著者
田口 淳
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.305-324, 2001-06-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

日本の都市問題の中でもとくに深刻な職住分離による通勤の高負担をもたらす一因に,大規模な住宅開発と通勤交通網の整備とのアンバランスがあげられる.本稿では,鉄道が段階的に整備されてきた千葉ニュータウンを対象として住宅供給と交通網整備の関係を分析した.北総開発鉄道の都心直通前後の入居者を比較すると,前住地の分布は近隣市町村のみならず外延的に拡大したことから,交通体系の変化や都心との時間距離の短縮が世帯の居住地選択の範囲を変化させることが明らかになった.また就業地の分布にも変化がみられ,北総線の直通する沿線に就業地分布が拡大したほか,都心3区就業者の千葉ニュータウンへの入居が加速した.さらに,鉄道を利用した通勤流動は鉄道網の整備状況を反映し,所要時間が最短になるような通勤ルートが選択され,対都心の絶対的な交通路を持ったことで通勤ルートの一本化が進んだ.
著者
青木 博史
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.1-15, 2009-04-01 (Released:2017-07-28)

動詞の重複形には,終止形重複と連用形重複がある。本稿では,「語」レベルにとどまらず,「句」レベルを含む「構文」として,歴史的観点から分析を行う。終止形重複は,古くは通常の終止形述語同様,文終止に用いられたが,動詞としての述語性を失う形で副詞化した。連用形重複は,従属節専用の形式であるが,述語性を獲得するために「重複+スル」の形を生み出し,「複合動詞重複+スル」「重複句+スル」の形で現在も用いられている。重複構文は,古今を通じて「結果継続」を表すことはない。変化動詞の重複形においても,「重複+スル」等の形で動的な事態の繰り返しを表す。「踏み踏みする」のような「単純動詞重複+スル」が用いられなくなるのは,「踏み踏み」が「語」と認識され,「重複語+スル」の形が拒否されるようになったためと考えられる。

10 0 0 0 OA 大日本仏教全書

著者
仏書刊行会 編
出版者
仏書刊行会
巻号頁・発行日
vol.117, 1922

10 0 0 0 OA 自動車総覧

出版者
工業日日新聞社
巻号頁・発行日
vol.昭和15年版, 1940
著者
吉川 直孝 伊藤 和也 堀 智仁 玉手 聡 豊澤 康男
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題) (ISSN:21856621)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.I_125-I_130, 2011 (Released:2012-01-20)
参考文献数
6

本論文ではトンネル切羽の肌落ちにより発生した死傷災害を調査し,その発生状況を分析した.山岳トンネルでは,装薬や支保工の建て込みに際して作業員が切羽に接近して作業するが,多くの災害はそのような作業時に発生している傾向が見られた.また,肌落ちした岩塊の大きさは0.6m角程度と比較的小さいことから,肌落ち・落石災害防止対策として,切羽変位計測,十分な照度の確保,鏡吹付,導水・さぐり削孔といったソフト・ハード両面からの対策を提示した.
著者
高階 絵里加
出版者
京都大學人文科學研究所
雑誌
人文學報 = The Zinbun Gakuhō : Journal of Humanities (ISSN:04490274)
巻号頁・発行日
vol.100, pp.13-32, 2011-03

現在,自然科学の分野においては,可視的な身体的特徴にもとづく人間の分類に大きな疑問が投げかけられている。いっぽうで,一般社会においては,とりわけ肌の色の違いをもとにした「白色・黄色・黒色」の三分類がひとつの典型的な人種カテゴライズの方法として根強く定着している。本小論では,視覚的伝統における人種の三区分の一つの例として,<東方三博士の礼拝〉の図像をとりあげる。〈東方三博士の礼拝〉は,西洋美術の中で最も数多く絵画や彫刻に制作され,親しまれている図像のひとつであるが,造形美術において「肌の色による人間の三分類」が典型的にあらわれる例でもある。その背景には「異邦人を含む全人類を包括する普遍的宗教としてのユダヤ=キリスト教」の思想が存在し,とくに肌の色の描き分けによって三人の博土が人類の三つの民族を表すという美術上の表現は十四世紀から十五世紀にかけてまず北ヨーロッパにおいて,ついでイタリアや他の国々で定着する。とくに十五世紀には三人の中の一人が黒人主として描かれる例が増えはじめ,西洋社会において一般にネガティブな価値を与えられてきた「黒い肌」が<東方三博士>においては<高貴な異邦人>の象徴となっている点は興味深い。ここから近代的「人種」概念以前の時代の異邦人表現としての<東方三博士の礼拝>図像の特徴を考える。
著者
高城 健 岡田 義清 白壁 和彦 古橋 廣崇 榎本 真悟 谷知 正章 丸田 紘史 安武 優一 栗原 千枝 戸田 裕之 東山 正明 渡辺 知佳子 髙本 俊介 冨田 謙吾 清水 邦夫 永尾 重昭 三浦 総一郎 穂苅 量太
出版者
消化器心身医学研究会
雑誌
消化器心身医学 (ISSN:13408844)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.2-5, 2016 (Released:2016-09-01)
参考文献数
29

