著者
小林 哲
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.1-12, 2018 (Released:2018-03-31)
参考文献数
31
被引用文献数
2

医療や教育サービスにおいて,サービス終了時に便益を享受することができず,その後しばらくして便益がもたらされることがしばしば存在する。このような現象は便益遅延性と呼ばれており,顧客満足の評価や顧客参加の在り様に大きな影響をもたらすことが指摘されている。しかし,このサービスにおける便益遅延性は,私たちにひとつの理論的な問題を提起する。便益遅延性がサービスの基本特性である生産と消費の同時性(不可分性)に反するというのがそれである。もし,サービスにおいて生産と消費が同時になされるのであれば,消費すなわち便益の享受が遅延することはない。一方,医療やサービスにおいて便益が本当に遅延するのであれば,それはサービスの基本特性である生産と消費の同時性に反することになり,この種の医療や教育は“サービスではない”とみなすこともできる。そこで,本稿では,サービスの基本特性に立ち返り,便益遅延性の発生メカニズムを探ることで,このような矛盾が生じる理由を明らかにし,サービス・マネジメントの新たな可能性について考察する。結論を先に述べるならば,医療や教育サービスにおける便益遅延性は,サービス・デリバリー(生産)と便益の享受(消費)との間に顧客資源が介在することによって生じる。さらに言えば,便益遅延性は,このような顧客資源介在型サービスの特徴のひとつに過ぎない。したがって,医療や教育サービスの成果を高めるには,便益遅延性のみならず,それをもたらす顧客資源介在型サービスの特徴を理解しマネジメントする必要がある。
著者
石井 佐綾香 反頭 智子 加賀 佳美 相原 正男
出版者
一般社団法人 日本臨床神経生理学会
雑誌
臨床神経生理学 (ISSN:13457101)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.132-138, 2018-06-01 (Released:2018-06-01)
参考文献数
18

小児の前頭葉機能検査試行中の脳活動を, 非侵襲的で体の向きや位置に制約が少ない近赤外線スペクトロスコピー (near-infrared spectroscopy; NIRS) を用いて測定した。語の流暢性課題と後出し負けじゃんけん課題試行中の前頭部酸素化ヘモグロビン濃度 [oxy-Hb] を測定し, 前頭葉機能の発達変化について検討した。また, 後出し負けじゃんけん課題においては注意欠陥多動性障害 (Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder; ADHD) について定型発達児と比較検討した。語の流暢性課題試行中の前頭部 [oxy-Hb] は, 年齢とともに有意に上昇した。後出し負けじゃんけん課題では, 成人は前頭前外側部に上昇が限局する傾向を認めたが, 低年齢群では広範な上昇を認めた。後出し負けじゃんけん課題試行中の前頭部[oxy-Hb]はADHDでは定型発達児より有意に低かった。NIRSは小児の前頭葉機能の評価において簡便で有用な検査法であると考えられる。
著者
小林 敏勝
出版者
無機マテリアル学会
雑誌
Journal of the Society of Inorganic Materials, Japan (ISSN:21854378)
巻号頁・発行日
vol.11, no.313, pp.371-376, 2004-11-01 (Released:2011-03-07)
参考文献数
7
被引用文献数
1
著者
平野 加奈子 飯塚 太郎 烏賀陽 真未子
出版者
独立行政法人 日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター
雑誌
Sports Science in Elite Athlete Support (ISSN:24322091)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-9, 2017 (Released:2019-02-15)
参考文献数
4

This paper describes the support using match videos that was provided for the Japanese national badminton team in preparation for the 2016 Rio de Janeiro Olympic Games. In order to help coaches and players effectively strategize for their matches, we provided them with match videos and match analysis data. The purpose of the match analysis was categorized as follows: (1) to define the play tendencies of opponents, and (2) to evaluate the performances of Japanese players for further training. Additionally, match videos were provided to the coaches and players through video streaming technology so that they could easily access them anytime. We suggest that these support assisted the coaches and players in preparing for their matches, especially in the decision-making process of formulating strategies.
著者
小田 亮
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.272-292, 2009-09-30 (Released:2017-08-18)

