著者
篠塚 友一
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

日本では少子高齢化の進行に伴い、世代間の利害対立が深刻化している。世代間衡平性の倫理による利害調整原理の提供は、厚生経済学の喫緊の課題である。また、テール・リスクも世代間衡平性と深く関わっている。地球温暖化による気候変動や東日本大震災のような大規模地震が起こる確率は低いが社会に甚大な損害を及ぼす潜在的危険性がテール・リスクである。テール・リスクの政策評価には、将来世代の効用の割引率選択が決定的に重要であるため、世代間衡平性の問題が生ずるのである。本研究では、厚生経済学・社会的選択理論の枠組みで、気候変動や大規模地震などのテール・リスク評価の問題を考察する。
著者
木村 勝彦
出版者
筑波大学
雑誌
哲学・思想論集 (ISSN:02867648)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.31-52, 1998

一 カントは宗教について、あるいは宗教的な事柄について実に多くのことを語っている。そして、宗教をめぐるカントの言説は、批判哲学の確立と決して無関係なものではなく、批判哲学そのものの目指すところと深く関わり、むしろそれを一貫して導き続けているのである。 ...
著者
横山 明弘
出版者
筑波大学
雑誌
人文科教育研究 (ISSN:09131434)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.23-31, 1991
著者
田中 和世
出版者
筑波大学
雑誌
筑波フォーラム (ISSN:03851850)
巻号頁・発行日
no.68, pp.98-100, 2004-11

イランのパーレビ王朝が倒れたいわゆるイランイスラム革命のとき、米国の情報機関はその動きがあることをよく察知していなかったという。その原因の1つは、米国の情報機関が英語を堪能に話すイランの人たちに情報源の多くを頼っていたからだという話がある。これは、かなり以前、新聞か何かで ...
著者
長田 年弘 篠塚 千恵子 中村 るい 河瀬 侑 小堀 馨子 坂田 道生 高橋 翔 田中 咲子 中村 友代 福本 薫 山本 悠貴
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

古代ギリシア・ローマ美術史における、広義の「祈り」(「嘆願」、「崇拝」、「オランス」)図像について、作例を検証した。特にギリシア時代の「嘆願」と、ローマ時代の「オランス」に、女性を「祈り」の主体とする作例数が多いことに着目し、社会的弱者の「祈り」と、道徳等の社会規範との関わりに目を向けた。小堀馨子(古代宗教史)は専門的見地から参加し、「命乞い」などのネガティブな価値判断を与えられた「嘆願」図像が、「敬虔さ」を表すポジティブな「崇拝」および「オランス」図像に転用された現象について検討を行った。期間中に5回の研究例会を開催し、最終的な研究成果に関して報告書を編集、刊行、専門研究者に配布した。
著者
水嶋 英治 吉田 右子 宇陀 則彦 白井 哲哉 逸村 裕 大庭 一郎 阪口 哲男 原 淳之 平久江 祐司 松村 敦
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究はアーカイブ技術を導入し「21世紀図書館情報専門職養成研究基盤アーカイブ」を構築するとともに日本の図書館専門職養成史を再検討することを目的とする。筑波大学図書館情報メディア系の前身組織関係資料の解明に向け、図書館情報専門職教育関係史料に関して包括的研究を実施した。本研究で遂行した研究課題は(1)文献資料・実物資料の精査と電子化のための選別・整理および文献資料補足のための聞き取り調査(2)現物資料の整理・展示および組織化、文献資料の部分的電子化、多言語インタフェース設計(3)図書館職養成史に関わる現物資料群の同定とアーカイブ活用可能性の検討(4)図書館情報学教育史の批判的再検討である。
著者
若林 啓
出版者
筑波大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

構文解析は,言語などの系列データから「自然なまとまり」を抽出し構造化する系列解析技術である.従来の構文解析モデルは,対象の系列が長くなると極端に計算時間が増加する問題があり,ビッグデータへの適用は困難であった.本研究では,従来の構文解析モデルを階層的確率オートマトンと呼ばれる,系列長に対して線形な計算時間で解析可能なモデルに等価変換する手法を確立した.この変換によって長い系列の近似構文解析を高速に実行できることを示し,文章の名詞句抽出やフレーズ抽出の応用において高速かつ効果的な解析を実現する手法を確立した.
著者
前野 哲博
出版者
筑波大学
雑誌
筑波フォーラム (ISSN:03851850)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.7-9, 2002-03

