著者
清水 嘉子
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.47-53, 2007-04

本研究は、母親の心理的育児ストレスおよびその対処について明らかにし、さらに尿中ストレスホルモン(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン、コルチゾール)との関係について検討した。乳幼児期の育児をしている母親21名から得られた心理的育児ストレス33項目およびその対処に関する回答および採尿をもとに分析を行った。その結果、母親の尿中ストレスホルモン(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン、コルチゾール)と心理的育児ストレスの関係では、尿中アドレナリンの高い母親と総ストレス値の高い母親、「夫の育児サポート」や「育児に伴う束縛感」のストレスが高い母親に比較的強い相関が認められた。尿中コルチゾールは「夫の育児サポート」のストレスが高い母親に比較的強い相関が認められた。尿中ノルアドレナリンが高い母親とドーパミンが高い母親に強い相関が認められた。(著者抄録)
著者
春成 秀爾 小林 謙一 坂本 稔 今村 峯雄 尾嵜 大真 藤尾 慎一郎 西本 豊弘
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.163, pp.133-176, 2011-03-31

奈良県桜井市箸墓古墳・東田大塚・矢塚・纏向石塚および纏向遺跡群・大福遺跡・上ノ庄遺跡で出土した木材・種実・土器付着物を対象に,加速器質量分析法による炭素14年代測定を行い,それらを年輪年代が判明している日本産樹木の炭素14年代にもとづいて較正して得た古墳出現期の年代について考察した結果について報告する。その目的は,最古古墳,弥生墳丘墓および集落跡ならびに併行する時期の出土試料の炭素14年代に基づいて,これらの遺跡の年代を調べ,統合することで弥生後期から古墳時代にかけての年代を推定することである。基本的には桜井市纏向遺跡群などの測定結果を,日本産樹木年輪の炭素14年代に基づいた較正曲線と照合することによって個々の試料の年代を推定したが,その際に出土状況からみた遺構との関係(纏向石塚・東田大塚・箸墓古墳の築造中,直後,後)による先後関係によって検討を行った。そして土器型式および古墳の築造過程の年代を推定した。その結果,古墳出現期の箸墓古墳が築造された直後の年代を西暦240~260年と判断した。
著者
國吉 知子 Tomoko KUNIYOSHI
雑誌
神戸女学院大学論集 = KOBE COLLEGE STUDIES
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.109-123, 2013-06-20

親子相互交流療法(PCIT:Parent-Child Interaction Therapy)は、米国のEyberg,S.らが1974年に開発した親子関係改善のための心理療法であり、主に2歳~7歳の幼児をもつ親を対象に週1回1時間、12回~20回程度の親子同時プレイセラピーを実施する。PCITは子どもの問題行動、特に外在化した攻撃的行動などの行動障害が改善することが報告されており、エビデンスに基づいたセラピーである。日本では2000年代後半に導入され、主に首都圏で普及しはじめているが、関西での初の導入に向け、本学心理相談室で実施のための準備を進めている。PCITはこどもと遊ぶ親にセラピストがワンウェイミラー越しにトランシーバーでライブコーチングを行う点に大きな特徴がある。またプログラムは、前半のCDI(Child-Directed Interaction;子ども指向型相互交流)と後半のPDI(Parent-Directed Interaction; 親指向型相互交流)の2段階から成り立っており、前半のCDIでは、親のPRIDEスキル(よりより関係づくりのためのスキル)の獲得や望ましくないスキルの低減を目指す。CDI習得後、PDIに進み、親は遊びながら子どもの行動修正に有効な指示の出し方や統制の仕方を具体的に学ぶ。本稿では、PICTの特徴や手順、PRIDEスキルやDon'tスキルなど具体的な内容について解説した。さらにPCITにおける限界設定の意義についてとりあげ、PDIセッションにおけるタイムアウトを子どもにとって安全に進めるためにはCDIセッションでの親子の絆の再構築が重要であることを指摘した。さらに限界設定が三者関係への転回点として機能する点、子どものネガティブ感情に対処しにくい現代の親にとって、限界設定が重要になってきている点などについて論じた。
著者
柿澤 寿信
巻号頁・発行日
2017-05

