著者
高橋 隆雄
出版者
熊本大学
雑誌
先端倫理研究 = Studies of advanced ethics (ISSN:18807879)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.30-48, 2020-03

This paper is based on my personal experiences of fighting against cancer, because referring to such experiences is necessary to consider the relationships between the tendency of normalization and the concept of the buddha-nature. I had two operations for cancer, i.e. the stomach and the pancreas which had grown independently. As a result, I lost the stomach, duodenum, gallbladder, spleen, and a half of the pancreas. About two years ago, the pancreas cancer spread to the liver, then began the treatment using anticancer drugs. Through those serious experiences, I noticed, in my mind, the reception of the world view of the Buddhism, i.e. at the core of the world there exists the good power or mechanism which had been called as Dainichi Nyorai, Amitabha, and Kannon, etc. I also noticed in my mind the existence of the tendency of normalization which contributed to the calm of the mind, and such a tendency is common to animals as well as human beings. The tendency of normalization can be a candidate of the buddha-nature, because, according to Buddhism, the buddha-nature helps us to overcome the difficulties and is common to all sentient beings including human beings. To interpret in this way will make the concept of the buddha-nature within the reach of the general public. However, the tendency of normalization is only one aspect of the multilayer concept of the buddha-nature. At the base of that concept, according to Zen Buddhist Dogen, there exists the impermanence or mutual dependency, i.e. Mujo. At the last chapter, the participation into and the good deed based on the Buddhist world view of the good power and Mujo will be considered.
著者
福西 大輔
出版者
熊本大学
巻号頁・発行日
2010

清正公信仰とは戦国武将である加藤清正(1562―1611)を祀った信仰である。加藤清正は歴史上の人物であると同時に物語や伝説上の登場人物でもあり、信仰の対象でもある。この清正公信仰を通して、本研究では民俗と歴史との関係を考えながら、日本人の「人を神に祀る習俗」は近世・近代といかに変遷していったのか、日本人の神概念の再検討をしていきたい。その中で清正公信仰という一地域の信仰がどのようにして全国に広がっていったのか分析をしながら、「中央」と「地方」との関わりが人々の生活にどのような影響を与えたのかについて考える。
著者
山梨 八重子
出版者
熊本大学
雑誌
熊本大学教育学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Education, Kumamoto University (ISSN:21881871)
巻号頁・発行日
no.64, pp.267-274, 2015

This purpose of this research is to clarify issues related to the establishment of theory on yogo teachers as professional. A variety of different research projects have been carried out through the present time with a view to establishing yogo teachers as professional in their fields. The majority of this research has been conducted based on the results of Manabu Ogura's research, which means that Ogura's research has garnered a certain level of respect as a body of work presenting yogo teachers as professional. This paper re-examines research conducted by Ogura on the specialized nature of yogo teachers, comparing this work with documents by M. Lieberman, on which Ogura's work was based.Our research shows that the specialized nature of yogo teachers described by Ogura is limited to differentiating yogo teachers from conventional teachers within the school organization; therefore Ogura's scope is limited. Further, it has also become clear to us that the viewpoint of yogo teacher profession from Japan's unique perspective on yogo teachers as conventional teachers lacks a solid foundation. If we are to emphasize Japan's special positioning of yogo teachers in the larger context of conventional teachers, we conclude that there is a need to examine the deep specialization from a broad perspective— including trends in teacher profession theory—in order to further establish theory on the profession of Yogo teacher.本論は、養護教諭の専門職論の先達である小倉の研究を検討し、専門職としての養護教諭論にせまる上での課題を明らかにすることを目的とする.
著者
荒木 不次男 大屋 夏生
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では,放射線治療患者のQOLの向上を目指して,画像誘導放射線治療(IGRT)による位置決めX線CBCTの被ばく線量評価及び線量と画質の最適化を図るために,以下の事項を明らかにした. (1) kV-CBCTの簡便な吸収線量計測法を開発し,線量と画質の最適化を行った.(2) kV-CBCTの患者体内の線量分布をMonte Carlo simulation及び放射線治療計画装置から算出し,治療線量とCBCT線量の加算から直腸や水晶体等のリスク臓器の被ばく線量を線量体積ヒストグラム(DVH)から定量的に評価した.(3) kV-CBCT,MV-CBCT,MV-FBCTの被ばく線量を算出した.
著者
小野 義美
出版者
熊本大学
雑誌
熊本ロージャーナル
巻号頁・発行日
no.2, pp.3-24, 2008-03

本稿は、非嫡出子の戸籍続柄区別記載問題について、最高裁の判断により確定判決とされ、かつ、法務省立法担当者によって高く評価されたことにより重要な位置付けが与えられた本件控訴審判決が、どのような判決理由を展開しているのか、非嫡出子の差別問題を解決する上で、どのような意義と問題点をもっているのかについて検討することを中心的課題とする。
著者
公文 誠 FURUKAWA Tomonari
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

