著者
遠藤 幸吉
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン (ISSN:03743470)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.106-111, 1955

テレビジョン放送局を設立するに当り,いかなる規模において開始すべきかはその企業体の資金により色々と相異もあるのは当然であるが,ある程度の将来性も考慮して充分に運用できる程度のものが望ましい。先進国としての米国の例を見ると現在ではネットワークが完備し,小都市の放送局では簡単な施設のものでもキー・ステーションからの番組を貰って聴視者を満足させている。一方キー・ステーションの方も,初期の頃はスタジオでもラジオに使用していたものを改造した程度であったが放送時間が増え,番組内容の充実するに伴いテレビジョン専門の大スタジオを建設するようになった。この経過を見ても判るように僅か数年間におけるテレビジョンの進歩は真に目覚しいものであると同時に現在でも新しい機械が次々と発表され,今後の発展は予想し難いものがある。そのため現在新設されるテレビジョン専門の放送局でもスタジオなどは将来増設を考慮して敷地を広くとってある。ラジオ東京テレビジョンの局舎および施設は現在の段階において放送時間を5時間位とし,ある程度番組をスタジオ内において充分こなせること,将来の増設が可能なることに基本方針を置き旧近衛三連隊跡の5000坪の敷地に現在の局舎を建設した。なお観客参加番組はラジオと共通のが多いこと,および観客動員の都合でなお一層都心に近いことが望まれるのでその目的のためには現在のラジオ東京ホールおよび築地に建設中のラジオテレビスタジオを使用し,マイクロウエーブで赤坂の局舎まで連絡することにした。
著者
久保 隆司
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.93, no.1, pp.1-24, 2019

<p>本論は、近世初期の神道家・朱子学者の山崎闇斎が探究した「闇斎神学」を、闇斎が「神書」として重視した『日本書紀』(特に神代巻)の構造と解釈の観点から捉える試みである。井筒俊彦の「神秘哲学」概念を主な補助線として導入し、闇斎の構築した「天人唯一」の神学は普遍性を持つ神秘哲学の日本的展開であることを明らかにしたい。闇斎は普遍的真理の探究過程において、朱子学的「合理主義」の限界と葛藤し、超克することでその神学を形成したと考えられるが、具体的には、中世以来の神聖な行為としての『日本書紀』の体認的読解を、神秘哲学の構造上に取り込むことで、実践と哲学との統合を図ったとの解釈が可能となる。この観点から、闇斎神学の本質は、合理性を獲得した上で、神道的な学び・実践を通じて、その限界を超える意識の高みを目指すところにあることがわかってくる。本論では、闇斎神学とは、垂直段階的に構築された「神儒兼学」の統合体系であり、近世・近代における日本では稀有な神秘哲学体系であることの一端を考察する。</p>
著者
孫・片田 晶
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.285-301, 2016

<p>戦後の公立学校では, 法的に「外国人」とされた在日朝鮮人の二世・三世に対し, どのような「問題」が見出されてきたのだろうか. 在日朝鮮人教育の運動・言説は, 1970年代以降全国的な発展を見せるが, そこでは「民族」としての人間形成を剝奪されているとされた児童生徒の意識やありようの「問題」 (教師が想定するところの民族性や民族的自覚の欠如) に専ら関心が注がれてきた. こうした教育言説をその起源へ遡ると, 1960年代までの日教組全国教研集会 (教研) での議論がその原型となっている.</p><p>1950年代後半から60年代の教研では, 在日朝鮮人教育への視角に大きな変容が生じた. その背景には帰国運動など一連の日朝友好運動と日本民族・国民教育運動の政治が存在していた. この時期の教育論には, 親や子どもの声に耳を傾け, 学校・地域での疎外, 進路差別, 貧困などの逆境に配慮し, その社会環境を問題化する教育保障の立場と, 学校外の政治運動が要請する課題と連動した, 民族・国民としての主体形成の欠落を問題化する立場が存在していた. 当初両者は並存関係にあったが, 上記の政治の影響下で60年代初頭には後者が圧倒的に優勢となった. その結果, 「日本人教師」が最も重視すべきは「同化」の問題とされ, 「日本人」とは本質的に異質な民族・国民としての意識・内実の "回復" を中核的な課題とする在日朝鮮人教育言説が成立した.</p>
著者
安里 和晃
出版者
日本保健医療社会学会
雑誌
保健医療社会学論集 (ISSN:13430203)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.53-64, 2011

候補者は経済動機というよりも、スキルの習得や経験といった社会的動機により来日している側面がみられる。受け入れ機関も人材不足の解消やコストの削減のためというよりも、将来へのテストケースとして受け入れを位置付けており、受け入れ効果としてコミュニケーションや利用者からの評判、チームワークなどについては肯定的な評価が与えられている。こうしてみると候補者と受け入れ側に齟齬はなさそうである。しかし、国家試験や就労に必要な日本語の習得が重要な課題となっているにもかかわらず、教材や標準化されたカリキュラムが不十分であった。課題に対して基盤整備が不十分という矛盾は、現在は大きく改善されつつある。とはいえ、日本語習得の負担が大きく、日本語の習得にどう対処するかは大きな問題であると言える。
著者
金澤 裕之
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.47-53, 2007

