著者
田畑 恒平 西条 昇 木内 英太 植田 康孝
出版者
江戸川大学
雑誌
江戸川大学紀要 = Bulletin of Edogawa University
巻号頁・発行日
no.26, pp.291-300, 2016-03

クラウドとビッグデータ,人工知能などの情報通信技術(ICT)の発達によって今後必要となる能力や人材が今までとは大きく異なってくる。多くの人がそう感じ始めているが,問題であるのは,その動きがかなり急速なことである。必要とされる能力が急ピッチに変化するならば,その変化に応じた能力開発も急ピッチで行っていく必要がある。もちろん大学教育の内容も大きく変革していかなければならない。急速な時代変化に合わせた大学教育の変革の必要性を感じた植田・木内・西条・田畑[2015]は,「エンタインメント」と「インフォメーション」を融合させた上位レイヤー概念として,「インフォテインメント(Infotainnment)」を定義した。本学マス・コミュニケーション学科「エンタテインメント」コースにおいては,「ハロウィンパーティ」の企画および実際に自らが仮装して歌や踊りなどのパフォーマンスを行う「エンタテインメント」の要素と,イベントをライブストリーミングで配信するという「インフォメーション」の要素を融合させた教育を2015 年10 月30 日に実践した。動画配信サービスは,ユーザーが投稿した動画を共有する「動画共有」と,ユーザーがライブ放送を共有できる「ライブストリーミング」の2 つから成るが,前期(2015 年5 月8 日)に行った動画共有サービス「Vine」による実習に加えて,後期でライブストリーミングによる実習も付加することにより,動画配信サービスに対する知識とスキルを学生は習得してくれたことを確認できたため,本稿に事例紹介する。LINE がスマホで動画を配信す「LINE ライブ」は,2015 年12 月10 日に始まったばかりのサービスであるが,視聴者は対話アプリ(日本国内は5,800 万ユーザー)と別の専用アプリをダウンロードすることにより,公演中のコンサートをスマートフォンでどこでも見ることが可能である。ドワンゴが手掛ける「ニコニコ生放送」サービスに続く生中継サービスが登場することにより,テレビに代替するサービスになると注目されていたが,インディーズアイドル「原宿駅前パーティーズ」による2015 年12 月24 日限定のクリスマス公演は128 万8,000 視聴という驚異的な数字を記録し実証する形になった。また,テイラー・スウィフトやアデルが世界ツアーの映像を「アップル・ミュージック」でコンサート映像を独占配信したり,リアーナが世界ツアーの映像をサムソン「ミルクミュージック」で,コールドプレイがロサンゼルスで行ったコンサート映像をJay-Z「タイダル」で配信したりするなど,人気アーティストが積極的に活用するようになっている。「ライブストリーミング」は,テレビ番組では視聴者が少なくて放送できないようなリアルタイムの映像を届けることができるため,テレビ番組に飽き足らず「テレビ離れ」を進めた若者世代が視聴するメディアに位置づけた結果,テレビの求心性は解体しその啓蒙機能は著しく減衰,レガシー化されつつある。更に,レッド・ブルやコカ・コーラなどの有力広告主が「ライブストリーミング」に対してテレビを代替するメディアとしての有効性と成長性に期待し,この流れに拍車を掛けている。このようにライブ配信は,ライブアイドルにとって不可欠のサービスになっており,芸能事務所や音楽関係を志す学生が多いエンタテインメントコースにおいては習得することが求められる重要技法の一つに位置づけられる。
著者
十川 浩
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.85, no.9, pp.588-594, 1990-09-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
48
被引用文献数
2 2

ビールと人類との係り合いの中からビールの機能性を論じるとき, その多くは致酔性に関連したものといえる。本稿では食品の機能性に準じて幅広い見地から解説していただいた。三次機能 (生理活性, 生体調節機能) の解明については, 今後の研究の発展に期待したい。
著者
遠藤 敏夫 額田 彰 松岡 聡
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.169-179, 2011-10-05

2010 年 11 月に稼働開始した TSUBAME 2.0 スーパコンピュータは,Intel プロセッサに加え 4,000 以上の NVIDIA GPU を備えるペタスケールのヘテロ型システムである.この TSUBAME 2.0 における Linpack ベンチマークの実行について報告する.本システムは 2CPU と 3GPU を備えた計算ノードを約 1,400 台持ち,それらはフルバイセクションのファットツリー構造を持つ Dual-Rail QDR InfiniBand ネットワークにより接続される.理論演算性能は TSUBAME 1.0 の約 30 倍となる 2.4PFlops であり,それを TSUBAME 1.0 とほぼ同じ規模の電力で実現している.Linpack ベンチマークのコード改良およびチューニングを GPU を用いた大規模システムの特性に合わせて行い,実行速度として 1.192PFlops を実現した.この結果は日本のスパコンとしては初めて PFlops を超えるものであり,Top500 スパコンランキングに 4 位にランクされた.さらに電力性能比は 958MFlops/W であり,Green500 ランキングにおいて the Greenest Production Supercomputer in the World 賞を獲得した.
著者
大平 航己 鶴田 佳子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.338-345, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
43
被引用文献数
1

デンマーク計画法における農村地域の土地利用制度について明らかにし、2017年6月に抜本的改正が行われたデンマーク計画法の改正内容について把握する。デンマークの都市地域、夏季住宅地域以外の土地が農村地域であり、農村地域での開発には開発許可が必要である。2017年および2019年計画法の改正により、農村地域における開発規制の緩和とコンバージョンビレッジが導入された。コンバージョンビレッジは、農村地域に魅力的な居住地を作ることを目的としている。コンバージョンビレッジは、開発を期待する場所ではなく、持続可能な集落を目指しているため、開発を可能にするためのローカルプランとは異なる新たな制度であるといえる。
著者
越野 幹人
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.21-25, 2010-01-05 (Released:2020-01-18)
参考文献数
27

