著者
吉住 健一
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.21-35, 2022-04-28 (Released:2022-05-26)
被引用文献数
1

感染症流行時における自治体の初期の役割は感染予防の呼びかけとなる。但し,感染症の種類が危険なものである,又は非常に感染力が強いと分かった場合には,自治体は感染拡大防止のために住民等に行動抑制を要請することになる。住民に効果的な協力をしてもらうためには,自治体と住民の関係が良好である必要がある。良好な関係を作るためには,情報の共有と相互理解が前提となり,行政は明確な目標を持った方針の説明をしなくてはならない。また,感染拡大している時に,住民の暮らしを守ることが必要である。新型コロナウイルス感染症を収束させる取り組みは,感染拡大防止が目的であり,感染者や感染者が所属する店舗の摘発が目的ではないことを理解することが大切である。新型コロナウイルス感染症の収束に向けた有効な対策の一つとして期待された新型コロナワクチンは,人類が初めて接種するタイプのワクチンで不安に思う人も多かったが,効果が理解されると接種希望者が増えた。自治体は,ワクチン接種を希望する人にできるだけ早く接種をする努力をした。また,自治体は,希望しない人にワクチン接種の有用性を伝えることにも努力をした。感染防止に協力的な人とそうではない人の対立を防ぐこと,感染者の人権を守る代わりに感染拡大防止に協力してもらうことは,未知のウイルスと人類の戦いをするうえで重要ことであると考えている。
著者
向井 智哉
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.54-63, 2019 (Released:2021-12-07)

本研究の目的は、厳罰傾向および防犯行動を規定する要因を検討することである。日本において同時期に話題となった厳罰化および防犯行動の活発化は、これまで主として「体感治安」の悪化によって説明されてきた。しかし研究者の中には、「体感治安」だけではなく、自己決定を求める欲求やコミュニティによる決定を求める態度の増大を用いた説明を試みる者もいる。そのため本研究では、先行研究にもとづき、厳罰傾向および防犯行動はともに、犯罪不安および被害リスク知覚ならびに自己決定欲求、コミュニティによる自己決定と関連するとの仮説を設定し、検証した。332 名の回答者を対象にウェブ調査を行った。その結果、厳罰傾向および防犯行動は、犯罪不安、被害リスク知覚、自己決定欲求、コミュニティによる自己決定と有意な相関を示した。重回帰分析によってこれらの関連をさらに検討したところ、自己決定欲求の下位因子である自律欲求が厳罰傾向および防犯行動両方と有意な正の関連を示した。これらの結果から、厳罰傾向および防犯行動は、主として自律欲求という共通の要因によって規定されることが示された。
著者
Yuichiro TATEIWA
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
IEICE TRANSACTIONS on Information and Systems (ISSN:09168532)
巻号頁・発行日
vol.E105-D, no.9, pp.1557-1567, 2022-09-01

We consider network security exercises where students construct virtual networks with User-mode Linux (UML) virtual machines and then execute attack and defense activities on these networks. In an older version of the exercise system, the students accessed the desktop screens of the remote servers running UMLs with Windows applications and then built networks by executing UML commands. However, performing the exercises remotely (e.g., due to the COVID-19 pandemic) resulted in difficulties due to factors such as the dependency of the work environment on specific operating systems, narrow-band networks, as well as issues in providing support for configuring UMLs. In this paper, a novel web-based hands-on system with intuitive and seamless operability and lightweight responsiveness is proposed in order to allow performing the considered exercises while avoiding the mentioned shortcomings. The system provides web pages for editing device layouts and cable connections by mouse operations intuitively, web pages connecting to UML terminals, and web pages for operating X clients running on UMLs. We carried out experiments for evaluating the proposed system on the usability, system performance, and quality of experience. The subjects offered positive assessments on the operability and no negative assessments on the responsiveness. As for command inputs in terminals, the response time was shorter and the traffic was much smaller in comparison with the older system. Furthermore, the exercises using nano required at least 16 kbps bandwidth and ones using wireshark required at least 2048 kbps bandwidth.
著者
上田 浩 ハスナイン モハーマド ネハル 中島 秀一
出版者
学校法人 法政大学情報メディア教育研究センター
雑誌
法政大学情報メディア教育研究センター研究報告 (ISSN:18827594)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.63-70, 2022-09-16 (Released:2022-09-16)
参考文献数
3

