著者
島村 恭則
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.91, pp.763-790, 2001-03-30

これまでの民俗学において,〈在日朝鮮人〉についての調査研究が行なわれたことは皆無であった。この要因は,民俗学(日本民俗学)が,その研究対象を,少なくとも日本列島上をフィールドとする場合には〈日本国民〉〈日本人〉であるとして,その自明性を疑わなかったところにある。そして,その背景には,日本民俗学が,国民国家イデオロギーと密接な関係を持っていたという経緯が存在していると考えられる。しかし,近代国民国家形成と関わる日本民俗学のイデオロギー性が明らかにされ,また批判されている今日,民俗学がその対象を〈日本国民〉〈日本人〉に限定し,それ以外の,〈在日朝鮮人〉をはじめとするさまざまな人々を研究対象から除外する論理的な根拠は存在しない。本稿では,このことを前提とした上で,民俗学の立場から,〈在日朝鮮人〉の生活文化について,これまで他の学問分野においても扱われることの少なかった事象を中心に,民俗誌的記述を試みた。ここで検討した生活文化は,いずれも現代日本社会におけるピジン・クレオール文化として展開されてきたものであり,また〈在日朝鮮人〉が日本社会で生活してゆくための工夫が随所に凝らされたものとなっていた。この場合,その工夫とは,マイノリティにおける「生きていく方法」「生存の技法」といいうるものである。さらにまた,ここで記述した生活文化は,マジョリティとしての国民文化との関係性を有しながらも,それに完全に同化しているわけではなく,相対的な自律性をもって展開され,かつ日本列島上に確実に根をおろしたものとなっていた。本稿は,多文化主義による民俗学研究の必要性を,こうした具体的生活文化の記述を通して主張しようとしたものである。
著者
中島 秀之 諏訪 正樹 藤井 晴行
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.1508-1514, 2008-04-15

デザインとは,対象とするシステムにおける認識レベルの異なる層の間に縦の因果を作り出す行為であると定義する.因果関係というのは認知的関係であり物理的実体ではない.また,そこには機械論的なメカニズムは存在しない.そのような前提でイノベーションを考えると,生成・評価・方向性の絞り込みという3 つの行為のループが必要ということが分かる.これらのうち,特に方向性の絞り込みがイノベーションの核心部分である.これらの定式化を行い,進化論的方法論のみが有効であることを主張する.
著者
伊藤 毅志
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.57, no.12, pp.1184-1185, 2016-11-15
著者
久崎 孝浩
出版者
九州ルーテル学院大学
雑誌
応用障害心理学研究
巻号頁・発行日
no.11, pp.69-79, 2012-03

本研究は, 子どもの心の理論発達レベルと母親の愛着スタイルとの関連性について検討した。4~6歳の子どもはWellman & Liu (2004) の一連の心の理論課題に取り組み, その子どもの母親は愛着スタイルに関する質問項目に自己評定で回答した。その結果, 自分自身の愛着恐れ型の側面を高く評定した母親の子どもほどパスした心の理論課題の数が少なく, 愛着恐れ型の側面を高く評定した母親との相互作用は子どもの心の理解の発達に阻害的な影響を及ぼす可能性が示唆された。養育者の愛着スタイルが子どもとのどのような相互作用を通じて子どもの心の理解の発達に促進的あるいは阻害的影響を及ぼすのかという, その影響経路を今後明らかにすべきであることが問われた。
著者
室伏 空 中野 倫靖 後藤 真孝 森島 繁生
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2009-MUS-81, no.21, pp.1-7, 2009-07-22

