著者
津曲 俊英
出版者
長崎大学
雑誌
經營と經濟 : 長崎工業經營専門學校大東亞經濟研究所年報 (ISSN:02869101)
巻号頁・発行日
vol.81, no.3, pp.129-160, 2001-12

The theme of this paper is how to deal with the provision of international public goods (IPG), while IPG as well as public goods has been defined by its nature in consumption. By considering the theory that could explain the process and apparatus to provide public goods in the state under the control of the government, we may approach the IPG which is provided in the international society without government. Along the logic, the discussion will introduce the examples, taxonomy, the mode of provision, provider (individual state or international organization) and problems such as free rider and prisoner's dilemma concerning IPG. As a natural consequence I arrive at concluding to attach importance to the international organization and institutions.
著者
林 邦彦
雑誌
人文研紀要 (ISSN:02873877)
巻号頁・発行日
no.75, pp.309-334, 2013-10-10

14世紀にアイスランドで著されたとされるJarlmanns saga ok Hermanns はアイスランド独自の騎士のサガに含まれ,大きく分けて,本稿ではA ヴァージョン,B ヴァージョンと呼ぶ二種類の内容のものが伝承されている。この作品の内容について,先行研究では伝統的なトリスタン物語を踏襲したTristrams saga ok Ísondar および,アイスランド独自の騎士のサガKonráðs saga keisarasonar との関係が指摘されてきたが,その大半はB ヴァージョンのみを扱ったもので,AB 両ヴァージョンを扱ったものにも,その扱い方に問題が残っている。そこで本稿では特に主要登場人物の人物像について,本作品のAB 両ヴァージョンを比較して相違点を明らかにし,さらに本作品の内容を,伝統的なトリスタン物語の改作で,同じく14世紀に著されたとされるSaga af Tristram ok Ísodd と比較し,内容的にどのような関係にあるかを考察し,これらの作品が生み出された背景を考える。
著者
黒川 康久 高瀬 達夫 小山 健
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
建設マネジメント研究論文集 (ISSN:18848311)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.183-192, 2005
被引用文献数
2

近年, 地方鉄道の路線廃止が相次いでいる. 多くの地方中小鉄道は大都市圏鉄道に比べ利用者が少ないために, 輸送サービスの多様化, 高度化に資する設備投資が十分に行えないのが現状である. しかし, 地方鉄道は沿線地域における通勤, 通学等また特に高齢者や, 障害者, その他自家用乗用車を保有していない交通弱者にとっては重要な移動手段である. 公共性の極めて高い鉄道において, その存廃の是非を判断するにあたっては, 鉄道事業者及び地域により慎重に行われるべきである. そこで, 本研究ではその判断指標のひとつになり得る地方鉄道の価値を評価するために, 実際に存続問題が浮上している長野県にある上田交通別所線を対象とし, CVM (仮想評価法) を用いて地方鉄道別所線の価値評価を行った.
著者
岸野 洋久
出版者
日本生態学会暫定事務局
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.187-196, 2015

集団や群集の構造を調べるとき、まずは平均的な特徴や平均的な関係に光が投げかけられる。そこからのかい離は誤差項で、推定の際には最小化すべき厄介な存在として位置づけられる。ここでは集団や群集を構成する個体の間の多様性に等量の光を投げかけ、関係式のモデリングと誤差のモデリングを不可分のものとして位置づける。最尤法はデータの生成メカニズムを尤度の形でモデリングするため、自然に2つのモデリングを融合させることができる。尤度の対数をとった対数尤度は、統計モデルの真の生成メカニズムへの近さの度合いを、相対量の形で表現している。ただし、統計モデルをデータに当てはめて得られた最大対数尤度は、近さの度合いを過大評価している。これを補正して得られた不偏推定量である情報量規準AICは、種々の異質な統計モデルを比較することを可能にする。本論文は、殺虫剤の効用試験、苗木の成長試験の2つの古典的データを見つめなおし、実例を通して最尤法とAICによる統計的モデル分析の有効性を示すことを目的とする。前者はタバコスズメガ幼虫(<i>Phlegethontius quinquemaculata</i>)のカウントデータであるが、各処理でポアソン分布から期待される分散を超える過分散があること、さらにこの過分散がブロック間の不均質性で説明され、ブロック内は環境を均質に保たれていたことを見る。後者はベイトウヒ(Sitka spruce, <i>Picea sitchensis</i>)のサイズを継時的に測定したデータで、オゾンへの曝露の影響を調べたものである。初夏から秋にかけてのある年の成長をロジスティックモデル、およびパラメータに分布を導入した変量ロジスティックモデルで記述する。モデルを通して、成長開始前のサイズとその年の成長幅には大きな個体差があること、6月末が成長の最盛期であること、成長期間にはほとんど個体差はなく、2か月半であることを見る。モデル選択を通して分析対象とデータの持つ情報の量と質に関して理解を深めさせることが、AICのもたらす最大の効用であることを、これらの解析は示している。
出版者
岐阜大学教育学部
巻号頁・発行日
vol.第1 (古田家文書), 1967
著者
椎橋章夫著
出版者
成山堂書店 (発売)
巻号頁・発行日
2015
著者
福田 智子 フクダ トモコ Fukuda Tomoko
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The social sciences (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.19-33, 2015-08

