著者
滝沢 元和 中澤 知洋 北山 哲
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

X線と電波観測により銀河団電波レリックでの粒子加速過程とその物理状態を解明し、理論モデルの構築を行った。特にtoothbrush電波レリックでの粒子加速過程が単純な衝撃波統計加速では説明のつかないことを明らかにした。ALMAを用いて5秒角というこれまでにない空間分解能のSZ効果観測をおこない、RX J1347.5-1145銀河団の超高温成分がX線ピークと異なる場所にあることを明確に示した。低周波電波での宇宙磁場研究についてPASJ誌の招待レビュー論文に対して、銀河団のパートなどに分担執筆者として貢献をした。
著者
佐藤 泉
出版者
日本近代文学会
雑誌
日本近代文学 (ISSN:05493749)
巻号頁・発行日
vol.98, pp.29-43, 2018

<p>夏目漱石は、西洋的近代性の影響下で進行した日本の近代化の中に、歴史の進歩ではなく、歴史の喪失を見出した。その言説は、「日本と西洋」「東洋と西洋」といった地理的な道具立てと、そこから引き出される権力関係を含意するという意味において地政学的な枠組みを備えるものだった。本稿では、まず、漱石の言葉をひとつの源泉とする日本の近代という主題がどのように形成され、歴史の中で変容していったのかを考察し、その限界を明らかにする。同時に、現在の問題意識の中に、この主題を再利用することができないかを展望する。</p>
著者
矢野 順一 岸田 幸三 宇多津 誠一郎
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.145-150, 2008-02-01

日本国内においてGL&V社との技術提携のもと,川之江造機が製作販売を開始したBTFダイリューションシステムは,現在納入実績が8台となっている。いずれも既設ヘッドボックスはそのままに,BTFシステムの導入によりCP化するという改造導入である。改造導入による成果は,CDプロファイルの著しい向上をはじめとした製品品質の向上や製品取り幅を広くする,抄き替え時間を短縮するといった操業効率の向上などに大きく寄与している。ここにその事例を紹介する。<BR>さらに川之江造機はGL&V社と共に,抄紙機技術だけでなくケミカルパルピングにおける世界の最新技術を取り扱っている。世界的にも極めて知名度の高い2つの技術ブランドである旧セレコ,旧インプコ社の製品の中から,省エネを目的に開発されたセレコツイスタークリーナー,及びハイキューノッター,スクリーンをご紹介する。また旧アーカークヴァナ社の蒸解,パルプ洗浄,酸素脱リグニン及び漂白にまで及ぶ技術を取り扱うこととなった。これらの技術の中から今回は特にコンパクトプレス及び,その前後の設備についてご紹介する。
著者
Toshiyasu ARAI
出版者
Japan Association for Philosophy of Science
雑誌
Annals of the Japan Association for Philosophy of Science (ISSN:04530691)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.45-60, 2018 (Released:2018-11-01)
参考文献数
19

In this paper we propose a semantics in which the truth value of a formula is a pair of elements in a complete Boolean algebra. Through the semantics we can unify largely two proofs of cut-eliminability (Hauptsatz) in classical second order logic calculus, one is due to Takahashi-Prawitz and the other by Maehara.
著者
藤井 郁雄
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.406-410, 2001-07-20 (Released:2017-07-11)

免疫学は歴史的にみて, 免疫応答の調節機構や抗原抗体反応の分子認識をその研究対象としてきた。ところが, この15年の間に免疫学は, 有機化学との学際領域に新しい研究分野を展開し始めている。天然酵素が化学反応の遷移状態と結合し安定化することによって触媒機能を発揮しているように, 化学的に安定な遷移状態アナログを抗原として得られる抗体タンパク質は, 遷移状態と結合して触媒機能を獲得するようになる。ヒトやマウスの体内には多種多様な抗体のレパートリーが備わっているので, この方法を使えばテーラーメイドの生体触媒の設計が可能になる。
著者
竹内 俊郎 廣田 哲也 吉崎 悟朗 酒井 清
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.547-555, 1998-12-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
14

