著者
荒木 尚
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1011-1023, 2021-09-10

Point・身体的虐待による頭部外傷を総称してabusive head trauma(AHT)と呼ぶ.・乳幼児の急性硬膜下血腫を認める場合にはAHTを鑑別する必要がある.・AHTの病態にはけいれんが強く関与し,超急性期から抗けいれん薬投与が必要である.・AHTの診断は脳神経外科をはじめ,複数診療科・多職種によるチームにより行われることが望ましい.
著者
山田 滋
出版者
日経BP社
雑誌
日経ヘルスケア = Nikkei healthcare : 医療・介護の経営情報 (ISSN:18815707)
巻号頁・発行日
no.379, pp.89-91, 2021-05

(株)安全な介護 代表 山田 滋Q1なぜ、こうした不祥事が発生するのか?Q2利用者の写真のSNS投稿にはどんな罰則があるか? 5月のある日、特別養護老人ホームA苑に併設する通所介護事業所では、認知症の利用者5人と職員数人が近くの公園に散歩に出かけまし…
著者
尾之上 さくら 橋本 修一 今井 敏夫 丹羽 源男
出版者
Japanese Association for Oral Biology
雑誌
歯科基礎医学会雑誌 (ISSN:03850137)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.570-585, 1999-12-20 (Released:2010-06-11)
参考文献数
41
被引用文献数
2

アルカリ性ホスファターゼ (ALP) は, 細胞表面のグリコシルホスファチジルイノシトール (GPI) アンカー型タンパク質の一つであり, 骨芽細胞の石灰化と密接に関わっている。本研究では骨芽細胞様細胞株MC3 T3-E1のALP活性量におよぼす培養環境の影響を明らかにするため, この細胞をさまざまな播種密度と継代頻度で培養した。MC3T3-E1細胞を6, 500cells/cmcm2の播種密度で週1回継代培養すると, 130日以上たってもこの細胞 (W1/HD) は高いALP活性と石灰化能を保持していた。しかし1, 300cells/cmcm2の播種密度で, 週2回継代培養すると, この細胞 (W2/LD, W2/HD-LD) は培養50日以内にもとの細胞のもつALP活性と石灰化能のいずれも90%以上を失ってしまっていた。これら形質変化した細胞を130日間培養すると, ALP活性とコンフルエント時の敷石状形態を失ったW2/LDやW2/HD-LD細胞の細胞集団倍加時間とタンパク質生成能はいずれもW1/HD細胞の場合に比べてそれぞれ有意に短くまた低くなった。一方, W2/LDとW2/HD-LD細胞ではもう一つのGPI-アンカー型タンパク質である5'-ヌクレオチダーゼの活性もALP活性の場合と同様にW1/HD細胞の酵素活性の1/10以下にまで減少していた。しかしW2/LDやW2/HD-LD細胞の酸性ホスファターゼとβ-グルクロニダーゼ活性はW1/HD細胞に比べ逆に有意に増加していた。培養環境により誘導されるこれら細胞の形質変化は, 培養した培地中の生物学的因子や電離放射線の照射に起因するものではなかった。これらの結果から, MC3T3-E1細胞は高頻度・低密度の播種による継代培養を行うと, MC3T3-E1細胞の骨芽細胞様の特性からGPI-アンカー型酵素活性と石灰化能が特異的に失われることが示唆された。
著者
金地 泰典
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.485-490, 2020 (Released:2020-10-20)
参考文献数
22

血小板は止血機構や血栓形成だけでなく,炎症や免疫応答においても重要な役割を果たしている.血小板は骨髄巨核球から産生され,寿命を終えた血小板や活性化を受けた血小板は脾臓や肝臓で処理される.我々は抗GPIbα抗体による血小板減少マウスモデルを用いて,血小板処理機構や肝でのTPO産生に及ぼす影響等の解析を行ってきた.また同様のマウスモデルを用いて,幹細胞のマーカーであるSca-1と単球系のマーカーであるF4/80を発現するユニークな巨核球が誘導されることを見いだした.このようなマーカーを持つ巨核球はCMP→MEPを介する従来の分化機序をバイパスし,巨核球を直接産生する造血幹細胞(MK-biased HSC)によるものと考えられた.またその後の研究で,同様の機序がウィルス感染など様々な炎症性ストレスでも誘導されることが分かった.この総説では,ストレス下における造血幹細胞からの血小板産生機構に関する最近の知見及び我々の研究結果を紹介するとともに,今後期待される研究の展望について述べたい.
著者
井部 正之
出版者
日経BP社
雑誌
日経エコロジー (ISSN:13449001)
巻号頁・発行日
no.108, pp.82-85, 2008-06

