著者
松田 完 西本 一志
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.43, no.12, pp.3571-3581, 2002-12-15

近年,効率的な企業経営や生産性向上を目指し,社内にある情報や知識を社内全体で活用する様々な取り組みが行われている.本論文では情報共有の場として,建物内の廊下やリフレッシュルームのような共有スペースでの出会いに着目し,そこで何らかの情報を必要としている者が他者に対し積極的に働きかけることによる,対面環境での情報共有を促進する手法を提案する.さらに提案手法に基づき,情報を求める人が,求めている情報を1つの建物に共存する特定多数の人々に対してアピールするシステム"HuNeAS(Human Network Activating System)"を作成し,その評価を行った.HuNeASは,組織内の人々が利用する共用スペースに,求める情報を投影する大型ディスプレイを配置した空間となっている.求める情報を大型ディスプレイに投影し,それを共用スペースの利用者に見せることにより情報共有の促進を行う.このため,HuNeASでは部署や研究室などの既存の小規模コミュニティの枠を越えて,建物全体の人に対して情報を求めることができる.プロトタイプシステムを用いて6週間の試用実験を行い,約100名に対し4回のアンケート調査を行うなどによってシステムの評価を行った.この結果,HuNeASによって同期的な情報共有が促進されることが示唆された.また,情報の共有だけでなく,Human Networkの生成と強化の効果も確認され,組織におけるHuman Networkを活性化する効果もあることが示唆された. : In this paper, we propose a new approach to support information sharing in an organization based on spontaneous encounters in the real world. We developed a system "HuNeAS", where a user appeal to other people who belong to an identical organization and who work together in one building to give information he/she requires. HuNeAS consists of "Danwa-no-mori" and DIAS (Desired Information Appealing System). Danwa-no-mori is a shared space that is freely used by anyone to, for instance, take a rest. In addition, Danwa-no-mori is equipped with the large-sized displays that are a part of DIAS project somone's required information that is a-priori input in DIAS. If another person who sees the displayed information and if he/she has some useful information, he/she can give the information to the person who shows the required information. Thus, HuNeAS promotes information sharing among the people who encounter in Danwa-no-mori. We conducted experiments for evaluating the above-mentioned advantages of HuNeAS. As a result, we confirmed that HuNeAS can promote the information sharing based on the people's spontaneous encountering. Additionally, it is suggested HuNeAS promotes to create and to activate human-network.
著者
小川 [琢]治
出版者
地球學團
雑誌
地球
巻号頁・発行日
vol.3, no.6, pp.598-607, 1925-06-01
著者
藤吉 康志 藤田 岳人 武田 喬男 小尻 利治 寶 馨 池田 繁樹
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.391-408, 1996-06-30
参考文献数
20
被引用文献数
4

濃尾平野を対象地域として, 複雑山岳地形の風下での降雪分布を決定する要因について, 2台のドップラーレーダを用いて調べた。レーダは, 観測範囲が関ケ原を含む山間部と濃尾平野をカバーするように配置し, 1992年12月から1993年5月まで観測を行った。降雪が生じた9回のうち, 平野部で降雪が見られ, かつ風速・風向が数時間もの間ほとんど変化していない4例について, 平均的なレーダエコー及び水平風の3次元分布を作成し, 異なった風向・風速によってエコー及び気流分布がどのように変化するかを詳細に調べた。伊吹山地の風下の弱風域の範囲は, 風上の風向が北寄りになるほど風下に広がっていた。一方, 風向が西寄りになるほど関ケ原の出口付近での風向変化が下層及び上層共に顕著であり, かつ, 鈴鹿山脈の風上側と風下側での下層にみられる風速変化, 及び鈴鹿山脈の北側での風向変化が顕著であった。エコー域はわずかな風向変化で大きく異なり, 高度1。5〜2 kmの平均風向にほぼ平行に延びていた。エコー域の幅は, 風向に直角な方向の若狭湾の幅と極めて良く一致していた。山のすぐ風下の強エコー域の存在と, 山から離れた地点にエコー強度のピークを持つ幅の狭いバンド状のエコー域の存在が, 風向によらないエコー分布の共通の特徴であった。山岳風下域に存在する多降雪域の範囲を求める指標として, 伊吹山地上空の風速と落下速度 1 ms^<-1>を用いることは, 良い近似であることが確認された。しかし, 山頂上空には強風域が存在し, 降雪粒子の到達距離をより正確に見積るためには, この山頂上空の強風域の広がりを考慮する必要があることも分かった。複雑山岳地形の風下では, 風上の地形によって風向・風速が場所によって微妙に変化し, その結果上昇流が発生し過冷却雲が形成される。山から離れた地点に存在したバンド状降雪域は, この過冷却雲が山頂から流されてきた氷晶によって「種まき」された結果であることが示唆された。また, このバンド状降雪域は, 山脈風下の弱風 (後流) 域, 及び, 山脈と山脈の間の谷筋の強風 (噴流) 域の何れにも存在していた。
著者
山本 眞司 田中 一平 千田 昌弘 舘野 之男 飯沼 武 松本 徹 松本 満臣
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.250-260, 1993-02-25
被引用文献数
59