本研究では、既存のダンス動画コンテンツの複数の動画像を分割して連結(切り貼り)することで、音楽に合ったダンス動画を自動生成するシステムを提案する。従来、切り貼りに基づいた動画の自動生成に関する研究はあったが、音楽{映像間の多様な関係性を対応付ける研究はなかった。本システムでは、そうした多様な関係性をモデル化するために、Web 上で公開されている二次創作された大量のコンテンツを利用し、クラスタリングと複数の線形回帰モデルを用いることで音楽に合う映像の素片を選択する。その際、音楽{映像間の関係だけでなく、生成される動画の時間的連続性や音楽的構造もコストとして考慮することで、動画像の生成をビタビ探索によるコスト最小化問題として解いた。
著者
"宮脇 修" "ミヤワキ オサム" Osamu" "MlYAWAKI
雑誌
名古屋女子大学紀要 = Journal of the Nagoya Women's College
巻号頁・発行日
vol.31, pp.121-131, 1985-03-01

"PF-STUDY,CCPのデーターをもとにして,Low sociometric status groupをHigh sociometric status groupに対比して,その人格的・行動的特性をまとめると,次の三つに要約される. 1.L groupはH groupに比べ,一般的にフラストレーション耐性が低く,H groupがフラストレーション事態でも,その問題解決に当たって内省的努力の構えで対するのに,L groupはフラストレーションを惹きおこした事物・人物に向けて単なる不平不満の感情で終始する傾向がある. 2.L group は,H group に比べ,母親に対して情緒的接触の薄さを感じ,全体的に受容的母親像を持ちにくい傾向がみられる. 3.また,父親像に関しても,H group では子どもの依存性を排除し独立への希求を持つ親として把えられているのに対し,L groupではその点が弱い傾向にある.尚,この研究を通して,フラストレーション耐性と,子どもの養育をめぐる親子関係との間に深いかかわりのあることに気づいた.今後の課題として,このかかわりの面に注目し, L,H両群の比較研究をすすめていきたい."
著者
近藤 伸彦 Nobuhiko KONDO
出版者
大手前大学CELL教育研究所
雑誌
大手前大学CELL教育論集 = Otemae University CELL journal of educational studies (ISSN:21894027)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.11-18, 2016-03-31

近年のICTの発展により、教育におけるビッグデータは現実的なものとして顕在化し、その活用により教育改善をおこなう試みが大きな注目を集めている。海外ではいち早く教育ビッグデータに対するアナリティクスの研究と実践が行われ、国内においてもその必要性が急速に認識されつつある。本稿では、大学における教育ビッグデータの活用について整理するため、種々のアナリティクスと教学IRに着目して、発展の経緯や、分野間の関係性などについてまとめる。さらに、大手前大学におけるアナリティクスや教学IRの現状と展望について述べる。
著者
及川 直樹
出版者
飯田女子短期大学
雑誌
飯田女子短期大学紀要 = Bulletin of Iida Women's Junior College (ISSN:09128573)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.1-25, 2015-05-27

幼児のチーム対抗のサッカー遊びにおけるルールの実態を把握し,遊びの方向性を定め,発展を支える要因を検討した.対象は,長野県内にある私立幼稚園の年長A組であった.週1回,自由遊び時間におけるサッカー遊びを参与観察した.各観察日のサッカー遊びにおいて,ルールを適用した場面など意味的にまとまりのある場面を一つの事例とし,事例間の比較検討などを行った.その結果,サッカー遊びの方向性を定め,発展を支えていたのは,幼児の 「本当のサッカー」 への志向性の高まり,ボールを扱う技術の向上とそれに伴う動きの質的変化,チーム内での仲間意識やチーム対抗の意識の高まりの3つの要因であり,これらは複合的に関連しながら遊びの発展を支えていた.以上をもとに,サッカー遊びでは,遊びの目標を損なわず,園や幼児の実態に合わせた必要最小限のルールを導入し,幼児が工夫して遊びを展開できるように援助するのが望ましいと推察された.
著者
後藤 真将 田淵 仁浩 村岡 洋一
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第46回, no.応用, pp.361-362, 1993-03-01