The 2022 Symposium of Research Center for Computing and Multimedia Studies, Hosei University was held online on 9 March 2022. This short article introduces outline of the 2022 symposium.
著者
森 俊輔
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2020-04-24

本研究では、自己免疫疾患発症の原因と考えられるミスフォールドタンパク質・MHC クラスII 分子複合体の形成に重要な分子である Invariant chainに注目し解析を行う。ウイルスの免疫逃避機構の一つと考えられるInvariant chainの発現量低下が自己免疫を誘導する可能性があり、本研究を通してウイルス感染が関与する様々な自己免疫疾患の発症機構が明らかになると期待される。
著者
笠松 純 川上 和義
出版者
一般社団法人 日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:24345229)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.47-58, 2022 (Released:2022-08-31)
参考文献数
98

クリプトコックス症はCryptococcus neoformansによって引き起こされる日和見真菌感染症である.免疫系が正常な健常者では不顕性感染となることが多いとされる.一方,免疫低下を伴う基礎疾患をもつ患者や免疫抑制剤を使用している患者では髄膜炎など重篤な疾患を引き起こす.免疫系は自然免疫系と適応免疫系に大別され,感染症を引き起こす病原体によって異なるリンパ球サブセットが生体防御を担う.本稿では,クリプトコックスに対する自然免疫応答と適応免疫応答について解説する.さらに,それら免疫系の破綻によって生じるクリプトコックスの内因性再燃についても紹介する.これらの知見は,クリプトコックス症に対する治療薬やワクチンを開発するための新しい視座を提供する.
著者
亀井 信一
出版者
計量国語学会
雑誌
計量国語学 (ISSN:04534611)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.81-95, 2021-09-20 (Released:2022-09-20)
参考文献数
18

本研究の目的は,日本で生活する外国人が自立した言語使用者として職を得ることを日本語教育の観点から支援することである.そのために,本稿では求人情報(求人票)を読むのに必要な語彙の特徴,及び履歴書(志望動機)を書くのに必要な語彙の特徴を明らかにすることを調査課題とした.調査データとして,ハローワークの求人票,及び日本語母語話者が書いた志望動機の文章を用いてコーパスを作成し,品詞構成,出現頻度,特徴度を分析した.その結果,求人票については,品詞として名詞が際立って多く,中級後半レベルの語が最も多いこと,その傾向は業種間で差は無いことが明らかになった.志望動機の文章については,特徴的な語として「貴社」,「志望」,「携わる」等があることが明らかになった.また「〜たいと考える」等の頻出文型があることが明らかになった
著者
江守 正多
出版者
日本環境共生学会
雑誌
環境共生 (ISSN:13463489)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.135-140, 2021-09-30 (Released:2021-10-06)
参考文献数
17

To meet the long-term goal of the Paris Agreement for mitigating climate change,many countries including Japan have adopted the ‘green growth’ strategy to decarbonize their economies. While the transition from conventional growth to green growth is seen as a desirable paradigm shift, green growth is now criticized for its insufficient plausibility of decoupling emissions from GDP and expected negative consequences on social equality. As an alternative paradigm, ‘degrowth’ has been proposed. Degrowth has some commonality with ‘Green New Deal’, but it calls for a more radical transformation of the socio-economic system. Though a desirable next paradigm is uncertain, at least we need to look squarely at downsides of green growth and seriously seek to overcome them or to find a new way forward.

1 0 0 0 OA 古事類苑

著者
神宮司庁 編
出版者
古事類苑刊行会
巻号頁・発行日
vol.第27冊, 1910
著者
早川 智美
出版者
大谷学会
雑誌
大谷学報 = THE OTANI GAKUHO (ISSN:02876027)
巻号頁・発行日
vol.84, no.3-4, pp.1-30, 2006-01
著者
松井 健志 高井 寛 柳橋 晃
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.50-57, 2020-09-26 (Released:2021-08-01)
参考文献数
58