生徒と教員の性別の組み合わせ(Gender matching)が、生徒の学習成果に何らかの影響を及ぼす可能性が、多くの先行研究によって指摘されている。また、学習成果に対する生徒の質問行動の影響や、その質問行動に対する性別の組み合わせの影響などについても、多くの先行研究がすでに様々な検討を行っている。そこで本研究では、日本の中学1年生から3年生までの各学年につき、「平成15年度教育課程実施状況調査」の個票データを用いて、これらの関係を計量的に分析した。その結果、①教員が同性である場合に成績が多少向上する傾向が見られ、それは女子においてより顕著であること、②性別の組み合わせの効果が最も顕著に表れるのは英語であり、次いで数学・理科であること、③性別の組み合わせは生徒の質問行動に影響を与えていること、④女子の成績に対する女性教員の効果の一部は、質問行動に起因している可能性があること、および⑤質問行動の効果をコントロールしても、女子の成績に対する女性教員の正の効果は残ること、などが明らかになった。
著者
安井 拓未 中村 篤祥 田中 章 工藤 峰一
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:21888752)
巻号頁・発行日
vol.2017-MUS-116, no.15, pp.1-4, 2017-08-17

音響的に類似している部分が周期的に連続して現れることを用いて,楽曲 PCM ファイルからループを検出する手法を提案する.ゲーム音楽用 MIDI ファイルを WAVE 形式に変換したファイルを用いた実験によれば,再生時間の 1/7 の時間で,222 曲中 199 曲で聴覚的に違和感のないつなぎ目で繋げてループさせることに成功した.
著者
大和田 智文 御幸 大聖
出版者
関西福祉大学研究委員会
雑誌
関西福祉大学研究紀要 = The Journal of Kansai University of Social Welfare (ISSN:24326828)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.123-130, 2017-03

今日,SNS は対人コミュニケーションの重要なチャネルとして日常生活にはなくてはならないものになっている.心理学領域におけるSNS コミュニケーションに関する研究では,SNS の利用がもたらす功罪や,それに関連するパーソナリティに着目した議論が主になされてきていた.しかしながら,SNS 上にさまざまな発言を顕在化させてしまう心理機序をFTF コミュニケーションと関連づけながら検討した研究は見当たらなかった.本研究では,大学生におけるSNS の利用実態とSNS 上に見られる社会的不適切行為との関連に着目し,この社会的不適切行為が,FTF コミュニケーションによってすでに存在していた行為がSNS を通して顕在化されたもの(SNS の不適切行為表出の媒介機能)なのか,それとも,SNS によって新たに生み出された行為(SNS の不適切行為創出機能)なのか,すなわち,SNS コミュニケーションの顕在化に関する心理機序についての検討を行った.兵庫県内の私立大学学部生計97 名を対象に質問紙調査を実施した.その結果,FTF において不適切発言を経験することが,SNS への不適切発言投稿経験に影響を及ぼしていた.一方で,FTF での不適切発言を多く経験している者がSNS 上に見られる社会的不適切行為に対する許容度を高めてしまうことが,SNS への不適切写真投稿経験に影響を及ぼしていた.加えて,SNS を利用した自己開示欲求もSNS への不適切写真投稿経験に影響していた.すなわち,SNS への不適切発言投稿に対してはSNS の不適切行為表出の媒介機能が,SNS への不適切写真投稿に対してはSNS の不適切行為創出機能がそれぞれ働いていたことが示唆された.以上より,SNS への不適切発言投稿経験とSNS への不適切写真投稿経験とでその発現機序は異なっていると考えられた.
著者
小椋 純一
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.207, pp.43-77, 2018-02-28