雑木林や小川に囲まれたのどかな農村地帯にある集落には、白塗りの壁、立派な門構えを備えた瓦葺きの大きな家が並んでいる。まるで時代劇に出てきそうな古いたたずまいをみせる街並みである。ところがふと眼を転ずると、通りを挟んだ反対側には、 ...
著者
五十嵐 悠紀
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本研究ではコンピュータを用いて手芸作品の設計を支援する研究を行っている.学術的にはモデリングを行いながら並行してシミュレーションを行うことで,布や毛糸など素材の特性を活かしたモデリングを効率良く行うことができることを提案してきている,身近な手芸作品を例に挙げ,スケッチインタフェースを用いて物理的制約の下でのモデリングツールをいくつか提案することでこの手法の有効性を示してきた.本研究によりこれまで初心者ではできなかった手芸作品の設計(デザイン1をコンピュータで支援することが可能になり,これは手芸分野への大きな貢献であると言える.今年度は昨年度から引き続き、ビーズデザインの設計支援および制作支援について研究を行った.我々の開発したBeadyシステムを利用することで,子どもや主婦でも簡単に自身のオリジナルのビーズデザインを設計することができる.また,従来の2次元の制作図ではなく,3次元CGを用いた制作支援により制作も簡便になるように工夫した.以下に詳細を記す.3次元ビーズ作品のデザインおよび制作のためのインタラクティブなシステムを提案した.ユーザはまずビーズ作品の構造を表すメッシュモデルを制作する.それぞれのメッシュの辺はビーズ作品のビーズに対応している.システムはユーザのモデリング中に常に近傍のビーズとの物理制約を考慮して辺の長さを調整する.システムは次にメッシュモデルを適切なワイヤーつきのビーズモデルへと変換する.ワイヤー経路の計算のためのアルゴリズムも提案した.システムは手動でビーズ作品を制作するための1ステップごとの制作手順ガイドを提示する.前年に研究開発したインタラクティブにデザインするインタフェースの他に,主に六角形から成るようにデザインしやすい六角形メッシュモデル用インタフェースの提案,既存3次元モデルからの自動変換アルゴリズムの提案を行った.
著者
五十嵐 悠紀
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究ではコンピュータを用いて手芸作品の設計を支援し、製作過程も支援する研究を行ってきた.今年度はパッチワークを題材にデザイン・製作を支援するシステムPatchyを作成し、研究・開発を行った。パッチワークは布をつなぎ合わせてデザインを作成する広く普及している手芸の1つである。ところが、出来上がり図は縫い合わせたあとでしか見ることができず、色合わせや柄合わせなどはあらかじめ出来上がりを想像してデザインするしかなかった。通常は鉛筆画でデザインをしたあと、色鉛筆で布に対応するような色を塗って配色を確かめてから実際に作ることが多く、初心者はデザインに長けた人がデザインした図柄を真似て作ることが多い。そこで我々はシステムを使って外形をデザインし、デザインした閉じた領域の中に、画像ファイルをドラッグアンドドロップすることで出来上がり図を試行錯誤してみることのできるシステムを提案する。画像ファイルには、実際に使いたい布をスキャンしたテクスチャ画像を用意し、これを用いる。ユーザは布と布の切り替え線(実線)の他、ステッチとしての縫目(点線)もデザインすることができる。既存研究のつまんで引っ張る機能[Igarashi et al. 2005]を実装してあり、ユーザが外形をつまんでひっぱることで、テクスチャもリアルタイムに追従する。内部的なデータ構造としては2次元であるが、ピクセルごとに擬似的な法線方向を計算し、法線と光線方向を加味した色合いを計算し、描画している。このようにすることで、あたかも実際に縫い合わせたかのようなぷっくりとした立体的な描画を、一般家庭に普及しているような安価なノートPCにおいてリアルタイムで実現している。
著者
新町 貢司
出版者
筑波大学
巻号頁・発行日
2001