本稿では、複数の打楽器によって演奏された音楽を対象にした自動採譜システムについて述べる。従来おこなわれてきた自動採譜の研究は単音から和音へ、単一楽器から複数楽器へと対象とする音楽の制約を徐々に減らす方向で進められている。しかし、これらの研究はピアノなどの楽音(musical tone)を発する楽器のみを対象にしたものであり、打楽器などの噪音(unpitched sound)を発する楽器は対象にしていなかった。一方、ポップスやロックなどの音楽では打楽器が重要な役割を演じている。ところが従来の自動採譜をこれらの音楽に適用すると、打楽器音がノイズとなって楽音の認識を妨げるために採譜が困難になる。したがって、これらの音楽を自動採譜するためには打楽器音に対応した自動採譜を実現することが本質的に重要である。そこで打楽器音が含まれているこれらの音楽を自動採譜するための第一段階としで、複数の打楽器のみによって演奏された音楽を対象にした自動採譜システムを実現した。
著者
松宮 健太 岩井 将行 中澤 仁 徳田 英幸
雑誌
情報処理学会研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.65(2001-OS-087), pp.89-96, 2001-06-28

近年情報家電や携帯端末,センサなど多様な機器がネットワークに接続可能となり始めている.また,これらの機器を利用し,ユーザの状況や好みに適応したサービスを提供する環境が実現しつつある.複数の機器を利用して物理的な環境に対してサービスを提供する場合,類似機能による競合を回避する必要がある.また,複数のサービスが提供されている環境ではユーザの好みを反映して利用する機器を選出することが重要となる.本稿ではこれらの課題を解決する機構としてUser Preference supported Architecture for device automation(UPA)を提案する.UPAでは適用環境として壁や天井などで区切られた閉じた空間を想定し,空間ごとに類似機能を持つ機器やユーザの好みを統合的に管することでアプリケーションに対して利用可能な,競合の起きない,ユーザの好みに適応した機器を提供することを実現した.
著者
志水 宏行
出版者
大谷学会
雑誌
大谷学報 = THE OTANI GAKUHO (ISSN:02876027)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.54-57, 1980-02
著者
Ching-Nung Lin Shi-Jim Yen
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2016論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, pp.65-68, 2016-10-28

The performance of Deep Learning Inference is a serious issue when combining with speed delicate Monte Carlo Tree Search. Traditional hybrid CPU and Graphics processing unit solution is bounded because of frequently heavy data transferring. This paper proposes a method making Deep Convolution Neural Network prediction and MCTS execution simultaneously at Intel Xeon Phi. This outperforms all present solutions. With our methodology, high quality simulation with pure DCNN can be done in a reasonable time.
著者
国際研究・協力部
巻号頁・発行日
2009-11