能動的に動作する耳介を持つロボットシステムを用いた音源定位法を検討した.音源方向の推定には,事前測定した音響データベースとの照合による方法を考え,不確かさを確率モデルを導入した推定手法を提案した.実際の能動耳介ロボットによる実験を通じて,提案手法がロバストな音源定位が可能であることが示された.また,ロボット動作に伴う騒音の影響を検証し,基本的な動作生成法について研究を行った.
著者
和田 哲
出版者
熊本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

ヤドカリには交尾・産卵直前に雌が(1)常に脱皮する種、(2)脱皮しない種、(3)脱皮したりしなかったりする種がいる。(2)や(3)に属する種の存在は、脱皮がヤドカリの配偶行動に不可欠ではないことを示唆する。しかし多くの種で雌は交尾直前に脱皮する。本研究は交尾直前脱皮の適応的意義の解明を目的としておこなった。上記(3)に属する種では、同一個体群の雌が連続産卵雌(過去に産卵した卵を孵化した雌がすぐに雄と交尾し産卵する)と不連続産卵雌(過去の卵を持たない雌が産卵する)に区分できる。本研究はこの点に着目して以下の仮説を検証した。成長仮説:雌は脱皮のコストで不連続産卵となっても、成長するために脱皮する繁殖仮説:脱皮が抱卵場所の更新に役立つならば、雌は連続産卵時に脱皮する上記(3)に属し高知県で普通に見られるホンヤドカリ属3種(ホンヤドカリ、クロシマホンヤドカリ、ユビナガホンヤドカリ)を対象種として、野外で雄に交尾前ガードされている雌をペアとして採集し、研究室で産卵まで飼育して、連続/不連続産卵の識別と脱皮の有無等を比較した。その結果、全ての種で成長仮説が支持された。さらにユビナガホンヤドカリを用いて、脱卵数、抱卵数、オスとメスの体サイズ、メスが背負っている貝殻サイズが脱皮頻度に与える影響を訥べた結果、脱皮によって脱卵数が増加し抱卵数が減少する傾向を認められた。また、脱皮あたり成長率は有意に0よりも大きく、脱皮によって体サイズが増大することが明らかとなった。以上の結果でも成長仮説が支持された。ホンヤドカリ属の他種を含めた種間比較の結果、成長仮説はホンヤドカリ属における(1)-(3)の種間変異もよく説明することが示唆された。
著者
森 大輔
出版者
熊本大学
雑誌
熊本法学 = Kumamoto law review (ISSN:04528204)
巻号頁・発行日
no.141, pp.388-348, 2017-12

前回の森(2017)で取り上げたQCAの分析では、各変数は0か1のみだった。QCAでは各変数は集合を表し、1が集合への帰属、0が非帰属を表す。しかし、0と1の2つのみに分けるのではなく、もっと微妙な差異も表現したい場合があるかもしれない。そのような場合に、通常の集合(クリスプ集合crisp set)を拡張したファジィ集合(fuzzy set)を利用する。今回は、このファジィ集合を用いたQCA(ファジィ集合QCA)の、fs/QCAと、RのQCAパッケージ(およびSetMethodsパッケージ、vennパッケージ)での行い方を主に扱う。
著者
神野 雄二
出版者
熊本大学
雑誌
国語国文研究と教育 (ISSN:02882981)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.121-149, 2020-01-31

「国語国文研究と教育」第56号において「『書道』に関する用語の適切な英語翻訳についての研究 : 『篆刻』に関する用語について」(39344)として,また「国語国文研究と教育」第57号において「『日本篆刻の歴史』の和文英訳 : 篆刻に関する和文英訳の課題と展望」(41825)として論考を発表した.書道,中でも篆刻に関して,その英語表現について考察したものである.本稿では,いくらか加筆修正を施し再掲する.二つの論考は,「篆刻」というキーワードで関連するものであり,ここに一篇の論文として載せる.
著者
横山 智
出版者
熊本大学
雑誌
文学部論叢
巻号頁・発行日
vol.100, pp.51-67, 2009-03-10

This paper tried to clarify residential preference of students in Faculty of Letters, Kumamoto University, by interpreting mental maps. Mental maps are frequently used as a tool for analysis of environmental perception or environmental assessment. Spatial pattern drawn in the mental maps represents commonalities and regionalites of residential preference. As a result of analysis, the tendency of residential preference varies remarkably by hometown of the respondents or students' major field of study. The mental maps, however, also showed the commonalities of residential preference. Urbanized prefectures (Tokyo and Fukuoka) and prefectures known as popular destination for tourist (Kyoto, Hokkaido and Okinawa) are prefered by most of the respondents.
著者
加藤 佐和
出版者
熊本大学
雑誌
先端倫理研究 (ISSN:18807879)
巻号頁・発行日
no.2, pp.106-118, 2007-03