肺癌早期発見のための専用CTを開発することを提唱し,その基本構想を明らかにした.次いで,このシステムに必須の診断支援用画像表示方式として,下記2方式を並列に用いることを検討し,良好な結果を得た.(1)40スライスからなる3次元情報を,病巣陰影の情報を損なうことなく2次元に投影表示する手段として,MIP(Maximum Intensity Projection)法を応用した.但し単なるMIP法では妨害臓器情報による弊害が大きいため,あらかじめこれらの不要情報をしきい値法にて除去する方式を開発した.(2)各スライス断面ごとに病巣陰影候補を自動認識し,陰影候補の見つかったCT断面のみをCRT表示することにより,表示断面を大幅に削減する方式を開発した.病巣陰影の自動認識には,我々が新たに開発したQuoit(輪投げ)フィルタを用いた.

2 0 0 0 OA 哲学論叢

出版者
岩波書店
巻号頁・発行日
vol.2, 1928
著者
"關戸 啓子 深井 喜代子"
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.71-80, 2004
被引用文献数
3

"欠食による空腹が,疲労の自覚症状に及ぼす影響を把握するために看護学生にアンケート調査を実施した.疲労の自覚症状調査は,午前中の授業の形式が,講義のみの日,演習(講義と実習)の日,実習のみの日を選んで,3日間実施した.調査用紙は58人に配付し,53人から提出があった.有効回答数は51(有効回答率96.2%)であった.調査の結果,講義のみの日に朝食を摂取していた学生は42人で,「あくびがでる」「眠い」「目がつかれる」「横になりたい」「頭がぼんやりする」「全身がだるい」という6項目において,授業後有意(p<0.05)に自覚症状が増強していた.朝食を摂取していなかった9人には,授業後増強した自覚症状はなかった.演習の日に,朝食を摂取していた学生は40人で,授業後増強した自覚症状はなかった.朝食を摂取していなかった11人にも,授業後増強した自覚症状はなかった.実習のみの日に,朝食を摂取していた学生は38人で,授業後「目がつかれる」という自覚症状のみが増強傾向を示した.朝食を摂取していなかった13人には,授業後「気がちる」「いらいらする」という自覚症状に増強傾向がみられた.学生が朝食を摂取している場合には,長時間座って講義を聞いている方が苦痛を感じており,自覚症状が増強していた.しかし,朝食を摂取していない場合には,よりエネルギーを消費する実習の授業の時に空腹の影響がみられ,精神的に授業に集中できなくなっている様子が示唆された."
著者
吉本 正 谷田 創 田中 智夫
出版者
麻布大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1989

研究者らは1985年以来,暑熱環境における雄豚のサマ-ステリリティについて検討を行ない,30〜35^。Cの環境温度において3〜6週間飼養すると明らかに造精機能が低下することを認めた.現在は,その造精機能の低下防止について検討を行なっており,平成元年からは当補助金を受け,局所冷却による造精機能の低下防止法について検討を行っている.初年度は,自然環境下において局所冷却(豚の首〜肩部に水滴を落下させる drip cooling法)を行ない,その効果をサ-モグラフィ-を用いて生理反応の面から検討した.その結果,自然環境温(29〜31^。C)の条件下においては,局所冷却を行なうことによって豚体の皮膚表面温を2〜3^。C抑制する効果が認められた.2年度は環境調節室を用い,適温期(24^。C一定)を3日間,加温期(33^。C,10h;28^。C,14h)を4週間とし,大ヨ-クシャ-種雄豚6頭を用いて,同様の調査を行なった。実験1では,水滴の落下位置を検討するために,33^。Cの室温において,頭部,頸部,精巣部に水滴を11分ごとに1分間,滴下させて,それが全身の皮膚温に及ぼす影響を調査した.その結果,頸部に水滴を落下させた場合に全身の皮膚温を低下させる効果が認められた.実験2では,実験1の結果を基に,頸部に水滴を落下させた場合における適温期および加温期(33^。時)の心拍,呼吸,直腸温,サ-モグラフィ-による皮膚温および精液性状を調査した.その結果,心拍数および呼吸数に対しては大きな影響を与えなかったが,直腸温および皮膚表面温については約1^。C上昇を抑える効果が認められた.以上のことから,drip coolingによる局所冷却は,雄豚のサマ-ステリリティ-の方止に十分,活用できる方法であることが示唆された.
著者
森田 明雄 一家 崇志 國弘 彩 鈴木 利和 大石 哲也 小林 栄人 中村 順行
出版者
日本茶業技術協会
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
no.111, pp.63-72, 2011-06

