著者
水野 由多加
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.157-179, 2012-03-31

新しい社会情報環境とマス・メディアの変化によって、広告を可能とさせる社会条件に関わる今日的な社会現象が生起してきた。本研究ノートは、今後の議論のために準備・編集された調査資料である。\nSome contemporary social phenomena have been occurred concerning allowance and conditions that can be advertising done, according to the changing new socio-technological environments and mass media. These are some investigative documents edited by the author to prepare the further discussions.
著者
成田 太一 小林 恵子
出版者
一般社団法人 日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.35-44, 2017 (Released:2018-12-20)
参考文献数
53
被引用文献数
1

目的:地域で生活する統合失調症患者のリカバリーの概念を分析し定義を明らかにするとともに,支援を行ううえでの概念の活用可能性と課題を検討することを目的とした.方法:地域で生活する統合失調症患者のリカバリーについて,具体的な記述のある国内外の研究論文を対象として検索を行った.分析方法は,Rodgersの概念分析の方法を用い,リカバリーの概念を構成する属性,概念に先立って生じる先行要件,概念に後続して生じる帰結を表す箇所を抽出し,内容の共通性と相違性に基づいて分類し,構成概念を整理した.結果:地域で生活する統合失調症患者のリカバリーの構成概念として【新たな目標や願望をみつけ,主体的に生活する】【自分自身を客観視し,肯定的なセルフイメージをもつ】【主体的に支援を活用し,病状が安定する】【地域社会で相互関係を築き承認される】の4つの属性と,8つの先行要件,4つの帰結が抽出された.考察:地域で生活する統合失調症患者のリカバリーの定義は,「統合失調症患者がQOLを向上させるために希望や目標に向かって支援を活用し,体調や服薬の主体的な管理により病状を安定させながら,地域社会のなかで相互関係を構築するプロセス」とした.リカバリーを基盤とした支援により,当事者中心のケアを展開する一助になると考えられ,当事者の思いを引き出す支援技術や,当事者の視点でリカバリープロセスに寄り添う支援が重要である.
著者
福岡 安則 黒坂 愛衣
出版者
埼玉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
日本アジア研究 : 埼玉大学大学院人文社会科学研究科博士後期課程 (学際系) 紀要 = Journal of Japanese & Asian studies (ISSN:13490028)
巻号頁・発行日
no.18, pp.167-184, 2021