R.M. Hare takes the position of total utilitarianism. Total utilitarianism that aims at maximizing of the total utility, would lead to a counter-intuitive conclusion. If we take the total utilitarianistic position, we have a duty of `beget and multiply.' This paper will discuss briefly a general view of Hare's theory and how he tries to solve this problem. His theory of total utilitarianism is able to take into account the utility of possible people. In doing so, Hare considers these possible people's potential to be a grown person as morally relevant. This paper considers the concept of this potential and how Hare considers the utility of possible people.
著者
上野 幹憲
出版者
熊本大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2018-04-25

後天性免疫不全症候群(エイズ)はヒト免疫不全ウイルス(HIV)が免疫細胞に感染することにより,免疫細胞を破壊して免疫不全を起こす疾患である。本邦ではHIV感染者1.9万人,世界では2017年現在で3,690万人に昇る。現在では,逆転写酵素阻害剤の発見,その後の新薬の開発により治療が可能になった。しかしながら,エイズを根治する治療法は未だ確立されていない。本研究では,新たな治療薬の開発のため,抗HIV活性を有する海藻由来生理活性物質の探索を行った。市販のアオサ,コンブ,ヒジキ,ノリをサンプルとし,水抽出(水溶性画分)とエタノール抽出(脂溶性画分)をそれぞれ抽出した。その後,HIV-1 (R9)とTZM-bl細胞を用いて抗HIV-1活性を検討した。水溶性画分では,アオサ,コンブ,ヒジキにおいてHIV-1の初期感染を有意に抑制した。脂溶性画分において,コンブのみ初期感染を抑制した。これまでの報告により海藻由来多糖類であるフコイダンは抗HIV-1活性を有することから,海藻由来多糖類であるアスコフィラン,アルギン酸,フコイダン,ポルフィランの抗HIV-1活性を比較検討した。アスコフィラン及びフコイダンではHIV-1 (R9およびJR-FL)の初期感染を強く阻害した。一方で,アルギン酸,ポルフィランは弱い抗HIV-1活性を示した。しかしながら,HIV-1感染細胞内ウイルス量への影響が無かったことから,これら多糖類はHIV-1の初期感染を抑制すると考えられた。さらに,硫酸基を持つ化合物が血中のアルブミン(BSA)により抗HIV-1活性が阻害された報告より,10%FBSおよび50%FBS存在下でHIV-1初期感染を検討した。アスコフィラン,フコイダンの抗HIV-1活性が50%FBSにおいて低下したことから,これら海藻由来多糖類の抗ウイルス活性は非特異的であると考えられた。
著者
西山 宗六 中村 俊郎
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

基礎疾患を有さない貧血女性37名(年齢22.3±4.3歳)を対象に種々の貧血マーカーと亜鉛動態との関連を検討した結果、女性の亜鉛欠乏性貧血の診断基準は、(1)ヘモグロビン12.0g/dl以下、赤血球数380×10^4/mm^3以下、総鉄結合能(TIBC)380μg/dl未満の正球性正色素性貧血、(2)血清亜鉛の低下は必ずしも認めない、(3)正球性正色素性貧血を呈する他の疾患を除外する、(4)亜鉛欠乏と同時に鉄欠乏を伴うことが多い、とすることが妥当であると考えられた。つぎに上記診断基準を満たす中年女性の貧血患者への亜鉛投与による結果から、亜鉛欠乏性貧血の頻度と治療法を検討した。農村地区住民15,459名(男性7487名、女性7972名)に貧血検査を行ったところ、男性でヘモグロビン13g/dl以下、女性でヘモグロビン12g/dl以下の貧血患者は男性の7.0%、女性の14.1%であった。上記診断基準を満たす亜鉛欠乏性貧血が疑われる患者は貧血者男性の54.2%(全体の3.8%)、女性の41.1%(全体の5.8%)であった。これらの貧血患者を鉄投与群(n=15)、亜鉛投与群(n=21)、鉄と亜鉛投与群(n=16)に分けて8週間治療したところ、鉄と亜鉛投与群のみ有意の貧血の改善を認めた。亜鉛投与群では血清鉄100μg/dl以上、フェリチン40ng/dl以上を有したものは亜鉛単独での貧血の改善が見られた。したがって亜鉛欠乏性貧血の治療は(1)フェリチン40ng/dl以上の患者では亜鉛製剤34mg/日、(2)フェリチン40ng/dl未満では亜鉛製剤34mg/日、鉄製剤100mg/日の投与が妥当であると考えられた。