循環濾過飼育におけるティラピアの成長と水質変動との関係を調べた。循環濾過において, サンゴ砂を用いなければ, pHが急速に6を下回り, 亜硝酸化成細菌の働きの低下に伴い, アンモニア態窒素が漸増し, その状態が持続されることにより, 硝酸化成細菌の活動も鈍り, 亜硝酸態窒素も蓄積すること, 水質の悪化に伴い, 飼育水の着色が目立つことが明らかになった。一方, サンゴ砂を用いることは, pHの低下を防止でき, 硝化細菌全般の活動の活発化に極めて有効に作用することが判明した。なお, 水質悪化に伴い助長される着色成分 (黄色色素) は, 8時間程度の活性炭による処理により速やかに吸着・除去できた。濾材を比較検討した結果, バイオアルファ, シポラックス, ゼオライトとも, 魚体に影響を及ぼすほどの大きな差は認められなかった。また, 本実験においてアンモニア態窒素の増加による, ティラピアの増重率や日間成長率の低下は認められなかった。なお, 成長と総窒素濃度との間に相関がみられたが, 今後更なる検討が必要である。今回の結果から, ティラピアを循環濾過式水槽で飼育する場合には, アンモニア態窒素濃度81mg/l, または硝酸態窒素濃度616mg/lまでに達する飼育水中 (初期値はそれぞれ0) で70日間ほぼ正常に飼育できることが明らかとなった。
著者
芳本 信子
出版者
学校法人滝川学園 名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.141-149, 1996

近年, 日本の食文化は「飽食」「食の簡便化」「外食化」あるいは「食の外部化」などの流行語に左右されるような食生活の変容がみられる.この現象は, 1960年頃からの産業構造の高度化と家庭の幸せを重視したマイファミリー家族の誕生した時代に由来する.加工技術の進歩によって開発されたインスタント食品, また, 1985年秋から始まった肉類や乳製品の輸入枠の拡大による異食文化との接触やマス・メディアによる多彩な情報によって, 生活はますます豊かになった.そして, これらに深く関わっていると考えられるのが, 象徴的に増加を続ける動物性脂肪である.それは同時に潜在性疾患に続く, 慢性疾患(成人病)の増加を招き, 疫学的調査においても, それらは相関関係にあることが立証されるようになった.厚生省をはじめとする各省は危機感をもって, 日本国民全体の食生活の内容を指導する提言をまとめた.このような日本における食文化の変容の過程に介在する人間(特に母親)が環境と主体的にかかわる生活の中で, いかに食文化変容にかかわっているのかの検討を各種, 文献を用いて試みた.母親を通して, 好ましい食文化が, 各世代ごとに適切に認識されることは, 個人の健康のみならず, 社会全体の健康を約束することになるからである.
著者
勝田 英紀
出版者
近畿大学商経学会
雑誌
商経学叢 = Shokei-gakuso: Journal of Business Studies (ISSN:04502825)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.285-309, 2021-09-30

[要約]本論文では,第1章において,イギリスとフランス,オランダ,ドイツ,イタリア等の大陸ヨーロッパ諸国との関係を概観する。第2章では,ブレクジットを起こした原因を検討する。第3章では,ブレクジットに対する影響を最小限とするためにイギリスが,諸外国との貿易取引をいかに高めるかについて検討する。つまり,イギリスの通商政策である,EUとの FTA,日本との EPA,アメリカ,カナダ,オーストラリアやニュージーランド等の旧大英帝国諸国との FTA さらには TTP への参加について検討する。第4章では,日本の通商外交政策のかなめであり,EU,アメリカとの通商交渉においても非常に重要と考えられているデジタル取引のルールについて,最新の日英 EPA における政策を検討する。第5章では,イギリスがブレクジットによる損失を補填するために早急に必要とされる諸外国との通商交渉について検討する。[Abstract] In this paper, Part 1 gives a general overview of the UK's relationship with France, the Netherlands, Germany, Italy and other countries in Continental Europe. Part 2 considers the causes of Brexit. Part 3 considers how much the UK will need to increase trade with foreign nations to minimize the effect of Brexit. In other words, it will consider the FTA it has with the EU, the EPA it has with Japan, the FTA it has with the USA, Canada, Australia, New Zealand, and other member countries of the former British Empire, and additionally the UK entry into the TTP. Part 4 considers the policies in the latest Japan-UK EPA regarding electronic commerce, a corner stone of Japan’s foreign trade policy, and also thought during trade negotiations with the EU and the USA as well to be extremely important. Part 5 considers the trade negotiations that the UK needs to undertake immediately to compensate for its losses due to Brexit.
著者
田端 純一郎
巻号頁・発行日
vol.31, no.1/2, pp.160-175,
著者
加藤 克 Andrew J. Davis
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.29-42, 2019-06-30 (Released:2019-11-20)
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

日本に西洋生物学が導入された草創期に,トーマス・ブラキストンによって北海道で採集された2点のコジュリンEmberiza yessoensisの標本について,採集者のノートと標本カタログの解析を通じて,(1)失われたと考えられていた標本の再発見,(2)詳細な採集情報が欠落した標本の情報復元を行い,タイプ標本の採集地が函館であることを示した。これらの標本はいずれも種の記載に用いられた標本であり,標本の再発見と採集情報の復元は,日本産コジュリンの分類学にとって重要な情報を提示するものであるとともに,種の分布の歴史的検討や過去の気候に関する情報を提供する可能性を示した。