近年、主に話しことばで、例えば「多くの方が来ていただき…」というような、「○○(=相手)が△△していただく」という表現をよく耳にする。授受を表わす部分が「てくださる」ではないこの表現は、現在一般に「誤用」と考えられているが、使用場面の急速な広がりの背景には、これまでの言語ルールを超えた何らかの理由があるように感じられる。本稿では、話しことばの実際の用例において、「てくださる」と「ていただく」の両者が入り得る場面でも「ていただく」の方が遥かに高い割合で選択されていることを確認しつつ、そうした現象の背景にあるものとして、現代人の敬語意識における一つの心理的な傾向について考察し、併せて、複雑な体系を持つ日本語の授受表現における単純化の方向への一つの兆しが、こうした現象に現われているかもしれない可能性について言及する。
著者
松田 さおり
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.64, 2012

本報告は、日本のナイトクラブで働く女性の接客場面における感情労働を、<色で売る>および<いい人間関係>という銀座ホステスの現場概念から分析するものである。ジェンダーの差異と客-ホステス間の非対称性から一層の困難を抱えるホステスが、客を「叱りつける」という「自律的」な感情労働場面を詳細に検討することで、感情労働概念における「他律性」と「自律性」を再考することにつなげたい。
著者
平田 昌弘
出版者
食品資材研究会
雑誌
New Food Industry (ISSN:05470277)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.84-97, 2011

東アジアは,本来,乳文化圏にはない。本シリーズ第1稿目53(1)の伝統的搾乳地帯を示した図1を参照されたい(平田,2011)。日本人,朝鮮人,漢人などの一般市民は,基本的には乳製品を食してこなかった。しかし,東アジアでは,牧畜民系統の北魏(AD 386年〜AD 556年)や元(AD 1271年〜AD 1368年)に長く統治されてきた歴史があり,乳製品の利用を示す古文書が多数残されている。また,日本では,貴族階級の一部の人びとに乳製品が医薬的に利用されていたことが『本草和名』『医心方』などの古文書や木簡に示されている(廣野,1997;有賀,1998)。東アジアの古文書には,酪,乾酪,漉酪,馬酪酵,酥,生酥,熟酥,蘇,蘓,醍醐といった乳製品が登場する。これらの乳製品がいったいどのようなものであったのだろうか,その再現は太古の昔の復元というロマンに満ち,極めて興味深い。 これらの乳製品は,時代と共に生起・消滅する。つまり,参考とする古文書によって,再現対象とする乳製品の内容が異なってくる。本稿では,『斉民要術』をテキストに,東アジアにおける古代乳製品を再現した結果を紹介しよう。『斉民要術』は,北魏時代(AD 386年〜AD 556年)の末期,AD530年〜AD 550年に賈思勰によって編纂された。北魏は,牧畜民由来の鮮卑の集団が華北地方に建国した国家である。何故に『斉民要術』を取り挙げるかというと,1)編纂されたのがAD 530年〜AD 550年と極めて古いテキストであること,2)乳加工の説明が詳細に記述されていること,3)斉民要術が引用した編纂文献数が約180と,後代の古文書と比較すると極めて少ないことから,生乳から最終産物までの一連の乳製品の再現にあたっては混乱をより避けられるであろうことに主によっている。 『斉民要術』に登場する乳製品の語彙は,牛乳を原料としてつくる酪・漉酪・乾酪・酥と,ロバとウマの混合乳を原料としてつくる馬酪酵である。ロバとウマの乳は入手が困難なため馬酪酵は再現実験を諦め,酪・漉酪・乾酪・酥についてのみ再現した結果を紹介してみたい。古代の東アジアや日本の乳製品を再現し,新たなる商品化を試みられている開発者の方々の参考になれば幸いである。
著者
見城 育夫 けんじょう いくお Kenjo Ikuo 沖縄大学人文学部福祉文化学科
出版者
沖縄大学人文学部
雑誌
沖縄大学人文学部紀要 (ISSN:13458523)
巻号頁・発行日
no.22, pp.51-59, 2019-03

2018 年度介護保険制度改正に伴う自立支援・重度化防止に向けた取り組みについては,ここに至る過程において様々な議論が行われてきた。今改正のこれまでの議論の整理及び改正の論点と今後の課題について文献分析を基に考察することにしたい。
著者
松田 尚子
出版者
佛教大学大学院
雑誌
佛教大学大学院紀要. 社会福祉学研究科篇 (ISSN:18834019)
巻号頁・発行日
no.48, pp.53-70, 2020-03-01

本研究では,介護現場における人手不足について,その要因と現在展開されている人材確保政策とを対比した上で,人手不足を改善するための方策について検討した。人手不足の根本的な要因は,介護労働の担い手として劣悪な労働条件でも確保し得る人材(女性,若年層,ボランティア等)を充ててきたことと,介護保険法の施行により付加された「営利性」が労働条件のさらなる悪化と介護労働の変容を招いたことにある。ところが,人材確保政策の主軸は「新たな担い手の創出」であり,さらには,介護労働者の労働条件と介護サービスの利便性とが天秤にかけられており,実態に即した対策とは言い難い状況にある。 介護保険制度は国民への介護保障の柱であり,人材確保はそのための手段に過ぎない。このことを踏まえ,まずは,労働環境の改善を図るとともに,それらとサービス利用とを完全に切り離し,「ケア」という一貫した概念を取り入れる必要がある。介護保険制度人手不足人材確保