著者
吉田 淳 田中 美穂 向田 哲規
出版者
JAPANESE SOCIETY OF OVA RESEARCH
雑誌
Journal of Mammalian Ova Research (ISSN:13417738)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.246-253, 2008 (Released:2008-12-25)
参考文献数
6

Conventional IVFでは,精子はnatural selectionを経て卵子の中に入るが,ICSIではエンブリオロジストの目によって精子が選ばれる.受精卵(胚)の質にもっとも大きな影響を与えるのはその基本となる卵と精子の質であるため,ICSIではより良い精子を選別する必要がある.精子のサイズは胚や卵と比べて20分の1しかないにもかかわらず,精子は卵や胚を通常観察する際に用いる400倍の倒立顕微鏡下で観察・評価され,ICSIに使用されている.最近,ICSIに用いる倒立顕微鏡の倍率を上げ,解像度を高めることで,細かく精子の形態(特に精子頭部における空胞の有無)を観察しながら精子を選別し,それを顕微授精に用いるIMSI(Intracytoplasmic Morphologically selected Sperm Injection)の技術が注目されるようになってきた.IMSIは精子選別の際倍率が高く視野が狭くなるため,細かい顕微鏡操作が必要になるなど,技術的に難しいところがある.しかし,臨床的な有用性に関しては認められつつある.今回の総説では,IMSIの海外における状況と木場公園クリニックでのIMSIの実際について述べる.
著者
藤沼 康樹
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.453-456, 2002-05-15

◆ポイント◆ 1)継続性とは,単に長期にわたって繰り返し診察すること(longitudinal continuity)ではなく,患者が担当医を自分の健康にとって重要なリソースだと認識していること(personal continuity)を含む. 2)真に継続性のあるケアを展開するためには,単なる慢性疾患管理にとどまらない,人生に寄り添い支援するという,家庭医らしい診療姿勢が必要である.
著者
藤田 祐一
出版者
名古屋大学
雑誌
戦略的な研究開発の推進 戦略的創造研究推進事業 ALCA(先端的低炭素化技術開発) 技術領域
巻号頁・発行日
2010

現在70億近くの人口を支える高収量の農業は、工業的窒素固定によって生産される人工窒素肥料に依存しています。ハーバー・ボッシュ法による工業的窒素固定は大量の化石燃料を消費するため、その過程での二酸化炭素排出量は莫大です。本研究開発では、限られた原核生物だけに分布する窒素固定酵素ニトロゲナーゼを植物や微細藻類など有用光合成生物に移入することで、窒素固定性作物作出の基盤技術の確立を目指します。
著者
鈴木 健史 三瀬 敬治
出版者
札幌医科大学医療人育成センター
雑誌
札幌医科大学医療人育成センター紀要 = Journal of center for medical education Sapporo Medical University = Journal of center for medical education Sapporo Medical University
巻号頁・発行日
no.8, pp.17-23, 2017-03-31

医学部において、生物非受験で入学する新入学生の割合が高いことが問題になっている。そこで本学において実際にどの程度の新入学生が生物非受験者で、彼らの備えている生物知識がどの程度のレベルなのかを調査した。その結果、高校で生物をまったく履修していない新入医学生が少なくとも全体の25%程度もいることが明らかになった。さらに、高校で「生物基礎」を履修したとする学生もその大半がほとんど勉強していないと答えており、これをあわせると中学卒業レベルの生物知識しか持ち合わせていない学生が、医学部新入学生の半分近くもいることが明らかになった。彼らの成績の動向を、カリキュラム改編の影響を含めて考察し、高校生物未履修の新入医学生にどのような対応をすべきかを論考した。
著者
王 海波
出版者
日本北方言語学会
雑誌
北方言語研究 (ISSN:21857121)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.135-156, 2020-03-20

満洲語は満洲・ツングース系の言語であり、元々清国(1616-1912)を建てた満洲族の言語である。満洲語の古典語1(以下「 満洲古典語」または「古典語」)は17世紀から18世紀末にかけて清国で使用された満洲語を指す。本稿で扱う満洲語三家子方言と黒河方言2は、現在中国黒龍江省チチハル市富裕県三家子屯と同省黒河市で話される満洲語の方言である。また、本稿で扱う満洲語シベ方言3は、現在中国新疆ウイグル自治区のチャプチャルシベ自治県で話される満洲語の方言である。
著者
野村 泰稔 村尾 彩希 阪口 幸広 古田 均
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題) (ISSN:21856621)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.I_189-I_198, 2017 (Released:2018-02-08)
参考文献数
25
被引用文献数
3

