著者
石田 博幸
出版者
愛知教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1994

国際教育援助を考えるとき、自然科学は世界共通であり、日本の理科教育がそのまま世界に通用すると思われがちである。しかし、児童の持つ初期科学概念が自然、社会、言語、文化宗教的な環境によって、大きく異なり、場合によっては互いに、一方には存在しない概念を、他方では当然の既有の概念として持っていることもある。このことを裏づけるために日本、タイ、ラオス、中国、ロシア、ホンジュラスの小学生に対して共通のアンケートを依頼し、その結果を検討した。各国における調査は、過去、及び現在の本学への留学生や、報告者の知人等に依頼した。結果、多くデータから貴重な情報が得られた。この研究結果は、国際教育協力に関る際には、自然科学といえども、その国、地方を理解した上で、協力にあたるべきであることを結論している。調査地域と調査数は6ケ国、11地域、1582名に及んだ。調査形式は,記述欄を含む選択式で、内容は、太陽、熱、光など、主に地域の気候環境をテーマとし、第2回調査においては、宗教、生命観を主題に設定し、概念地図方式も取り入れた。データ処理はMS-Windows上でMS-Visual BASICを使った。データ処理は多岐にわたる。その関係を見るための他種類のデータ解析・表示プログラムを作成した。単純統計をとった場合、特に大きな差がないケースも、個々の回答の組み合わせをみると、差が顕在化してくる。このような新しいデーター解析法によって、従来、単純に集計されていた研究データーからも新しい情報を汲み出せる可能性があることを示した。結果から作成した概念地図において気候環境、およびそこから派生している言語、宗教文化の差を色濃く表している結果がえられた。このように得られた知見は多く、おおむね報告者の仮説を裏付ける結果が出た。成果は5回の学会、8編の論文として公表した。
著者
市川 忠雄 大西 啓之 梅津 崇慎 市川 意子 野附 巌 中野 光志
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理研究会誌 (ISSN:09166505)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.53-61, 1994-10-25

青森県下の20戸の酪農家について、夏、秋、冬の3回100項目からなる「畜舎環境衛生改善調査表」を用いて調査を行なうとともに、このうちの4戸について温熱環境やアンモニアガス濃度測定を行なった。さらに、この4戸において2週間間隔で全搾乳牛の乳房炎検査を分房乳サンプルについてCMT変法で実施し、環境調査の得点と乳房炎検査成績との関係を検討した。20戸の環境調査の総合平均得点は65、66および67点とわずかだが調査ごとに改善がみとめられた。しかし、調査項目の中項目別に各配点数を満点としてその得点割合をみると、「搾乳の衛生管理」と「牛体の管理」が3回の調査ともに60%に達せず、他の中項目の得点割合と較べて低かったので、これらの項目を重点的に改善を計る必要が感じられた。朝搾乳前に測定した畜舎内外の温度差は、夏から冬へと季節か進むにしたがって平均0.3、1.7、3.6℃と大きくなったか、農家間に平均して1.4℃の違いか認められた。測定した4牛舎とも閉鎖型であるが断熱材は使用せず、夏季には開放部をできるだけ開放していたので、舎内風速も農家による違いが大きく、とくに夏季には6-0.3m/sと差があった。アンモニアガス濃度は平均して夏1.8ppm、冬4.2ppmであったが、舎内外の温度差が大きく舎内風速が低い農家で高かった。上記4戸における分房別乳房炎陽性率は、秋から冬にむかって全般的に低下の傾向を示したが、平均して4〜10%前後で推移した。全13回にわたる乳房炎検査成績を陽性反応の凝集程度とその発現頻度に応じてスコアー化し、農家ごとに1分房当たりの価として環境調査成績の平均得点と比較した。乳房炎スコアーが0.40と最も高かった農家の環境調査得点は57点と最も低く、逆にスコアーが最も低い農家は74点の得点であった。盲乳発生状況と畜舎構造、とくに牛床長の適否や牛繋留方式との関連について検討した。日本家畜管理研究会誌、30(2) : 53-61.1994.1994年6月8日受理
著者
北垣 郁雄 大膳 司 永岡 慶三 匹田 篤 村澤 昌崇
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