研究ノート(Note)『古今和歌六帖』は、約四千五百首の歌を、二十五項目、五百十七題に分類した類題和歌集である。収載歌には、『万葉集』『古今集』『後撰集』など、出典の明らかな歌もある一方、現在では出典未詳と言わざるを得ない歌もある。本稿では、「酢漿草」から「苔」までの題に配されている出典未詳歌、八首について注釈を施す。
著者
佐久間 由夛
出版者
敬愛大学・千葉敬愛短期大学
雑誌
千葉敬愛短期大学紀要 (ISSN:03894584)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.35-51, 2001-02

厳しい自然環境と産業主義による環境破壊に故郷の山間の土地を追われた人々を待っていた非人間化した工場生活。そんな中で、天衣無縫なkitが奢侈な生活に溺れていくある種の必然性。そして参入した、禁酒時代の密造酒組織の持つ貧欲、奸計、残忍さ。やがて組織の冷酷さ、や諸悪への憤りを禁じ得なくなる。同時に人生への疑問を抱く。激しい孤独感や疎外感に苦悩しながらも、kitが人生への新たな可能性を確信するまでの足跡を辿る。
著者
佐脇 貴幸 村岡 洋文
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.337-341, 2002
被引用文献数
1 1

マタロコ地熱系のMT-1及びMT-2井から得られた流体包有物について,マイクロサーモメトリー及び化学分析を行った. MT-1井坑底部の流体包有物の均質化温度は,マタロコ地域の地質学的・地球化学的データから推定されている温度構造と一致する.しかしMT-2井坑底部の均質化温度データは,推定されている坑底温度(200℃)よりも20-30°C程度高い. 全ての流体包有物の塩濃度は低い. MT-1井坑底から得られた流体包有物についてのガス成分の半定量分析によれば,流体包有物の主成分はH<sub>2</sub>O であり,微量のCO<sub>2</sub>とCH<sub>4</sub>を伴う. これらのデータは,流体包有物が,本地熱系の浅部で,少量のガスを合む220-235°Cの凝縮水から形成されたことを示している. また,MT-2井に関しての,均質化温度 と水の沸騰曲線の比較から,地熱活動開始以降,本地域が少なくとも100m程度の浸食を被った可能性が示唆される.
出版者
日経BP社 ; 1992-
雑誌
日経情報ストラテジー (ISSN:09175342)
巻号頁・発行日
vol.21, no.12, pp.56-59, 2013-01

音楽ソフトウエア販売チェーン大手のタワーレコードは、顧客の購買行動を基に販売促進策の効果を分析する新たな顧客管理システムを2012年9月に導入した。購入額の多い優良顧客を対象に販促キャンペーンのメールを試験的に送ったところ、実に5人のうち1人の顧客から音楽CD発売前の予約を含む受注を獲得する成果を上げている。
著者
山田 隆敏
出版者
奈良大学
雑誌
奈良大学紀要 (ISSN:03892204)
巻号頁・発行日
no.36, pp.21-35, 2008-03

Catherine の誇り高くて激しい気性、それに引き換え、Heathcliffの飽くことなき復讐への執念、それら両者の激しき激情・怨念が、この作品の全編に亘って流されている。まさに天高く舞い上がる「嵐」のように、彼らの根源的な愛の権化に起因する残忍さ・エゴイズム、そして不条理的な愚かしさが、全編にあまねく表現されている。善と悪(愛と憎しみ)の相克的な所業が展開され、人間同士のどうしようもない性(さが)の嵐が繰り広げられているのである。このような精神面の矛盾さと、Heathに代表される陰気な自然現象が、一体化されて内容に独特な陰影を与えている。21世紀の今日、この独特な陰影を帯びた作品内容は、我々に力強い衝撃を与え、人間としての生き方そのものについて思考させずにはいられない作品に仕上がっている。また、時間と空間を超越した普遍性に永遠性を与える作品構成に仕上がっているのである。異常な復讐心を有する主人公Heathcliffを登場させることによって、一般的な愛とか執念が、どのように「憎しみ」に転化するかを述べてみたい。さらに、「憎しみ」が愛のジャンルの転嫁であるかを、時代性を問わない森羅万象の普遍的観念論として述べてみたい。