著者
川村 晴美 鈴木 英子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.131-141, 2014-06-20 (Released:2014-07-03)
参考文献数
20
被引用文献数
3

目的:看護職のワークライフバランス(以下,WLB)とバーンアウトの関連を明らかにする.方法:首都圏の一般病院で国,公的医療機関,社会保険関係団体,医療法人,会社の設置主体より各1施設選定した5病院に勤務する看護職1,030人を対象とし,自記式質問紙調査を実施した.調査内容はバーンアウト(日本版MBI-HSS)22項目,属性,看護職のWLB指標調査24項目とした.結果:有効回答は798人(有効回答率77.5%)であった.平均年齢は33.8±8.1歳でWLBとバーンアウト総合得点の平均はそれぞれ10.2, 10.9であった.WLB総合得点は,会社が国,公的医療機関,社会保険関係団体,医療法人より有意に高かった(p<0.01).階層的重回帰分析を行った結果,実務職種,残業時間,子どもの有無,WLB認識,仕事と仕事以外の切り替え,目的を持って取り組んでいること,相談相手の有無,WLBとの有意な関連が認められた.結論:設置主体別では,会社はWLBの実現度が高い可能性が明らかになった.また,仕事と仕事以外の切り替えや目標を持って取り組むこと,WLB実現度を上げることによりバーンアウトが予防できる可能性が示唆された.
著者
山口 知宏
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.136, no.2, pp.197-202, 2016-02-01 (Released:2016-02-01)
参考文献数
17
被引用文献数
1

A drug's effectiveness against a disease depends not only on its interaction with receptors but also its pharmacokinetics (absorption, distribution, metabolism, and extrusion; ADME). ATP binding cassette (ABC) multidrug transporters are important proteins that influence the ADME properties of a drug, especially the ABC transporter subfamily B member 1 (ABCB1). Elucidation of the molecular mechanisms of ABCB1 will contribute to our understanding of the molecular basis of ADME. Human ABCB1 is expressed in many organelles, and exports various substrates from cells using energy generated by its ATP hydrolase (ATPase) activity. The ATPase activity depends on the concentration of the transport substrates, and the characteristic behavior of the substrate-dependent ATPase activity can be related to the molecular mechanism of ABCB1. Recently, we have revealed the molecular mechanisms of a eukaryotic ABCB1 homolog, CmABCB1, based on structural and functional studies. In this review, I discuss the relationship between key structural features and the behavior of transport substrate-dependent ATPase activity of CmABCB1, including its role in determining the molecular basis of ADME.
著者
Yusuke KITAMURA Takaaki TANIGUCHI Miwako TSUTSUMI Leanddas NURDIWIJAYANTO Tomoya MATSUO Yousuke KATSUDA Toshihiro IHARA
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
Analytical Sciences (ISSN:09106340)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.397-400, 2020-04-10 (Released:2020-04-10)
参考文献数
15
被引用文献数
1

A fluorescent dye-labeled DNA probe was adsorbed and quenched on the monolayer of RuO2 nanosheets. Significant fluorescent recovery was observed upon the addition of complementary DNA due to desorption of the probe from the surface of the RuO2 nanosheet through duplex formation. The efficiency of fluorescence recovery was higher than that for graphene oxide, which was known as a quencher-free platform for the detection of nucleic acids in a homogeneous solution.
著者
Yuki TOGO Kazunori NAKASHIMA Wilson MWANDIRA Satoru KAWASAKI
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
Analytical Sciences (ISSN:09106340)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.459-464, 2020-04-10 (Released:2020-04-10)
参考文献数
16
被引用文献数
4

