著者
郷農 靖之
出版者
日本高圧力学会
雑誌
高圧力の科学と技術 (ISSN:0917639X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.311-314, 2001 (Released:2003-02-28)
参考文献数
13

In the early days of nuclear science, many researchers tried to see if a nuclear decay constant could be changed by putting radioactive nuclei in various extreme environments, such as high and low temperatures, high pressure and high electromagnetic fields. They could not find any measurable change. Since then it was believed that a nuclear decay constant was independent of extranuclear conditions. In 1947, it was pointed out that there might be observable changes in decay constants when decay modes were dominated by an electron capture or an internal conversion process. Thereafter, many experimental studies were carried out, and their changes were observed. We studied the change of the decay constant of 99mTc by applying high-pressure. The present status of our study is described in this report.
著者
佐藤 由宇 櫻井 未央
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.147-157, 2010-06-20

広汎性発達障害者の抱える心理的な問題として,他者との違和感や自分のつかめなさといった自己概念の問題の重要性が近年指摘されているが,その研究は非常に困難である。本研究では,当事者の自伝を,彼らの自己内界に接近できる数少ない優れた資料であると考え,中でも卓越した言語化の能力を有する稀有な当事者による自伝を分析することによって広汎性発達障害者の自己内界に迫り,自己の特徴と自己概念獲得の様相を探索的に明らかにすることを目的とした。1冊の自伝を取り上げ,KJ法で分析を行った。結果,311のエピソードを取り出し,28のカテゴリーを生成した。その当事者の自己の様相においては,自己感の曖昧さや対人的自己認知の困難などの特異的な困難が明らかとなった。それらの困難ゆえに,対人的自己認知の獲得の過程において,主体としての自己を喪失する危機が生じやすいが,その際,自己感の曖昧さや対人接触の拒絶,解離など一般に障害あるいは症状とみなされる現象が危機に対する対処として機能していると考えられた。さらに,対人的自己認知は困難であるとはいえ,対人的経験の中で自己感を得られる新たなコミュニケーションスタイルを獲得しうる可能性も示唆された。
著者
中嶋 謙互
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.641-646, 2006-06-15

日本ではしばしば,楽観的な見通しを述べるよりも,さまざま問題点を並べて悲観的な発言をするほうが「賢い」行動であるとされる.しかし,自分たちの未来に夢を抱き,技術や社会の発展のために努力を続けていくには,楽観的な見通しが必要不可欠である.私は,現在の日本において「楽観的な物言い」が不足しているとつねづね感じている.本論文では,50年後の情報科学技術について,現在,日本において活発に研究・開発されているロボットやコンピュータなどが,人々の生活や社会や考え方がどのように変わっているかについて,手元の時計を2055年に設定し,幅広くそして楽観的に考えた.最終的には,ソフトウェアの力によってハードウェアの潜在力を最大に引き出すことによって,想像もできないほど大きな価値を創造できることを強調し,その後,日本人の「モノ」作りの能力を21世紀において活かしていく方法についても考えていく.日本の経済と産業が世界の中で誰にも認められる存在を維持するために,日本人としてできることは何なのかがイメージできるような内容を目指した.この論文を読んだ若い人たちが,将来,日本が国際的に貢献し得る分野があることを知り,職業選択の参考にすることができれば望外の喜びである.

2 0 0 0 OA 槐多の歌へる

著者
村山槐多 著
出版者
アルス
巻号頁・発行日
1920
著者
黒川 知文
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.475-498, 2005-09-30

十字軍、レコンキスタ、フス戦争と近代以後に起きた諸宗教戦争は、宗派対立型、教派対立型、政治対立型に類型化することができる。その本質構造は、社会的危機、経済的危機、政治的危機、宗教的危機等の危機状態になった時に、宗教に民族主義が結合して、排他的教説が採用されると、排他的戦争へと変容するということにある。排他的教説とは、二項対立論と悪魔との「聖戦」論と終末における戦争論であり、キリスト教においては、その救済論と人間論と終末論から生起したと考えられる。民族紛争における宗教の要素は宗教戦争のそれとはかなり異なっていると推定される。
著者
徳永 誓子
出版者
中世史研究会
雑誌
年報中世史研究 (ISSN:03888916)
巻号頁・発行日
no.27, pp.75-100, 2002
著者
蘇 雲山 河合 明宣 奥宮 清人 Tetsuya Inamura Yumi Kimura Kiyohito Okumiya
出版者
放送大学
雑誌
放送大学研究年報 = Journal of The Open University of Japan (ISSN:09114505)
巻号頁・発行日
no.33, pp.45-67, 2015

