作用である神経細胞の過剰興奮の抑制により吃逆にも効果がある可能性がある.
著者
吉村 元輝 濱本 愛 阪口 杏香 安藤 詳子 佐藤 一樹
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.7-15, 2022 (Released:2022-01-26)
参考文献数
24
被引用文献数
1

【目的】一般市民の終末期の意思決定の希望とその関連要因を明らかにする.【方法】日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団が行った「ホスピス・緩和ケアに関する意識調査2018年」の調査データを二次利用して分析した.成人1,000名対象のインターネット調査で,終末期の意思決定の希望を尋ねた.【結果】予後説明の希望は,54%が余命まで知りたいと回答した.余命告知希望に,若年,がん告知希望,医療者の信頼を重視,死んだら消えてなくなる死生観が独立して関連した.終末期医療の希望は,11%が積極治療,58%が緩和ケアを希望した.緩和ケア希望に,高齢,女性,苦痛がないことや気兼ねしない環境を重視などが独立して関連した.意思決定の主体者の希望は,77%が自分で,11%が家族に決めてほしいと回答した.自分以外主体の希望に,若年,がん告知を希望しない,死を考えない死生観が独立して関連した.【考察】一般市民の終末期の意思決定の希望とその要因が明らかになった.
著者
西 智弘 宮森 正 勝俣 範之
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.920-923, 2015 (Released:2015-08-21)
参考文献数
9

現在,世界的に「早期からの緩和ケア」を実践していくことが進められている.しかし,その実践には様々な課題がある.このような状況の中 Palliative oncologistという, Oncologyと緩和ケアの両方のトレーニングを受けた医師の養成が提案されている.川崎市立井田病院では,抗がん剤から病棟,緩和ケアチーム,在宅までひとつの部門で提供しており,このシステムを利用した研修プログラムが行われている.患者が抗がん剤治療中でも緩和ケアに専念してからも,訪問診療に移行しても,研修医が主治医になるといった特徴があり,早期から統合された診療を経験できる.早期からの緩和ケアを進めていくための人材として, Palliative oncologistの養成は日本でも有用な可能性があり,当院での研修プログラムはひとつのモデルとなる可能性がある.
著者
新城 拓也 森田 達也 平井 啓 宮下 光令 佐藤 一樹 恒藤 暁 志真 泰夫
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.162-170, 2010 (Released:2010-12-07)
参考文献数
17
被引用文献数
1 4

本研究は, 主治医が終末期がん患者の死亡確認を行うことや臨終に立ち会うことが, 家族のつらさと医師の対応への改善の必要性に影響するかを明らかにすることである. 2007年, 95のホスピス・緩和ケア病棟の遺族670名を対象に質問紙調査を行った. 全体の73%の遺族が回答した. どの医師が死亡確認を行うか, 医師が臨終に立ち会ったかは家族のつらさとは関連がなかった. 一方, 死亡確認と立ち会いは, 医師の対応への改善の必要性とは有意な関連があった. しかし, 医師が「臨終に立ち会ったこと」と, 「立ち会えなかったが, その日は頻繁に部屋に来ていた」ことの間には, 医師の対応への改善の必要度に有意差はなかった. したがって, 家族は主治医の死亡確認や, 臨終の立ち会いを望んでいるが, もし死亡確認や立ち会いができなかったとしても, 心理的なつらさが強まることはなく, 臨終までに頻繁に部屋に行くことで十分な対応であると考えていることが示唆された. Palliat Care Res 2010; 5(2): 162-170
著者
新城 拓也 石川 朗宏 五島 正裕
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.141-146, 2015 (Released:2015-02-25)
参考文献数
33

