著者
林 洋子
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 : 国際日本文化研究センター紀要 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.13-37, 2006-03-31

両大戦間の日本とフランスの間を移動しながら活躍した画家・藤田嗣治(一八八六―一九六八)は、一九二〇年代のパリで描いた裸婦や猫をモティーフとするタブローや太平洋戦争中に描いた「戦争画」で広く知られる。しかしながら、一九二〇年代末から一九三〇年代に壁画の大作をパリと日本で複数手がけている。なかでも一九二九年にパリの日本館のために描いた《欧人日本へ到来の図》は、画家がはじめて本格的に取り組んだ壁画であり、彼にとって最大級のサイズだっただけでなく、注文画ながら異国で初めて取り組んだ「日本表象」であった。近年、この作品は日本とフランスの共同プロジェクトにより修復されたが、その前後の調査により、当時の藤田としては例外的にも作品の完成までに約二年を要しており、相当数のドローイングと複数のヴァリエーション作品が存在することが確認できた。本稿では、この対策の製作プロセスをたどることにより、一九二〇年代の静謐な裸婦表現から一九三〇年代以降の群像表現に移行していくこの画家の転換点を考える。
著者
小笠原 大輔
出版者
湘北短期大学
雑誌
湘北紀要 = Journal of Shohoku College (ISSN:03859096)
巻号頁・発行日
no.40, pp.73-81, 2019-03-31

短期大学生を対象に側方倒立回転の上達を目的とし、週1回4か月間「なかよしぶらぶら側転」の簡易版である「なかよしパッチンぐるぐる」を行った。その結果、実施前後の習熟度を比較したところ、多くの者に左右両方向とも上達が見られた。また多くの者が楽しいと感じながらも、それほど難しさを感じていないことが明らかになった。従って、本実践は側方倒立回転上達のための初歩段階としての運動として有効であると考えられる。
著者
山形 俊之 Toshiyuki Yamagata 湘北短期大学総合ビジネス学科
巻号頁・発行日
no.34, pp.189-204, 2013-03-31

現在、アウトドアレジャーの中で、登山がブームだといわれている。1980 年代後期から平成年間を通じて継続しているこのブームは年齢・性別を問わず多くの人々を山に向かわせ、その中には多くのビギナー登山者も含まれている。また、登山を中心に据えた新たなアウトドア・ビジネスや観光ビジネスが展開されるようになったのも、この登山ブームの特徴といえる。本稿ではこのブームを「平成登山ブーム」として概観する。まず近代登山史から見た平成登山ブームの背景について考察し、平成登山ブームにおける登山者数の統計的考察を行ったうえで、平成登山ブームを支え、人々を山に導いた要因について考察したい。
著者
徳永 佳晃
出版者
東洋文庫
雑誌
東洋学報 = The Toyo Gakuho (ISSN:03869067)
巻号頁・発行日
vol.100, no.4, pp.01-026, 2019-03

Scholars believe that Safavid Iran (1501–1722) and Mughal India (1526–1858) emphasized their friendly relations with each other and peace was established for many years. It is typical of their good relationship that their monarchs referred to each other in diplomatic correspondence as family members since the seventeenth century. However, detailed analyses of this diplomatic practice have not been conducted. Why did these two empires continue this practice over several generations? To investigate this practice, this study analyzed the usages of terms and expressions indicative of their fictive kinship between the Safavids and the Mughals in their diplomatic correspondence of the seventeenth century. The study particularly focused on correspondence about the Qandahar dispute, which was the biggest disagreement between these two empires. This study revealed the following three points. Firstly, Abbas I (r. 1587–1629) and Jahangir (r. 1605–1627), who experienced a military confrontation regarding Qandahar in 1622, justified their operations using the discourse of kinship, thereby preventing a total breakdown of diplomatic relations between the two empires. Secondly, when confronted by the Qandahar dispute, the heirs of these two monarchs followed this diplomatic practice in an attempt to lessen the negative influence of the Qandahar problem on theit relations, Thirdly, their fictive kinship was referred to in their correspondence with the intention of fixing the relationship, while diplomatic relations generally deteriorated in the second half of the century. In sum, to maintain friendly relations between Safavid Iran and Mughal India, the countries’ monarchs used terms of fictive kinship in their diplomatic correspondence. In addition, they each used that kinship discourse to request the other to accede to their political and diplomatic demands and to explain their military actions. In conclusion, the usages of terms of fictive kinship between these two imperial houses in their diplomatic correspondence over several generations reflect their diplomatic policies used to justified pursuit of their greatest interests while preventing full-scale confrontations.
著者
安部 文紀
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2018-03-23