We developed a novel metal adsorbent composed of bio-based materials, cellulose and a protein. The approach involved the immobilization of a hexa-histidine tag (His6), which shows an affinity for an intermediate acid (metal ion) in Hard and Soft Acids and Bases (HSAB) theory, on cellulose by fusing with a carbohydrate-binding module (CBM). The results show that CBM-His6-bound cellulose has adsorption selectivity reflecting the original properties of His6. Additionally, we prepared three configurations of CBM-His6 proteins, which were subsequently immobilized on filter paper for Ni2+ ion adsorption. Of these configurations, we found that the protein containing two His6 tags at each terminus (N– and C–) of CBM exhibited the highest metal adsorption ability. Furthermore, XPS analysis confirmed the binding of Ni2+ ions on the cellulose.
著者
Yasumoto DATE Hiroyuki MASAKI Arata AOTA Kazuhiro SASAKI Yukie NAMIKI Thomas R. GLASS Naoya OHMURA
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
Analytical Sciences (ISSN:09106340)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.453-457, 2020-04-10 (Released:2020-04-10)
参考文献数
27
被引用文献数
1

A simplified two-step mercury extraction procedure enabled the selective and reproducible mercury recovery from actual coal fly ash (CFA). The optimized extraction procedure involving conventional enzyme-linked immunosorbent assay (ELISA)-based immunoassay allowed the ultra-sensitive quantification of total mercury content in CFA. The total mercury content of 41 CFA samples were successfully determined using the above-mentioned method, and the results were in agreement with those obtained by standard instrumental analysis (thermal decomposition atomic absorption spectrometry) within a 15% coefficient of variation. Our method for total mercury quantification is not only simple but suitable for management of the mercury content at coal-fired electric power plants and landfill sites, which deal with large amounts of waste CFA.
著者
前角 和勇 上條 敦子 大口 和枝 寺井 直樹
出版者
信州公衆衛生学会
雑誌
信州公衆衛生雑誌
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.30-31, 2010-08

インフルエンザの感染予防対策については、手洗い、うがい等の感染予防、学校での学級閉鎖等の集団の閉鎖による感染拡大防止などが効果があるといわれている。そこで、昨年発生した新型インフルエンザ(A/H1N1)の流行時において、学校(小・中)から報告があったインフルエンザによる欠席者(出席停止者)の推移から、学年閉鎖及び休校措置の効果について検証を行った。検証の結果、閉鎖措置は一定の効果があったが、流行早期の閉鎖措置は有効性にばらつきが見られた。
著者
可知 祐次
出版者
日本結晶学会
雑誌
日本結晶学会誌 (ISSN:03694585)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.115-119, 1974-02-20 (Released:2010-09-30)
参考文献数
17
被引用文献数
1
著者
淡野 寧彦
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2020, 2020

