- 著者
-
加藤 征江
- 出版者
- The Japan Society of Home Economics
- 雑誌
- 日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
- 巻号頁・発行日
- vol.52, no.7, pp.627-633, 2001-07-15 (Released:2010-03-10)
- 参考文献数
- 17
小麦粉とバターを180℃の高温度まで加熱したブラウン・ルーの香気を明らかにするため, ルーA (材料を180℃まで加熱したルー) とルーB (材料を180℃まで加熱し, その温度を5分間保持したルー) の2種類のルーから調製した香気濃縮物をGCおよびGC-MSで分析した.結果は次の通りである.(1) ルーAの香気濃縮物の重量は既報の100℃加熱のルーに比べて, 約4倍に増加し, GC上のピーク数も非常に多かった.ルーBもルーAとほぼ同じであった.(2) ルーAにおいて, 新たに12種類の化合物を同定した.それらはアミノ・カルボニル反応を経由する7種類の複素環化合物 (フラン類, ピラジン類, ピロール類等) と2種類の環状ケトン類, および脂質由来と思われる2種類の酸と1種類のアルデヒドであった.それらはルーBにおいても存在した.それらの化合物はやや甘い香りと強い焦げ臭をもつ180℃ルー (ルーA, ルーB) の香気に大いに貢献していると思われた.(3) ルーの加熱温度180℃では, フラン類中の特にフルフリルアルコールの量はルーAでは全香気成分量の約46%になり, 更に加熱条件の強いルーBでは約49%で, 既報の160℃ルー (ブラウン・ルーの初期段階に相当) に比べてかなり多くなった.またピラジン類も種類, 量ともに多くなった.それらフラン類やピラジン類のような複素環式化合物はルーAでは全香気成分量の約70%, ルーBでは約80%も占めていた.一方, バターに多く含まれている中級カルボン酸類やラクトン類, および120℃ルー (ホワイト・ルー相当) に多い2-ウンデカノンのような鎖式のメチルケトン類が顕著に減少していた.このように各香気成分組成も180℃ルーの香気の特徴に寄与していた.