著者
浮田 真弓
出版者
岡山大学大学院教育学研究科
雑誌
研究集録 (ISSN:18832423)
巻号頁・発行日
no.158, pp.63-70, 2015

本稿は,保科孝一に言及している論文をレビューすることによって,保科孝一の仕事である国語政策,及び国語政策に付随的に扱われてきた国語教育政策の持つ意味を明らかにし,特に国語教育史研究上の課題を明らかにするものである。近年,保科孝一の仕事は社会言語学や社会学の文脈で再検討されることはあったが,国語教育の分野では再検討されるということはなかった。保科孝一の国語教育は,国内においては「内なる辺境」である地方に標準語を普及させ,国民を形成するものであった。そして,保科孝一の国語改革は植民地,「大東亜共栄圏」などの「外なる辺境」の発見によって,国語を普及させるために国語自体を学びやすく変化させるものであった。
著者
松浦 健二
出版者
岡山大學農學部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
vol.94, pp.73-79, 2005-02

ヤマトシロアリの配偶システムと単為生殖に関する最新の研究結果をレビューした。まず、シロアリの生活史について述べ、特に群飛から異性探索、そしてコロニー創設に至るまでの行動特性に関する新たな知見について述べた。ヤマトシロアリの雌の有翅虫は、群飛後に雄と配偶できなかった場合、単独、または二雌の共同でコロニーを創設し、単為生殖により繁殖することが明らかになった。単為生殖で産まれた子は、わずかな卵期間の延長を除けば、有性生殖の子と同様に正常発育する。染色体観察およびマイクロサテライト遺伝子解析により、ヤマトシロアリの単為生殖では末端融合型のオートミクシスにより二倍体に核相回復することが示された。さらに、単為生殖の進化に必要な条件、単為生殖の伴う遺伝的・発生的制約に加え、生態学的制約について考察した。
著者
榎本彦衛著
出版者
日本評論社
巻号頁・発行日
1988
著者
高山岩男著
出版者
創文社
巻号頁・発行日
1976
著者
中川 明博
出版者
学習院大学
雑誌
人文 (ISSN:18817920)
巻号頁・発行日
no.9, pp.73-96, 2010

「三宅剛一差出・田辺元宛書簡」は、昭和期を代表する哲学者三宅剛一(1895 ~ 1982 年)が、母校京都大学の恩師田辺元(1885 ~ 1962 年)に宛てた書簡を、ご遺族の了解の上翻刻し、必要な校訂を加えたものである。書簡は1924 年から田辺の死の3 年前の1959 年までの間に投函されたもので、それは三宅の東北帝国大学助教授時代から、ドイツ留学、戦後の京都大学教授時代を経て、昭和30 年代の学習院大学教授時代に及ぶ。 これらの書簡は、東京教育大学教授、学習院大学教授を歴任した哲学者下村寅太郎博士(1902 ~ 1995 年)が生前保管していたものである。下村の膨大な遺品に含まれていた多数の田辺元宛書簡類のうち、三宅剛一差出の全15 通が本書簡である。 本書簡を通じて、私たちは日本を代表する二人の哲学者の間に育まれた知的交流の一端を伺い知ることができるだけでなく、時に率直に師の意見を求め、忌憚なく師の思想を批判する文面から、三宅剛一における哲学的態度のあり方を見て取ることができるだろう。
著者
安達 康生 安高 真一郎 植松 康祐 アダチ ヤスオ アタカ シンイチロウ ウエマツ コウユウ Yasuo Adachi Ataka Shinichiro Koyu Uematsu
雑誌
国際研究論叢 : 大阪国際大学紀要 = OIU journal of international studies
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.47-62, 2016-01-31

The cellular automaton was created by John Von Neumann and Stanislaw Marcin Ulam. What Von Neumann was interested in was a machine which could replicate itself and the first such machine in the logical world was the Neumann cellular automaton. Since then, the cellular automaton has been expanded to many fields such as biology, history, and complex systems. This paper suggests closed social structure models with the method based on the cellular automaton. We succeeded in finding some interesting facts using simulations. The results gained can be applied to models such as closed social structures nowadays or the existence of living creatures.

1 0 0 0 OA 小沢芳重翁

著者
三田村 編
出版者
三田村
巻号頁・発行日
1936
著者
藤井 勝也 永松 浩 永松 有紀 小園 凱夫
出版者
九州歯科学会
雑誌
九州歯科学会雑誌 (ISSN:03686833)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4.5, pp.112-123, 2006-12-01 (Released:2017-12-11)
参考文献数
44
被引用文献数
2

チタンは,優れた生体適合性および耐食性を有するため,歯科用インプラントとして幅広く用いられるようになった.しかし,インプラントの上部構造をはじめ,ブリッジ,クラウン,インレーのような金属修復物にはチタン以外の合金を用いることが多い.電解液中で接触する異種合金間にはガルバニック反応に起因する電気化学的腐食が生じて電気化学的に卑な金属の腐食がさらに助長されることはよく知られている.したがって,歯科修復物を作製する際には,ガルバニック反応を避けるため,同一口腔内における異種合金の接触が起きないように設計するよう提唱されている.一方,異種合金が非接触状態で共存した場合についての腐食挙動は,まだ明らかにはなっていない.本研究においては,純チタンと異種合金が接触あるいは非接触状態で1.0%乳酸水溶液中に36週間共存した場合の電気化学的腐食について調べた.純チタンと陶材焼付用金合金の共存においては,接触,非接触に関わらず,これらの合金からの成分元素の溶出量にほとんど変化はみられなかった.共存により,金合金からのCu溶出量のわずかな増加および純チタンからのTiの溶出量の増加がみられた.金銀パラジウム合金については,Agの溶出抑制,Cuの溶出促進および純チタンからのTiの溶出促進がみられた.銀合金は単独浸漬においても,成分元素の溶出が顕著であった.純チタンと接触して共存した場合,Inの溶出促進傾向が認められたが,AgおよびTiの溶出は抑制された.それらを接触させない場合も同様の傾向を示した.純チタンとの共存により,コバルトクロム合金からのCoの溶出は促進された.接触および非接触のいずれでも,純チタンからのTiの溶出は増加する傾向にあった.本実験結果から,チタンおよび異種合金試験片を組み合わせた場合,陶材焼付用金合金を除くいずれの合金においても,非接触の状態でも接触した場合と同様に腐食が起こり得ることがわかった.チタンインプラントの設計に当たっては,口腔内に存在する金属修復物からのアレルギーあるいは毒性成分の溶出が促進されることを避けるために,口腔内の総合的な生体適合性を十分に考慮すべきであることが示唆された.