著者
鹿嶋 洋
出版者
地理空間学会
雑誌
地理空間 (ISSN:18829872)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.239-266, 2015 (Released:2018-04-04)

本稿は,大分県の半導体産業集積地域の特質を解明するため,その形成過程と企業間連関の空間構造を分析した。当県の半導体産業は,1970年の東芝大分工場の進出を端緒とする。東芝は進出当初から人件費削減のため労働集約的な工程を担う地元企業群を育成した。その後,生産の自動化とともに製造装置関連の地元機械加工業者や後工程専門の東芝子会社が協力企業となり,1990年代中期までに東芝の影響力の強い産業集積が確立された。しかしこの時点では県内の集積は技術的多様性を欠き,専門的な部門を県外,とくに京浜地域に依存した。その後,関連企業の増加と技術的多様性の高まり,東芝の影響力低下に伴う地元企業の自立化と企業間連関の広域化,後工程企業の淘汰・再編が進行した結果,当県の半導体産業集積は,局地的生産体系から,次第に地方新興集積へと移行しつつある。以上より,産業集積の実態解明に際し空間的重層性への留意が必要であることが示唆された。
著者
関口 悠
出版者
一般社団法人 日本接着学会
雑誌
日本接着学会誌 (ISSN:09164812)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.50-56, 2019-02-01 (Released:2019-02-21)
参考文献数
25

接着に関連したバイオミメティクス( 生体模倣技術) の中でも,ヤモリの足裏に見られる接着性には可逆接合という特徴がある。ヤモリは分子間力を巧みに利用して,自らの体重を支えるのに十分な凝着力を獲得することに成功したが,凝着している足を簡単に剥がせるからこそ歩いたり走ったりすることができる。この剥がし易さのメカニズムを理解することは,ヤモリ型の可逆接合を実現する上で重要である。本論文では,ヤモリ足裏に見られる凝着現象の脱離メカニズムに着目した。足裏構造を簡易化した凝着モデルを用いて凝着力の方向依存性について解析的に検討することで,構造上の特徴により異方性が発現していることを明らかにした。更に,ヤモリ足裏構造にインスピレーションされた凝着デバイスを作製し,凝着異方性を実験的に検証するとともに,応用を想定したマニピュレーションシステムの検討を行った。
著者
鈴木 俊明
出版者
関西理学療法学会
雑誌
関西理学療法 (ISSN:13469606)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.1-2, 2018 (Released:2018-12-20)

Anatomical and kinesiological explanations are very important in the analysis of posture and motion, and the judgement of impairments in physical therapy evaluation. To improve posture and motion it is necessary to treat the higher priority impairment.
著者
Sangchai Yingsakmongkon Daisei Miyamoto Nongluk Sriwilaijaroen Kimie Fujita Kosai Matsumoto Wipawee Jampangern Hiroaki Hiramatsu Chao-Tan Guo Toshihiko Sawada Tadanobu Takahashi Kazuya Hidari Takashi Suzuki Morihiro Ito Yasuhiko Ito Yasuo Suzuki
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Biological and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:09186158)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.511-515, 2008-03-01 (Released:2008-03-01)
参考文献数
30
被引用文献数
42 46

Using a plaque reduction assay, treatment of human influenza A viruses with the fruit-juice concentrate of Japanese plum (Prunus mume SIEB. et ZUCC) showed strong in vitro anti-influenza activity against human influenza A viruses before viral adsorption, but not after viral adsorption, with 50% inhibitory concentration (IC50) values against A/PR/8/34 (H1N1) virus, A/Aichi/2/68 (H3N2) virus and A/Memphis/1/71 (H3N2) virus of 6.35±0.17, 2.84±1.98 and 0.53±0.10 μg/ml, respectively. The plum-juice concentrate exhibited hemagglutination activity toward guinea pig erythrocytes. Its hemagglutination activity was inhibited by the monosaccharide N-acetylneuraminic acid and a sialoglycoprotein (fetuin), but not by the other tested monosaccharides (mannose, galactose, glucose and N-acetylglucosamine), suggesting the presence of a lectin-like molecule(s) in the Japanese plum-juice concentrate. Our findings suggest that the fruit-juice concentrate of Japanese plum may prevent and reduce infection with human influenza A virus, possibly via inhibition of viral hemagglutinin attachment to host cell surfaces by its lectin-like activity.
著者
則藤 孝志
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.100-117, 2012-06-30 (Released:2017-05-19)

本稿では,梅干し開発輸入の展開とそのメカニズムを,加工業者の企業行動とそれを規定する諸要因の分析から明らかにした.その際,複数の要因=歯車がかみ合いながら開発輸入をめぐるダイナミックな構造変化が起こる仕組みを開発輸入メカニズムと捉え,とくに1990年代に起こった台湾から中国への産地移動に着目した.梅干し開発輸入の地理的パターンは,1960年代から1980年代までの日本-台湾から1990年代以降の日本-中国へとシフトしてきたが,その背景にはアジアの経済発展があった.そのなかで,日本の加工業者は開発輸入をめぐる多様な企業行動を展開してきた.台湾中心期(1962年〜1980年代)には,栽培・加工の技術指導や資材提供,産地開拓がみられ,中国転換・拡大期(1990年代〜2000年代前半)には,新たに直接投資を通じた加工場の設立や調製品輸入の導入がみられた.一方,輸入減少期(2000年代後半)には開発輸入からの撤退が相次ぐなか,差別化商品の開発や品質管理システムの導入など「量的指向型」から「品質指向型」へと企業行動の転換が図られている.このような企業行動の展開は,アジアの経済発展や日本の市場動向などの経済的要因に加えて,言語の共通性や信頼の度合い,政治的対立の有無などの文化的・政治的要因にも規定されていた.とくに1990年代における中国での開発輸入を主導したのは台湾系加工業者であり,そこでは日台中の加工業者間の「文化的・政治的距離」が大きな影響を及ぼしていた.
著者
吉村 征洋
雑誌
摂大人文科学 = The Setsudai Review of Humanities and Social Sciences (ISSN:13419315)
巻号頁・発行日
no.21, pp.67-83, 2014-01