2012 年6 月18 日,福岡安則と黒坂愛衣は,熊本県合志市にある国立ハンセン病療養所「菊池恵楓園」の面会人宿泊所「渓楓荘」に,地元合志市在住の木村チズエさん(1932 年9 月13 日生,聞き取り時点で79 歳)と森三代子さん(1934 年4 月1 日生,聞き取り時点で78 歳)にご足労ねがって,聞き取りをさせていただいた。 おふたりは,菊池恵楓園附属保育所「龍田寮」の最後の保母である。 二人とも,昭和一桁の年代に農村部に生まれた女性にもかかわらず,親の理解と本人の向学心により,家庭がさほど裕福でもなかったのに,戦後の学制が旧制から新制に切り替わる時期に,高等学校を卒業している。そして,木村は 1952 年 12 月に,森は 1953 年4 月に「龍田寮」に勤める。この時期は戦後の「無癩県運動」が渦巻いていた。にもかかわらず,二人の親は〝結核は怖いが,ハンセン病はそうそうウツルものではない〟と娘の就職を歓迎している。そのような認識が,ハンセン病療養所の地元住民の一部とはいえ,明確にあったことは興味深い事実である。 龍田寮には,親がハンセン病を発症して恵楓園に収容されて,引き取り手のない,ゼロ歳児から中学生までの子ども約 70 人が暮らしていた。1953 年の終わりに,恵楓園の宮崎松記園長が,龍田寮の小学生たちが地域の黒髪小学校への通学を認められず,龍田寮内の分教場に押し込められていることを不当とし,新 1 年生から本校への通学を求めたことから,「黒髪校事件」とも「龍田寮事件」とも呼ばれる騒ぎが勃発する。地元住民の多数派が通学拒否の反対運動を組織し,さらには龍田寮自体の閉鎖を求める排斥運動を強力に展開したのだ。 お二人の語りからは,多数派住民の偏見差別から子どもたちを守ろうとし,龍田寮が閉鎖になったあとも,恵楓園の事務官として勤務し続け,あてがわれた官舎を,龍田寮出身の子どもたちが盆や正月に〝里帰り〟できる場として維持し続けた生涯がうかがわれる。かつて〝未感染児童〟とラベル貼りされた子どもたちに対して,献身的な姿勢を揺るがせることなく,最後まで寄り添い続けたお二人の生きざまには,頭がさがる。 On June 18, 2012, Yasunori Fukuoka and Ai Kurosaka visited Keifu-So, the visitors’ lodge in Kikuchi Keifuen, a national Hansen’s disease sanatorium in Koshi City, Kumamoto Prefecture to meet Ms. Chizue Kimura (born September 13, 1932, 79 years old at the time of hearing) and Ms. Miyoko Mori (born April 1, 1934, 78 years old at the time of hearing). These two are the last nursery teachers at Tatsuta Dormitory, the orphanage attached to Kikuchi Keifuen. Despite being women born in a rural area in the early Showa era, both of them graduated from senior high school which was changed from the old system to the new one after the Second World War. Although their families were not so wealthy, their parents’ support and their willingness to study made this possible. Kimura worked at Tatsuta Dormitory in December 1952 and Mori in April 1953. During this period, “Leprosy-Free Campaign” was swirling. But their parents supported their daughters’ job, saying that tuberculosis is scary, but leprosy is not contagious. It is interesting that they had such recognition even though they were towners near the leprosy sanatorium. In Tatsuta Dormitory, about 70 children from zero-year-olds to junior high school students, whose parents had Hansen’s disease and were admitted to Keifuen, lived in the dormitory. At the end of 1953, the director of Keifuen, Dr. Matsuki Miyazaki, appealed that it was unfair that elementary school students in Tatsuta Dormitory were not allowed to attend the local Kurokami Elementary School, and demanded new first graders’ enrolment to the local school, and then so-called “Kurokami School Incident” or “Tatsuta Dormitory Incident” broke out. The majority of local residents organized a movement to refuse Tatsuta Dormitory members’ enrolment to the school, and also strongly demanded the shutdown of Tatsuta Dormitory itself. From the story of the two, we learned that they tried to protect the children from the prejudice and discrimination of the majority residents, and even after the Tatsuta Dormitory was closed, they continued to work as the clerk of Keifuen and keep their official residence as the home where the children from Tatsuta Dormitory can come back during the Bon Festival or New Year holidays. For the children who were labeled as “Uninfected Children”, the two dedicated their whole lives without shaking their devotion to the children.
著者
伊丸岡 俊秀 松村 信哉
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第18回大会
巻号頁・発行日
pp.80, 2021-03-15 (Released:2021-03-15)

方向音痴の人は「方向感覚が劣る」、「注意散漫」、「何も見ていない」など何かに劣っている人であると扱われることが多いが、それは偏った見方であり、実は優れたところがあるのではないか。本研究ではこのような仮説のもとで、ある町並みの3Dビュー動画を刺激として方向音痴群と非方向音痴群に対して光景視聴時の視線計測とSD法による評価課題を行った。その結果、評価結果から抽出された因子には群間の違いが見られ、非方向音痴群では評価に町並みを構成する建造物の形状や材質が影響しているのに対して、方向音痴群では町並みに関する感性的評価が影響しているという可能性が示された。
著者
Koga T. Cronin S. B. Dresselhaus M. S. Liu J. L. Wang K. L.
出版者
American Institute of Physics
雑誌
Applied Physics Letters (ISSN:00036951)
巻号頁・発行日
vol.77, no.10, pp.1490-1492, 2000-09-04
被引用文献数
162