標題紙、目次、凡例 -- 序論 -- 第1章 近代ヨーロッパの神話学 -- 第2章 ドイツ・ロマン派の神話学 -- 第3章 進歩史観と二元論に基づく神話解釈 -- 第4章 非合理への洞察と二元論の否定 : ニーチェの『ツァラトゥストラ』 -- 第5章 母権制とオリエント・アジア的なものの表象 : ホーフマンスタール、ヘッセの場合 -- 結論 非合理の発見とヨーロッパ精神の動揺 -- 註 -- 引用文献・参考文献一覧表
著者
林 純一
出版者
筑波大学
雑誌
筑波フォーラム (ISSN:03851850)
巻号頁・発行日
no.66, pp.41-45, 2004-03

21世紀は生物学の時代といわれ、クローン人間、再生医療、遺伝子治療、遺伝子改変作物、環境保全など、生物学の話題が連日のように社会をにぎわわせている。もはや生物学は、「受験」の世界ではなく「研究」の世界では ...
著者
辻 慶太
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

日本の大学図書館では,学生はWikipediaのページを閲覧し,図書館の蔵書は閲覧せずに退館する傾向がある。Wikipediaは調べ物や学習にとって有用な情報源であるが,図書館の蔵書も利用した方がより深い知識が得られるはずである。もしWikipediaの各ページで,そのページに関連する図書館蔵書が表示されたら,学生はその図書を利用するかもしれない。そのような前提の下,本研究では図書館内のパソコンのブラウザ上でWikipedia閲覧者に図書推薦を行うアドオンを開発している。上記アドオンは,(1)各Wikipediaページの内容を把握し,コンピュータ処理可能な形で表現して,(2)各蔵書の内容とのマッチングを行い,内容の類似などに基づいて,適切な推薦図書を決定する。平成28年度には,このうち(1)に関する研究を行い,国際会議QQML 2017 (9th Qualitative and Quantitative Methods in Libraries International Conference) で発表した。具体的には“Automatic Classification of Wikipedia Articles by Using Convolutional Neural Network”というタイトルで,8ページの国際会議論文を,5月25日にアイルランドのリムリックで発表した。内容としては,Wikipediaの3,985ページに対して日本十進分類法(以下,NDC)の分類コードを付与し,300ページをテスト用,残り3,685ページを学習用とし,深層学習の畳み込みニューラルネットワークを用いて,NDCコードを付与する実験等を行った。結果,87.7%という十分な精度を得た。
著者
杉本 重雄 永森 光晴 森嶋 厚行 柴山 明寛 三原 鉄也
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

昨年度の研究から、ポップカルチャや途上国の文化財等の文化的コンテンツの利活用性向上には、よく組織化されたアーカイブデータとWeb上の多様なコミュニティ発信情報を横断的・統合的に扱う必要があるとの知見を得た。そのため、アーカイブ横断的・統合的なメタデータ集約技術研究における重要な対象であると判断し、東日本大震災アーカイブに加えてそれらも本研究の中心的な対象として研究を進めることとした。以下、先述の主要研究課題に基いて述べる。課題1:震災アーカイブに関して、第3者による非高品質なメタデータを基礎としつつ、利活用性を高めるための手法が中心課題である。ここでは主題語の共起関係によるメタデータ集約、メタデータから取り出した地域の組織や施設等を表す語に基づく地域指向のオントロジーや地理的実体のLODデータの作成を行い、一定の成果は出したがこれら全体をまとめることは次年度に残されている。文化的コンテンツについては、それぞれの領域で基本的なメタデータ集約のためのモデルを開発し、かつ国際連携も行っている。課題2:津波ディジタルライブラリ(TDL)の研究グループとの連携を進めた。TDLのテキストと前述の地理的実体LODを利用することで過去の災害とのリンク付けに関する研究を進めることができると考えている。文化的コンテンツについては、これまでの成果が、マンガ等を中心としたWebリソースと文化庁のメディア芸術データベースとの結びつけ、国際連携によるモデルの精緻化と発信につながると考えている。課題3:TDLの利用を進めること、デジタルアーカイブネットワーク(DAN)等を利用した実務者と結びつく活動、メタデータ作成や編集におけるクラウドソーシング技術の利用に関わる研究等をコミュニティ連携に関わる研究として進めたいと考えている。また、国内外の研究者との連携、海外発信については想定以上に進んでいると考えている。
著者
鈴木 大三
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