近年,心的外傷後ストレス障害(post-traumatic stress disorder: PTSD)と過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome: IBS)の関連性が指摘されており,一方で精神疾患と腸内細菌との関連性が指摘されている。また,IBSでは腸管粘膜における脳由来神経栄養因子(brain-derived neurotrophic factor: BDNF)の発現が増加するとの報告もある。今回我々は,本学で開発されたPTSD動物モデルを用い,腸内細菌叢や腸管粘膜におけるBDNF発現の変化について検討した。シャトル箱を用いてラットに逃避不能の電撃を負荷すると,後の行動観察でラットはPTSD,学習性無力(learned helplessness: LH),indeterminateのいずれかの行動パターンを呈することが判明した。行動パターンによって腸内細菌叢の構成が異なり,PTSD群ではBacteroidetes,LH群ではProteobacteriaの割合が増加する傾向がみられた。またLH群では,近位結腸のBDNF発現が増加する傾向がみられた。これらの変化がmicrobiota-gut-brain axisに関連し,行動変化や消化管機能に影響を与えている可能性がある。
著者
神橋 彩乃 大久保 豪人 永田 靖
出版者
日本行動計量学会
雑誌
行動計量学 (ISSN:03855481)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.1-10, 2019 (Released:2019-11-28)
参考文献数
16
被引用文献数
1

In this study, we analyzed factors affecting children’s academic achievement with the data of PISA2012 and PISA2015. We set up four hypotheses and verified them. Hy- pothesis 1 is “children’s attributes influence their motivation.” Hypothesis 2 is “children’s attributes and their motivation influence their academic achievement.” Hypothesis 3 is “maternal employment has a negative effect on children’s motivation.” Hypothesis 4 is “children’s attributes influence the parent-child relationship, and the parent-child rela- tionship has a positive effect on children’s motivation and their academic achievement.” We clarified hypothesis 1 and hypothesis 2 using graphical modeling. We verified hy- pothesis 3 utilizing a stratified analysis using a propensity score and clarified it in terms of Japanese girls. However, in sub-groups where in mothers tend to work more, mater- nal employment brings about a positive effect on their children’s motivation. Results show that relieving the gap in the children’s academic achievement may be possible by improving parent-child relationships and children’s motivation.
著者
福岡博 松尾幹之
出版者
農林省農業綜合研究所
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.171-212, 1969 (Released:2011-09-30)
著者
村上 慎司
出版者
日本医療福祉政策学会
雑誌
医療福祉政策研究 (ISSN:24336858)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.15-25, 2019 (Released:2019-04-02)

政策と規範概念を架橋する研究は社会保障において急務の学術的課題である。本稿の目的は文献読解によって経済学者A・センと政治哲学者J・ウルフの研究を比較検討し社会保障の規範理論に基づく政策研究を発展させることである。両者に共通する特徴は、単一の規範理論から演繹的に特定の政策を導出することではなく、価値の多元主義を承認したうえで、多様な価値対立構造を明確化し、社会的選択を導くために規範理論的知見を活かすという点にある。だが、センは、超越論的アプローチと状態比較アプローチを相互排他的に論じて、後者の優位を主張するのに対して、ウルフは、理想理論と非理想理論を相互補完的であり、政策研究として後者を重視するものの、前者もガイダンスとしての役割があることを認めている。両者の議論を比較検討した結果、本稿は理想理論と非理想理論の補完関係を認めるほうが社会保障の議論にとって建設的であると言う見解を提示する。
著者
森本 岩太郎
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.95, no.4, pp.477-486, 1987 (Released:2008-02-26)
参考文献数
6
被引用文献数
10 11