近年,老朽化に伴う安全性の低下が懸念される社会基盤に対して,その構造健全性を如何に効率的かつ的確に評価するかが,維持管理計画を策定する上で益々重要となってきている.構造の健全性を評価する上で,ひび割れを検出することは,構造物の劣化や破壊を引き起こす大きな要因の一つであるため,特に重要である.本研究では,現在,各所で開発が進められている高所等,人が立ち入ることが困難な箇所の点検ロボットに実装するシステムを構築することを目的として,各種ひび割れの画像を深層畳み込みニューラルネットワークにより学習し,UAVやWebカメラ等により撮影される構造全体系の多数の画像に対して,リアルタイムにひび割れの有無・領域をスクリーニング可能なシステムの開発を試みる.
著者
中島 英博 NAKAJIMA Hidehiro
出版者
名古屋大学高等教育研究センター
雑誌
名古屋高等教育研究 (ISSN:13482459)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.99-114, 2019-03

本稿の目的は、近年多くの大学によって行われている高校訪問活動について、高校側がその応対経験をどのように理解しているかを実証的に明らかにすることである。本稿では、東海地域の高校で大学からの訪問に応対した経験を持つ教員に対して質的調査を実施し、グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析を行った。主要な結論は次の通りである。第1に、大学による訪問は機関の属性等を問わず基本的に歓迎するが、訪問で得られた情報が学校内で共有されることはほとんどない。ただし、教員の主観的な大学像や事前に把握した生徒ニーズに沿った情報である場合、限定的に共有される可能性がある。第2に、訪問の中で教育・学習活動に関する強みや特色が示されないことに強い批判がある。教員による具体的な学習の姿が示される場合、この批判が緩和される可能性がある。第3に、これら2点の背景には、教員自身が持つ大学や進学に関する価値観、および同僚教員や生徒の進学に対する考え方が強く影響している。これらの結果は、大学側に高校訪問の意味づけを再検討する際に、重要な示唆をもたらすものである。This paper aims to investigate the effects of university recruitment visits to high schools for prospective students. This practice has long prevailed among private universities in Japan. This study was conducted using semi-structured interviews with ten high school teachers who are in charge of career guidance for students. The interviews were analyzed using the Grounded Theory Approach. The main finding was that, for the most part, school recruitment visits are welcomed and recognized as valuable opportunities for college-bound students to obtain the latest information about universities. However, most of the teachers were not totally satisfied with the information obtained during the recruitment visits. It was felt that the information was dominated by facts easily accessible via booklets or websites. In this study, teachers also reflected on the values and the intentions of college-bound students and their parents.

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著者
小野瀬 宏
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.129-130, 1993-03-08 (Released:2009-06-12)
参考文献数
3
著者
福田 理 栁瀬 博 河合 利方 戸田 久美子 中野 崇
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.1141-1147, 1996-12-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
20

本研究は,ミダゾラム舌下投与鎮静法の小児歯科臨床への応用の可能性を探るための基礎的検討を行った。すなわち,成人ボランティア8名を対象に,ミダゾラム0.2mg/kg舌下投与後の血中濃度および鎮静度の推移,循環・呼吸系への影響,歩行機能の回復過程,副作用について調査し,以下の結論を得た。ミダゾラム血中濃度は,投与30分後に平均71.7ng/mlと最高濃度を示し,鎮静効果が充分期待できる血中濃度が維持されていた。また,投与25分後から60分後にかけて安定した鎮静効果が認められ,投与150分後には全症例が通常の状態に回復していた。歩行機能の回復過程では,投与60分後には全ての症例にふらつきが観察されたが,時間経過と共に回復傾向を示し,150分後に全ての症例で正常な歩行が可能になっていた。循環系・呼吸系の変化では,ミダゾラム投与後,対照値に比べ血圧および経皮的酸素飽和度の低下が認められたが,全て正常範囲内の変化であり,臨床的に問題となる循環系・呼吸系への影響は認められなかった。さらに,経過を観察した全ての過程において重篤な副作用は認められなかった。
著者
高橋 淳 影山 和郎 金田 重裕 大澤 勇
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