4月16日、自民、公明両党はアスベスト被害者を「救済」する石綿健康被害救済法(石綿新法)を巡り、与党アスベスト対策プロジェクトチーム(以下、与党PT、座長・佐田玄一郎衆議院議員)の会合を開き、改正案の検討を開始した。その会合の2時間ほど前、東京・霞ヶ関の環境省記者クラブで、アスベスト被害者の遺族による記者会見が開かれていた。
著者
櫻井 靖久
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.25-32, 2010-03-31 (Released:2011-05-11)
参考文献数
34
被引用文献数
7 3

これまでに明らかにされた病巣局在の結果に基づいて,孤立性失読・失書の新しい神経学的分類を提唱した。従来の分類との違いは以下の通りである。(1) 非古典型純粋失読は紡錘状回型と後頭葉後下部型に分けられる。紡錘状回型は漢字に著明な純粋失読,より一般的には単語の純粋失読,後頭葉後下部型は仮名の純粋失読,より一般的には文字の純粋失読と特徴づけられる。(2) 側頭葉後下部型の失読失書の病巣は紡錘状回中部・下側頭回(37 野)である。これより内側の病変(37 野)で紡錘状回型純粋失読が起こり,この背外側の病変(中側頭回後部,21/37 野)で漢字の純粋失書が起こる。(3) 角回性失読失書の病巣は角回だけでなくその後方の外側後頭回を含む。角回のみの病変では純粋失書になる。
著者
原 匠一郎 渡邊 裕司 清水 昭信
雑誌
第82回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, no.1, pp.255-256, 2020-02-20

本研究では、組み合わせ最適化問題の1つである巡回セールスマン問題(TSP)を、物理的な現象を用いて解く方法を提案する。物理的な現象そのものを用いることで計算量を減らし、より短時間で解を得られると期待できる。本手法では、各2都市間を抵抗のある導線ですべて繋げたモデルを考える。このモデルに対して垂直に一様な交番磁界をかけると、各導線に渦電流が流れる。この渦電流の値を測定し、測定した値を用いてTSPの解を得ようとするのが、本研究の狙いである。本研究では、TSPで与えられている移動コストに加えて、提案する物理モデルによって測定された渦電流の値を用いることで、Greedy法の改良を図り、提案手法が有効に働くことを示す。
著者
村上 ひとみ
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.2, pp.95-106, 1992

エルジンジャン地震は3月13日現地時間の19時18分にトルコ東部で発生した。USGS発表の表面波マグニチュードは6.9、震央はエルジンジャン市から南東約4kmの地点である。筆者は3月27日-4月9日の間、東京工業大学の本蔵義守氏、神戸大学の高田至郎氏と共に現地調査に赴いた。ここでは被害の概要と緊急対策について報告する。なお、地震学的報告は本蔵(1992)に、土木構造物の被害については高田・他(1992)に詳しい。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1671, pp.134-137, 2012-12-17

社会保障論、医療経済学…わけても公的年金が専門の学習院大学教授、鈴木をよく知る人は一様にこう思ったに違いない。 ごく最近、自著などで「年金格差は財政的『幼児虐待』だ」と言い切り、自民・公明両党が自らの政権時代の2004年に実施した「(公的年金の)100年安心プラン」は既に崩壊した、とぶち上げたからだ。
著者
室田 誠逸
出版者
日本炎症・再生医学会
雑誌
炎症 (ISSN:03894290)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.103-105, 2000-03-29 (Released:2010-04-12)
著者
豊嶋 基暢
出版者
日経BP社
雑誌
日経コミュニケーション (ISSN:09107215)
巻号頁・発行日
no.520, pp.66-69, 2008-10-15

通信・放送の法体系議論は2000年に入ると「IT革命」の名の下に進み始める。2001年には政府調査会がレイヤー別競争促進体系を提言。2006年の「通信・放送の在り方に関する政府与党合意」を経て,現在の議論に発展した。(本誌)豊嶋 基暢慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所准教授とよしま・もとのぶ1991年郵政省(現総務省)入省。
著者
和田 紀夫
出版者
日経BP社
雑誌
日経コミュニケーション (ISSN:09107215)
巻号頁・発行日
no.477, pp.99-101, 2007-01-01

2006年は竹中平蔵・前総務大臣の私的懇談会(竹中懇談会)によって,グループの組織問題が取りざたされたNTT。組織形態の検討は,「政府与党合意」で2010年に始めることが決まり,それまでに光ファイバの普及と次世代ネットワーク(NGN)の構築にまい進する。和田社長に,NGN構想の今後,2007年や2010年のNTTグループ像を展望してもらった。
著者
大川 千寿
出版者
熊本大学
雑誌
熊本大学政策研究 (ISSN:2185985X)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.49-59, 2013-03-29

