著者
河西 秀哉
出版者
史学研究会 (京都大学文学部内)
雑誌
史林 (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.88, no.4, pp.477-510, 2005-07-01

サンフランシスコ講和条約期になると、天皇退位論が再浮上した。その議論の特徴は二つある。第一に、敗戦後一貫して主張されてきた天皇の「道徳」的責任論を引き継いでいたことである。天皇は日本という国家の「道徳」を示す存在と考えられ、天皇が退位という「道徳」的行為を行えば人々はその姿に感動し、象徴天皇制はより強力な支持を得ると考えられた。それは「一君万民」「君民一体」を目指す動きだったと言える。 第二に、「新生日本」の国家像と適合的な皇太子が戦争イメージを持つ天皇よりも選択され、その結果退位が主張されたことである。マスコミが清新な若いイメージで皇太子を捉えて大々的に報道したことが背景にあった。「新生日本」の目指す国家像と象徴天皇像は接合され、国家としての再出発の時期に天皇制も再出発すべきであるとして退位が主張された。結局退位は実現しなかったものの、講和条約期の退位論は、象徴天皇制/像の展開の中で皇太子の存在が浮上するきっかけとなった。

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著者
増沢健郎[ほか]著
出版者
電気通信協会
巻号頁・発行日
1964
著者
嶋地 直広
出版者
一般社団法人 日本ロボット学会
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.34, no.10, pp.659-662, 2016 (Released:2017-01-15)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1
著者
西村 幹子
出版者
特定非営利活動法人 日本評価学会
雑誌
日本評価研究 (ISSN:13466151)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.47-59, 2007-03-30 (Released:2010-06-15)
参考文献数
22
被引用文献数
2

本稿は、既存の教育評価手法が、開発途上国において有効な教育政策や教育計画の策定に繋がるためにいかなる課題を有しているかを、手法の理論的比較分析という視点から考察し、認識枠組みとしての総合的教育評価モデルを提案するものである。具体的には、教育評価についての既存の国際学力調査、学校調査、世帯調査を比較・対比させ、課題の抽出を行った。考察結果として、教育評価に使用されるデータの入手方法において、従来の国際学力調査がその対象や実施方法において低所得国への示唆を得ることが困難であること、学校調査や世帯調査も、それぞれ教育を供給する側と需要する側の片方に視点を当てることにより、教育開発に関する包括的な方策を提示するに至っていないことが確認できる。これらの課題は先進国にも共通するものであるが、開発途上国においては各種調査の結果が大きく乖離することがあり、総合の必要性は特に大きい。また、定量的なデータだけでは得られない推論 (inference) を定性的な調査から得ることも、非就学や退学などの問題に対するきめ細かい対応には不可欠となる。
著者
中野 繁 夏目 俊二 林田 光祐 奥田 篤志
出版者
北海道大学演習林
雑誌
北海道大学演習林試験年報
巻号頁・発行日
vol.8, pp.14-15, 1991-03

森林の構造(種構成やサイズ構成等)はそこに生息する野生生物群集の種構成や個体数を決定する大きな要因となっている。また、この群集中の様々な種の野生動物が、それぞれ異なったやり方で生息場所としての森林を利用している。よって、森林に生息する野生動物の保護を図るためには、ある森林の持つ構造とそこに生息する動物群集の対応関係を探ると同時に、ある対象とする動物の生活史の様々な側面における森林の利用様式を明らかにしてゆくことが重要である。今回の報告では、代表的な森林棲動物であるエゾモモンガをとりあげ、その森林の利用様式と保護の方向について簡単に述べてみたい。 モモンガは、温帯北部の森林地帯に生息する中型の齧歯類で、わが国では北海道にエゾモモンガ (Pteronys volans orii) が、本州以南にホンシュウモモンガ (P. momonga) が生息する。モモンガの、採餌、休息そして繁殖等の活動はすべて樹上で行われ、その生活は大きく森林に依存している。近年のわが国における急速な森林環境の破壊は典型的な樹上生活者である本種の生息にとって深刻な影響を与えつつあると考えられ(近藤、1988)、破壊の著しい地域においては生息数の激減および絶滅が憂慮されている。本種の保護を図るためには本種の生息場所(森林)の利用様式を明らかにし、その生息に不可欠と考えられる環境条件を保全してゆくことが必要であると考えられる。しかしながら、本邦産のモモンガの生態については、食性や飼育条件下における活動時間などに関する断片的な知見を除いてほとんど明らかにされていない(合田、1957 ; 手塚、1959 ; 藤巻、1963)。
著者
青木 拓也
出版者
医療の質・安全学会
雑誌
医療の質・安全学会誌 (ISSN:18813658)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.393-398, 2022 (Released:2022-12-28)
参考文献数
31