森林や草原の景観はふつう1~2年で大きく変わることはないが,数十年の単位で見ると,樹木の成長や枯死,あるいは草原の放置による森林化などにより,しばしば大きく変化する。本稿では,高度経済成長期を画期とする植生景観変化とその背景について,中国山地西部の2つの地域の例について考えてみた。その具体的な地域として取り上げたのは,広島県北西部の北広島町の八幡高原と山口県のやや西部に位置する秋吉台である。その2つの地域について,文献類や写真,また古老への聞き取りなどをもとに考察した。その結果,八幡高原では,たとえば,今はスキー場などの一部を除き,草原はわずかしか見られないが,高度経済成長期の前までは,牛馬の放牧などのためなどに存在した草原が少なからず見られた。その草原の大部分は森林に変わり,また,高度経済成長期の前の森林には大きな木が少なかったが,燃料の変化などにより,森林の樹木は高木化した。なお,その地の草原は,高度経済成長期の直前の頃よりも少し遡る昭和初頭の頃,あるいは大正期頃まではさらに広く,その面積は森林を上回るほどであった。その変化の背景には,そこで飼育されていた馬の減少もあったが,別の背景として,大正の終り頃から製炭が盛んになり,山林の主な運用方法が旧来の牛馬の飼育や肥料用などのための柴草採取から,炭の原木確保のための立木育成へと変わったことがあった。一方,秋吉台には,今も草原が広く見られるが,それはそこが国定公園などに指定されている所で,草原の景観を守ることが観光地としての価値を維持するためにも重要であるためである。しかし,その秋吉台の草原も,高度経済成長期の前と比べると,草原面積は少し減少している。また,草原やその周辺の山林への人の関わり方の大きな変化により,植物種の変化など,その草原には大きな質的変化が見られ,また草原を取り巻く森林も高木化が進むなど大きく変化してきている。
著者
余 六一 任 萍
雑誌
神戸女学院大学論集 = KOBE COLLEGE STUDIES
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.41-47, 2008-06-20

絶海中津是日本〓〓宗禅僧,也是日本中世禅林的代表人物,〓同門〓堂周信同被称〓"五山文学双壁"。其詩文造詣高深,作品《蕉堅集》被視〓日本五山文学的瑰宝。他33〓入明留学,在明滞留〓間〓〓10年,其留学〓〓不〓使其詩文造詣大〓提高,而且思想上也深受中国禅林〓〓的影〓。其詩文集《蕉堅稿》就集中体現了其〓儒一致思想及其〓道家思想的受容。前者可从其多次提及宋代倡〓〓儒一致的代表人物契嵩及其《〓教編》,并多次借用〓代僧,儒交好的典故〓抒胸臆等得以看出,后者則在其詩中多〓表〓了隠逸出世思想和逍遥游世的〓度中得以体現。通〓〓《蕉堅集》的考察和研究,我〓不〓窺出絶海中津在思想〓面上有着〓同〓期日本禅林僧侶不同的特点,尤其〓得〓注。
著者
小川 功
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学マネジメント学部紀要 = JOURNAL OF ATOMI UNIVERSITY FACULTY OF MANAGEMENT (ISSN:13481118)
巻号頁・発行日
no.7, pp.1-14, 2009-03

現在東京ベイ・エリアは東京ディズニー・リゾートに代表される海浜リゾートの一大集積地である.当該地域の臨海遊園地の先駆として京成電鉄直営の谷津遊園とともに三田浜楽園が有名で,ともに湾岸部の塩田等を埋め立てて築造された.本稿では戦前期に文豪川端康成,太宰治なども滞在して小説の舞台となった日本文学ゆかりの三田浜楽園を取り上げる.事業の永続性にリスクが不可避な観光経営の視点からこの種の観光施設の経営が一般には不安視されていた時期に,いち早く東京湾岸の将来性に着目して一大海浜リゾートを創設した資本家は如何なる人物で,広大な敷地と巨額の建設費はいかなる手段により調達されたのかを明らかにしようとしたものである.すなわち同地は明治初期に高級軍人により塩田として開発され,請負業者などに譲渡され地元の船橋商業銀行の資金で拡張された.この間請負業者の没落,船橋商業銀行の破綻,台風による水害等を経て最終的に塩田の権利を継承したのは京和銀行専務の平田章千代であった.平田塩業により経営された塩田もやがて塩田そのものの採算性の低下に加え,金主の京和銀行の破綻という予期せぬ不幸に見舞われる.こうした環境の激変の最中に昭和2年12月遊園地,温泉旅館,土地建物の経営を目的とする資本金10万円の観光企業・三田浜楽園が設立された.本稿では設立時の三田浜楽園の役員構成等を詳細に分析することにより,京和銀行の人脈との関係を解明しようと努めた.また北海道の「板谷財閥」から海運業で蓄積した豊富なリスクマネーが三田浜楽園の土地を担保として豊富に供給された事実も明らかにした.
著者
柳川 重規
出版者
日本比較法研究所
雑誌
比較法雑誌 (ISSN:00104116)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.63-73, 2016-12-30

2016年1月30日に多摩キャンパスにおいて開催された日本比較法研究所と韓国・漢陽大学校法学研究所共催のシンポジウム「日本及び韓国における現在の法状況」における報告