著者
成田 徹男
出版者
名古屋市立大学
雑誌
名古屋市立大学大学院人間文化研究科人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
no.11, pp.145-154, 2009-06

本稿では、明治期以降の日本語資料において、カタカナの占める位置は、どのようなものか、ということをみるために、手始めとして夏目漱石の『坊ちゃん』を対象とし、漱石が、『坊ちゃん』という作品の表現手段のひとつとして、カタカナをどうつかったか、あるいはどうつかおうとしたかを考える。全体の構成は次のようである。「0.はじめに 1.『坊ちゃん』のカタカナ表記語 2.語種と、表記の字種との関係1-外来語の、表記の字種(以上前稿「その1」)」以下、3.語種と、表記の字種との関係2-和語の、表記の字種4.「笑い」について5.漱石の表記態度6.おわりにが、本稿「その2」の対象部分である。「3.語種と、表記の字種との関係2-和語の、表記の字種」では、和語として分類したカタカナ表記語のうち、「生き物:バッタ、ゴルキ、イナゴ、モモンガー(4語)」について、カタカナ表記されている理由を、読みやすい漢字表記がないこと、などと推測した。また、擬態語や和語の畳語は原則としてカタカナ表記されないこと、擬音語にもひらがな表記の例が多いことを指摘し、笑い声を除く擬音語について、カタカナ表記されている理由を、高い鋭い音が意識されているためではないかと考えた。「4.「笑い」について」では、「アハハハ」は山嵐、「エヘヘヘ」は野だいこ、「ホホホホ」は赤シャツというように、笑い声の特定のカタカナ表記が、主要な登場人物につかわれ、その人物の性格描写と関連していることを指摘した。「5.漱石の表記態度」では、語種を基準とした機械的な文字のつかいわけはしていない、という点と、和語のカタカナ表記は、かなり意図的なものである可能性が高い、という点を指摘した。漱石の表記態度には、現代の日本語話者の表記態度に通じるものがある、と考えられる。
著者
蔡 芢錫
出版者
専修大学経営研究所
雑誌
専修マネジメント・ジャーナル = Senshu management journal (ISSN:21869251)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.13-24, 2015

社会科学に新しいパラダイムを提示した研究として名高いホーソン研究は,幾度もなく厳しい批判にさらされてきている。興味深い点は,これらの諸批判が,大学の入門教科書では,ほとんど取り上げられていないという点である。本研究は,ホーソン研究の諸批判に焦点を絞る。そして,その意義や貢献だけではなく,諸批判も同時に教えることが,学生たちのマネジメントに対する多様なアプローチにつながる可能性を明らかにする。
著者
山本 幸一 川上 敬介 上杉 三郎
出版者
公益社団法人 日本木材保存協会
雑誌
木材保存 (ISSN:02879255)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.166-173, 2007-07-25 (Released:2009-05-22)
参考文献数
20

木や竹の伐採時期と得られた木材・竹材の生物劣化に対する耐久性との間の明確な関係を論じたものはない。伐採の時期と木材・竹材の耐久性を明らかにするために,森林総合研究所千代田試験地苗端のクローンである28年生のスギ(Cryptomeria japonica),及び同一林地に生育している3年生前後のモウソウチク(Phyllostachys heterocycla)を,2003年2月から12月にかけて12回に渡って伐採して試験に供した。伐採は,木・竹の伐採には適さないと言われている十干十二支(干支:えと)の選日の一つである「八専:はっせん」の期間中と,近接する「八専」でない日に,それぞれ行った。伐採後,直ちに玉切りした試験体を,野外に地上10cmの高さで水平に暴露し,カビの発生程度,目視による腐朽の程度,ピロディンによるピンの貫入深さ,キクイムシの被害の有無を3年間にわたって経時的に調べた。その結果,試験体木口面へのカビの発生程度はスギ,モウソウチクともに,伐採された時期とは明確な関係を持つが,「八専」との関係は認められなかった。腐朽に関してもスギ,モウソウチクともに,「八専」との関係は認め難かったが,冬期に伐採された試験体では,それ以外の時期に伐採された試験体に比較して,腐朽の程度が「八専」,「非八専」の何れにおいても高かった。ピンの貫入深さは,スギでは,腐朽度と関連性が見られたが,モウソウチクでは,腐朽度と関連性が見られず,目視による腐朽度は低く評価されたものの,大きな値となった。キクイムシの誘引は,2月伐採と4月伐採の皮付き丸太で見られたが,「八専」と「非八専」の間で,誘引頭数に相違は見られなかった。
著者
楠原 慶子
出版者
東京女子大学
雑誌
東京女子大学紀要論集 (ISSN:04934350)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.p101-113, 1991-09

東京女子大学ホッケー部員14名を対象に,ホッケーの動作特性についてストッピング,ヒッティング動作により検討を行った。その結果,以下のことが明らかとなった。1)本実験では動作の所要時間に関しては,中級・初級未熟練者間に有意な差はなかったが経験年数の増加により所要時間は短縮する傾向を示した。2)中級熟練者の方が未熟練者よりも動作の再現性において優れていた。3)一回動作の所要時間の短縮は,準備動作におけるボール扱い,すなわち調整力の向上と,振り上げ動作におけるコンパクトな腕の動きによって可能であることが示唆された。本実験ではホッケーの動作特性について,ホッケーの基本的技術であるストッピング,ヒッティング動作により検討を行なった。ゲームとは違った状況での実験ではあったが,経験年数による動作の相違を検討したことによりホッケーの打動作の特性が示されたと思われる。また動作特性の検討により,ホッケーが独自の運動様式を持っている競技であることも示された。今後は,被検者数を増し統計的検討を行うとともに,ヒットの動作特性と成功率の関係,また,身体の移動軌跡,重心の移動速度等からのアプローチをはかりホッケーの動作特性についてさらに考察を重ねて行く必要があると思われる。
著者
村澤 由利子
出版者
鳴門教育大学
雑誌
鳴門教育大学研究紀要 鳴門教育大学 編 (ISSN:18807194)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.303-317, 2007

Carl Reinecke composed four piano concertos. It is impossible to obtain these scores in Japan, because the opportunity to perform them is rare worldwide. In December 2005, I was invited and performed the fourth piano concerto in Weisser Saal-Neues Schloss Stuttgart, Germany. Based on this work, I examined and considered to the fourth piano concerto, character of Carl Reineche, and his connection with other musicians, by the rental score and his autobiography obtained from Germany.
著者
松阪 崇久
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究 (ISSN:21894132)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.18-32, 2016 (Released:2016-12-20)

乳幼児にとっての笑いの重要性を疑う者はいないだろうが、保育における笑いとユーモアの意義については、これまであまり議論がおこなわれてこなかった。そこで本稿では、保育実践において楽しい笑いを重視する意義について論じた。また、具体的にどのように乳幼児の笑いとユーモアの発達を援助すれば良いかを考察した。乳幼児の笑いは純粋で楽しいものが多いが、攻撃性を帯びる笑いや秩序を乱す笑いなど、負の側面を持つものもある。さらに、不満やストレスを反映した笑いもあることを考えると、子どもの笑いは多い方が良いとは一概に言えないことになる。これらの負の側面を持つ笑いに対して、保育者はどのように向き合えば良いかについても論じた。これらの議論を通じて、今後さらにどのような実証的な研究が必要かを提示した。