著者
有森 裕子
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.986, pp.76-79, 1999-04-12

小学生のころ「心臓やぶりの丘」という映画を見たことがある。世界最古のボストンマラソンで優勝した山田敬蔵をモデルにした映画である。誰が主役を演じたかは忘れたが、「心臓やぶりの丘」と呼ばれるボストンの古い石畳みの上り坂を、山田選手を演じた俳優が苦しげに走る表情を、今でも鮮明に覚えている。 山田が1953年の大会で出した記録は2時間18分51秒。
出版者
京都大学新聞社
雑誌
京都大学新聞
巻号頁・発行日
vol.2224, 1998-08-01

7/16・8/1 合併号 (1・2ページは2223号)
著者
宇野 賀津子
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.15-18, 2014

<p> 2013年の7月末に,「低線量放射線を超えて」というテーマで書物を著して<sup>1)</sup>,早,3ヶ月が経った。本を差し上げた福島の方からの「講演がより良くわかった」との声とともに,「元気づけられた」との声はうれしい限りである。また,京大の先輩の名誉教授の方々には,よく書いたね,よく勉強したねと,ほめられた。いつもは厳しい放射線生物学や分子生物学専門の名誉教授からのお言葉に力を得た思いである。また今回,思いがけず原子力を専門とする方や材料学を専門とする方々から,新しい視点で共感したとの声とともによく書かれましたねと,メイルやらお手紙をいただいた。私たちの分野では当たり前のことを書いたので,この反応は予想外であった。本稿では,この本に込めた想いと,この間異分野の研究者との議論を通して私自身が,学び考えたことを紹介する。</p>
著者
崎田 裕子
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.388-391, 2014

<p> 事故後約3年が経過し,自然放射線より高い放射線と向きあって暮らす,という日本で初めての状況に福島の方々は直面しており,リスクコミュニケーションの重要性が高まっている。しかし,事故後の放射線量の違い,除染の進捗による低減状況の違いなども影響し,避難継続地域,帰還準備地域,日常生活を取り戻そうとする地域など,地域の状況は多様化し,リスクとの向き合い方は,一人ひとりがどう決断するかにかかっている。また,個人の決断は勿論ながら,地域性に応じた対応や,除染だけではなく復興やこれからの暮らしや地域づくりなど,地域社会の将来像とも密接につながってきている。</p><p> 科学的知見と社会的知見を総合化して地域による柔軟性を確保しながら,放射線を低減し 環境回復を実現しつつ放射線と暮らす方々を,社会がどう支えてゆくのか。住民自身の視点と,それを支える社会システムづくりの視点の両面から,今とこれからの福島を展望する。</p>
著者
鈴木 正昭 野依 良治
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.534-544, 1982-06-01 (Released:2009-11-13)
参考文献数
77
被引用文献数
5 5

Trialkylsilyl triflates are a new class of super-reagents, which act as efficient agents for silylation of active hydrogen compounds and catalysts of nucleophilic addition and displacement reactions in aprotic media. The synthetic utility is exemplified by a variety of functional group transformations and carbon-carbon bond-forming reactions. Immobilization of the silyl reagent on a resinsulfonic acid is also described.
著者
落合 正仁 藤田 栄一
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.508-517, 1982-06-01 (Released:2009-11-13)
参考文献数
42
被引用文献数
3 4

The reactions of allylsilanes are discussed in terms of the allyl anion equivalents, the allyl cation equivalents, and olefins. The reactions concerning with the latter two were developed recently by the authors. The major discussion is focused on these new type reactions.
著者
熊田 誠
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.462-471, 1982-06-01 (Released:2009-11-13)
参考文献数
177
被引用文献数
4 4

After a brief historical survey of organosilicon chemistry, the latest developments in this area are reviewed. Selected topics are : stereochemistry and mechanisms of nucleophilic substitutions at silicon; asymmetric syntheses of organosilicon compounds; organofluorosilanes and -fluorosilicates; utilization of the “disilane fraction” produced by the direct synthesis of methylchlorosilanes; organopolysilanes; silyl metal compounds; silicon-containing small ring systems; divalent silicon species; double-bonded silicon species; and silicon in organic synthesis.
著者
福地 健太郎 伊藤 正佳
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2021, pp.70-76, 2021-08-23

