著者
藤岡 久美子
出版者
山形大学地域教育文化学部附属教職研究総合センター
雑誌
山形大学教職・教育実践研究 = Bulletin of Teacher Training Research Center, Yamagata University (ISSN:18819176)
巻号頁・発行日
no.9, pp.21-27, 2014-03

幼児期に自己に向けた発話(プライベート・スピーチ,PS) があらわれ,言葉の内化とともに内言へと移行することがヴィゴツキーの理論およびその後の研究において示されている。本研究の目的は,認知的課題に取り組む際に幼児が示すPSの個人差と幼稚園での自由遊び場面での目標指向性との関連を検討することである。21名の幼児が年少クラス在籍時および1年後に絵カード分類課題に取り組み,課題中のPSが測定された。年中時には自由遊び中の行動と注意が記録された。PSと行動・注意の関連を検討したところ,ぼうっとしていたりうろうろすることが多いほど,分類課題中のPSが少なかった。また,1年間でPSが増加した群においてのみ,製作やごっこ遊びなど静的な遊びを相手に注意を向けて取り組んでいるほど,課題中の文形態のPSが多く示された。これらの結果から,思考の道具であるPSを認知的課題に取り組む際に多く示す幼児は,日常的にも目標指向的で,行動や注意が制御された状態を多く示すことが示唆された。 キーワード:幼児 / プライベート・スピーチ / 自由遊び / 自己制御
著者
原田 隆史
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.725-737, 2012
被引用文献数
1

Project Next-Lは,次世代の図書館システム開発の主導権を図書館関係者自身の手に取り戻し,オープンソースによる図書館システムの仕様を図書館員が共同で作成することを目指すプロジェクトである。Project Next-Lの仕様をもとに開発された統合図書館管理システムNext-L Enjuは,一般的な図書館システムの機能を備えるほか,Web2.0に対応した各種の新機能,図書と電子ジャーナルなどの電子的情報資源を一元的に管理する機能,FRBRに対応した書誌レコードを管理する機能など,数多くの新しいサービスに対応する仕組みを備えている。また,Next-L Enjuはオープンソース・ソフトウェアとして公開されており,自由に利用することができるという点も大きな特徴である。Next-L Enjuは2012年1月から正式公開された国立国会図書館(NDL)サーチのベースとして採用されているほか,物質・材料研究機構の図書館や南三陸町図書館で実際に稼働しはじめるなど利用が広がりつつある。
著者
竹中 暉雄
出版者
桃山学院大学
雑誌
人間文化研究 (ISSN:21889031)
巻号頁・発行日
no.2, pp.551-600, 2015-03-23

This paper discusses the problem of the charging of school fees during the period of free compulsory education in modern Japan. 1 The charging of school fees for compulsory education was not sustained by any definite philosophy. There were exceptional cases when not only poor families but even relatively wealthy communities were exempted from charges, and also cases when charges were levied on the relatively poor community as well as on the wealthy. As a result, various unequal and unreasonable conditions came about. 2 No official explanation was given to the general public as to why it was necessary to pay school fees when compulsory education was supposed to be free, nor as to why it sometimes became unnecessary to pay. 3 Instead of the charging of fees, since the "Elementary School Ordinance" of 1900 had provided that compulsory education should be free, communities were still obliged to pay higher resident taxes because there was as yet no governmental grant to elementary schools. 4 Many books on educational administration defined the charging of school fees as a natural levy, and could not agree logically with the principle of free education. After the "Elementary School Ordinance" providing free compulsory education was issued, their explanation of free education consequently became very vague. 5 In a sense, the "Elementary School Ordinance" providing free compulsory education was unconstitutional, because the "city and town=village system" law of 1888 authorized cities, towns and villages to collect service charges as required, and the Imperial Constitution prescribed that an ordinance could not override the existing law. The author concludes that it was because of this that jurists, who must have been aware of this fact, hesitated to give their unconditional support to the free education system, with the result that their explanations became all the more vague.
著者
中村 修也
出版者
文教大学
雑誌
文教大学教育学部紀要 = Annual report of the Faculty of Education, Bunkyo University (ISSN:03882144)
巻号頁・発行日
no.47, pp.57-78, 2013

663年の白村江の敗戦以後の日本の社会を、唐の占領政策のもとにいかに展開したかを描いた。従来の説では、唐による占領政策はなかったものとして、両国は戦争をしたにもかかわらず、友好関係を維持し、日本は唐にならって律令制を導入したと論じられてきた。これは戦争という現実から目をそむけた論に過ぎない。本論では、郭務悰という唐からの占領軍事司令官のもとで、いかに占領政策が行なわれたかを『日本書紀』を新たに解釈しなおすことで明らかにした。また、新羅の反唐政策によって、唐は半島・日本から撤退せざるをえなくなり、日本も唐の占領政策から脱することができたことを論じた。
著者
中山 樹一郎 古賀 哲也 占部 篤道 堀 嘉昭 桐生 美麿 野間 健 渕 曠二 安田 勝 八島 豊 吉利 優子 徳永 三千子 川野 正子 仁位 泰樹
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.1055-1064, 1994
被引用文献数
2

