著者
百武 徹 安井 学
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

3年目は,以下の2つの研究項目を実施した.①異なる幅をもつ溝付きのマイクロ流体チップの設計・製作を行った.これは,実際に精子が遊泳する卵管内の壁面には多くのマイクロスケールの溝が存在していることから,実形状を模擬したin vitro実験となる.実験では牛の凍結ストロー精液を用いて,チャネル内に設けられた溝の幅が遡上する精子分布に与える影響を調査した.画像解析した結果,溝が存在することで精子の分布には違いが見られた.具体的には,溝幅10, 20 μmの流路では,溝が存在する領域において精子分布が大きくなった.原因として,精子の走触性により,溝に近づいた精子の一部が溝にトラップされて溝に沿って遊泳しやすくなるためであると考えられる.加えて,溝が存在することで,精子の平均速度も大きくなった.このことは,卵管内を模擬したマイクロスケールの溝を応用することで,受精に適した高運動性精子を選別できる可能性を示唆している.②マイクロチャネル内に狭窄を設けることで,精子集積機能を有するマイクロ流体チップの設計・製作を行った.これは,狭窄をもつマイクロチャネルにおいて,走流性によって流れに逆らってきた精子は狭窄を通過できず,テーパ部分に運動性の良い精子が集積することを利用している.実験では,チャネル形状やチャネル内流速が,チャネル内の精子分布や精子濃度に与える影響について調査を行った.合わせてOpenFOAMを用いた流体解析によりチャネル内流体挙動の調査も行った.その結果,チャネル形状やチャネル内流速を変化させることで狭窄内の精子の集積場所や精子濃度が変化することが明らかになった.本マイクロチャネルは,実際の受精環境を模擬した高受胎性の体外受精用チップに応用できる可能性がある.今後はさらに異なる形状,流速で実験を行うことでより詳細な傾向をつかむ予定である.
著者
中野 賢英 福成 信博 坂上 聡志 西川 徹 相田 貞継
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.148-153, 2017 (Released:2017-11-16)
参考文献数
15

医療の技術革新が進む中で,甲状腺濾胞性腫瘍はいまだその診断が非常に難しい疾患の一つである。病理学的診断方法の特殊性もあり,確立した術前診断方法は得られていない。一方で,新しい技術の開発や様々な評価法の検討が,正診率の向上に寄与していることも事実である。画像診断はその中でも重きを置かれる分野であり,超音波検査を筆頭に多くの知見が得られているが,現状では,画像所見だけではなく,臨床経過,細胞診結果,サイログロブリン値などの臨床検査結果を踏まえて総合的に検討し,治療方針を判断する必要がある。今後より正確な診断が可能となるよう,さらなる知見の積み重ねが期待される。
著者
平井 恭二 竹内 千枝 揖斐 孝之 臼田 実男
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.428-434, 2015-05-15 (Released:2015-05-26)
参考文献数
10

開胸術または胸腔鏡下手術後の創部痛では肋間神経障害性疼痛がみられ,その症状は退院後も遷延することより治療には難渋することがある.今回,呼吸器外科術後で創部に発生した神経障害性疼痛要素を含む創部痛に対するプレガバリンとロキソプロフェンの併用効果についての検討を行った.Visual analogue scale:VAS, Numerical rating scale:NRSの疼痛スコアを使用して開胸手術群と胸腔鏡手術群に対して後ろ向きに比較検討を行った.経時的な開胸手術群,胸腔鏡手術群ともにプレガバリン併用群の方がVAS, NRSともに低下しており,各々のVAS, NRSの低下率でも有意に上回っていた.呼吸器外科手術後の創部痛は神経障害性疼痛が混在することが多く,プレガバリンとロキソプロフェンの投与はその症状緩和に寄与する可能性が示唆された.
著者
伊藤 康弘 宮内 昭
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.160-165, 2017 (Released:2017-11-16)
参考文献数
8
被引用文献数
1