コンピュータゲーム開発において、キャラクターの見た目や動き、またその動かし方やカメラモーションなどのいわゆる3C (Character, Controls, Camera)にまつわるパラメタを初期段階で確定させることはゲーム体験の質を向上させるために重要とされている。しかしそれらパラメタの調整でゲーム体験が大きく変化することを簡単に体験できる教材は少ない。そこで2Dジャンプゲームを対象とパラメタ調整に主眼を置いた実験教材「JumpLab」を開発した。
著者
北 明美
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.38-61, 2014

「子ども手当」は日本で初めての所得制限をもたない普遍主義的な児童手当制度であった。そこでは旧「児童手当」がもっていた多くの矛盾が解消される方向にむかっていたが,そのことの意義が理解されないまま「子ども手当」は終焉をむかえた。だが,所得制限が復活し,次の段階として年少扶養控除まで復活することは,日本社会におけるジェンダー・バイアスの強化と低所得者に不利な国民の分断につながる。また,児童手当と育児サービスの二者択一の対立関係を前提し,それらの給付を相殺させる政策は,子育て支援の費用の単なる圧縮につながりかねない。真の対立は税に基づく公的保育と普遍主義的な児童手当の組み合わせか,準市場化される保育サービスを育児保険に基づくクーポンで購入するシステムかという選択にある。日本の社会政策とフェミニズムは後者の方向にむかいつつあるかにみえるが,税に基づく普遍主義的な給付という社会手当の意義を無視すべきではない。
著者
橋本 和明
出版者
京都産業大学通信制大学院経済学研究会
雑誌
京都産業大学経済学レビュー (ISSN:21880697)
巻号頁・発行日
no.1, pp.105-144, 2014-03

2006~2011 年度の中核市の生活保護費(扶助費)及び児童扶養手当(扶助費)の地方交付税の算入不足は、生活保護費は2006 年度に64 億円余りに達したが、2011 年度には逆に26億円余りの算入過大となり、児童扶養手当は2006 年度に48 億円余りに達したが、2009 年度以降算入不足は解消され、2011 年度には9億円余りの算入過大となった。しかし、各団体間の算入過不足の格差は解消されておらず、その要因を分析した結果、生活保護費は、各扶助費の費目毎に設定された扶助別単価が実単価と乖離するほど算入過不足が発生することが実証され、児童扶養手当は、密度補正に用いる単価が本来の地方負担分の単価よりも低く設定されていることで支給者数の多寡が適切に反映されないとともに、所得制限による一部支給者と全部支給者の差による団体間の単価差も格差の要因であることが判明した。地方交付税は地方公共団体の一般財源であり、各団体によりその多寡が生ずるのはやむを得ないことであるが、生活保護費や児童扶養手当のようにその事務執行に裁量の余地が乏しいものは、可能な限り算入過不足が発生しないように算定がなされるべきである。
著者
蛭間 基夫 鈴木 浩
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.E0728, 2008