日本で栽培されている4つの白葉茶('星野緑,きら香'の2品種と'諸子沢,やまぶき'の2系統)の一番茶新芽の葉色値,遊離アミノ酸,カテキン類,カフェイン,有機酸および無機元素含量を,緑葉品種である'やぶきた'と比較した。その結果,葉色値は'やぶきた.の32.7に対して,白葉茶が0.6~8.1と非常に低い値を示した。遊離アミノ酸含量は,4つの白葉茶とも'やぶきた'に比べ1.8倍以上と高い値を示した。カテキン類含量は,'諸子沢,星野緑,きら香'が'やぶきた'の約3/4と低かったが,'やまぶき'はほぼ同程度であった。その他の成分では,シュウ酸とクエン酸,硝酸イオン,アルミニウム,カリウム,カルシウム,マグネシウム並びにマンガンの含量がいずれの白葉茶においても'やぶきた'より高い値を示した。これらのことから,供試した4つの白葉茶品種・系統は'やぶきた' と比べて,非常に高い遊離アミノ酸含量を有する特性を持つことが明らかとなった。また,いくつかの有機酸,無機元素含量が高いなど特異な化学成分組成を有している可能性が示唆された。
著者
宮本 悟 ミヤモト サトル
雑誌
聖学院大学論叢 (ISSN:9152539)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, 2014-10

北朝鮮では,建国以来,実質的に朝鮮労働党による一党独裁制が続いてきたが,最高指導者の交代はあった。そこで本稿では,金日成とその後継者である金正日の対米認識の違いによって,核問題をめぐる北朝鮮の対米外交政策が変化したことを明らかにする。第1次核危機では,金日成自身は核兵器開発をしないと公言し,米国との和解に期待をかけていた。しかし,金正日は,米国に対する警戒心が強かった。第2次核危機では,金正日は米朝対話を続けながらも,核兵器を保有することを決定した。第2次核危機において北朝鮮が公然と核兵器開発を始めたのは,金正日が金日成よりも米国に対して敵対的な見解を持っていたためといえよう。
著者
西槇 光正
出版者
拓殖大学
雑誌
拓殖大学語学研究 (ISSN:13488384)
巻号頁・発行日
vol.104, pp.65-72, 2003-12-28

本稿では、まず一組の複文構文について、何冊かの権威辞書の中にそれらに関する説明や例文のある個所に対し私見を提起し、そして本世紀中国語文法の教学と研究についての私案を出した。辞書というものは申すまでもなく必要だが、いまの日本では、中国語関係の辞書はめちゃくちゃ多く、その中味もめちゃくちゃで、真面目に編修されるべきだが、それもいた仕方がない面もある。辞書編集者の皆さんは基準と見ている大陸の権威辞書の中にも間違った所も少なくないからだ。勿論、学界では、ある言語現象についてまだ議論中であるものもあるが、辞書として統一しないと混乱する可能性があり、その影響は大きい。そのために、最近、中国国家語言文字委員会は問趣ある辞書の出版を停止させる命令を下達された。真の中国語文法の研究は、『馬氏文通』からすでに一世紀経ったけれども、文法体系はまだ建てられず、品詞の分類でさえもなかなか進められない。又は、専門家の理論文法は教学文法との関連においてあまり瞬味で、統一した教学文法を作り上げるのが急務ではないかと思う。筆者は、専門家文法の研究も教学文法の研究もどちらでも重要であるが、但し、両文法を有機的に結びつける上ではっきり分けることが望ましい、と筆者は一貫した観点であり、本稿の趣旨でもある。本稿は第七回世界漢語数学研討会(2003. 8 上海)にて口頭発表した要綱に加筆したものである。
著者
川嶋 宏彰 西村 拓一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.51, pp.197-209, 2006-05-18
参考文献数
136
被引用文献数
9