Patient Experience(PX)は,医療サービスに関する患者の具体的な「経験」を意味する概念であり,Patient Satisfaction(PS)の進化形として,国際的に重要な医療の質指標に位置付けられている.PXの意義に関しては,すでに国内外で多くのエビデンスの蓄積があり,PXが,技術的な医療の質指標と正の関連を示すことに加え,アドヒアランス,セルフマネジメント,受療行動といった患者行動などにも影響を及ぼすことが報告されている.行政機関主導でPXの活用を推進する諸外国と比較し,日本のPX評価の取り組みは,これまで大きく遅れをとっていたが,近年日本でもPX尺度の開発研究やPXを用いた実証研究が活発化しつつある.今後日本でも,医療の質向上のため,幅広い領域かつ臨床・教育・研究の各方面で,PXの評価・活用を推進する必要がある.
著者
矢作 尚久 藤井 進 森川 和彦 川本 章太 加藤 省吾
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究 技術 計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.79-97, 2021-06-30 (Released:2021-07-02)
参考文献数
61

The essence of digital transformation (DX) in healthcare is to technologize the "tacit knowledge of clinicians." In healthcare, the clinician's role is to accurately assess the patient's condition, determine the best course of treatment, and inform other healthcare professionals of what to do next. Then, the treatment process begins, and the patient finally leads to the behavioral change by the various healthcare players. Thus, since all treatment processes begin with the "tacit knowledge of clinicians," it is none other than the essential element of healthcare. Therefore, from the perspective of competitive strategy, it is also a key factor for innovation. Furthermore, it can become Japan's unique core competence when combined with the Japanese universal insurance system. This next-generation medical DX platform, centered on the "tacit knowledge of clinicians," will lead the world in the future as a cutting-edge intelligence system and as a brand-new universal health insurance model.
著者
平川 新
出版者
宮城学院女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

江戸時代は、武士と百姓との身分が厳格な社会であり、兵農分離体制が貫徹した社会だというのが戦後歴史学の通説になっていた。豊臣秀吉による刀狩令以来、百姓は武装解除され、武士以外の帯刀は一部の特権者しか許可されていなかった、すなわち武力は武士の独占するところであり、百姓は武器を剥奪されて耕作に専念する体制になったという理解である。だが本研究によって、江戸時代には初期から幕末にいたるまで列島全域に大量の庶民剣士が存在してきたことを発見し、その存在を確認することができた。そうした実証をふまえて、江戸時代は「庶民剣士の時代」であることを完全に論証することができた。
著者
中村 泰治 河野 貴美子
出版者
International Society of Life Information Science
雑誌
国際生命情報科学会誌 (ISSN:13419226)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.96-102, 2007-03-01 (Released:2019-04-30)
参考文献数
6

祈り、統一により人は宇宙の根源と一体になりそのエネルギーを受け、その人の命は生かされ、同時に他の命も癒す。本研究は、報告者の一人が被測定者になり、祈り (統一)の測定中に本人が実体感した意識状況と測定された結果とを対比し、祈りと肉体の関連を究明するため行われた。祈り、統一中の脳波測定の結果、特にα波の変動状況は坐禅、瞑想、静功などに共通な点があることを前回述べた。今回測定したのは、脳波、脳内血液流量変化、皮膚電気活動である。脳波について、被測定者が深い統一に入っていたという時間帯を今回さらに詳細に検討し次の結果を得た。α波は徐波化が進み、減少し全頭においてθ波と周波数の低いα波が優勢となった。その時、β波は特に頭頂から左前頭部にかけて強く、左後頭部にも現れた。脳内血液流量変化の測定結果、頭頂と左前頭部に特に大きな変化(Oxyヘモグロビンの増加)が観測された。この部位は深い統一時のβ波の強い部位と一部一致しており、その関連性について今後研究する必要があると思われる。皮膚電気活動測定では、EDAは統一開始直後から低下し続け180秒以後はほぼ安定して低いレベルを保ち続けたことが認められた。この結果は、被測定者が実感したとおり、開始後3分頃から深い統一に入っていたとことを科学的に裏付けたものと言える。
著者
中田 節也
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

