著者
河野 博行 岡田 裕之 平岡 佐規子 田中 健大
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.112, no.7, pp.1326-1333, 2015-07-05 (Released:2015-07-05)
参考文献数
29

症例は67歳女性.61歳時小腸大腸型クローン病と診断.生物学的製剤(Adalimumab)にて寛解維持状態であった.67歳時に空咳が出現.胸部CTで両側下葉に間質影を認めた.血液検査でSS-A, B抗体陽性,唾液腺生検でリンパ球浸潤を認めたが,乾燥症状は認められず無症候性シェーグレン症候群と診断した.感染や薬剤性の肺障害は否定的で,間質性肺炎はシェーグレン症候群の腺外病変であると考えられた.
著者
日比野 英彦
出版者
日本脂質栄養学会
雑誌
脂質栄養学 (ISSN:13434594)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.197-213, 2016 (Released:2016-10-20)
参考文献数
68

DHA levels are not homogeneously distributed throughout an animal. There are two distinct categories, select tissues containing large amounts of DHA and the remaining tissues with normally less than a few mol%. High-DHA tissues, the rod outer segment, sperm, and brain have a large quantity of DHA. DHA is mainly found on in the sn-2 position of phospholipids. DHA is n-3 fatty acid that is essential for normal brain development and cognitive function. It was confirmed a member of the major facilitator superfamily: Mfsd2a as the major transporter for DHA uptake into brain. Mfsd2a is found to be expressed exclusively in endothelium of the blood-brain barrier of micro-vessels. Mfsd2a-KO mice show markedly reduced levels of DHA in brain accompanied by neuronal cell loss in hippocampus and cerebellum. Mfsd2a transports DHA in the form of sn-2 lysophosphatidylcholine, but not unesterified fatty acid, in a sodium ion-system. A remarkable property of MFSD2 is its high-level expression specifically in the placenta, with expression in all other tissues at least 10-fold low―with the expression of the testis in which it is only 4-fold lower than the placenta. DHA is specifically bound to fatty acid binding proteins (Fabp7) in the cytoplasm, and transported to the cell membrane and work as ligands for nuclear receptor transcription factor.
著者
末広 喜代一 吉松 定昭
出版者
香川生物学会
雑誌
香川生物 (ISSN:02876531)
巻号頁・発行日
no.28, pp.15-22, 2001-06

戦前(1892年から1939年まで)の「香川新報」および1970年から1999年までの「四国新聞」の記事より香川県のウミガメに関する記事を収集した。その結果, 1892年から1939年までの48年間に21件, 1970年から1999年までの30年間に6件のウミガメに関する記事が見られた。1件を除いて, 上陸・産卵したと見られる例はなかった。ウミガメの出現場所は東讃で20件, 西讃で8件と, 東讃の方が多かった。新聞記事に記載されたウミガメの体長と体重の間には相対成長の関係が成立し, 体長の0.75倍を甲長とすると, アカウミガメについてえられた内田(1982)の結果とほぼ一致した。生け捕られたウミガメのその後の処置として, 放したのが9件, 見せ物にしたのが4件, 飼育中が3件, 標本にしたのが1件, 銃殺予定が1件, 不明が3件であった。ウミガメが網にかかった漁業者の反応には吉瑞と喜ぶ場合と忌み嫌う場合の相反する例があった。
著者
高山 隼矢 梶原 智之 荒瀬 由紀
雑誌
研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:21888779)
巻号頁・発行日
vol.2021-NL-249, no.11, pp.1-8, 2021-07-20

人間は対話においてしばしば相手の質問や発話に対して間接的な応答をする.例えば,予約サービスにおいてユーザがオペレータに対して「あまり予算がないのですが」と応答した場合,オペレータはその応答には間接的に「もっと安い店を提示してください」という意図が含まれていると解釈することができる.大規模な対話コーパスを学習したニューラル対話モデルは流暢な応答を生成する能力を持つが,間接的な応答に焦点を当てたコーパスは存在せず,モデルが人間と同様に間接的な応答を扱うことができるかどうかは明らかではない.本研究では既存の対話コーパスである MultiWoZ を拡張し,間接的な応答と直接的な応答の対からなる 7 万件規模の対話コーパスを構築した.ユーザーからの入力発話を事前により直接的な発話に言い換えることで対話応答生成の性能が向上することを確認した.
著者
前之園 春奈
出版者
中央大学人文科学研究所
雑誌
人文研紀要 (ISSN:02873877)
巻号頁・発行日
vol.81, pp.225-237, 2015-10-30

ジャン=ジャック・ルソー(1712-1778)の『エフライムのレヴィ人』(1762)は旧約聖書の『士師記』の翻案である。作品の前半に登場するレヴィ人は『社会契約論』(1762)で論じられている立法者のモデルのひとつとして描かれていると考えられる。ルソーは『社会契約論』で立法者は共同体における例外的存在であると述べているが,レヴィ人もまたイスラエル民族の中で特殊な存在であった。このことを手がかりにして,レヴィ人が立法者としての資質を備えており,作品中では立法者としての役割を果たしていたということを明らかにした。
著者
杉山 健太郎 古市 格 渡邉 航之助 川口 耕平 秋山 隆行 井上 拓馬 小河 賢司
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.640-643, 2015-09-25 (Released:2015-12-03)
参考文献数
5

