著者
大村 尚 藤井 毅 石川 幸男
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

モンシロチョウの嗅覚を利用した寄主探索や交尾後の行動・嗅受容の変化について調べた。交尾雌は処女雄より匂いに対する反応性が高く、植物模型にキャベツ葉の匂いを賦香すると着陸頻度が増加した。雌の触角嗅覚感受性は交尾前後でほとんど変化しなかったため、交尾雌での行動の鋭敏化は、嗅受容に関する中枢神経系での変化に起因すると推定された。寄主探索をおこなう雌は幼虫糞の匂いを弱く忌避する傾向があり、交尾雌よりも処女雌において忌避反応は顕著であったが、活性物質の特定には至らなかった。雌成虫の遺伝子発現を調べ、触角での発現量は極めて少ないこと、胸部・卵では十数種の遺伝子が交尾後に過剰発現することを明らかにした。
著者
中町 美香子
出版者
史学研究会 (京都大学文学部内)
雑誌
史林 (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.88, no.4, pp.546-575, 2005-07

里内裏は、平安宮内裏焼亡を契機として平安中期に出現した京内(里) の天皇在所であるが、以降、次第に平安宮内裏に取って代わっていく。里内裏の空間構造に関して、その邸宅の周囲三町四方に、大内裏に擬せられる「陣中」という空間が存在することが、先行研究で指摘された。それは里内裏の性格や意義を考察する上で重要な指摘であった。しかし、その空間の成立や変化などについてはまだ検討の余地があると考え、本稿ではその再検討を行った。得られた結論は、里内裏には、平安宮内裏の「陣中」から連なる衛門陣を境界とする邸宅内陣中と、邸宅の外に広がる三町四方の邸宅外陣中の、二つの「陣中」が存在し、邸宅外陣中の確立は一一世紀末であるというものであった。そして、その確立は里内裏の一つの変質点であり、白河朝からの、里内裏本宮化という皇居制度変革の流れの中に位置付けられると考えた。The sato-dairi first appeared during the mid-Heian period when the Heiankyu- dairi (originally the residence of the emperor) burned down and it became a temporary imperial residence in Heiankyo (sato 里). Thereafter, the sato-dairi gradually came to replace the Heiankyu-dairi. Previous studies have pointed out that in regard to the spatial-structure of the sato-dairi there existed a residential area called the jinchu (陣中) that extended out for a distance of three cho (町) in each direction, patterned on the Heiankyu. These findings are an important factor in considering the character and significance of the sato-dairi. However, I believe there has been insufficient consideration given to the formation and changes in the jinchu, and thus I have carried out a re-examination of the jinchu in this study and arrived at the following conclusions. I believe there were two jinchu in the sato- dairi. One jinchu assumed the character of the jinchu in the Heiankyu-dairi, with gate of the residence serving as its border. The second jinchu extended outward 3-cho every direction from the residence. The latter was formed at an end in the eleventh century. I have concluded that its formation was a turning point in the development of the character of the sato-dairi, and it can be judged a part of a series of changes in the imperial palace system instituted from the time of the Emperor Shirakawa.
著者
玄 忠雄
出版者
日経BP
雑誌
日経コンピュータ = Nikkei computer (ISSN:02854619)
巻号頁・発行日
no.1044, pp.6-9, 2021-06-10

ワクチン大規模接種の拡大に向けてITの課題が露呈した。国と地方で接種券番号などの情報共有が進まなかった結果、防衛省の予約サイトは架空予約や誤入力を防げない仕様となった。予約を妨害するサイバー攻撃が容易などのもろさも残る。
著者
饗庭 靖之
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2018, no.641, pp.641_117-641_142, 2018