日本の火山研究者、特に若い科学者は、IAVCEIとIUGGの関係をよく認識していないようだ。その理由は、IAVCEIと比較して、IUGGが彼らには可視的ではないためである。彼らが最初に挑戦することができるという国際会議としてIAVCEIが指導教官から紹介されることが多い。IAVCEIの存在は彼らが会員である日本火山学会(VSJ)でもよく見えている。この100年間、IAVCEIに対しては、久野 久、荒牧重雄、中田節也らの会長など、日本の研究者がIAVCEI理事を務め、IAVCEI学術総会が1962年に東京、1981年に東京・箱根、2013年に鹿児島で開催された。IAVCEIの2番目に大きい会議である火山都市国際会議(COV)は、科学者と非科学者が集って火山災害を軽減するために議論するフォーラムで、1998年以降、IAVCEI総会と学術総会の合間の2年ごとに開催されるものであるが、1988年に鹿児島市で開催された国際火山会議に端を発するものである。2007年には島原市で第5回COVを開催した。IUGG総会は2003年に札幌で開催されたが、それでもIUGGは若い火山研究者、ひょっとしたら中堅の研究者の間でもあまり知られていない。例えば、最近のIAVCEI学術総会は1000人以上の参加者を集めるが、IUGG総会時のIAVCEI総会には300人程度の参加者しかいない。この数は最近のCOVの約1000人の参加者よりはるかに少ない。この理由の1つはIUGG総会では組織される火山巡検がないということがあるかもしれないが、それよりも単純に会議の規模が理由であろう。IUGGの各アソシエーション自体の研究分野が十分に広いので、8アソシエーションの集まりは若い研究者が参加するには分野が広すぎる。彼らは、自分たちの学会では心地よく感じるが、AGUやEGUではビジネスライクに映るかもしれない。これはJpGUと個々の国内学会との関係にも似ているかもしれない。私たちは多くの分野のアソシエーションが集まって会議を開催することのメリットを確認し共有することが必要であろう。さらに、IUGGや国際学術会議(ISC)のような政府が分担金を払う団体の役割についても私たちの間で確認し直すべきである。この場合、会議への参加者数を増やすことが優先課題ではない。地球規模の気候変動、および大地震や火山噴火などの地域の地質学的危害は、リスクを軽減するために世界的に最優先課題となっている。このような状況の下で、国連は2030年までの持続可能な開発目標(SDGs)を明確にしており、政府によって活動が保証されているIUGGやISCの任務はこれらの課題解決でも拡大しているといえる。
著者
田中 彰吾 宮原 克典 浅井 智久 今泉 修 村田 憲郎
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は「自己」について解明することを目的としている。脳神経科学の発展を受けて、2000年ごろから「自己」は科学的研究の対象になり、各種の知見が蓄積されてきた。ただし、従来の主要な研究は、行動実験と脳計測の組み合わせで、自己が成立する最小の条件を探求する「ミニマル・セルフ(最小の自己)」に焦点を当てたものだった。本研究では、実験科学的研究の地平をさらに拡大し、記憶・時間性・物語の次元を含む「ナラティヴ・セルフ(物語的自己)」を対象とする。実験心理学、哲学、精神病理学のアプローチを多角的に組み合わせ、物語的自己の理論モデルを構想する。
著者
Hsin-Yi YANG Wan-Hsuan WANG Jun-Ye ZHAN Ya-Ling HUANG Wei-Yi CHENG
出版者
Center for Academic Publications Japan
雑誌
Journal of Nutritional Science and Vitaminology (ISSN:03014800)
巻号頁・発行日
vol.66, no.Supplement, pp.S356-S360, 2020 (Released:2021-02-22)
参考文献数
25
被引用文献数
3

Overweight and obesity are associated with many chronic diseases. This study aimed to clarify the possible effects of consuming golden kiwifruit as daily fruit intake on body composition, lipid metabolism and inflammatory responses. Methods: We recruited twenty-two overweight and obese subjects and they were asked to consume two golden kiwifruit every day during the 6-wk experimental period. At the baseline and end of the study, fasting blood samples were collected and anthropometric and blood pressure measurement were conducted. Results: During the experimental period, no adverse effect and dropout were reported. At the end of the study, a significant decrease in body fat and circulatory tumor necrosis factor (TNF)-α concentration were found. In addition, there was a reduction of angiotensin II (AgII) concentration and systolic blood pressure in subjects with baseline systolic blood pressure (SBP) ≥125 mmHg. Conclusion: Our results suggested that daily golden kiwifruit intake can reduce body fat mass, improve blood pressure and regulating inflammatory responses in overweight and obese young adults.
著者
平林 明憲 伊庭 斉志
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.FIN-001, pp.01, 2008-09-13 (Released:2023-01-06)

The generation of profitable trading rules for Foreign Exchange (FX) investments is a difficult but popular problem. The use of Machine Learning in this problem allows us to obtain objective results by using information of the past market behavior. In this paper, we propose a Genetic Algorithm (GA) system to automatically generate trading rules based on Technical Indexes. Unlike related researches in the area, our work focuses on calculating the most appropriate trade timing, instead of predicting the trading prices.
著者
礪波 亜希
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

先進国の外国直接投資政策は近年、推進から規制へ、経済成長から安全保障へと急激な方向転換をしたが、この背景には投資受入側が外国に対して抱く脅威認識があった。本研究は、外国投資推進・規制制度はいかなる根拠に基づいて形成され、誰にどのように許容され、結果的にどのような影響を及ぼすのかを学術的問いとする。事例研究を研究手法として、国際関係論・国際政治経済学のコンストラクティビスト・アプローチを参照しつつ、物語的政策枠組み(Narrative Policy Framework, NPF)を活用する。事例研究の対象として、EUを含む欧州諸国の投資推進・規制制度、北極域への投資推進・規制制度を検討する。
著者
佐久間 拓也 池辺 正典 石井 信明 川合 康央 釈氏 孝浩 宮川 裕之
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータと教育(CE)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.64(2008-CE-095), pp.45-48, 2008-07-05

以前に行われていた入学課題では出題や提出が難しく,また入学前に入学予定者との交流は皆無であった.今回入学予定者を対象に SNS を構築して,入学前課題の出題や提出および入学前での教員・入学予定者・在学生間の交流を行った.本稿はこの報告である.