学術論文の投稿や検索に特化した Web サービスの台頭によって, 論文を大量に入手できるようになった. これに伴い, 「論文を読むべきかどうか判断する機会」と, 概要を思い出すために「論文を読み返す機会」が増えた. 一般的にこのような機会には論文のタイトルやアブストラクトが読まれるが, タイトルとアブストラクトよりも短く, かつ印象に残りやすい文章が論文に付与されていれば, 「論文を読むべきか判断する手間」と「概要を思い出す手間」が軽減することが期待される. そこで本研究では, 論文をタイトルとアブストラクトよりも少ない文章量で, かつ印象に残りやすく要約するために, 古来より親しまれてきた俳句や川柳のような 575 の持つ音韻的読みやすさを付与した要約文が望ましいと考え, 学術論文の新たな要約手段として 575 形式のキャッチフレーズで論文を表現する「575 自動生成手法」を提案する. 575 自動生成手法は, 「特徴語抽出」と「575 候補生成」, 候補絞り込みのための「合議制スコアリング」の 3 つのモジュールから構成される. 特徴語抽出では, 入力する論文における単語の出現頻度に加えて, 論文の持つ意味を加味した単語スコアリングによって特徴語を決定する. 575 候補生成では, ソフトウェア工学関連の学会論文集から人手で作成した 575 を基に, 575 テンプレートを作成し, 特徴語を当てはめることで 575 候補を生成する. 合議制スコアリングでは, 人手で 575 を作成する工程で得た知見を反映させた評価指標によって 575 候補をスコアリングし, 最終的な出力を決定する. 評価実験では, 575 自動生成手法を学術論文に適用したときに自動生成された 575 (論文 575) を用いて, 論文タイトルと比較するユーザスタディを行った結果, タイトルよりも少ない文章量で論文概要を表現できることを確認した. また, 論文 575 から受ける印象を人手生成の 575 と比較したところ, 手製のものより劣る結果となった. そのため, 人間の印象に残りやすい論文 575 を生成する手法の探求を今後の課題とする.
著者
村本 卓
出版者
八戸学院大学
雑誌
八戸学院大学紀要 (ISSN:21878102)
巻号頁・発行日
no.58, pp.71-75, 2019-03-29

本研究では、VRコンテンツの特性(没入感、リアリティ、臨場感など)に基づいて観光スポットを分析し、新たな視点でVRコンテンツを制作することで、地域の観光スポットを再確認し、観光資源発見の可能性について考察を行った。VRコンテンツ制作は、ユーザ体験を考慮した撮影など、従来の手法とは異なる部分も多い。本稿では、VRコンテンツの撮影・編集・配信に関する先行研究・事例から得た知見を元に、種差海岸の観光資源のVRコンテンツ企画について提案する。
著者
横山 雄一 井口 和弘 臼井 茂之 平野 和行 ヨコヤマ ユウイチ イグチ カズヒロ ウスイ シゲユキ ヒラノ カズユキ Yuichi YOKOYAMA Kazuhiro IGUCHI Shigeyuki USUI Kazuyuki HIRANO
雑誌
岐阜薬科大学紀要 = The annual proceedings of Gifu Pharmaceutical University
巻号頁・発行日
vol.62, pp.68-74, 2013-06-30

グリセロールは肝臓における糖新生や脂質合成の材料であるため、肝臓へのグリセロール流入量の変化は様々な代謝経路に変調をきたす。アクアポリン9(AQP9)は、主に肝臓において発現が見られ、水分子のみならず、グリセロールや尿素などの低分子溶質をも透過させるチャネル型膜蛋白質である。AMP-activated protein kinase(AMPK)は生体内のエネルギーセンサーであり、糖・脂質代謝の恒常性維持に働くセリン/スレオニンキナーゼである。本研究では、AMPKの活性化剤である、5-aminoimidazole-4-carboxamide-1--D-ribonucleoside(AICAR)を、ヒト肝癌由来HepG2 細胞に作用させたところ、AQP9 mRNA の発現量が顕著に減少することを確認した。レポータージーンアッセイや転写因子forkhead boxa2(Foxa2)遺伝子をノックダウンさせた実験の結果から、Foxa2 は、AICAR によるAQP9 遺伝子発現抑制に関わる重要な転写調節因子であることを見出した。AICAR により活性化されたAMPK は、Akt のThr-308 残基とSer-473 残基のリン酸化を促し、それに伴いFoxa2 がリン酸化されて核内から核外へと移行することを明らかにした。したがって、肝臓でのグリセロール輸送の観点からAMPK によるコントロールのもとに、AQP9 は肝臓へのグリセロールの流入量を変化させ、糖・脂質代謝調節に寄与している可能性が示唆された。
著者
伊藤 昭 矢野 博之
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.944-952, 1997-05-15

自己の利益をのみ追求するエージェントの社会では,どのようにして協調が発現するのであろうか.我々は,過去の対戦履歴が公開されるという条件の下で,エージェントが囚人のジレンマと同型の対戦を,相手を次々と替えながら行わねばならないとき,どのような対戦戦略を採用すればよいのかを調べてきた.今回は,どのようにして協調的戦略が社会的に発現(進化)するのか,またそのための条件は何かなどを,遺伝的アルゴリズムの手法を用いて調べる.我々は,まず対戦戦略アルゴリズムを抽象計算器の上で定義する.次に,エージェントは対戦利益に応じて子を生成できるものとし,また子エージェント生成に際しては,戦略アルゴリズムに突然変異を導入してその進化を促す.その結果,最初単純なしっぺ返し戦略TFTから出発して,系は非協調的戦略を含む様々な戦略を持つエージェントを生成するが,生存競争の中でより強い協調的な戦略が成長してくることを示す.
著者
有吉 晃平
出版者
九州共立大学
雑誌
九州共立大学研究紀要 = Study journal of Kyushu Kyoritsu University (ISSN:21860483)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.1-6, 2014-03-30

When setting up the training programs in consideration of the game characteristic in a badmintongame, it is important to analyze the rally time and rest time in the game level. However, there is littleresearch in college badminton games.This study aimed to identify the features between a national tournament and a local tournament ofthe college player's badminton games.Subjects for this study are the women's finalist and semifinalist for the college national tournamentand the college local tournament games. A time analysis of these matches was performed.In the result, the mean total game time was no significant difference between the national and thelocal tournament games. In the Doubles games, national tournament games had faster rallies than localtournament games. In the singles games, national tournament had faster and longer rallies than localtournament games. The result obtained by this study can assist to sets up training program of collegebadminton players.
著者
瀧和男 金田悠紀夫 前川禎男
雑誌
情報処理学会研究報告計算機アーキテクチャ(ARC)
巻号頁・発行日
vol.1978, no.18(1978-ARC-032), pp.1-10, 1978-09-13