完全隔壁型の膝蓋上滑膜ひだ障害の1例を経験したので報告する.〈症例〉68歳女性.半年前から右膝痛を自覚,その後症状改善ないため当科受診した.当科初診時,右膝蓋上部に径約3 cm大の圧痛を伴う腫瘤を触知した.MRI上,膝蓋上嚢に隔壁を有する嚢胞性病変を認め,内部は炎症性変化が疑われた.関節鏡視下に隔壁を確認し,同部と膝関節腔内とを交通させるよう隔壁および滑膜切除を行い,術後は右膝痛改善を認めた.〈考察〉膝蓋上滑膜ひだ障害の画像的特徴として,MRIで膝蓋上嚢部にT1強調像で低信号,T2強調像で高信号の関節液貯留を認め,内部に低信号の隔壁を有するとの報告がある.治療は関節鏡下での隔壁切除で症状軽快すると報告されている.本症例でも同様の画像所見を認め,関節鏡視下での隔壁および滑膜切除術が症状改善に有効であった.
著者
板垣 竜太 Ryuta Itagaki
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Social science review (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.134, pp.141-177, 2020-09

本資料は,京都大学が保管する琉球民族遺骨の返還を求める集団訴訟で,京都地裁に提出した意見書である。本意見書は,まず人骨研究を中心とする近代人類学の系譜を整理したうえで,京都大国大学の人類学者が統計学的な手法を駆使しながら集団的に人骨研究を進めたことを明らかにした。そのうえで京都帝大の人類学者による琉球遺骨の収集には,解剖学教室の金関丈夫によるもの(1929年)と病理学教室(清野謙次人類学研究室)の三宅宗悦によるもの(1933年)の2系統があり,前者は台北帝国大学に移管され,後者が京都帝大に残されたことを論証した。最後に,人骨収集の態度において,本州・四国・九州における慎重さと,南島における手軽さが対照的であったことを示し,植民地状況においては「純粋」な科学的研究に対する法的・倫理的な歯止めが働かなくなったという意味で,それを「植民地主義的ダブルスタンダード」と呼んだ。資料(Material)
著者
田之倉 優
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

オリザシスタチン(OC)はコメ(Oryza sativa)中に含まれ、システインプロテアーゼ(CP)を特異的に阻害する蛋白質である。この蛋白質はパパインを化学量論的に阻害し、炊飯条件下でも活性を失わない耐熱性を持ち、酸やアルカリに対しても安定である。この蛋白質は、種子内蛋白質分解に関与するCPの働きを制御することにより、代謝を調節するとともに、昆虫、細菌、ウイルスなどの外敵や感染源に存在するCPを外来性標的酵素として認識して、その活性を阻害することにより生体防御を担っていると言われている。本研究では、生化学的解析および立体構造解析により、OCの機能構造相関の解析を行った。温度、濃度、pHなどの溶液条件を変化させる、あるいは、変性剤により変性させることでOCを自由にダイマーやモノマーに変換することに成功した。各成分のプロテアーゼ阻害活性を比較したところ、ダイマー状態の方がモノマー状態より活性が低下することが明らかとなった。このことから、本タンパク質は、イネの生育段階における様々な環境変化に応じて、自分自身の状態(構造)変化を起こすことでプロテアーゼ活性の制御を行い、調節因子として働いていることが示唆された。また、NMR構造解析により、OCはダイマー化すると、阻害活性に重要とされている第一ループと第二ループの構造が変化していることが示され、このために阻害活性が低下することが示唆された。さらに、OCのホモダイマーの結晶化に成功し、2.9Å程度の分解能のデータを得た。OCは、医薬品や機能性食品としての適用が検討されている。本研究の成果により、溶液条件を変化させることでその活性が制御できることが明らかになったので、その機構を利用し、熱や酸に対しても耐性があり、pHによって制御が出来るナノマシン等更なる応用が期待される。
著者
武井 由紀子 野村 直子 壷内 鉄郎 飯島 康仁 石戸 岳仁 塩野 理 矢野 実裕子 水木 信久
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.913-918, 2017-06-15

要約 目的:受傷7日目の外傷性視神経症に対し視神経管開放術が有効であった1例の報告。 症例:39歳の男性が自転車走行中に乗用車と接触して転倒。頭蓋骨骨折による気脳症のため総合病院脳神経外科入院。受傷7日目に当科受診。初診時の左矯正視力0.01,左眼の相対的求心性瞳孔障害陽性,左眼瞼外方に受傷痕を認めた。左眼視野は鼻側周辺のみであった。頭部CTで左視神経管上壁陥凹を認め,同日内視鏡下経鼻的視神経管開放術を施行し,術翌日よりステロイドパルス療法を併用した。左眼の中心暗点は術翌日より消失した。治療開始後37日目に左視力1.0となった。 結論:受傷1週間が経過した外傷性視神経症に対して外科療法およびステロイド全身投与を行い良好な経過を得た。
著者
山田 哲久 名取 良弘 中塚 昭男
出版者
一般社団法人 日本外傷学会
雑誌
日本外傷学会雑誌 (ISSN:13406264)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.47-54, 2012-01-20 (Released:2020-09-07)
参考文献数
18

外傷性視神経症に対する治療法として, ステロイドを中心とした保存的療法と視神経管開放術を行う外科的療法がある. これまでもステロイド療法と視神経管開放術で, どちらが視力予後に優れているか検討されてきた. 今回当院で経験した外傷性視神経症10症例に関して検討し, 視力予後改善のための考察を行った. 視力予後改善のためには, 受診時の視力が保たれていること, 可能な限り早期に治療を開始することが重要である. したがって, ステロイド療法を早期に開始し, 症例に応じて視神経管開放術を併用することが視力予後改善につながると考えられる. そのためには, 病歴, 身体所見, 画像所見から外傷性視神経症を疑い, 瞳孔所見を確認し早期に診断することが重要である.