プラスチックス製(ポリエステル等)の柔軟なシートまたは袋による海上輸送技術(シール材またはコンテナとしての利用)が、低コストで低環境負荷型な輸送手段として注目されている。本研究では、このウォーターバッグに関して、疲労メカニズム解明と損傷(すなわち内容物流出のリアルタイム)検知システム開発の2つの検討を行った。すなわち、まず、ウォーターバッグの損傷の主要因と考えられている(内容物輸送後の)リールへの巻き取り時等における疲労損傷発生に関し、室内実験として「巻き取り模擬試験」を行い、それに基づき「損傷発生メカニズム解明」ならびに「疲労プロセス解明」を行った。この際に、万能試験機制御装置を導入し、既存設備である万能試験機(島津UH-500KNI)を本研究用途に改造してデータの収集を行った。その結果に基づき、繰り返しによる疲労損傷プロセスの解明が行なわれ、より長寿命で信頼性の高いウォーターバッグ設計への提言を行うと共に、モニタリングによる損傷検出のための方針を策定した。一方、上記の検討を通して明らかとなった損傷の形態や大きさの情報をもとに、過剰な設計を避けて最適なライフサイクルコストを実現することを目的として、ウォーターバッグ内外の電位差変化に着目した低コストな損傷検知システムの開発を行った。具体的には、「巻き取り模擬試験」のデータと考察をふまえた実際の損傷形態と大きさにもとづき、電位差変化により損傷の有無と場所を検知するための理論構築を行い、検知システムを開発した。
著者
横山 英信
出版者
日本農業経済学会
雑誌
農業経済研究 (ISSN:03873234)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.113-128, 2005-12-25 (Released:2014-10-31)
参考文献数
8

The aim of this paper is to investigate the political conditions for increasing the domestic wheat production in the years ahead, through an analysis of the development of Japan's postwar wheat policy and the trends in the supply, demand and production of wheat in Japan, focusing on the changes in planted acreage and the amount of production, and the matching of demand and production. There have been two wheat policies in postwar times; the 'main policy,' which considers the supply, demand and production of wheat as a subject to be treated directly, and the 'policy of reducing rice production,' which deals with the production of wheat by regarding wheat as an alternative crop. The supply, demand and production of wheat in the postwar period has been greatly influenced by the 'main policy' and the 'policy of reducing rice production.' It has developed in response to political and economic changes. Analysis of these influences shows that the following conditions are required to increase domestic wheat production under the present 'main policy,' which has changed from an indirect system controlled by the government to a private distribution system. First, it is essential to establish a standard price unit for Funds to Keep the Management of Wheat Production Stable (bakusaku-keiei-antei-shikin) and Grants to Promote the Improvement of Quality (hinshitsu-kaizen-shorei-gaku), which will mean that the average producers' price for all wheat brands will be able to make up for the average production cost for paddy field production in all prefectures except Hokkaido. Secondly, on the premise that the first condition has been achieved, price differentials should be applied to each wheat brand, based on the quality of the wheat, the dealing price and the state of the mismatch. Effective boundary measures should be set up to guarantee domestic wheat production.
著者
松本 敏治 菊地 一文 橋本 洋輔
出版者
広島大学大学院教育学研究科附属特別支援教育実践センター
雑誌
特別支援教育実践センター研究紀要 (ISSN:18835406)
巻号頁・発行日
no.18, pp.1-10, 2020-03-01

方言主流社会における発達障害に関わる療育・教育関係者の間で語られていた「自閉症は方言を話さない」とする風聞をきっかけにして、ASD の方言使用・理解の研究が進められている。これまで特別支援教育関係者を対象にした質問調査は、ASD の方言不使用という印象が全国で共通するものであること、および方言語彙使用が少ないことを示した。また、ASD の方言理解及びことばの使い分けについての実験的研究の結果は、方言理解自体にも困難を抱えることおよび相手との関係が不明瞭な場合のことばの使い分けに特徴的な反応が見られることを示している。これらの現象の要因として、ASD の社会性の障害に原因を求める説が松本らによって提出されていた。一方、音響音声学の研究者からはASD の音声処理にその原因を求める説が提出されている。本研究ではこれらの研究を概括し、ASD の音声処理、言語習得、そしてことばの使い分けの背景に存在する問題について理論的検討を加えた。