An experimental proof-of-principle of an enhanced Z3DT (thermoelectric figure of merit) is demonstrated using (001) oriented Si/Ge superlattices. The highest value of the experimental Z3DT at 300 K for a (001) oriented Si(20 Å)/Ge(20 Å) superlattice is 0.1 using κ = 5 Wm−1 K−1, for the in-plane thermal conductivity, which is a factor of seven enhancement relative to the estimated value of Z3DT = 0.014 for bulk Si. The good agreement between experiment and theory validates our modeling approach (denoted as “carrier pocket engineering”) to design superlattices with enhanced values of Z3DT. Proposals are made to enhance the experimental values of Z3DT for Si/Ge superlattices even further. © 2000 American Institute of Physics.
著者
耳塚 佳代
出版者
一般社団法人 社会情報学会
雑誌
社会情報学 (ISSN:21872775)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.29-45, 2020

<p>2016年のアメリカ大統領選を機に,「フェイクニュース」の拡散が社会問題化した。オンラインの有害な情報に対する懸念が高まり,メディアリテラシー教育にも変化が求められている。本稿は,「フェイクニュース」問題をめぐる国際的議論の方向性と海外におけるメディアリテラシーの新たな取り組みを精査し,日本の現状と課題を考察する。グローバルな議論においては,「フェイクニュース」現象が政治利用されていることから,前提として,この用語を使わずに情報区分を整理した上での偽情報・誤情報対策が主流となっている。一方,日本では依然として「フェイクニュース」がさまざまな情報を含む形で使用されている現状がある。また日本のメディアリテラシー教育は,新聞やテレビなど主にマスメディアが発信するメッセージを批判的に読み解くというアプローチが長く主流であった。しかし,党派的分断が進み,メディアに対する信頼が低下する社会においては,従来のアプローチが過度なメディア・既存体制不信と結びつき,自分の信念に合致する偏った情報のみを信じる素地にもなりかねない。こうした点を踏まえた上で,一定の効果が証明されている海外の取り組みを参考にしながら,日本のメディア環境・社会背景を考慮した「フェイクニュース」時代のメディアリテラシー教育について考えていくことが重要である。</p>
著者
河原 弘和 吉田 英一 山本 鋼志 勝田 長貴 西本 昌司 梅村 綾子 隈 隆成
雑誌
日本地質学会第128年学術大会
巻号頁・発行日
2021-08-14