甲状腺濾胞癌は,乳頭癌の次に頻度の高い甲状腺濾胞細胞由来の癌である。乳頭癌と異なり,リンパ節転移や周辺臓器への浸潤は少ないが,反面遠隔転移や遠隔再発が多い。濾胞癌の予後不良因子としては手術時の遠隔転移(M1),低分化成分の存在(50%以上),浸潤度(広汎浸潤型),年齢(再発予後不良因子は20歳未満と45歳以上,生命予後不良因子は45歳以上)が挙げられる。濾胞癌は術前の細胞診では診断がつきにくく,濾胞性腫瘍という診断の元に初回手術は通常,片葉切除が行われる。しかしM1症例や組織学的に予後不良因子をもつ症例に対しては,病理診断がついたあとで,補完全摘や症例によっては放射性ヨウ素を用いたアブレーションが推奨される。
著者
龍渓 信行
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.217, 1994-06-05 (Released:2021-08-18)
参考文献数
4
著者
伊藤 久志 菅野 晃子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.193-203, 2022-05-31 (Released:2022-07-28)
参考文献数
23

本研究の目的は、行動論的アプローチに基づく自閉スペクトラム症と知的障害児者に対するトイレットトレーニングにおいて、What Works Clearinghouseが作成した「エビデンスの基準を満たすデザイン規準」に従った単一事例実験計画研究を抽出してメタ分析を行うことである。メタ分析に組み入れるために最終的に抽出された文献7本の統合された効果量は0.77[0.66—0.88]であった。標的行動に関して、3種類(排尿のみ/排便のみ/排泄関連行動を含む)に分類したところ、排尿のみを扱った文献は4本該当し効果量は0.88[0.75—1.00]であった。排尿訓練に関する実践研究が進展してきたことが明確となった。今後、エンコプレシスを伴わないケースの一般的な排便訓練をエビデンスの基準を満たすデザイン規準に従って進めていく必要がある。

1 0 0 0 教育愛知

著者
愛知県教育委員会 編
出版者
愛知県教育振興会
巻号頁・発行日
vol.30(3), no.349, 1982-06
著者
伊藤 豊
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
大学の物理教育 (ISSN:1340993X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.91-94, 2018-11-15 (Released:2018-12-15)
参考文献数
4
被引用文献数
1

1.はじめに磁石は文房具店で手に入れることができ,子どもから大人までよく知っている身近な物質である.磁石を2つ使えば手頃な強さの引力と斥力を感じることができ,N極とS極は接触させても
出版者
巻号頁・発行日
vol.三,
著者
井口 学
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.19-36, 2021-04-23 (Released:2021-05-14)
参考文献数
62

カイツブリTachybaptus ruficollisの質量,標準代謝速度,一回換気量,分時換気量,強制対流熱伝達損失ならびに浮力と流動抵抗に関する損失を基にして,カイツブリの水面滞在時間Tp,潜水時間Tdおよび最大潜水時間Tdmaxに対する簡便な予測法を提案した.カイツブリの質量の関数として求めた予測式は本研究で観察したTp,Td,およびTdmaxの値をそれぞれ15.6%,-7.2%,3.7%の偏差で近似することができた.また,ノドグロカイツブリT. novaehollandiae,シラガカイツブリPoliocephalus poliocephalus,ハジロカイツブリPodiceps nigricollisのTp,Tdについてもカイツブリと同程度の予測精度が得られた.Tdmaxの予測式は回帰分析によって得られた既存の式にほぼ一致することが分かった.
著者
伊部 知顕
雑誌
大衆文化 = Popular culture
巻号頁・発行日
vol.15, pp.2-15, 2016-12-25
著者
中妻 照雄
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では、金融市場における資産価格形成の解明を目的とし、指値注文(売買価格を指定する注文)の発生メカニズムを説明するための新しいモデルを提案するとともに、提案モデルを推定するための新しいアルゴリズムの開発を行う。本研究で提案する新モデルの大きな特徴としては、注文発生間隔のモデルに1日の取引時間中の周期的変動パターン(日中季節性)、市場に出されている指値注文の状況(板情報)、さらには買い注文と売り注文の相互作用を反映させている点があげられる。