本論文では、シェイクスピアの2 つの物語詩であるVenus and Adonis とThe Rape of Lucrece において、赤と白と戦争のイメジャリーが散見することを例証し、これらの共通点をエリザベス朝政治的コンテクストから考察すると、この2つの物語詩にはコード化されたメッセージが内在することを指摘している。2 つの物語詩では、情欲に溺れる為政者が共通して登場するが、これらの為政者たちを表象する色として「赤と白」が使われている。赤と白の色は、戦争に関する語句と密接に連関している。こうしたイメジャリーは、薔薇戦争を想起させる。ヴィーナス・ルクリースの赤と白の表象がエリザベス1 世表象と酷似している点、2 つの物語詩における情欲に溺れる為政者像とエリザベス朝晩年に恋愛ゲームにうつつをぬかしたエリザベス1 世との類似点、さらには薔薇戦争との連関を考察すると、シェイクスピアは2 つの物語詩における為政者の人物造型において、エリザベス1 世を意識して執筆したことが想像できる。結論としては、2 つの物語詩をエリザベス朝当時の政治的コンテクストから検証すると、反エリザベスイデオロギーを包含していると指摘している。
著者
Yuichi OI Yasuhito HIRAI Shotaro DOKI Yuh OHTAKI Daisuke HORI Christina-Sylvia ANDREA Shin-ichiro SASAHARA Tamaki SAITO Ichiyo MATSUZAKI
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR AERONAUTICAL AND SPACE SCIENCES
雑誌
TRANSACTIONS OF THE JAPAN SOCIETY FOR AERONAUTICAL AND SPACE SCIENCES, AEROSPACE TECHNOLOGY JAPAN (ISSN:18840485)
巻号頁・発行日
vol.16, no.6, pp.476-480, 2018 (Released:2018-09-04)
参考文献数
16

NIRS measurement was carried out in a confinement experiment for the first time. A tendency for NIRS integrated values to decrease was observed. Problems such as the learning effect needed to be resolved. SOC had an upward trend. Regarding POMS, the first day of confinement showed the highest score, after which no obvious deterioration was seen.
著者
吉田 成一
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第49回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.S37-3, 2022 (Released:2022-08-25)

喫煙による様々な健康影響が懸念されており、男性生殖系への影響も明らかにされている。最近は、副流煙が生じない加熱式たばこの使用が増加しているが、その男性生殖系への影響は不明である。副流煙が生じないが、妊娠中の喫煙は胎児に影響を与えることから、非喫煙者である出生した男性生殖系への影響も不明であり、明らかにする必要がある。そこで、妊娠マウスに加熱式たばこを曝露し雄性首相マウスの生殖系への影響を、成獣の雄性マウスに加熱式たばこを曝露し、雄性生殖系への直接影響を検討した。 加熱式たばこは広く使用されているPhilip Morris社から発売されているIQOSを用い、妊娠マウスに1回4本、妊娠期間中に2回の曝露、あるいは成獣雄性マウスに1回4本、週に1回あるいは5回の曝露を8週間行い、造精機能、精子性状解析などを行い、雄性生殖系への影響を評価した。 妊娠マウスに加熱式たばこを曝露し、雄性出生マウスヘの影響を検討したところ、5週齢のマウスにおいて、精細管障害や造精機能の低下が認められた。15週齢の時点ではこれらの影響が認められなかった。一方、成獣に加熱式たばこを曝露したところ加熱式たばこの曝露により精子性状の悪化が生じた。造精機能への影響は週5回曝露では生じたが週1回曝露では生じなかった。 以上のことから、加熱式たばこは従来のたばこと比べると健康影響が小さいと思われているが、雄性生殖系への影響については、加熱式たばこであっても生じることが示唆された。
著者
甲斐 智大
出版者
The Japan Association of Economic Geography
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.149-171, 2021-09-30 (Released:2022-09-30)
参考文献数
45
被引用文献数
1

本稿では,求人票に記載された新卒保育士の待遇と地方養成校出身の新卒保育士の就職動向を分析し,保育士養成校のもつ,保育労働力供給源としての役割について考察した.     これまで各保育所は自宅からの通勤を前提として新卒保育士を募集してきた.東京圏を中心に保育ニーズが拡大するなかで,東京圏の法人は保育士の待遇を改善し,地方圏へと採用エリアを拡大させた.その結果,宮城県では東京圏への労働力の流出が顕在化し,それに歯止めをかけるべく宮城県での保育士に対する待遇は向上し,宮城県の保育士の就職先の選択肢は拡大した.他方,青森県へも東京圏法人の参入がみられるものの,自治体の財政難を背景に青森県では保育士の待遇改善が難しい状況におかれている.そのため,青森県の保育労働市場はインフォーマルな調整によって下支えされており,相対的に待遇の良い東京圏への保育労働力の流出が増加している.その結果,地元で安定して働ける職業として認識されてきた保育士として学生を就職させることを一つの魅力と位置付けて,学生募集をしてきた青森県の保育士養成校への入学者は減少傾向にある.     このように,近年,東北地方の養成校は,保育士が不足する東京圏にも保育士を供給する機能を有しつつある.この機能は縁辺地域でより拡大しており,結果的に地方の保育士養成校の保育士供給機能の低下が懸念されていることが明らかとなった.
著者
山田邦和著
出版者
学生社
巻号頁・発行日
1998