<p><b>1.はじめに</b></p><p></p><p> 各地域に存在する中心商店街は,その衰退や今後のあり方について幅広い研究分野から関心がもたれ,かつ身近な地域を知る具体例として教材にもなりうる。報告者もまた,愛媛県松山市の大街道・銀天街商店街を対象として,愛媛大学生に手描き地図を作成してもらい,その特徴についてグループワークなどを通して学生自身に分析・発表させるといった授業を展開している。また,その手描き地図にみられる諸特徴について報告者自身も分析を行い,愛媛大学により近接する大街道商店街に立地する店舗等の記載が多いことや,買物だけでなく娯楽目的の来訪も多いこと,商店街のメインストリート部分がL字状に強調されることなどを示した(淡野,2015)。</p><p></p><p> こうした傾向は毎年継続してみられるものであったが,2019年10月の授業にて作成された手描き地図には,明らかな変化がみられた。すなわち,その作成時点で全国的なブームのなかにあり,数多くの店舗が出現したタピオカドリンク(以下,TD)店に関する記載の増加である。さらに,TD店周辺部に関する描写も,過去のものと比較して詳細になる傾向がみられた。</p><p></p><p> そこで本報告は,全国的なブームを背景としたTD店の相次ぐ立地が,特定地域に対する若年層の意識や行動にどのような影響をもたらしたのかについて考察することを目的とする。主な研究方法は,2018年と2019年の愛媛大学生による大街道・銀天街商店街に関する手描き地図の内容に関する比較と,2019年の受講学生についてはTDの消費に関するアンケート調査も別途実施した。</p><p></p><p><b>2.大街道・銀天街商店街におけるタピオカドリンク店の分布と</b><b>特徴</b></p><p></p><p> 分析対象とした9店のうち8店は,銀天街商店街東端の「L字地区」と通称される場所ないしその近辺に集中立地している。また,9店中7店は2019年の開業であり,ブームの影響を強く感じさせる。各店舗の開店時間は11〜20時頃である。店舗内に15席程度の喫茶スペースを設ける店舗が2店存在したが,商品購入後は店舗外でTDを飲むこととなる店舗のほうが多い。</p><p></p><p><b>3.大街道・銀天街商店街の描かれ方とその変化</b></p><p></p><p> 2019年の手描き地図において,地図中に記載されたTD店舗数の1人あたり平均と標準偏差は,男性(45人)が0.3±0.7店,女性(48人)が1.5±1.3店となり,t検定による1%有意水準においても女性による記述のほうが有意に多い結果となった。なお,手描き地図中に示されたTD店の場所は,実際の立地とおおむね合致していた。</p><p></p><p> 次に,2018年と2019年の手描き地図中に記された全業種の店舗数の平均と標準偏差をみると,大街道商店街では10.4±4.4店から11.4±6.2店に増加したものの有意な差異は認められなかったのに対して,銀天街商店街では5.3±4.6店から7.8±6.1店と有意な増加がみられ(検定方法は同上),TD店の立地が銀天街商店街への来訪や認知の向上に影響していることが推測された。</p><p></p><p> 一方で,2019年受講学生にTDの消費について尋ねたアンケート結果では,女性において消費機会が多いものの,月2・3回以上の消費は女性全体の3割弱にとどまり,分析対象とした店舗の利用割合も30%前後の店舗が多く,必ずしも頻繁にこうした店舗を訪れているわけではない様子もみられた。なお報告当日には,Instagramに投稿された写真からTDと当該地域の関係についての検討も示すこととしたい。</p><p></p><p><b>4.おわりに</b></p><p> TD店の新たな立地は,これまで若年層が訪れる機会の少なかった場所への訪問を促し,その近辺を含む場所への認知向上に結び付きうることが,分析を通じて明らかとなった。ところで今日,社会の変化はますます急速となり,これに対して学術研究がいかに寄与しうるのか,期待と同時に厳しい視線が送られている。本抄録作成時点で,TDと地域の関係性について論じた学術的な分析は管見の限りみられない。一方で,本報告で用いた分析手法は,地理学においてオーソドックスなものが主である。社会における関心が急速に高まる現象に注目し,客観的なデータの獲得を前提としつつも,なるべく速やかに研究分野からの視点やとらえ方を広く示すことに,報告者は学術研究の1つの将来性をみたいと考えている。</p>
著者
今井 瞳良
出版者
日本映画学会
雑誌
映画研究 (ISSN:18815324)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.50-70, 2019 (Released:2020-04-09)
参考文献数
58

本稿は、団地を舞台とした『壁の中の秘事』(1965年)と『現代好色伝 テロルの季節』(1969年)の分析を通して、若松孝二の「密室」の機能を明らかにすることを目的とする。若松の「密室」は、松田政男が中心となって提唱された「風景論」において、「風景(=権力)」への抵抗として重要な地位を与えられてきた。「風景論」における「密室」は、外側の「風景」に相対する「個人=性」のアレゴリーであり、「密室」と「風景」は切り離されている。しかし、若松の団地はメディアによって外側と接続されており、「風景論」の「密室」とは異なる空間であった。『壁の中の秘事』では、「密室」を出た浪人生・ 誠による殺人がメディアを介して「密室」に回帰することで、メディアの回路を提示し、『現代好色伝』は「密室」を出た後のテロを不可視化することで、メディアの回路が切断されている。若松の団地は、 脱「密室」の空間であり、メディアが日常生活に侵入している環境自体を問い直す「政治性」を持っていたのである。
著者
局 博一 花房 真和
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.129-143, 2016-07-31 (Released:2016-09-06)
参考文献数
78
被引用文献数
2