アトピー性皮膚炎患者69例に対し, ヒスタグロビン<SUP>®</SUP>(Histaglobin<SUP>®</SUP>: 以下HG)適量療法〔初回1 vialで4回投与後, 効果不十分例(軽度改善以下の症例)に対し, 2 vialに増量し4∼6回の投与を行う方法〕を実施し, その治療効果の検討を行うとともに, 同期間中のアレルギーパラメーター(血中好酸球数, 血中ヒスタミン値, 血漿ロイコトリエンB4(LTB4)値, 血清eosinophilic cationic protein(ECP)値)の変動を検討した。HG 1 vial投与における1st stage終了時の全般改善度は, 「中等度改善以上」42例, 60.9%であった。また, 1st stageでの効果不十分例, 即ち「軽度改善以下」の症例22例(脱落症例は除く)に対し, 2 vial投与を行った2nd stage終了時での全般改善度は, 「中等度改善以上」18例, 81.8%で, 2 vialに投与量を増量することにより改善度の上昇が認められた。試験期間中の副作用は1例も認めず, 概括安全度についても全例問題はなかった。1st stage終了時の有用度は, 「有用以上」で62.3%, 2nd stage終了時では72.7%と高い有用率が認められた。試験期間中, 測定しえた全症例のアレルギーパラメーターの推移では, 血中好酸球数, 血中ヒスタミン値, 血漿LTB4値には, HG投与前後に全体としては有意の変動は認められなかった。血清ECP値に1st stage終了時, 有意(P<0.05)の上昇が認められた。血清ECP値は好酸球数, 重症度に相関するようにみられたが, HGの臨床効果とは関係なかった。また, 試験開始時の血漿LTB4値が100pg/ml以上であった18例においては, 1st stage終了時きわめて有意(P<0.01)な低下が認められた。
著者
テオ ヘルマン
出版者
関西大学
雑誌
関西大学外国語教育研究 (ISSN:13467689)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.79-93, 2004-03

言語心理学とは何か。この間いに(1)若干の概念的区分と(2)言語心理学的研究諸例で答える試みがなされる。(1)言語心理学は心理言語学と幾多の問題を分かち合い、緊密な研究協力を介して結びついている。しかし、両学問分野の理論的出発点と目標設定は同じでない。言語心理学は言語行動(発話とその理解、読み書き)、この行動の条件となる心的および神経学的機能を扱う。その際重要なのは、言語機能および他の心的諸機能、例えば思考や記憶、情緒との密接な結びつきである。基礎心理学の一分野である言語心理学の対象は、正常な成人である。逆に言語科学の分野に属する心理言語学は、矛盾なく一義的、統一的でよく整ったコミュニケーションに適する文やテクストを生成するために、システムとしての言語、特に個別言語体系がどのような諸前提を与えるかを研究する。従って、心理言語学の理論的出発点は、個人を超える理念的システムとしての言語(language)である。言語心理学の出発点は話す個々人(ラテン語のhomo loqens)であり、その言語行動(speech)および心的神経学的諸条件である。本論の前半は、言語心理学で重要な若干の下位概念区分がなされる。(2)実験的な言語心理学の研究法とその結果が6つの例示により具体的に述べられる。すなわち、(i)文意の理解やその言語的、状況的文脈への埋め込みとしての言語受容、(ii)話し手・聴き手の空間的距離に応じた声量の自動的調節とその進化論的行動決定因の仮説、(山)要求表現とその状況的諸条件、(iv)話し手・聴き手に関わる対象呼称の実験的区分、(v)状況的文脈の有無による理解の文処理、(vi)言語産出における語彙検索と語形実現、プロソディーの実験的分析である。
著者
貝塚 茂樹
出版者
教育思想史学会
雑誌
近代教育フォーラム (ISSN:09196560)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.56-64, 2015

日本教育史においては、教育勅語が近代教育における道徳教育の理念の中核であり、「源流」であることが自明のこととされてきた。しかし、教育勅語の評価は、近代教育を通じて決して「安定」していたわけではなく、国民道徳論や「日本的教育論」などの影響の中で、確固たる有効性を持ち得ていたわけではなかった。この点の歴史的分析を欠いた戦後の教育史研究は、教育勅語の歴史的定位を明確にすることに成功しておらず、同時にそれが道徳教育研究を妨げる要因ともなってきた。道徳教育をめぐる議論を学問的な研究対象とするためには、教育勅語を歴史研究の中に実証的に位置付ける努力が求められる。それは、道徳の「教科化」の本質的な意義と可能性を理解するためにも不可欠である。
著者
佐藤 博信
出版者
千葉大学文学部
雑誌
千葉大学人文研究 = The journal of humanities (ISSN:03862097)
巻号頁・発行日
no.45, pp.21-68, 2016

本稿は、第一章については興風談所勉強会での発表(二〇一五年六月二日)、第二章については千葉歴史学会中世史部会での発表(二〇一五年六月二十八日)を踏まえて纏めたものである。