はしがき........................... 3概要..... 4セクション1:序論......... 5状況及び背景........5課題及び緊張関係7‐万人のための基礎教育とESD......7‐ESD のより広範な目的...8‐ESD とEFA の社会的及び地理的な重点事項と支持者...........9「セクション1:序論」のまとめ..11セクション2:MDG 達成に向けたESD の戦略的役割........ 13開発と環境に関係する重要な問題及びアジェンダの結び付け13‐持続可能な開発とMDG..............13‐ESD、貧困削減、及び気候変動.15‐MDG に向けた多セクター型アプローチの推進にかかわるESD の役割..........16貧困削減とESD..18‐貧困削減の概念.............18‐ESD と貧困の防止.........19‐ESD、EFA、及び貧困削減・防止の相互関係.........21一般のMDG に対する認識の促進、MDG への提携及び支援の構築.....23「セクション2:MDG 達成に向けたESD の戦略的役割」のまとめ....24セクション3:EFA の国及び国際アジェンダにおけるESD の地位の引き上げ............ 25相互理解、合同学習、及び運用連携に向けてのESD・EFA 支持者の巻き込み.25ESD、EFA、及び教育・学習擁護論..............26ESD がEFA アジェンダに対して提供できるもの......27EFA がESD アジェンダに対して提供できるもの......28ESD と質の高いアジェンダ............29‐価値観を重視するESD.31‐カリキュラムに対する学際的、多セクター型、地域・土着重視型のアプローチを重視するESD..32‐質の高い教育に関するコンセンサス.........342‐生涯学習、コミュニティ学習、及び社会学習........35‐評価、対象、及び指標..36「セクション3:EFA の国及び国際アジェンダにおけるESD の地位の引き上げ」のまとめ..............37セクション4:実現に向けて...... 39支持者、学習、及び運用にかかわる連携.....39‐参加とオーナーシップ..39‐二国間・多国籍ドナーの提携関係を構築する........40‐ESD 及びEFA における能力開発41‐インフォーマル学習及び学習組織におけるESD とEFA のシナジー42‐教育・学習の擁護論を強調するための運用上の連携...........42EFA プロセスへのESD の組み込み43‐現在のプロセス及びメカニズムの中における統合のための機会.......43‐グローバル・モニタリング・レポート(GMR)...44‐合同での質の高いモニタリング・評価メカニズムへ向けての歩み...45「セクション4:実現に向けて」のまとめ..46文献リスト....... 48付録1:EFA-ESD 対話に関する議論の概要............ 54付録2:指標的研究アジェンダ.. 58付録3:社会参加に関する貧困と結果的貧困の緩和に対するESD とEFA の貢献の潜在的可能性の概要......... 60付録4:万人のための持続発展教育(ESDFA):段階式道しるべの例............. 62付録5:EFA のための主要メカニズムの概要......... 64付録6:EFA-ESD 対話に関する背景ペーパーに対する委任事項....... 67付録7:用語.... 69
著者
CHEN Stacey H. CHEN Yen-Chien LIU Jin-Tan
出版者
GRIPS Policy Research Center
雑誌
GRIPS Discussion Papers
巻号頁・発行日
vol.16-20, 2016-10

Parents preferring sons tend to go on to have more children until a boy is born, and to concentrate investment in boys for a given number of children (sibsize). Thus, having a brother may affect child education in two ways: an indirect effect by keeping sibsize lower and a direct rivalry effect where sibsize remains constant. We estimate the direct and indirect effects of a next brother on the first child’s education conditional on potential sibsize. We address endogenous sibsize using twins. We find new evidence of sibling rivalry and gender bias that cannot be detected by conventional methods.
著者
玉置 了
出版者
近畿大学商経学会
雑誌
商経学叢 = Shokei-gakuso: Journal of Business Studies (ISSN:04502825)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.203-217, 2011-12-01

[概要] 本研究は, 消費者が所有物の処分を意思決定する契機を消費者のアイデンティティ形成志向という視点から明らかにする。本研究では, まず消費者のアイデンティティ形成意識, 消費者のアイデンティティ形成過程における処分行動, 消費者の処分行動に関する議論といった3つの議論に関わる先行研究をレビューし, 本研究の問題を設定する。 さらに, 本研究では, 質問紙調査により消費者の処分行動の意思決定の契機の差異をアイデンティティ形成志向の違いから明らかにする。先行研究にしたがって調査の枠組みを設定し, 重回帰分析を行い, (1)自己イメージの一致を意識した購買, (2)プランド・イメージを重視する購買, (3)流行を意識した購買, (4)取揃え・コーディネートを意識した購買と使用, (5)製品利用の熟練を重視する使用, (6)創造的消費を重視した使用, それぞれのアイデンティティ形成志向の違いによって, 処分を意思決定する契機が異なることを明らかにする。 [Abstract] This Study analyzes consumer's decision makeing about them disposition behavior from a view point of the consumer's identity formation. First, We revew the exsisting study about consumer's identity formation, consumer's disposition behavior in the identity formation process and consumer's disposition behavior. And, We set a research question based on these exsisting studies. Second, We conduct questionnaire method and analyzed data by a multiple regression analysis. As a result, Identity formation-oriented differences brings some differences for decision making of the disposition.