終末期がん患者の治療困難な苦痛に鎮静が必要なことがある.日本の在宅療養中の患者に対する鎮静についての報告は,ほとんどない.本研究の目的は,在宅療養中のがん患者に対する鎮静の状況を調査することである.しんじょう医院で,在宅で緩和ケアを提供された,2012年8月から2014年7月までに診療が終了した117例のがん患者のカルテを後方視的に調査した.死亡したがん患者は98例で,自宅で鎮静が行われたのは自宅で死亡した73名のうちの24名(33%),平均期間は,4.4±6.0日,投与薬剤はすべてミダゾラムであった.ミダゾラムの初期投与量は,12.8±6.2 mg/日,最終投与量は,12.4±6.5 mg/日であった.鎮静の対象となった症状は,せん妄が22例であった.在宅療養中のがん患者に,鎮静は必要な治療で,在宅チームが治療,ケアを常時討議することで,適切かつ安全に実施できることが分かった.
著者
堀籠 淳之 阿部 泰之
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.901-905, 2014 (Released:2014-02-03)
参考文献数
12
被引用文献数
2

【目的】地域包括ケアシステムに対応すべく, 顔の見える多職種連携を目指した取り組みが全国各地で活発化しているが, 職種の偏在や開催方法, 運営資金, 継続性などの抱えている問題は少なくない. これらの問題を克服する方法を開発する. 【方法】ケア・カフェは, 哲学や社会学などの理論をベースにワールド・カフェの方法論を応用したものである. 地域でケアに関わる人々が顔の見える連携と, 日頃の困りごとを相談する場としてケア・カフェが定期的に開催されている. 【結果】旭川市で毎月開催され, これまで9回の開催で延べ約700名を動員した. また, すでに日本全国16カ所にもこの方法が広がり, 延べ29回開催され, 実際の多職種連携や問題解決につながった事例などが報告されている. 【結論】ケア・カフェは, 旭川発の取り組みで, 顔の見える多職種連携を育むために有用な手法となりつつある. すでに全国に広がっており, さらなる顔の見える連携創造が期待される.
著者
合屋 将 中野 泰 十九浦 宏明 高木 雄亮 渡邊 紘章 松田 能宣 角甲 純 笠原 庸子 小原 弘之 森 雅紀 中山 健夫 山口 崇
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.261-269, 2023 (Released:2023-12-25)
参考文献数
12

【目的】進行性疾患患者の呼吸困難に対する高流量鼻カニュラ酸素療法(HFNC)の有効性を検討する.【方法】MEDLINE, Cochrane Library, EMBASE, 医中誌Webを用いて文献検索を行った.適格基準は,呼吸困難に対するHFNCの効果を評価した無作為化比較試験であること,18歳以上の低酸素血症を伴う進行性疾患患者を対象としていること,対照群が通常の酸素療法もしくは非侵襲的陽圧換気であるもの,とした.集中治療室患者,人工呼吸器からの離脱後は除外とした.【結果】6件が採用された.短期介入を検討した2件で,HFNC有効1件,通常酸素有効1件であった.長期介入を検討した2件で,HFNC有効1件,有意差なし1件であった.運動負荷時の介入を検討した2件で,HFNC有効1件,有意差なし1件であった.【結論】低酸素血症を伴う進行性疾患患者の呼吸困難に対してHFNCは有効である可能性がある.
著者
鈴木 梢 森田 達也 田中 桂子 鄭 陽 東 有佳里 五十嵐 尚子 志真 泰夫 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.731-737, 2017 (Released:2017-11-10)
参考文献数
11
被引用文献数
4 5