本論文で提示する「二重社会」という視点は、レヴィ=ストロースの「真正性の基準」の議論の帰結、つまり「近代以降、ひとは、真正な社会と非真正な社会という、異なるあり方をした二つの社会を二重に生きている」というものである。本論文では、この「二重社会」という視点が、ネオリベラリズムやグローバリズムに対応する日常的な実践と、そうした実践を可能とする社会的連帯の基盤となる煩わしさと反復による社会関係の評価を可能とすることを示す。すべてを交換可能なものとして一般化するグローバリズムやネオリベラリズムに対抗するために、比較可能で置換可能な差異としての特殊性に依拠することとそれへの批判は「一般性-特殊性」の軸にそってなされる。また、それを批判するネグリ/ハートの議論も同じ対立軸上でなされている。ここで見落とされてきたのは、ドゥルーズが一般性と対比させる「単独性」と「反復」であり、それは「一般性-特殊性」の軸とは異なる「普遍性-単独性」の軸に位置する。これらの軸はレヴィ=ストロースの真正性の水準の議論における「非真正な社会」と「真正な社会」にそれぞれ対応する。「真正な社会」と「非真正な社会」とでは、同じ貨幣や行政機構などの媒体が、質的に異なったものとなる。それらの一般化された媒体は、真正な社会において、一般性を剥奪される。この一般化された媒体を変換する実践は、人類学では、J・パリーとM・ブロックらによる「貨幣を飼い慣らす」実践として議論されてきたが、それらも、「一般性-特殊性」の軸にそった議論にとどまっている。「二重社会」の視点から見直すことで、こうした実践が「普遍性-単独性」の軸にそって非真正な社会との境界を維持するものであるという点が明らかとなる。このように「二重社会」という視点は、ネオリベラリズムやグローバリズムに対応する多様な実践の意味解釈を可能とする。
著者
石井 寛海 阿南 雅也 森 淳一 山口 豊
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.46, pp.H2-225_1-H2-225_1, 2019

<p>【症例紹介】変形性膝関節症(以下,膝OA)患者の人工膝関節置換術(以下,TKA)後の理学療法は,下肢筋力トレーニング,関節可動域運動,歩行練習などが一般的に行われている.大腿四頭筋の筋力は,TKA後の最初の数週間にてTKA前よりもより低下するとされており,その筋力低下はTKA後数年経っても完全には解決できていないことが報告されている.TKA後の大腿四頭筋の筋力低下の原因は,単独で生じる筋萎縮のみならず,手術侵襲,術後安静,および関節原性筋抑制(以下,AMI)も挙げられる.また,膝OA患者の神経筋系の特徴として,膝周囲筋群の共同収縮が挙げられる.膝OA患者は歩行時の膝関節周囲筋の共同収縮が増大するとの報告があり,膝関節の病態を取り除いたTKA後の歩行でも報告されている.そこで今回、膝OA後のTKAを施行した症例に対し,膝関節周囲筋の共同収縮に着目し,質的な筋機能の改善を目的として介入した症例を報告する.</p><p> 症例は80歳,女性.数年前より膝関節痛のため階段昇降や長距離歩行が困難となった.1年前に左膝TKA施行し,今回は急性期病院にて右膝TKAを施行し術後3週で当院へ入院された.主訴は,「膝が曲がるようになってほしい、バスに乗りたい.」であった.</p><p>【評価とリーズニング】当院入院1週間後に初期評価を実施した.右膝関節可動域は他動運動で膝屈曲120°/膝伸展−5°,自動運動では屈曲105°/伸展-5°.右膝関節屈曲時に術創部,大腿直筋の伸張痛あり.NRSは2/10,圧痛は無く軽度の熱感あり.膝伸展筋力はMMT4レベル.Extension lagは陰性.共同収縮の評価は座位での膝伸展運動時における共同収縮の指標であるCo-Contraction Index(以下,CCI)とした.表面筋電計NORAXON(酒井医療)を使用し,膝伸展運動時の筋電図を計測した.被検筋は外側広筋(以下,VL)・内側広筋(以下,VM)・外側ハムストリングス(以下,LH)・内側ハムストリングス(以下,MH)・腓腹筋外側頭(以下,LG)・腓腹筋内側頭(以下,MG)とした.CCIはFalconarらが推奨する算出方法にて,VMとMH,VMとMG,VLとLG,VLとLG間で算出した.CCIは値が大きい程より共同収縮が強いことを示し,膝関節伸展運動時のCCI(%)は,VM:MHは57,VM:MGは33,VL:LGは76,VL:LGは64であった.</p><p>【介入内容および結果】質的な筋機能の改善を目的に,端座位での膝伸・屈曲展運動を10回3セット実施した. 膝下垂位から3秒間で膝最大伸展位になるように膝伸展運動を行い,その後3秒間で膝下垂位となるように膝屈曲運動を意識して行うように指導した.その他,理学療法内容として関節可動域運動や歩行練習,階段昇降練習を1週間実施した.</p><p>結果,関節可動域やNRS,MMT, Extension lagに変化はなかった.膝関節伸展運動時のCCI(%)は,VM:MHは57→41,VM:MGは33→17,VL:LGは76→54,VL:LGは64→33と全てにおいて減少した.</p><p>【結論】本症例では,質的な筋機能の改善のために端座位での単関節運動による開放的運動連鎖(以下,OKC)のトレーニングを行った.特に,膝伸展筋である大腿四頭筋を求心性収縮と遠心性収縮にて選択的に促通した.その結果,初期評価時に共同収縮は高い数値を示していたが,1週間後には軽減していた.先行研究では,TKA後1ヶ月での大腿四頭筋の筋活性化は,筋力の大きさと同様に術前よりもさらに低下するとされている.介入期間を考慮すると,主動作筋である大腿四頭筋と拮抗筋であるハムストリングスの相反抑制を正しく再学習することで共同収縮の改善に至ったのではないかと考える.このことから,TKA後には筋力トレーニングによって量的な改善を促すより,質的な改善を目指すことで質的な筋機能の向上が期待できることが明らかになった.しかしながら,実際に随意的な筋活性化が改善されたかどうかは,本症例では明らかにできてはいない.今後,共同収縮と随意的な筋活性化の関係性や共同収縮を効果的に改善する運動療法を模索・検証していきたい.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に基づき当該病院の倫理審査委員会の承認(A0017)と被験者の同意を得て実施した.</p>
著者
杉山 泰平 中川 秀敏
出版者
一般社団法人 日本応用数理学会
雑誌
日本応用数理学会論文誌
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.325-361, 2019

