著者
石田 知子
出版者
The Philosophy of Science Society, Japan
雑誌
科学哲学 (ISSN:02893428)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.67-91, 2019-12-30 (Released:2020-06-20)
参考文献数
30
被引用文献数
1

Most life scientists and philosophers would agree that molecular biology has produced reductionistic explanations which consist of physico-chemical terms. According to Sarkar, this means that informational terms are merely metaphors which have misled scientists and eventually ought to be discarded. However, the actual situation is the opposite; informational concepts are intensively used in the life sciences. In this paper, I will argue that informational concepts become indispensable elements which work as epistemic resources, enabling a schematic understanding of life phenomena; thus, informational terms are necessary in order for the theory of molecular biology to provide such resources.
出版者
東北大学学友会新聞部
巻号頁・発行日
no.259, 1995-06-29
著者
赤井 朱美
出版者
神戸親和女子大学
雑誌
神戸親和女子大学研究論叢 (ISSN:13413104)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.51-61, 2008-03

本稿ではホームレスに対してどのような法的保障が可能なのか,また憲法的価値に沿ってそれが運用されているのか,実体法がどのように運用されているか等を,主に生活保護法関連法令をもとに解釈論的・立法論的検討を行う。まずホームレスに対して現行法ではどの法律が適用されているのか,行旅病人及行旅死亡人取扱法と生活保護法からその適用要件を見る。次にホームレスに対して現在なされている運用上の問題点,とくになぜ生活保護受給の制限がなされているのかを判例の解釈も参考にして考察する。
著者
岡崎 辰彦 寺田 努 塚本 昌彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MVE, マルチメディア・仮想環境基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.38, pp.93-98, 2011-05-06
参考文献数
4

現在,着ぐるみは様々なイベントで数多く利用されている.しかし,多くの着ぐるみは体の大きさや形が人間と異なっており,着ぐるみ装着者が自分の姿勢を認識することが難しい.また,着ぐるみ装着者の視界は制限されており,周囲の人々の存在を感知しづらく,人々とスムーズにコミュニケーションを行うことが難しい.そのため,着ぐるみ装着者がそのキャラクタらしく振る舞うためには高度な技術や十分な修練が必要となる.そこで本研究では,着ぐるみ装着者がそのキャラクタらしく振る舞うための支援を行う着ぐるみ装着者支援システムを提案する.評価実験の結果から,提案システムを用いることでスムーズなコミュニケーションが行えることを確認した.
著者
生田 孝
出版者
独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
雑誌
労働安全衛生研究 (ISSN:18826822)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.13-21, 2014 (Released:2014-04-13)
参考文献数
31
被引用文献数
1 1

いわゆる「新型うつ病」が近年世間に広まり,産業保健の現場でも「新型うつ病」の社員にどのように対処すべきか,多くの企業で喫緊の問題となっている.しかしながら,精神医学的に見ればいわばこれは「ゴッタ煮」概念であり,そこには,疾患としてのうつ病や軽度の精神病,神経症,ある種のパーソナリティ障害,適応障害,怠業や逃避行動,あるいは健常者における一過性の不適応行動まで含まれており,学問的な信頼性と妥当性を有した疾患概念ではない.しかしながらそれは,いわば現代日本の時代精神を反映している.その意味で「新型うつ病」は,極めて流動的であり,数十年の時間スパンに耐えうるかどうかは疑問である.その内実を知るには,精神疾患の成因論的視点が不可欠であり,少なくとも当該者の対応には,経験を積んだ精神科医による詳細な生活史の把握と成因論的(つまり,心因性・内因性・外因性の)見方,および状況因と性格因的視点が不可欠である.
著者
田邊 章洋 志水 宏行
出版者
公益社団法人 日本雪氷学会
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.297-308, 2022-07-15 (Released:2022-08-10)
参考文献数
41