本稿では、2012年12月に行われた衆院選の熊本県内における得票を分析する。小選挙区では、自民党候補4名が幅広く票を集め、堅調な戦いぶりを見せた。また熊本4区では日本維新の会候補が勝利した。民主党候補や民主党からの離党組は民主党政権への強い批判のもとでいずれも苦しい戦いとなった。一方比例区では、自民党の得票率は3割にとどまる。小選挙区での立候補擁立が比例票の掘り起こしにつながる「連動効果」が一定程度見られ、郡部を含め自民・公明両党の選挙協力の進展も確認できた。しかし、民主党は小選挙区候補擁立の有無を問わず全県的に不振で、大きく後退した。第三極では、維新が比例2位となったが、連動効果には選挙区によって差が見られた。みんなの党は2009年から確実に伸ばしたが、日本未来の党は低迷した。共産党・社民党は全般に振るわなかった。This paper analyzes the votes in the 2012 general election in Kumamoto prefecture. In single-member districts, the LDP (Liberal Democratic Party) candidates widely gained votes in constituencies and won steadily, and 1 JRP (Japan Restoration Party) candidate won the district. In contrast, the DPJ (Democratic Party of Japan) members, and candidates who had left from the DPJ struggled under strong criticism to the DPJ Administration. In proportional representation constituency, the LDP gained only 30% of the votes. But the development of electoral cooperation between the LDP and the New Komeito was found especilayy in the rural districts, and the effect of SMD candidate nomination to the PR vote share, which is known as "the contamination effect", was confirmed to some extent. On the other hand, the DPJ mired in a slum in the whole prefecture. The third force parties showed different results. The JRP won the second place, benefited from the contamination effect, and Your Party grew certainly from the 2009 election. but the Party of the Future was sluggish. Traditional leftist parties like the Japan Communist Party and the Social Democratic Party of Japan were also weak.
著者
上間 匡 永田 文宏 朝倉 宏 野田 衛
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.102-107, 2018

カキは成長過程で海水中の微生物を取り込むことから,ヒトノロウイルス(NoV)等の糞便由来病原ウイルスによる汚染リスクが存在する。Pepper mild mottle virus(PMMoV)はヒト糞便や環境水に豊富に存在する植物ウイルスで,近年環境水中のヒト糞便汚染指標の候補ウイルスとして認識されている。本研究では2016年7月から2017年3月に国内13のカキ生産地の市販カキ138バッチを採取し,RT-PCRによりPMMoVとNoVの検出を比較した。PMMoVは116バッチ(84.1%),NoVは67(48.6%)バッチからそれぞれ検出され,両者が同時に検出されたのは52バッチ(37.7%)であった。PMMoVは2016年7月から2017年3月までのカキ採取期間を通してすべての月で検出されたが,NoVは11月から3月の冬季にのみ検出された。PMMoVは12の生産海域のカキから検出された。以上の結果は,我が国においてPMMoVがカキに幅広く分布していることを示唆する。PMMoVをカキやカキ生産海域におけるヒト糞便由来ウイルスの汚染指標として利用するためには,PMMoVと糞便由来病原ウイルスの定量検査の導入が必須であると考えられた。
著者
山本 元久 鈴木 知佐子 苗代 康可 山本 博幸 高橋 裕樹 今井 浩三 篠村 恭久
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会総会抄録集
巻号頁・発行日
vol.36, pp.129, 2008

48歳女性、元看護師。2001年9月より膝関節水腫が出現、仕事や肥満が原因と考えられていたが、2002年2月から発熱・CRP上昇を認め、当科紹介となった。膝関節腫脹と左下腿に結節性紅斑を認め、少量プレドニゾロン(PSL)を開始した。2003年3月より両下腿腫脹、皮膚潰瘍を認め、皮膚生検で血管炎を確認した。末梢神経障害による四肢のしびれ以外、臓器障害はなく、ANCA・抗リン脂質抗体は陰性であり、皮膚型結節性多発動脈炎(cPN)と診断した。PSL増量によりCRP低下や下肢腫脹の消退を認めたが、減量し復職すると、下腿腫脹・疼痛が悪化、潰瘍を形成するため、PSL減量が困難であった。2005年末に離職・自宅療養となったが、下腿腫脹の悪化、皮膚潰瘍の多発・拡大と下肢痛を認め、PSL 40 mgに増量、2006年8月からエンドキサンパルス療法を3回施行した。その後、PSL17.5mgにまで減量したが、発熱・CRP再上昇を呈し、同意を得た上で、2007年10月からエタネルセプト(ETA)の併用を開始したところ、速やかに解熱、炎症反応の陰性化をみた。現在、PSL12.5mgにまで減量しているが、潰瘍形成を含め、再燃は認めていない。ETAが奏効したcPNの一例を経験したので、考察を加えて報告する。