トリコテセン系カビ毒の毒性をT-2トキシンおよびDONを中心にして述べた.これらのトキシンは急性影響および慢性影響として,生体の形態や機能に対して広範囲の毒性をもたらす.in vitro,in vivo の多くの実験系で濃度・用量依存性の細胞障害や臓器障害が報告されている.アポトーシスが広範囲の器官,細胞系列において観察されており,細胞障害における酸化ストレスの役割が注目されている.近年,トリコテセン系カビ毒によるアポトーシスの発現メカニズムや酸化ストレス障害が詳しく調べられている.アポトーシスを起こす機序として,リボソーム-MAPK(JNK/p38),DNA損傷,デスリセプター/カスパーゼ-8の各経路を介する経路が考えられている.
著者
江島 仁子 森 圭子 安藤 布紀子
雑誌
四條畷学園大学看護ジャーナル = Nursing Journal of SHIJONAWATE GAKUEN UNIVERSITY
巻号頁・発行日
pp.61-67, 2017-09

女性の健康問題とセルフケアのあり方を学ぶ講義の中で、コンドームスキル演習を導入し、その教育効果について報告する。対象はA 女子大学文系学部に在籍し、当講義を履修していた学生132名である。コンドームスキル演習を実施した後に、学生が自由記述した感想を分析した。約半数の学生は、「実際に体験できて、いい勉強になった」「自分を守るために大切なことである」「男性任せでなく女性も知っておくべきことである」「有益な学びが出来た」など肯定的な感想を述べていた。その他、コンドーム自体に関する感想やコンドームを男性器模型に装着したことへの感想などがあった。学生はコンドームスキル演習により、コンドーム取り扱いの注意点や正しい装着の難しさから、確実な避妊について考える機会となっていた。加えて、コンドームによる避妊の主体性のあり方、性交相手となる男性に対する姿勢、自分自身を守ることへの自覚など、多くの学びを得ていた。また、少数ではあるが、性交に対する忌避感や演習への羞恥心を記した感想があった。コンドームスキル演習を取り入れた講義は、多くの学生にとって有益であったが、性交に関する事柄に対して抵抗感が強い者が存在することを考慮した講義運営が必要であると示唆された。
著者
モルナール レヴェンテ
出版者
北海道大学文学研究科
雑誌
研究論集 (ISSN:13470132)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.209-228, 2017-11-29

今村昌平は「テーマ監督」である。すなわち今村の作品群はその時期々々において特定のトピックや主題を軸に構成されていることを示す。主題におけるそういった反復は,監督自身によって「ねばり」と呼ばれた。その表現を借りれば,最初の「重喜劇」とみなされる『果しなき欲望』(1958年)以降, 今村は売春・強姦・近親相姦という3つのテーマにねばっていた。作品ごとに重点の置き方は異なるが,1968年までの全ての娯楽映画(『にあんちゃん』を除き)において,いずれもその主題は3つのテーマのなかから少なくとも2つ以上は選び取られているといえる。 1964年制作の『赤い殺意』は藤原審爾の東京を舞台に可愛い印象の女性が強姦されるという小説を原作にテーマのみを借りた,今村昌平ならではの映画作品である。強姦を主題に近親相姦的な要素も加えて物語の舞台を監督の憧れた地方,東北へもっていった。主人公の貞子は,仙台の郊外において農地を所有する高橋家の若妻である。強盗に犯されてしまったあと強くなってゆき,彼女をまるで女中のように扱いしていた姑との上下関係を逆転させ家の権力者に上昇する。 本論文では社会学と作家の志向から離れて,いくつかの新しい観点を導入する上で作品そのものに絞って分析を行なう。変化する立場において彼女自身が如何に変貌し,どのような行動をとるかという二点をめぐって『赤い殺意』を考察する上で今村昌平が「重喜劇」と呼んだ60年代の作品群と関連付けて結論を述べる。