<p><b>概要.</b> Additional Tier1 債券(AT1 債)は,強制元本削減トリガー条項が付されたデフォルト可能性のある債券である.本論文では,完全情報および不完全情報下において,財務トリガーやPONV トリガーと呼ばれる元本削減トリガーを考慮できるように改良した構造型のAT1 債プライシングモデルを提案する.そして,日欧の実際のAT1 債の市場価格データを用いた実証分析を通じて,提案するモデルの有用性を検討する.</p>
著者
平地 健吾 大津 幸男 竹腰 見昭 小松 玄
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

ベルグマン核の不変式論を用いて領域の局所的不変量と大域的不変量を関係付けることを目標として研究を進め,次の二つの方向の成果を得た.1)グラウエルト柱状近傍領域でのベルグマン核とリーマン・ロッホの定理の関係.射影多様体上のアンプル線束Lのm冪の正則断面はmに応じて増加し,その次元はヒルベルト多項式と呼ばれるmの多項式P(m)で与えられる(これはLの大域的不変量である).この多項式をベルグマン核の漸近展開に含まれる局所不変量を用て表示した.ここでベルグマン核はLの双対束に含まれるグラウエルト柱状近傍領域の上で考える.この表示はラプラス変換を用いて具体的に与えられ,とくにベルグマン核の展開の係数とLの特性類の関係式を与える.この結果はベルグマン核と指数定理の関連を示唆している.2)ソボレフ・ベルグマン核の指数に関する解析接続.ベルグマン核の不変式論のソボレフ・ベルグマン核への一般化を行った.これにより,より多くの局所不変量を取り出すことが可能となる.まずソボレフ・ベルグマン核を大域的な双正則不変量となるように定義し,その漸近展開の局所不変量を用いた表示を与えた.さらにこの展開はソボレフ指数に関する解析接続が可能であることを示し,とくに展開の係数として現れる普遍定数がソボレフ指数に関する多項式になることを証明した.これは核関数の解析接続の具体的な計算を可能とする重要な事実である.
著者
吉川 晃司 小松 成美
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネスassocie (ISSN:13472844)
巻号頁・発行日
vol.7, no.9, pp.106-112, 2008-04-15

──デビューから今年で24年を迎えた吉川さんの加速度は、衰えることを知らない。昨年8月の両国国技館のライブでも、年末に2日間行われた国立代々木競技場第二体育館でのライブでも、超満員の観衆は熱狂し、吉川さんの歌とパフォーマンスに酔いしれていました。アーティストと楽曲から与えられる衝撃の大きさに、今さらながら言葉を失いました。
著者
大森 美佐
出版者
一般社団法人 日本家政学会家族関係学部会
雑誌
家族関係学 (ISSN:09154752)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.43-55, 2019 (Released:2020-03-24)
参考文献数
17

The purpose of this research is to study the meaning of “romantic love” and its rewriting during changes in individual circumstances among young people in Japan with a high education and permanent work through an analysis of two types of research data related to romantic love, marriage, sex/reproduction and their relationships. Data was collected through five focus-group discussions and semi-structured interviews targeting unmarried men/women who were in their 20s (born between 1987 to 1990) when the research was conducted. Results show that both men and women redefine the meaning of “romantic love” by combining and separating the norms of “love, sex and marriage” based on conditions such as the increase in age, their relationship status and their partners. More specifically the research shows that once both men and women start to become conscious of marriage, including future childbirth, their definition of “romantic love” greatly changes, with the corresponding adjustment to combine and separate love, sex and marriage. Moreover, it was also suggested that this redefinition of “romantic love” is an adaptive strategy taken by individuals during the prolonged relationship period before marriage.

1 0 0 0 憲法

著者
佐藤幸治著
出版者
青林書院
巻号頁・発行日
1995