【はじめに】高齢者を対象とした住宅改善支援は介護保険によって全国統一した仕組みで実施されている.ただし,一制度のみでは高齢者の多様なニーズに十分対応しきれない例も少なくない.このような例を補完するには自治体独自の支援制度の整備・拡充が期待される.しかし,このような制度の実態調査はこれまで大規模自治体や東京都特別区あるいは制度の利用実績のある自治体に限定され,地方都市を対象としたものは少ない.本報告の目的は高齢者の住宅改善に対して質の高いサービス提供のために有効な自治体独自の住宅改善費用支援制度の実態を明らかにし,今後の活用を促進する一助とすることである.<BR>【方法】調査対象は東北6県内全63市である(02年度時点).調査は質問紙によるアンケート票を郵送にて配布・回収している.期間は02年8月から2ヶ月で,回収率81.0%である.<BR>【結果】(1)高齢者や障害者を対象とした独自の費用支援制度を整備しているのは42市(82.0%)で,これら42市で費用支援制度の合計は77制度(補助制度46制度,融資制度31制度)である.費用の補助制度を整備しているのは37市(72.5%),融資制度は24市(47.1%)である.両制度を同時に整備しているのは19市(37.3%)である.独自制度が整備されてないのは9市(17.6%)で,このうち整備していた制度を中止した・中止予定とする3市(5.9%)が含まれている.(2)制度の実態として対象者規定では心身機能低下を有する者とした制度が50制度(64.9%)で,反対に低下のない者とした制度は27制度(35.1%)である.(3)制度利用の制限規定としては46助成制度では障害等級(76.1%),回数制限(76.1%),所得制限(73.1%),介護保険との併用不可(39.1%)が上位で,31融資制度では障害等級(45.2%),家族形態(38.7%),納税完済(38.7%)である.(4)制度の利用実態について助成制度の助成限度額は「25万円未満」が23制度(50.0%)で最多である.また,過去3年間の平均利用件数は「1-9件」が最多で18制度(43.9%)である.過去3年間の1件当たりの平均助成額は99年度58.8万円,00年度49.5万円,01年度31.2万円である.<BR>【考察】東北6県内市部の支援制度の整備状況は先行研究で報告されている大都市部の実態と比較すると低い傾向を示し,経済基盤の大きい自治体ほど制度化しやすい傾向を示唆している.また,融資制度が制度として整備されているが,経済能力が不安定な者では利用が難しい内容となっている.助成制度であれば経済能力が不安定な者であっても利用できるが,実際の利用率は低く,年々助成額も低下傾向にある.本報告は調査時期から5年以上経過し,その間介護保険も改正されている.従って,現状を反映した結果とは位置づけられないが,今後の実態を明らかにする上で比較検討の対象になると考えられる.<BR>【まとめ】東北全市を対象として住宅改善費用支援制度について調査を行った.制度は整備されているが利用実績が少ないことが明らかになった.
著者
小沢 文幸 山本 明夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.5, pp.773-784, 1987-05-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
61
被引用文献数
5

ジオルガノパラジウム錯体(PdRR'L2.R,R'=アルキル基,アリール基などの有機基.L=第三級ホスフィン配位子)の還元的脱離反応は,パラジウム錯体触媒を用いる有機合成反応の重要な素反応の一つである。本研究では,トランス,および,シス構造をもつ,一連のジメチル-,ジエチル-,メチル(アリール)-,および,ジアリールパラジウム(II)錯体を,立体選択的に合成単離した。さらに,合成した錯体の還元的脱離反応,ならびに,有機ヨウ化物との反応について,系統的な機構論的研究を行ない,反応に対する,錯体の立体配置,有機基,,および,配位子の影響を明らかにした。
著者
稲木 匠子 丘村 煕 森 敏裕
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.82-85, 1990-01-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
9
被引用文献数
1

私製の固形造影剤を用いbolusの違いによる嚥下動態の検討を試みた. 固形造影剤は潜在的および軽微な嚥下異常の検出に有効であると考えられた. 症例を提示しその有用性を報告した.
著者
阿部 隆一
出版者
慶應義塾大学附属研究所斯道文庫
雑誌
斯道文庫論集 (ISSN:05597927)
巻号頁・発行日
no.5, pp.345-379, 1967-07

沿革と現状法宝蔵善本略解題
著者
矢野 裕基 鈴木 悠子 安本 和正 原田 和彦 玉内 登志雄
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.68, 2008

