著者
渡部 泰輔
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.31, no.8, pp.585-590, 1965-08-25 (Released:2008-02-29)
参考文献数
11
被引用文献数
15 19

Common sea bass, Lateolabrax japonicas (CUVIER), is one of the commercially important fish taken from Tokyo Bay. The present paper deals with such ecological aspects of this species as seasonal and geographical distributions of eggs. (1) The materials were taken through the cooperative investigation of neritic-pelagic resources carried out by the Kanagawa Prefectural Experimental Fisheries Station and Tokai Regional Fisheries Research Laboratory during the years 1955-1962. They were collected by vertical haul of the plankton net with 45cm- or 60cm-mouth-diameter from a depth of 150m (or ocean bottom when shallower) to the sea surface. (2) The eggs occur in the season from the late October till the late February with its peak at the late November through the late January. The eggs were collected chiefly from the entrance of Tokyo Bay and partly from inside of the Bay (close to the entrance) and from Sagami Bay. None of eggs were taken from the innermost region of Tokyo Bay, The density of the distribution represents some variation year by year, but no remarkable differences are observed in pattern. (3) The eggs most frequently occur within 14-20-C in temperature and 18.0-19.2%1, in chlorinity, i.e. in the coastal waters under a considerable influence of open sea water. The frequency is very low within the bay where temperature is lower than 13°C in winter and chlorinity is usually lower than 18‰ (4) Larvae penetrates into Tokyo Bay after hatched out. The grown fish become to the spawners in November migrating from the inner region of the bay to the entrance of the same.
著者
肱岡 範 佐藤 幸浩 岩下 裕一 犬童 裕成
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.102, no.6, pp.723-728, 2005 (Released:2005-06-14)
参考文献数
35
被引用文献数
1

症例は熊本県在住の59歳男性.35年前から狩猟期に熊本県内の野生のシカ・イノシシを捕獲し,肉や内臓を生食している.口渇,筋肉痛を主訴に近医受診し黄疸および肝機能障害を指摘され紹介入院.IgMクラスのE型肝炎ウイルス抗体およびHEV-RNA陽性であり,E型急性肝炎と診断した.本症は海外渡航歴がなく特異な食習慣を有することから,zoonotic food-borne transmissionが疑われる1例として報告する.
著者
大野智著
出版者
KADOKAWA(発売)
巻号頁・発行日
2020
著者
小野 義隆
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.jjom.H19-01, 2008-06-01 (Released:2020-07-17)
参考文献数
136

日本には763種のサビキンが知られている.104種が同種寄生性生活環を持ち,116種が短世代型生活環を持つ.192種の異種寄生性生活環が報告されているが,そのうち161種の異種寄生性生活環が日本で実験的に確かめられている.サビキン種は宿主特異性と生活環の違いによって識別できる.このサビキン種の認知・識別方法は,現在最も広く受け入れられている生物学的種概念に合致すると考えられる.宿主特異性と生活環の違いによって識別された近縁種間には,表形形質の共変異パターンの断絶が認められる.表形形質の共変異パターンの分析によって後験的に得られた分類形質によって,宿主特異性と生活環の相違に対応したサビキン種の異同を推定することができる.また,サビキン種の宿主特異性と生活環の特徴を明らかにすることによって,分子系統学的方法で推定されたサビキン系統関係に,より生物学的に意味のある説明を与えることができる.
著者
近田春夫著
出版者
文芸春秋
巻号頁・発行日
1998
著者
泉麻人[著]
出版者
講談社
巻号頁・発行日
2003
著者
中野 敬一
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.85-90, 2003-10-30 (Released:2019-07-11)
参考文献数
12
被引用文献数
4

屋外公共施設のゴキブリ相と季節消長について,2000~2002年に東京都港区の屋外公共施設で夜間観察と粘着トラップによる捕獲により調査を行った.確認されたゴキブリの種類はクロゴキブリとヤマトゴキブリであった.夜間観察ではクロは7~10月に,ヤマトは4,5,10,11月に多く見られた.クロは成・幼虫ともに同じ時期に確認数が増加したが,ヤマト成虫は5~7月の幼虫の少なくなる時期に多くなる傾向があった.また,確認された幼虫はクロもヤマトも大型の個体が多かった.捕獲した幼虫の前胸背幅を測定した結果,クロは2~4mmの小型幼虫が,ヤマトは4~8mmの大型幼虫が多く捕獲された.
著者
高浪 五男 本多 波雄
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:03736113)
巻号頁・発行日
vol.J54-C, no.3, pp.250-256, 1971-03-25

有限確定事象を拡張して,準有限確定事象と呼ぶ事象のクラスを定義する.まず,この事象のクラスの閉包的性質(closure property)を論ずる.つぎに,与えられたオートマトンが準有限確定事象を受理するオートマトン(準有限確定オートマトン)であるか否かを判定する方法と,準有限確定オートマトンが受理する語の集合の定められた形の正規表現を求める方法とを述べる.ついで,準有限確定事象の唯一な標準形を求める方法を与える.
著者
一木 毅文 イチキ タケフミ Takefumi ICHIKI
雑誌
二松学舎大学國際政経論集
巻号頁・発行日
no.14, pp.117-136, 2008-03