本調査は広い概念での補完代替医療(complementary and alternative medicine: CAM)の使用実態や家族の体験を知り,がん患者とのコミュニケーションに活かすことを目的とし,緩和ケア病棟の遺族への自記式質問用紙調査(J-HOPE2016)の一部として実施された.調査の結果,がん患者の54%がCAMを使用し,内容はサプリメントのほか,運動やマッサージなど多岐に渡っていた.多くはがん治療や経済面に影響のない範囲でCAMを用いていたが,一部でがん治療や経済面への影響も懸念され,医療者からCAMについて話題にする姿勢が重要と考えられた.また,CAM使用との関連要因として若年患者,遺族が高学歴であることが抽出され,さらに,CAMの使用は家族の心理面に影響を及ぼしている可能性が示唆された.CAM使用歴のある患者家族の心理面・精神面にも注意を向ける必要がある.今後,CAMの内容別,緩和ケア病棟以外で死亡した患者についても調査を進めることが求められる.
著者
山下 千尋 杉村 鮎美 佐藤 一樹 安藤 詳子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.197-207, 2021 (Released:2021-06-30)
参考文献数
36

苦痛緩和のための鎮静はがん患者の治療抵抗性の苦痛を緩和する有効な手段だが,倫理的な問題を生じやすい.鎮静は一般病棟でも施行されており,一般病棟看護師の鎮静に関するケアの実態把握と質向上は急務である.本研究はがん診療連携拠点病院の呼吸器内科病棟に勤務する看護師を対象に,鎮静が施行される終末期肺がん患者に対する看護師の行為・判断・思いについて半構造化面接し,Krippendorffの内容分析により看護師の行為・判断16カテゴリー,積極的感情8カテゴリー,消極的感情5カテゴリーを抽出した.看護師は患者・家族の苦痛緩和のために常に最善策を模索し,その心情に寄り添う努力をしていたが,多職種協働と鎮静に関する話し合いに対する自信と積極性に差がみられた.看護師が自信を持って鎮静に積極的に働きかけることで,患者・家族の意思決定を支援し,苦痛緩和とQOL維持に最適な鎮静手法を検討できる可能性が示唆された.
著者
唐 鈺穎 小野 はるか 小川 祐子 小澤 美和 田巻 知宏 大谷 弘行 清藤 佐知子 鈴木 伸一
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.169-177, 2021 (Released:2021-05-21)
参考文献数
27

【目的】対象者の属性を調整した場合,乳がん患者である母親の抑うつ・不安と家族機能が子どものQOLに影響を及ぼすかどうかを検討する.【方法】交絡因子となる対象者の属性別にサブグループに分けて,抑うつ・不安と家族機能を独立変数,子どものQOLの合計得点を従属変数とした2要因分散分析を行った.【結果】各属性のサブグループにおいて,母親の抑うつが高い場合は母親の抑うつが低い場合よりも子どものQOLが有意に低いことが示された.きょうだいの有無のサブグループ,母親の化学療法の受療有無のサブグループにおいて,家族機能による子どものQOLに差異がみられた.【結論】今後,子どもを持つ乳がん患者の家庭を支援する際に,子どものきょうだいの有無や乳がん患者の化学療法の受療有無などといった属性も考慮したうえで,母親の心理状態と家族機能にアプローチする必要があると考えられる.
著者
清水 啓二 池永 昌之 杉田 智子 嶽小原 恵 數野 智恵子 久保田 拓志 大越 猛 青木 佐知子 加村 玲奈 今村 拓也
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.174-181, 2016 (Released:2016-06-16)
参考文献数
35

【目的】外来がん患者のオピオイド使用を実態調査し,乱用や依存につながる不適正使用の是正を通して,緩和ケアチームの課題を考察する.【方法】2014年の4カ月間に外来通院中のオピオイド使用がん患者について,緩和ケアチームがカルテ調査した.乱用や依存につながる不適正使用とは「がん疼痛または呼吸困難以外の目的でのオピオイド使用」とした.主治医と協議して不適正使用の判断と是正を図った.【結果】オピオイド使用67人中,乱用や依存につながる不適正使用は5人(7.4%)で,その内訳は,①がん疼痛で開始されたが,治療により責任病変が消失:3人(4.5%),②がん疼痛と考え開始されたが,精査で良性疾患と判明:2人(3%)であった.5人中4人でオピオイドを中止できた.【考察】外来でのオピオイド使用は,乱用や依存につながる不適正使用が見逃される危険がある.常に疼痛の原因を可能な限り明らかにする姿勢が重要であった.
著者
稲野 利美 山口 貞子 千歳 はるか 梅沢 亜由子 長橋 拓 岡垣 雅美 青山 高 森 直治 東口 髙志 大前 勝弘 盛 啓太 内藤 立暁 高山 浩一
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.71-80, 2020 (Released:2020-04-21)
参考文献数
56