<B>〈緒言〉</B>近年地方の医療を取り巻く問題に患者の医療費負担増・地域間格差の拡大などがある。今回,医療福祉制度面での地域間格差を検証することと医療ソーシャルワーカー(以下,MSW)や病院が用いる制度改善の最も有効な手段を検討することを目的に,全国の市町村が実施する重度心身障害者医療費助成制度(以下,助成制度)の現状とその改善手段についてのアンケート調査を2007年11月に実施した。その結果,今後検討するべき課題が明確となったので報告する。<BR><B>〈調査方法〉</B>1,対象 全国120の厚生連病院MSW 2,調査方法 郵送によるアンケート調査 設問(1)から(7)助成制度の内容,設問(8)から(13)制度改善の手段<BR><B>〈結果〉</B>76病院(病院所在地14町56市)より回答(回収率63%)<BR>(1)対象障害の範囲<BR> 1)身体障害 「2級まで対象」 23(33%),「3級まで対象」 38(54%),「心臓や肺,腎臓などの内部障害について対象拡大あり」 20(29%) 2)知的障害 「A判定(IQ35以下)」 38(54%) 3)複合障害その他の対象 「対象範囲あり」 23(32%)<BR>(2)助成方法 「現物給付」 45(64%)<BR>(3)所得制限 「あり」 53(76%)<BR>(4)年齢制限 「あり」 6(9%)<BR>(5)自己負担 「あり」 36(52%)<BR>(6)助成の時効 「あり」 40(63%)〈BR> 時効期限 最短6ヶ月 1 最長5年 4 最多2年 9<BR>(7)助成制度の問題 「あり」 40(68%)<BR> 助成制度のどこが問題か(複数回答)<BR> 「対象障害の範囲」 28(34%)<BR> 「所得制限」 18(22%)<BR> 「助成方法」 17(21%)<BR>(8)MSWの問題解決の実践 「実践あり」 26(63%)<BR> 実際にMSWが多く用いた手段(複数回答)<BR> 「行政担当との直接交渉」 18(32%)<BR> 「個別ケース援助」 17(30%)<BR>(9)MSWの採る最も有効と思う手段<BR> 「地域の患者団体との連携」 9(17%)<BR> 「行政担当との直接交渉」 8(15%)<BR> 「地域の福祉関係者との連携」 7(13%)<BR>(10)病院の問題解決の実践 「実践あり」 8(11%)<BR> 実際に病院が行った手段(複数回答)<BR> 「行政機関への直接交渉」 5(41%)<BR>(11)病院の採る最も有効と思う手段<BR> 「地域の医療関係団体との連携」 21(39%)<BR> 「行政機関への直接交渉」 11(20%)<BR>(12)各県MSW協会の実践 「実践あり」 4(6%)<BR>(13)各県MSW協会の採る最も有効と思う手段<BR> 「制度改正の提言」 19(37%)<BR><B>〈考察〉</B>今回の結果から,全国の助成制度に地域間格差が存在することは明らかである。制度に問題があると感じているMSWも多く,何らかの制度改善に向けたアクションが必要である。しかし,実際にはMSWや病院は制度を改善するために最も有効と思う手段を実践できていない。何故なのか,その理由を探る必要がある。実践を難しくしている要素を明らかにし,今後は地域の患者団体や医療・福祉の関係団体と連携を強化し,共に制度改善を図ることが必要である。各県MSW協会には制度改正の提言など目に見える活動が求められている。各地域の制度はそれぞれの地域の病院や団体が行動を起こさなければ改善は実現しないものと考える。<BR>
著者
田中 千枝子 本名 靖
出版者
日本福祉大学
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
no.121, pp.43-54, 2009-09