社会保険料の強制徴収の法的根拠について,最高裁は,国民の生活保障という社会保障の目的に沿って保険原理が修正され,「保険料は,被保険者が保険給付を受け得ることに対する反対給付として徴収される」ことにあるとする。年金の賦課方式は,下の世代が自分の年金給付のために保険料の負担をしないときは,強制徴収の根拠が喪われる。年金制度が老後に必要な生活費を賄うことを目的としていることから,年金二階部分は所得比例の給付に代えて,年金給付額は一律とすべきであり,一律給付としても給付反対給付の関係を満たす。AIJ事件で,多数の厚生年金基金が詐欺被害にあったのは,厚生年金基金は,ガバナンスが弱く,金融知識が不十分な体制で資産運用を行っていたためと考えられ,独立した小規模な年金を設ける制度は適当でなく,3階部分の企業年金を民間の年金保険に代替させていくことを検討していくべきである。
著者
金子 豊
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.442, 2020 (Released:2020-05-13)
参考文献数
4

近年,がん細胞はprogrammed cell death ligand 1(PD-L1)やCD47,MHC class I複合体の1つであるβ2マイクログロブリンなどの“don’t eat me”シグナルに関連する分子を細胞表面に発現することで,マクロファージ(Mφ)による貪食作用から回避する機構を保持していることが報告されている.これらの分子を標的としたがん免疫療法の開発が進められているが,十分な治療効果が得られない例もあり,更なる標的分子の発見が期待されている.CD24はGPIアンカー型タンパク質であり,様々ながん細胞において発現が認められており,特に治療困難な卵巣がんや乳がんで高い発現が報告されている.Siglec-10は腫瘍関連マクロファージ(TAM)に強く発現する細胞表面分子であり,CD24との相互作用により細胞骨格の再構成や炎症抑制に寄与することが報告されている.本稿では,がん細胞がCD24を介してMφのSiglec-10に結合することで,Mφによる貪食作用から回避していることを明らかにしたBarkalらの報告を紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) DeNardo D. G. et al., Nat. Rev. Immunol., 6, 369-382(2019).2) Lee J. H. et al., Oncol. Rep., 22, 1149-1156(2009).3) Crocker P. et al., Nat. Rev. Immunol., 7, 255-266(2007).4) Barkal A. A. et al., Nature, 572, 392-396(2019).
著者
大森房吉
雑誌
震災予防調査会報告
巻号頁・発行日
no.86, 1918
被引用文献数
2

1 0 0 0 古代学研究

出版者
古代学研究会
巻号頁・発行日
no.131, 1995-09
著者
柳原 一夫
出版者
地磁気観測所
雑誌
地磁気観測所要報 (ISSN:13425706)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.105-113, 1965-03

1 0 0 0 OA 禅の思想

著者
鈴木大拙 著
出版者
日本評論社
巻号頁・発行日
1943
著者
堀 勝洋
出版者
The Health Care Science Institute
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.41-56, 1997

本稿では, (1) 高齢者の介護・医療の分野を中心に, 社会保険方式と社会扶助方式の比較を行うとともに, (2) 高齢者の介護・医療を社会扶助方式で行うべきであるという提案の問題点を指摘した。<BR>(1) については, 17の評価基準ごとに理論的および現実的な面で, 社会保険方式と社会扶助方式のどちらが優れているかについて検討した。理論的および現実的の両面で社会保険方式の方が優れているのは,経済システムとの適合性,給付の普遍性・権利性,給付水準の高さ,財源確保の容易さおよびサービスへのアクセス・選択性の面である。上記の両面で社会扶助方式の方が優れているのは,支出統制の容易さおよび財源にかかわる納付上の便宜・事務コストの面である。財源面で保険料と租税のどちらが優れているかおよびサービス供給面で社会保険方式と社会扶助方式のどちらが優れているかは,基本的にその具体的な仕組みに依存する。結論としては社会保険方式の方が総体的に優れているということができ,わが国の社会保障が社会保険方式を中核としているのは理由がある。<BR>(2)については,まず高齢者は介護・医療のリスクが高いため保険になじまないとする主張に対し,全国民を対象とする社会保険では高齢者に対する介護・医療もリスク分散という保険原理が適用できることを明らかにした。また,高齢者の介護・医療を社会扶助方式で行うと,財源の確保が困難になること,財政制約により所得制限の導入や給付水準の引き下げが行われる恐れがあることなどを指摘した。