本稿では、1980年代から盛んになってきたコンピュータビジョンにおける時系列パターン認識技術について概観する。特に非線形時間伸縮パターンの認識技術をパターンマッチングによる手法とモデルに基づく手法に分けて述べる。また、応用分野として表情認識および音響情報と視覚情報の統合に関して述べる。In this paper, we will survey researches on temporal pattern recognition which has been popular in 1980s in the field of computer vision. We will focus on dynamic time warping method categorizing it into pattern matching method and model based method. Furthermore, expression recognition and fusion of sound and image are introduced.
著者
山下 博之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.1192-1203, 2008-10-15

科学研究費補助金や科学技術振興調整費等の競争的研究資金におけるプログラムオフィサー制度とは,研究経歴のある多人数のプログラムオフィサー(PO;各競争的研究資金の個々のプログラムや研究課題の選定,評価,フォローアップ等の実務を行う研究経歴のある責任者)やプログラムディレクター(PD;競争的研究資金とその運用について統括する研究経歴のある高い地位の責任者)を擁し,プログラムの計画から最後の評価の段階まで一貫してマネジメントする体制をいう.日本におけるPO制度は,競争的研究資金制度改革の一環として,総合科学技術会議の決定した方針に基づき,平成15(2003)年より本格的に導入された.POには,研究課題の選定や実施評価時における評価者の選任,進捗状況の把握と助言,プログラム全体の運営見直しの提案等が基本的役割として期待されている.本解説では,内外におけるPO制度の状況を概観した後,筆者の科学技術振興調整費POとしての4年7か月間の経験に基づき,その実務の内容を詳細に述べる.制度の本格導入から5年が経過した現在,日本におけるPO制度の認知度は未だ高くない,制度が充分に機能しているとは言えない等といった調査結果も報告されている.今後,競争的研究資金における優れた成果の創出・活用に向けた評価システム等の確立に向け,制度の検証と関係者による議論がより一層望まれている.
著者
越川 絵里子 奥田 豊子 村井 陽子
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 2 社会科学・生活科学 (ISSN:03893456)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.35-44, 2007-02

小学生の食生活・食行動の実態を把握するために,2005年10月~11月に,大阪府下の小学校5校で,5,6年生の男女883名に対して食事を中心とした日常生活に関する質問紙調査を行い,欠損値がなかった児童711名に対して解析を行った。朝食を楽しんだかという項目に関しては,男女による有意な差は認められなかった。今朝の朝食が「とても楽しかった」と答えたのは全体の8.3%,「楽しかった」と答えたのは36.1%,「あまり楽しくなかった」と答えたのは33.6%,「つまらなかった」と答えたのは21.9%であり,朝食を楽しいと答えた児童とつまらなかったと答えた児童は約半数であった。調理行動,学習態度や意欲に関する項目の多くは,朝食が楽しかった群と楽しくなかった群の間に有意な差が認められた。朝食を楽しんで食べていた児童は調理行動が多く,学習態度が良好で意欲が高いことが推測される。保護者,児童ともに従来より少し早く起きて,朝食を楽しむために,「食事内容の充実」と「楽しい食卓作り」をすることの重要性が示唆された。We investigated the possibility of enjoying breakfast in enhancing the learning attitude and motivation in elementary school children. A questionnaire was given to elementary school children who had today's breakfast (368 boys and 343 girls). About half (44.5%) of the children enjoyed their today's breakfast (enjoyable group) , and the other did not enjoy it (non-enjoyable group). The enjoyable group had more cooking behavior ( 5±7 k 3.1 in 12 items), favorable good learning attitude ( 4.2±1.8 in 8 items) , less negative learning attitude (1.7± 1.4 in 5 items) , and less indeterminate symptoms ( 4.3±3.3 in 15 items) than the non-enjoyable group (cooking behavior: 4.6± 3.0 items, good learning attitude: 3.4±1.8 items, negative learning attitude: 2.l± 1.4 items, and indeterminate symptoms: 4.8 ± 3.3 items). There were significant differences between the two groups in all four factors. These results suggested that enjoying breakfast had positive effects on the learning attitude and motivation in elementary school children.
著者
福本松男著
出版者
福本松男
巻号頁・発行日
1985