2年目の平成29年度では,「新たな類似フレーム間予測」や「新たな差分信号適応変換」を実用化するための低演算かつ高効率な基盤技術となり得る手法を実現し,当該分野のトップジャーナルであるIEEE Transactions on Circuits and Systems for Video Technologyに投稿,採択された.具体的には主に以下の2点である.(1)低演算かつ高効率な多次元変換の実現類似フレーム間予測や差分信号適応変換を行うために,高性能な信号解析は不可欠である.しかしそういった多次元信号解析を高性能に行う変換は演算量が増える傾向があり,あまり現実的であるとは言えない.そこで音響符号化標準規格MP3などに用いられる修正離散コサイン変換(MDCT)に注目し,そのMDCTおよびそれに関係する修正サイン変換(MDST)とを2次元信号へ応用する際の関係性を用い,また信号端での処理を周囲画素の平均値を用いることで存在しない方向成分を抑制し,その最小タイリング処理を考慮することにより,低演算かつ高効率に処理を行える多次元変換を実現した.(2)低演算かつ高効率な2次元リフティング構造の実現回転行列の組み合わせによる2次元変換をより低演算かつ高効率で処理できるリフティング構造を新たに提案した.画像符号化標準規格JPEG XRに使用されている重複変換の実現にも応用可能であり,実際にJPEG XRに組み込み,その有用性(低演算かつ高効率で互換性も備えている)を示した.映像符号化においては高速かつ高性能な処理手法が重要であり,この構造も基盤技術として応用が期待される.
著者
竹谷 悦子
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は1930年代のアフリカ系アメリカ文学を、環太平洋という新しい文学の地政学のなかに布置し、グローバルな視座からその再考を試みるものである。とりわけ、真珠湾攻撃までの約十年間に、アフリカ系アメリカ人たちが思い描いたアジア/日本との超国家的連帯を掘り起こし、「ブラック・オリエンタリズム」の系譜を体系的に分析することを試みた。エドワード・サイードが西洋のコロニアル言説として定義したオリエンタリズムを、(西洋の)黒人とアジアとのあいだの複雑で、様々なねじれを伴う関係性をあぶりだすために援用し、アフリカ系アメリカ文学と植民地・帝国主義言説とのかかわりを多角的に考察した。この二年間に主な分析対象とした作家はジェイムズ・ウェルドン・ジョンソンおよびジョージ・サミュエル・スカイラーである。環太平洋というトポスは、アジアと短絡的に同一視されてはならず、むしろ様々な文化の接触・折衝がおきるコンタクト・ゾーンとして捉える必要がある。ジョンソンは、米国の「裏庭」とされるカリブ海を環太平洋地域として再布置し、米国のニカラグア占領と日本の満州占領とのあいだの歴史的共鳴のなかに、アフリカ系アメリカ人と植民地・帝国主義の共犯性と対抗言説への可能性を見いだしていった。またスカイラー分析では宗教の領域を横断しつつ、人種戦争ファンタジーに焦点をあて調査を行なった。スカイラーの近未来小説『黒人帝国』執筆の動機となったムッソリー二のエチオピア侵攻-第二次イタリア・エチオピア戦争-が与えた歴史的インパクトを、スカイラーが編集主幹を務めた『ピッツバーグ・クーリエ』を含む主要黒人紙から明らかにし、作品や報道に表出された人種戦争ファンタジーの源泉となっていた「日本」の象徴的/政治的機能を解明した。
著者
征矢 英昭 朝田 隆
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

海馬神経新生を促進するためには、運動ストレスを伴わない低強度運動が有効である一方、運動ストレスが生じる高強度運動ではその効果が消失した。さらに、低強度運動により海馬で増加する神経新生に対しコルチコステロン(CORT)がその受容体であるGR、MRを介して促進的に作用(栄養効果)し、高強度運動ではGRを介した抑制作用が優位となることが明らかとなった。CORTは運動強度特異的に生じる海馬可塑性の決定因子として重要な役割を担うことが示唆された。