ファジィ理論の一つであるファジィ測度は、評価問題の解決への応用が期待されていた。当時、理論的な進展は見られていても、システム開発への応用や評価対象ごとの評価の特質や応用時の課題の検討が進んでいなかった。標記の課題名に含まれる「複眼評価」とは、評価対象の性質、評価の観点・基準など、評価を取り巻く諸要素の変動によって「評価値」が変わり得るという状況を想定し、評価値に幅が存在するという特徴を活かした評価方法を指している。そのような評価は、物理量よりも心理量の計測で関心が持たれることが多い。なぜならば、心理量としての評価値には、本来的にあいまいさが存在するからである。アンケートに即して述べるならば、客観的な事実調査よりも意識調査の分析において、複眼的な要素が多分に含まれると思われる。以上のような背景のもとに、本研究課題では、複眼評価の特質をまとめている。一つの評価対象に対しても、当該評価システムの構築にあたって複眼的な評価の数理を開発するとともに、評価の領域を広げて複眼評価自体の特質をつかむことを目的とする。複眼評価の研究は、「捉えなおし」の研究と呼んでも良い。そのような観点から、複眼評価という特徴を生かした電子アンケートの構築・分析論理をまとめた。その論理では、評価論理にファジィ理論を導入し、アンケート処理システムに資する複眼的アルゴリズムを用いた。また、これまでの諸研究成果を複眼評価という点で捉えなおすという工夫も試みた。そして、評価行為を伴う種々の研究素材(高等教育研究、グループウェア、e-learning、メディア研究など)において、複眼評価の可能性と問題点を整理した。
著者
高橋 努 野木 靖之 浅井 朋彦 高橋 俊樹 松澤 芳樹
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

磁場反転配位(FRC)プラズマを閉じ込め磁場に沿って移動する(移送)際,その経路内に存在する中性粒子や弱電離プラズマの効果を実験的に明らかにした.背景にある粒子は,移送速度に相当する速度で入射する一種のビーム入射の効果(FRCへの粒子やエネルギーの補給の効果)を持つと考えられる.背景粒子種や移送速度の制御により粒子閉じ込め時間,磁束減衰時間の伸長や回転不安定性の発生時間の遅延などFRCプラズマの閉じ込め特性の改善が可能になる.
著者
室町 幸雄
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.619-624, 2009-10-01

2007年頃から顕在化したアメリカの住宅バブルの崩壊に始まるサブプライムローン問題とそれに続く世界金融危機において,金融機関の損失額を飛躍的に増大させるとともに,アメリカから世界中の金融機関へ損失を拡散させる役割を果たしたのが,近年市場規模を急拡大させてきた証券化商品である.本稿では,証券化商品の仕組みと商品特性を単純な例を用いて説明し,価格付けモデルを紹介する.さらにヘッジ手法やリスク計測にも触れ,証券化商品や評価モデルなどに内在する問題点をまとめる.
著者
中川 匡弘
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.34, no.34, pp.95-105, 2010-08-30

本論文では,脳波やNIRS信号で見出されているフラクタル次元のような普遍的な性質の時空間特性を定量化することにより,感性を評価する新規手法を提案する.具体的には,感性フラクタル次元解析手法を用いて、視覚刺激に対する華やかさの感性解析を試みる。その結果,フラクタル次元を用いることで,ヒトの感性が客観的に計測可能であることが見出された.また、感性フラクタル次元解析手法をブレインコンピュータインターフェース(Brain Computer Interface:BCI)ヒューマンインターフェースに適用し、その有用性について検討を行う。ディスプレイに6つの図形を表示させ、1つの図形を黙視し念じた時の脳波信号について、感性フラクタル次元解析手法を用いて識別を試みる.その結果,意図した図形に対する認識率が最低でも50[%]以上得られたことから,頭でイメージしたことが入力可能な脳波キーボードの機能を持つヒューマンインターフェースとして応用できる可能性が示唆される.