医療財資源の効率化を目的にした, 第五次医療法改正の目玉である 4 疾患 5 事業制度が始まった. 各疾患や事業ごとの地域連携を促進する仕組みである. それに先駆けて, HIV/AIDS 医療体制でも整備事業が行われている. これは HIV/AIDS に関するブロック・中核の各拠点病院間また拠点・非拠点病院間の地域医療連携体制づくりの試みである. そこでは医療ソーシャルワーカーには, ミクロレベルの個別事例の直接支援のための連携のみならず, 組織や地域に介入するメゾからマクロレベルの連携行動が必要とされる. しかし従来病院に所属している医療ソーシャルワーカーはミクロレベルへの直接介入のサービスマネジメントにとどまり, 組織や地域に展開するメゾ・マクロレベルの連携行動としてのソーシャルワークを, 通常業務として行っているとは言い難い状況にあるのではないかと考えられた.そこで HIV/AIDS に対する医療ソーシャルワーカーの地域連携活動についての認識とその実態について, 全国の全拠点病院 (368 名), 非拠点病院 (800 名) のソーシャルワーカーに対して量的調査を平成 20 年 12 月から 21 年 1 月にかけておこなった. 回収率は前者 50.8%で, 後者で 43.8%であった. 調査の結果, 回答を行った拠点病院の 75%のソーシャルワーカーは HIV/AIDS 事例体験を有しており, 非拠点病院では 15%であった. 対象の集団は, 専門職団体である日本医療社会事業協会会員とほぼ同じ基本属性を持つ集団であり, 性別で 8 割弱が女性, 8 割弱が社会福祉士資格をもち, 拠点病院ではさらに精神保健福祉士や介護支援専門員資格も 3〜4 割程度と有意に多く持っていた. しかし拠点病院のソーシャルワーカーの経験年数は非拠点病院よりも有意に少なく, 比較的若年層が多かった.HIV/AIDS 拠点および有事例者集団の連携行動の特徴は, メゾのチーム・組織レベルでの認知や理解は得られており, また経験を積んでいることによって, 外部との連絡を自分なりに吟味して動き出すという専門職としての自律性を有していることが分かった. また事例経験のないソーシャルワーカーほど, 他組織との連携の必要を強調しているが, 経験を積めば積むほど, 拠点病院として他のスタッフや組織的な認知が深まっていると思われる状況では, むやみに他と連携するような行動はとらず, 状況をアセスメントした上で, 必要な連携の形を吟味していることが推察された.さらに有事例者のみに対して, 保健師や地域権利擁護専門員を対象に信頼性妥当性があるとされる筒井の 4 領域 15 項目にわたる地域連携活動尺度を援用した. その結果 HIV/AIDS へのメゾレベルへの介入行動としての連携活動は, 地域に軸足を置くコミュニティワーカーとしての保健師や, 権利擁護専門員とは異なる連携の型を持っていることが考えられた. それは病院内に軸足を置きながら, 組織の人間として地域や組織をアセスメントし, 組織の代表として地域と繋がっていこうとする行動と関連があるように考えられた. この点の具体的な確認作業が今後の課題であると考える.
著者
菅原 享 飯田 武揚 河野 淳夫 宮下 晃 三田村 孝
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.4, pp.719-724, 1987-04-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
22
被引用文献数
1

cis-ジクロロジアンミン白金(II)錯体(以下cis-DDPと略記する)には制がん作用があり,現在臨床治療に広く使用されている.このcis-DDPは生体内において特異的にがん細胞のDNAと結合し,そのDNAの複製を阻害することが知られている。このようなことから,白金錯体の配位子を種々変えた新規の白金錯体の研究が数多くなされているが,担体配位子に硫黄含有配位子を用いた白金錯体についての研究は,ほとんど報告されていない。そこで担体配位子に硫黄含有配位子を用いた白金錯体であるジクロロ(2-アミノエチルスルホニル)白金(II)錯体を薪規に合成し,IRおよび13C-NMRスペクトル,元素分析,原子吸光分析などでその構造を解析し,この白金錯体とDNA構成ヌクレオシドとの相互作用をUV差スペクドルおよび解離塩化物イオン濃度を測定して研究した。その結果,ジクロロ(2-アミノエチルスルホニル)白金(II)錯体とDNA構成ヌクレオシドのUV差スペクトルには等吸収点が観測され,この系でのUV差スペクトルに関与する化学種が二成分存在し,それらが平衡をなしていることが示唆された。また,DNA構成ヌクレオシド存在下で,この白金錯体から解離する解離塩化物イオン濃度を測定したところ,白金錯体1molに対して塩化物イオンが2mol相当解離していることが明らかになり,この白金錯体は塩化物イオンを解離し,DNA構成ヌクレオシドと錯形成を行なっていることがわかった。さらに合成した白金錯体はアドリアマイシン耐性白血病細胞に対して特異的ながん細胞増殖抑制・障害性を示すことがわかった。