近年,単層のグラファイトであるグラフェンが実験的に作成されその性質が大きな注目を集めている.本稿ではグラフェンの軌道反磁性に関する最近の研究を紹介する.ギャップの無いバンド構造に起因して,グラフェンの反磁化率は通常の物質と比較して非常に異なり,それにより1原子層からなる物質にも関わらず巨視的な力を生ずることを見る.
著者
国枝 智樹 伊吹 勇亮
出版者
日本広報学会
雑誌
広報研究 (ISSN:13431390)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.74-86, 2021 (Released:2021-06-10)

危機管理広報に関する研究は日本でも行われてきたが、体系的な理論の構築は進んでいない。本論文 では危機管理広報の理論について文献調査を行い抽出した 13 の理論をクライシス・コミュニケーション、 リスク・コミュニケーション、およびイシュー・マネジメントの 3 領域に分類し、理論の特徴や発展の経緯、 関係について整理し、日本における応用可能性、特に研究や実務にとっての意義について考察する。
出版者
日経BP
雑誌
日経ニューメディア = Nikkei new media (ISSN:02885026)
巻号頁・発行日
no.1747, pp.3-4, 2021-04-05

動画配信サービス「U-NEXT」を展開するU-NEXTは2021年3月30日に戦略発表会を開催し、米ワーナーメディアと独占パートナーシップ契約をSVODサービスにおいて締結したと発表した。 今回の契約の対象となるのは、ワーナーメディア傘下のプレミアムチャンネル「HBO」と…
著者
金 玉英
出版者
現代日本語研究会
雑誌
ことば (ISSN:03894878)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.71-88, 2020-12-31 (Released:2020-12-31)
参考文献数
26

現代日本語行為要求表現の分類と枠組みにおいて、従来の研究では「行為者」「決定権者」「受益者」という三つの要素を軸にしている。本稿では「行為者」という基準は枠組みを捉えるに当たって(分類全体を左右するような)決定的な意味を持たないこと、「受益者」という概念は有効ではあるが、有効範囲が先行研究の捉え方より狭く、意味を持つのは「依頼」だけであり、ローカルなものに過ぎないことを論じる。そして、各機能(特に「依頼」と「勧め」)の定義を捉え直し、「聞き手意志配慮」「共同意志形成」という観点を取り入れ、各機能の定義に基づいた新しい枠組みを提案する。「命令」は話し手が聞き手の意志を配慮せず、直接的・積極的に行為を要求する「-配慮」の行為要求表現であり、「依頼」「勧め」「勧誘」はどちらも聞き手意志を配慮した「+配慮」の行為要求表現であるが、それぞれ「配慮の仕方」が異なることを主張する。
著者
近江 郁子 中山 徹
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.330-337, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
5
被引用文献数
1

郊外では農家が減少しています。 一方、郊外住宅地の住民は農業に関心を持っている人がいます。これらの市民を農業に参加させる方法を検討する必要があります。 そのためには、初期投資、栽培訓練、農地の状況、販売状況など、さまざまな要素を考慮しなくてはいけません。市民が一人で農業を始めるのは難しいことです。 そこで私たちは市民農業団体を設立しました。 5年間の経験と検証によって、さまざまな条件がわかってきました。 また、町役場や地元の農家との関係の持ち方もわかりました。 この組織の運営が安定すると、メンバーは独自の農業技術を発展させ始めました。 各メンバーは農業に関連して様々な目的を持っています。 このように私たちは市民農業団体のさまざまな役割や問題が明らかになりました。 これは、組織の活動の記録と成果です。
著者
鷹野 美紀
出版者
日経BP社 ; 1985-
雑誌
日経マネー (ISSN:09119361)
巻号頁・発行日
no.393, pp.86-89, 2015-04

年末に急騰した日本株ですが、QUOカードやギフトカード、食べ物などの魅力的な優待を用意する低位株はまだまだあります。今回は5万円以下で買え、なおかつ将来の値上がりも期待できる銘柄を桐谷さんに選んでもらいました。
著者
畠山 勝義
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.85, no.7, pp.1072-1078, 1996-07-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
5
被引用文献数
2 2

短腸症候群およびblind loop syndromeは外科的処置によって生ずることが多い吸収不良症候群の1つである.短腸症候群は原因疾患のため余儀なく施行された小腸広範切除の結果生ずるものがほとんどで,各病期にその病態生理の特徴があり,その病態に適した管理が必要となる.一方, blind loop syndromeの本態は小腸内細菌叢の異常増殖によることから,近年ではbacterial overgrowth syndromeとして包括されており,この病態について解説したい.
著者
清水 禎文
出版者
教育思想史学会
雑誌
近代教育フォーラム (ISSN:09196560)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.143-149, 2004

近代とは、認識論に基因する新たな人間像の提示、またその人間像に基づく人間的諸権利の発見及びその制度化への努力であった。それは本質的には、人間に自由をもたらす解放の理念であった。しかし、当初の理念が希薄化し、官僚化した制度のみがひたすら合理化へと向かうなかで、最終的には意味の失われた「鉄の檻」に至るというアイロニーをもたらした。新たな認識論上の革命でもないかぎり、そこから逃れることはできない。こうした状況のなかにあって、実践的な課題としては、認知のみならず身体に刻み込まれる習熟と模倣、あるいは関係性と自己創出は、新たな教育を切りひらく有効な手段となりうるであろう。