雪崩の流動・停止プロセスの理解及び予測は防災上重要である.雪崩到達範囲を物理法則に基づき定量的に予測するために,数値シミュレーションを活用する動きが近年活発化している.それらの数値計算では,計算のコストや現象の再現性の観点から,三次元の流れを厚さ方向に平均化した二次元流として近似する理論(浅水流理論)に基づくモデルが主に用いられる.本稿では,浅水流理論に基づく雪崩動力学シミュレータの1つfaSavageHutterFOAMについて解説する.faSavageHutterFOAMは,高濃度粒子流(流れ型雪崩)の基礎方程式を解くオープンソース数値コードであり,OpenFOAMをプラットフォームとして開発された.本解説では,faSavageHutterFOAMの基礎方程式,ファイル構成,計算条件の設定方法,任意の地形上での雪崩計算の実行方法,地理情報システム(GIS)による数値計算結果の可視化方法について説明する.
著者
Kohei Tanaka Sho Katayama Kazuki Okura Masatsugu Okamura Keishi Nawata Nobuto Nakanishi Ayato Shinohara
出版者
The Japanese Society of Strategies for Cancer Research and Therapy
雑誌
Annals of Cancer Research and Therapy (ISSN:13446835)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.93-99, 2022-07-21 (Released:2022-08-23)
参考文献数
53
被引用文献数
5

The skeletal muscle has a significant role on physical functions, and the assessment of the skeletal muscle is important in critically ill patients. Computed tomography (CT), ultrasound examination, bioelectrical impedance analysis (BIA) device, and biomarkers can all be used to assess skeletal muscle mass. CT is useful for accurately measuring skeletal muscle mass, and the measurement is conducted at the third lumbar vertebra level as the gold standard. However, the assessment using CT is done retrospectively because CT involves radiation exposure and requires patients to be transported to the examination room. On the other hand, ultrasound and BIA are noninvasive and can be used at the bedside to assess longitudinal skeletal muscle mass. However, accurate assessment requires knowledge and skills. Assessments using BIA should be carefully interpreted because critically ill patients are under dynamic fluid change and edema. Furthermore, various biomarkers for the assessment of skeletal muscle mass have been recently reported. Appropriate skeletal muscle assessment will contribute to the nutrition and rehabilitation intervention of critically ill patients so that they can return to society.
著者
正高 佑志 池田 徳典 安東 由喜雄
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.405-411, 2019 (Released:2019-07-31)
参考文献数
22

脳神経内科医を対象に,欧米では既に利用されている医療大麻の研究及び利用の是非に関する意識調査を行った.医療大麻に関する情報提供を受けた群(31名)と受けていない群(81名)との間で検討を行ったところ,両群共に大麻の研究利用に関して半数以上の医師が理解を示した.一方,大麻の医療利用に関しては暴露群の方が許容する傾向が強かった.これらの許容性は医療に関する大麻の情報を適切に有する医師に多く見られたことから,情報提供に一定の成果があったことが示唆された.この結果は本邦において一部の脳神経内科医が大麻の有用性を支持していることに加え,適切な情報提供が大麻への理解を向上させる可能性を示した.
著者
溝田 友里 藤野 雅弘 山本 精一郎
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.321-338, 2020-12-25 (Released:2021-02-04)
参考文献数
46

がん予防やがん検診は,がんで苦しむ人を減らすために重要な方法である。しかしながら,これらについては十分に科学的根拠(エビデンス)があるにもかかわらず,必ずしも十分に実践されていない(エビデンス・プラクティスギャップ)。禁煙などのがん予防やがん検診受診などはすべて個人の行動変容を促すものであり,近年,行動変容を促すには従来の「教育的アプローチ」では十分でなく,「環境的アプローチ」への変化が必要とされてきた。なかでも,従来のモデルや理論に新たな行動科学的なアプローチを加味したアプローチの効果が期待されている。本稿では,なかでも,ソーシャルマーケティング及びナッジを利用したアプローチについて取り上げる。ソーシャルマーケティングは,商業マーケティングに用いられてきた概念や技法をがん予防・がん検診といった公衆衛生的な行動変容を促すために用いるものである。ナッジは人々が行動を選択するときのくせ(惰性・バイアスなど)を理解して,強制することなく,選択の自由を確保した上で,人々が望ましい行動を選択するように導くアプローチである。望ましい行動という点で,公衆衛生政策や保健政策との相性がいい手法といえる。我々が行った大学生に対する禁煙・防煙キャンペーンを例に,分析,戦略開発,コミュニケーションのデザイン,実行,評価とフィードバックといったソーシャルマーケティングのプロセスを説明する。また,がん検診の受診率向上プロジェクトを例に,ソーシャルマーケティングに加え,ナッジなどの行動科学的方法を活用した行動変容へのアプローチについても例示を行う。