【背景】 岩石と地下水の反応で生じるリーゼガング現象は、岩石中に特徴的なバンド模様を展開する。近年、そのバンドが岩石-流体反応の化学的特性や反応のタイムスケールを推測する手がかりになると指摘されている[1]。 豪州北部キンバレー地域東部に産するゼブラロックは、リーゼガングバンドの一例として知られる。ゼブラロックはエディアカラ紀のシルト岩層中にレンズ状に産し、酸化鉄鉱物(赤鉄鉱)からなる数mm〜2 cm幅の赤褐色のバンド模様を示す。ゼブラロックが産する露頭は不連続ながら50 km以上に渡って分布し、広域の地質イベントに伴って生じた可能性がある。これまで、ゼブラロックに関する研究は数例あるが[2][3]、その形成プロセスは未解明である。 本研究では、ゼブラロックの成因を基に鉄バンド形成時の岩石-流体反応の化学的条件を述べる。さらに、ゼブラロック形成に関連した地質イベントや鉄バンドの金属鉱床探査への応用の可能性を提案する。【結果】 薄片観察、XRD分析及びラマン分光分析の結果、ゼブラロックの主要構成鉱物は、極細粒の石英粒子及び粘土鉱物(カオリナイト、明礬石)である。特に粘土鉱物について、ほぼ明礬石からなるゼブラロックが本研究初めて記載され、(1)カオリナイト (Kao) に富むタイプと、(2)明礬石 (Alu) に富むタイプの2種類に分類された。XRF分析による両タイプの全岩組成は明瞭に異なり、特に鉄バンドのFe濃度は、Kaoタイプが~9%、Aluが~30%と大きな差が認められた。 XGT分析による元素マッピングでは、鉄バンド中のFe濃度は一様ではなく、バンドの片側に偏在した非対称の濃度ピークとして分布している。この傾向は両タイプのゼブラロックで共通して認められ、一つのサンプル中におけるピークの偏りは全て同じ方向であった。【考察】 ゼブラロックの粘土鉱物組み合わせの違いは、高硫化系浅熱水鉱床の周囲で、熱水の温度やpHの違いに応じて発達する変質分帯(珪化-明礬石帯及びカオリナイト帯)とよく一致している。これはゼブラロックが酸性熱水変質を被ったことを示している。さらに、Kaoタイプに比べてAluタイプに高濃度に含まれる鉄バンドのFeの存在は、Feの溶解度の温度依存性を反映し、Aluタイプの形成に関与した流体の方がより高温であったことを示唆する。実際に、変質分帯において、明礬石帯はカオリナイト帯より熱水系源に近く、より高温(かつ低pH)の流体が関与している。これらの結果から、ゼブラロックの粘土鉱物組み合わせとFe濃度の違いは熱水系のモデルと調和的であり、酸性熱水変質とバンド形成は同じイベントで生じたと考えられる。 ゼブラロックの元素マップで認められた鉄バンド中のFe濃度ピークは、浸透した流体と原岩との反応による鉄沈殿のリアクションフロントと見なすことができる。これは、Feを含む酸性熱水流体が原岩の堆積岩中に初生的に含まれていた炭酸塩鉱物との中和反応し、それに伴うpH上昇で、流体中のFeが酸化沈澱したことで説明することできる[4]。なお、ゼブラロック中に炭酸塩鉱物はほぼ含まれていないが、同層準の他地域の露頭では炭酸塩鉱物の存在が確認されている。 ゼブラロック形成に関与した熱水活動の候補として、豪州北部に分布するカンブリア紀のカルカリンジ洪水玄武岩の活動が挙げられる。その活動時期は初期−中期カンブリア紀の大量絶滅とほぼ同時期で、地球規模で表層環境に影響を与えたイベントとして注目されている。本研究地域では、ゼブラロックを胚胎する堆積岩層において、それより上位の年代で生じた火成活動はこの一度だけであることも本知見を支持する。【結論】 本研究によって、ゼブラロックの成因について以下の点が明らかとなった:・ゼブラロックは酸性熱水活動に関連して形成した・鉄バンドは、鉄を含む酸性熱水と原岩中の炭酸塩鉱物の中和反応によるpH緩衝によって生じたと考えられる・ゼブラロックの形成に関与した熱水活動は、カンブリア紀のカルカリンジ洪水玄武岩と関連する可能性が高い また、鉄バンド中の一方向のFe濃度ピークの偏りは浸透した流体の流向を示している[1]。従って、流向を逆に辿ることで、熱水金属鉱床が賦存することのある熱水系の中心の方向を推測できる可能性がある。熱水変質分帯と熱水の流向の両方を記録するゼブラロックは、熱水鉱床探査の有効な手がかりになると期待される。【文献】 [1] Yoshida et al., 2020: Chem. Geol. [2] Loughnan & Roberts, 1990: Aust. Jour. of Earth Sci. [3] Retallack, 2020: Aust. Jour. of Earth Sci. [4] Yoshida et al., 2018: Science Advances

1 0 0 0 OA 宝生流謡本

著者
宝生九郎 著
出版者
江島伊兵衛
巻号頁・発行日
vol.(21) 放生川,箙,藤,籠太鼓,国棲, 1911