高所では一般に、エネルギー摂取量が低い一方、運動量が多いため、糖尿病や高血圧などの生活習慣病はもともと少ないと考えられてきた。しかし、生活スタイルの変化によって、近年、急激に生活習慣病が顕在化してきた。そこで、本研究では、インド・ラダーク地方に焦点を絞り、文化人類学と栄養学と医学の共同により、高所環境に対する人間の医学生理的適応と生態・文化的適応を明らかにし、そして、近年の変化によって適応のバランスがどのように崩れ、それが高所住民にどのような影響を及ぼしているかを明らかにすることを主な目的とした。 本稿では、まず、ラダークの都市レー(標高3600m)の概要、チャンタン高原(標高4200-4900m)の遊牧民とドムカル谷(標高3000-3800m)の農民・農牧民の伝統的生活とその変化、及びその背景について論じる。つぎに、それぞれの地域で実施した健診調査のうち、栄養学調査の結果、および分析について論じる。 チャンタン高原の人びとは、以前はヤクとヤギ・ヒツジの遊牧と交易によって生計を立ててきた。遊牧については、基本的に固有のシステムが継承されている。一方、かつて行われていた、北のチベット、西のザンスカル等との長距離のキャラバン交易は、消滅した。 ドムカル谷では、農耕とともに、ヤク、ゾモ(ウシとヤクの交雑種)、ゾー(ゾモの雄)、バラン(在来ウシ)などの移牧が行われてきた。ドムカルにおける農牧複合は、この地方の厳しい自然環境に適応した、独自の特徴を持っている。それは相互扶助などの社会システムによって支えられてきた。しかし、若者が軍関係の仕事につくため、村外に出ることが多くなり、家畜の飼養は急激に減少し、むらの生活も近代化して大きく変化してきた。その背景には、中国との国境紛争、舗装道路の開通、政府による食糧配給による援助、さらに、レーの都市の拡大・観光化や軍の需要などによる市場経済化などがある。 ラダークにおける食事調査により、高所環境という食料入手の困難な環境を反映した、質・量ともに乏しい栄養状態を明らかにした一方、レーやドムカルでは過栄養やこれに関わる生活習慣病も見過ごせない問題となっていることが明らかになった。さらに、栄養摂取と糖尿病との関連を分析すると、エネルギー摂取量の多い人だけではなく、少ない人にも糖尿病がみられた。エネルギー摂取量の少ない人では、食品摂取の多様性が少なく、炭水化物に偏った食事内容になっていることも要因の一つと考察できる。 現在の人々の食の嗜好からも食事の変化をみてとることができた。特に大麦から米・小麦への主食の転換は、元来の高所住民の伝統的な食生活の中心を大きく変えるものであり、生活習慣病の増加の一因となることが懸念される。伝統的な食生活を見直すこと加え、野菜などの摂取頻度の少ない食品群の補強がうまく行われること、さらに健康に関する知識の向上が今後ますます重要になると考えられる。
著者
Suguru Yoshida Takamitsu Hosoya
出版者
(社)日本化学会
雑誌
Chemistry Letters (ISSN:03667022)
巻号頁・発行日
vol.44, no.11, pp.1450-1460, 2015-11-05 (Released:2015-11-05)
参考文献数
159
被引用文献数
173 1

Recent developments in aryne chemistry are reviewed with a particular focus on synthetic methods. This includes an overview of the precursors of arynes and their activators; the generation of arynes with functional groups and their ensuing reactivities; and the novel transformations achieved via aryne intermediates. These newly developed methods have enabled the synthesis of a variety of previously inaccessible aromatic compounds, allowing the construction of a diversity-enriched chemical library that will further facilitate future drug discoveries.
著者
石尾 潤 藤岩 秀樹 中村 貢治 西田 益子
出版者
宇部工業高等専門学校
雑誌
宇部工業高等専門学校研究報告 (ISSN:03864359)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.57-61, 2005-03

The purpose of this study is clarifying sexuality consciousness and sexuality behavior in colleges of technology students. The subjects of this investigation were 140 male and 49 female of first grader in ube national college of technology students. The results are summarized as follows: 1) The male students' sexual concern was higher than the female students. 2) 5.4% of the male students had experienced sexual intercourse, 20.0% female students. 3) Many of students are consulting with a friend on worries about sexual. 4) Many of the female students want to know about pregnancy, elective abortion, and sexually transmitted disease.
著者
仲村 匡司
出版者
京都大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

環境問題および資源の有効利用の点から木製品の有利性を論じるとき,その炭素ストック性が強調される傾向にある.この主張は木製品が物理的寿命を全うすることを前提としているため,使用者によって規定される心理的寿命と生産者が設定した物理的寿命は必ずしも一致しない.本研究は「木製品の心理的寿命の客観的評価の実現」を目指して,木製品の第一印象および記銘性に影響する諸因子を,心理応答および生理応答計測によって抽出することを目的とする.1)そもそも我々は,身の回りの木材や木製品の存在をどのくらい正確に把握しているのだろうか?そこで,木材部分の割合が既知の住宅内装画像(インテリア画像)を種々用意し,見た目の木材率(心理的木材率)を調査した.その結果,我々は意外なほど正確に木材の存在量を見積もれることがわかった.また,柱や梁,桟など木材が軸的(線的)に使われている場合には,木材量評価のばらつきが大きくなる傾向が見いだされた.2)上記の知見をさらに系統的に究明するために,広さや調度品は同じで,内装部材として用いられる木材だけが種々変化するインテリア画像をコンピュータ・グラフィックスで表現し,これらの心理的木材率を調査した.調査票を用いた調査においても,ヘッドマウンテッドディスプレイを用いた調査においても,我々は木材量を概ね正確に把握していることが明らかになったが,木材量が多いほどその内装が好ましいわけではなく,適度な木材量とともにその使い方(面的か,軸的かなど)も考慮する必要があることがわかった.今後,木質インテリアのデザイン性評価に使用可能な要因を抽出し,これを数量表現するための手法を考えるべきといえる.