近年、中国の貿易構造が高度化している。この背景には、WTO加盟後に急増する先進国からの外資メーカーの進出があるが、外資優遇に対する国内の反発から中国の外資政策は転換した。本稿は、中国の政策転換を明らかにした上で、政策転換が進出外資にどのように影響するのか、そして外資企業を通して中国経済にどのような影響を与えるかを明らかにする。その際、自動車産業に注目する。自動車産業は中国では基幹産業として育成されており、外資進出の増加によって、中国の自動車生産台数は世界の10%を占めるまでに成長している。また、自動車産業は貿易構造が高度化した原因である機械・輸送機産業の中核であり、貿易構造高度化の要因となる焦点産業である。2004年に発表された自動車産業政策においても外資政策と同様に、外資に対して先進技術を求める方向へ政策シフトした。自動車産業では1990年代後半以降に外資の進出が相次ぎ、生産台数が増加したが、今後は政策転換によって先進国へも輸出できる技術水準の自動車を中国内で調達した部品で生産することが自動車メーカーに求められている。1990年代後半からの中国自動車産業の発展を牽引したのは日系メーカーであったが、日系メーカーが集中する広東省では産業集積が進展している。自動車メーカーの進出を受けて、広東省には日系の系列サプライヤー進出もほぼ完了して、技術度の高い部品も生産しており、進出日系メーカーは既に産業政策の転換に対応できる状況にある。日系メーカーの中国進出戦略は系列サプライヤーの進出をもたらすことで、中国の産業高度化に寄与し、産業高度化の結果として貿易構造の高度化も生じている。中国自動車産業の発展は中国内に技術を持込む日系メーカーを軸に進展しており、今後も産業高度化、貿易構造の高度化は進展するものと考えられる。
著者
上椙 真之
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.74, no.11, pp.752-758, 2019

<p>小惑星探査機「はやぶさ」が地球に帰還して,大きな話題になってから,9年がたった.当時は地球に帰還したこと,そしてサンプルカプセルの中に,確かに小惑星イトカワの粒子が入っていたことは非常に大きなニュースとしてクローズアップされた.この時,わずか数10 μmの粒子の分析を通して,小惑星イトカワの母天体の大破壊や,さらにそれ以前の履歴,また,小惑星の進化の果ての未来像までもが,初期分析と呼ばれる試料分析の結果から得られ,帰還からわずか1年以内に報告されている.この迅速な分析・成果公表の影には,人類史上初の小惑星から直接採取されたサンプルをどう扱い,どう分析するか,という問題に対する挑戦が存在した.100 μmに満たない微小な粒子,たった40個を,電子顕微鏡観察に始まり,X線を用いた非破壊分析,試料加工,元素質量分析や透過電子顕微鏡観察など,最先端の分析装置を連続して適用し,最大限の情報を取得する.こういった最先端の技術を使って試料を分析する際に,必ず問題になるのが試料の装置へのマウントである.このマウントの仕方一つで分析の精度が決まるため,試料の前処理は実際の分析装置の操作以上に重要になる.そして複数の装置を一つの試料に対して連続的に適用する場合,試料をそれぞれの装置に適した形にマウントする必要があるため,試料をホルダからホルダに移動する必要がある.この際に,試料が汚染されたり,破壊,あるいは紛失といったトラブルが頻発する.「はやぶさ」帰還試料の分析では,過去の知見を活かし,樹脂を利用した試料ハンドリングを行って,迅速な成果公表に成功した.その一方で,多くの試料に対して,汚染源となる地球大気を遮断した分析ができなかったという,大きな課題を残すことになった.</p><p>2019年2月に「はやぶさ」の後継機,「はやぶさ2」が小惑星リュウグウへのタッチダウンに成功するという快挙を成し遂げた.小惑星リュウグウは,「はやぶさ」のターゲット天体であった小惑星イトカワと違い,水や有機物を多く含んでいる可能性が高い.このため,生命の起源に関する情報が得られることが期待されている.しかし,このために,地上の汚染の影響を受けやすく,試料を分析する際に大気遮断が必須となり,樹脂を使うこともできない.地上では,「はやぶさ」の経験を受けて,「はやぶさ2」帰還試料分析におけるこれらの課題に対する対応・検討が急ピッチで進められている.</p><p>科学の世界ではtrial and errorの過程を成果公表でつぶさに語ることは無く,最終結果を成果として発表することが通例である.しかし,「はやぶさ」帰還試料の分析の際の大気遮断の失敗,試料ハンドリング時における事故,トラブルによる試料の破壊や紛失,有機物粒子の分析において分析と並行して技術開発を行ったことによる,成果公表の大幅な遅れなど,失敗談や挫折にこそ,今後の技術発展の基礎となる重要な要素が多く含まれる.これらの経験が今後の科学の発展の一助になれば幸いである.</p>