打ち首(斬首)の所見が認められる古人首例は比較的少なく,偶然に発見されたとしても,頭蓋の刀創などから斬首を間接的に想定した場合が大部分を占めると思われる.著者が最近経験した鎌倉市今小路西遺跡出土の南北朝期(14世紀後半)に属する斬首された2個体分の中世頭蓋の場合は,切られた上位頸椎が一緒に残っていたので打ち首の技法がよく分かる.当時の屋敷の門付近に,A•B2個体分の頭蓋と上位頸椎だけが一緒に埋められていた.首実験後に首だけが遺族に返されず,そこに仮埋葬されたものであるらしい.2体とも男性で,年齢は A が壮年期前半,B が壮年期後半と推定される.頭蓋は無傷で,それぞれの頸椎が日本刀のような鋭利な刃物により切断されている.頭蓋と第1~3頸椎からなる男性 A の場合,切断面は第3頸椎体の前下部を右後下方から左前上方へ走って椎体の途中で止まり,その先の椎体部分は刀の衝撃によって破壊され失われている.切断面の走向からみて,第4頸椎(残存せず)を右後下方から切断した刃先が第3頸椎体に達して止まったと思われる.頭蓋と第1~4頸椎からなる男性 B の場合,主切断面は第4頸椎の中央を右からほぼ水平に走っている.切断面より上方にある右横突起と右上関節突起の上半部だけが残存し,それ以外の第4頸椎の大部分は失われている.A の場合と同様に,刃先が第4頸椎の椎体の途中で止まって,その先の部分が破壊されたものと推定される.別に第3頸椎の左下関節突起先端部から右椎弓根基部上面へ向けて椎体を左下方から右上方へ斜めに走る副切断面があり,この副切断面によって改めて首が切り離されている.失われた第3頸椎の椎弓板もこのとき壊されたと思われる.切断面の走向からみて,両個体とも,垂直に立てた頸部を横切りにされたというよりは,むしろ正座のような低い姿勢をとって前方に差し伸べた頸部を,左側やや後方に立った右利きの執刀者により切り下ろす形で右背後から鋭く切断され,絶命したと推定される.この際,首は一気に切り落とされていない.これは俗に「打ち首はクビの前皮一枚を残すのが定法」と言われるところに近似の所見であり,この技法の確立が中世までさかのぼり得るものであることが分かる.2体とも最初に第4頸椎部を正確に切断され,頭蓋には刀創の見られないところから,同一の練達者によって斬首されたと推測されるが,切られたほうも死を覚悟した武士であったかも知れない.英国のSutton Walls 出土の鉄器時代人骨における斬首例のように,首を刀で一気に切り離すのが昔のヨーロッパ流のやり方とすれば,中世における日本の打ち首では頸部を後方から半切して処刑する点にその特徴があると思われる.
著者
松下 真実子 宮川 豊美 川村 一男
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学大学紀要 (ISSN:02893193)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.p1-15, 1983-03

The authors noted the chage of tastes after cleaning teeth, and researched the change of the taste threshold after cleaning with toothcream and the effects of each component of the toothcream; the effects of surfactants which had been added to toothcream for 20 years or more were also discussed. The results are reported here. 1. The thresholds (special thresholds) of four fundamental tastes of sweet, salty, sour, and bitter in the test group were almost similar to those which were reported 40 years ago. Therefore, the difference in the taste thresholds by age was not observed. It indicated that the surfactants added to toothcream for a long time did not affect the tastes. 2. PH of the saliva not affected by cleaning of teeth. 3. Tastes of sweet and bitter were delayed to be differentiated after cleaning of teeth, but the sour taste was not affected. 4. The tastes which were affected by intraoral stimulation by commercially available "toothcream" and the mixture solution of its components were two tastes of sweet and bitter, while salty and sour tastes were hardly affected. 5. The thresholds were increased or reduced, but generally they were increased in many cases and the threshold concentration reached to 2 to 4 times as high as the original one. 6. The component of "toothcream" which can cause the change of taste thresholds was found to be sodium laurylsulfate. Perfumes strongly affected particularly sweetness and bitterness, and sodium laurylsulfate influenced sweet, salty and bitter tastes; glycerin affected only sweetness. 7. It took 3 to 15 minutes to recover the activity to differentiate sweet, salty, sour and bitter tastes after cleaning teeth with commercially available "toothcream".
著者
真鍋 淑郎
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.101, no.6, pp.453-457, 1992-12-05 (Released:2009-11-12)
参考文献数
16

This paper describes the response of a coupled ocean-atmosphere-land surface model developed at GFDL to gradual changes of atmospheric carbon dioxide. It summarizes the results in three recently published papers (Stouffer et al., 1989 Manabe et al., 1991, 1992). They represent the current state of the art in predicting further climate change induced by greenhouse gases in the atmosphere.The warming of the coupled system is reduced by the effective thermal inertia of the earth's surface which is essentially controlled by the vertical mixing of heat in the oceans. This study investigates how such vertical mixing of heat is achieved, resulting in the delay of the greenhouse warming in the joint troposphere-continental surface-ocean system.