【目的】本研究の目的は,進行がんを有する高齢者に対する集学的介入(NEXTAC-ONEプログラム)の栄養介入について詳細を示し,その忍容性を評価することである.【方法】初回化学療法を開始する70歳以上の進行非小細胞肺がんおよび膵がんを対象とし,8週間に3回の栄養介入を行った.標準的な栄養指導に加え,摂食に影響する症状,食に関する苦悩,食環境の問題への対処法を含めたカウンセリングを行い,分枝鎖アミノ酸含有の栄養補助食品を処方した.【結果】計30名の試験登録者のうち29名(96%)が予定されたすべての介入に参加し,遵守率については日記記載率90%,栄養補助食品摂取率99%であった.また治療期間中に栄養状態の悪化を認めなかった.【結論】悪液質リスクの高い高齢進行がん患者において,われわれの栄養介入プログラムは高い参加率と遵守率を有し,化学療法中の栄養状態の維持に寄与した可能性が示唆された.
著者
古村 和恵 宮下 光令 木澤 義之 川越 正平 秋月 伸哉 山岸 暁美 的場 元弘 鈴木 聡 木下 寛也 白髭 豊 森田 達也 江口 研二
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.237-245, 2011 (Released:2011-11-16)
参考文献数
13
被引用文献数
3 4

より良い緩和ケアを提供するために, がん患者やその家族の意見を収集することは重要である. 本研究の目的は, 「緩和ケア普及のための地域プロジェクト」(OPTIM)の介入前に行われた, 進行がん患者と遺族を対象とした質問紙調査で得られた自由記述欄の内容を分析し, がん治療と緩和ケアに対する要望と良かった点を収集・分類することである. 全国4地域の進行がん患者1,493名, 遺族1,658名に調査票を送付し, 回収した調査票のうち, 自由記述欄に回答のあったがん患者271名, 遺族550名を対象とした. 本研究の結果から, がん患者と遺族は, 患者・医療者間のコミュニケーションの充実, 苦痛緩和の質の向上, 療養に関わる経済的負担の軽減, 緩和ケアに関する啓発活動の増加, 病院内外の連携システムの改善, などの要望を持っていることが明らかとなった. Palliat Care Res 2011; 6(2): 237-245
著者
古村 和恵 森田 達也 赤澤 輝和 三條 真紀子 恒藤 暁 志真 泰夫
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.142-148, 2012 (Released:2012-04-26)
参考文献数
20
被引用文献数
3 1

終末期がん患者はしばしば家族や医療者に対する負担感(self-perceived burden)を経験するといわれている. 負担感を和らげるためのケアが必要とされる一方で, どのようなケアが望ましいかを実証した研究はほとんどない. 本研究では, 終末期がん患者の感じている負担感の実態と, 患者の負担感を和らげるために必要なケアを調査するために, 28名のがん患者の遺族を対象に半構造化面接を行った. 内容分析の結果, 「がん患者の負担感の内容」(例: 下の世話をしてもらうのがつらい), 「がん患者が行っていた負担感に対するコーピング」(例: 家族の仕事や予定を優先するようにいう), 「家族の気持ちと対応」(例: 患者の遠慮は家族への思いやりの表れだと思った), 「患者の負担感に対して必要なケア」(例: ことさら何かを強調するのではなく, 自然な言葉がけをする)が抽出された. 収集された患者の負担感を和らげるためのケアの有用性の評価が今後の重要な課題である.