近年、臨床研究における研究倫理審査の受審・承認に関する虚偽記載をめぐる問題事案が国内外において少なからず散見されるようになってきている。しかし、報告される事案の数自体が少ないことに加えて、主たる「研究活動の不正行為」とされる捏造、改竄、盗用の陰に隠されてきたことから、本問題の倫理的な深刻さや何がそもそも問題であるかということについて、研究公正を含む研究倫理学の中でもほとんど検討されていない。そこで本論では、過去十年余りの間に国際的及び国内的に問題となった、研究倫理審査の受審・承認に関する虚偽記載が確認されたいくつかの臨床研究事案を取り上げつつ、本問題について研究倫理学的観点から考察した。
著者
山崎 和彦 爲我井 敦史 堀 雅洋
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.6_95-6_102, 2014-03-31 (Released:2014-06-10)
参考文献数
17

ユーザビリティ評価におけるインスペクション法では,実際に動作するプロトタイプやエンドユーザーの協力を必要としない.しかし,ユーザビリティ評価について実践的スキルを有する専門家の不足により,インスペクション法を適切に実施することは必ずしも容易でない.本研究では,ユーザビリティ評価の初心者として大学生の協力を得て,2種類のインスペクション法を用いてユーザビリティ評価を実施し予備的検討を行った.その結果,初心者がインスペクション法を実施する際に直面する主要な問題点が,対象ユーザー視点ならびに対象箇所の指定に関わるものであることを確認した.そして,それらの問題点への方策として,対象ユーザーの特徴分解法および壁を利用したヒューリスティック法を提案する.その上で,提案手法をユーザビリティ評価の初心者に使用してもらい,携帯電話端末の評価を行ない,その有用性を検証するとともに提案手法の利点と課題について考察する.

1 0 0 0 富士

出版者
世界社
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, 1952-03
著者
菅原 章 西畑 三樹男 国井 敏弘
出版者
Japan Society of Spring Engineers
雑誌
ばね論文集 (ISSN:03856917)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.38, pp.13-18, 1993-03-31 (Released:2010-02-26)
参考文献数
6
被引用文献数
3

工業規模で製造したCu-1.06Ni-0.96Sn-0.079P合金 (NB-109合金) に, 溶融浸漬により厚さ0.44μmのはんだあるいは, 厚さ0.66μmのSnを積層し, また電気めっきにより厚さ1.40μmのSnめっきを施し, これら表面処理材の機械的性質 (表面硬度, 引張強さ, 耐力, 伸び, 縦弾性係数, ばね限界値, 疲労強さ) 及び熱処理による特性の変化 (耐熱性, 成形加工性, 応力緩和特性, はんだ付け性) について調査した結果, 表面処理の違いによって, 機械的性質のうち表面硬度, ばね限界値, 疲労強さが, 熱処理特性のうち, 成形加工性, はんだ付け性において差を生じた。
著者
作山 誠樹 渡辺 勲 佐藤 武彦 花房 孝嘉
出版者
The Japan Institute of Electronics Packaging
雑誌
サーキットテクノロジ (ISSN:09148299)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.128-135, 1993-03-20 (Released:2010-03-18)
参考文献数
7

表面実装における微細パターン化に伴い, プリント配線板の前処理であるソルダコート (予備はんだ被膜) の薄膜化が要求されている。しかし, 薄いソルダコート表面では, はんだペーストとの濡れ性低下が問題となる。そこで, メニスコグラフ濡れ性試験, オージェ分光分析, X線マイクロアナライザにより, 薄いソルダコート表面でのはんだ濡れ性低下のメカニズムの解明と, 薄いソルダコート用はんだ材料について検討した。その結果以下のことが明らかとなった。母材からのCuの拡散によってCu-はんだ界面に生成するCu-Sn金属間化合物ははんだ表面まで成長し, 表面に露出した化合物中の過剰なCuが酸化することによって, 薄いソルダコート表面でのはんだ濡れ性が低下する。ソルダコート用共晶はんだ浴に0.3wt%のCu添加は, 母材からのCuの溶出を抑え, 化合物の成長を抑制する。また, 0.1wt%以上のインジウム (In) 添加はソルダコート表面がInリッチとなって, 表面にInの酸化膜を形成させ, これが化合物の酸化を抑制する効果がある。したがって, ソルダコート用はんだにCu-Inを添加することで, Cu-Sn金属間化合物の成長を抑制し, たとえ薄いソルダコート表面で金属間化合物が露出したとしても, 化合物表面の酸化を抑制し, 良好なはんだ濡れ性を得ることができる。