著者
志賀 文哉
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.165-175, 2002-08-31 (Released:2018-07-20)

本稿は身体障害に関するスティグマについて,その意味や形成の過程,さまざまな諸相を検証し,それを払拭する術を見いだそうとするものである。スティグマ研究はGoffman以来さまざまに試みられてきており,「ラベル化」や「社会的逸脱」とういう現象をとおして身体障害をもつ者は社会との関係を断たれることがわかってきている。また,周囲の人たちも「名目的スティグマ」を被ることがある。身体機能の不全に関するスティグマの形成過程は従来のよく知られたWHO障害分類(機能障害,能力障害,社会的不利)を内包する。筆者のハンセン病研究では自宅遠方の療養所を選択して移住したケースがみられ,スティグマのさまざまな諸相のなかでもネガティブな影響力が推し量られる。スティグマを克服する方法としてはWHOの新たな障害分類を考慮しながら科学的知識普及の努力,人権思想の確立,社会保障の拡充などを検討することが重要であり効果的である。
著者
強 海燕 康 葉欽
出版者
アジア教育学会
雑誌
アジア教育 (ISSN:18822088)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.1-10, 2019 (Released:2020-04-23)

Since 1998, the English Immersion Approach, developed by the China-Canada-USA English Immersion project (CCUEI), has been trialed and promoted in over 50 elementary schools in China. Over those 20 years, this approach has advanced teacher development, improved student ability, and contributed to the overall development of schools, producing strong results both inside and outside China. This paper explores how this model integrates language learning and subject knowledge, with a focus on the rationale, curriculum mode, teaching principles and pathways to teacher development.
著者
戸田 茂樹 喜多村 孝幸 寺本 明
出版者
日本医科大学医学会
雑誌
日本医科大学医学会雑誌 (ISSN:13498975)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.36-40, 2008 (Released:2008-03-17)
参考文献数
3
被引用文献数
1 1

We present a case of bilateral chronic subdural hematoma due to spontaneous intracranial hypotension. This patient complained of postural headache. Computed tomography of the brain showed bilateral chronic subdural hematomas, and radioisotope cisternography showed leakage of cerebrospinal fluid at the lumbar level. We placed an epidural blood patch at the lumbar level and a few days later performed irrigation of the bilateral hematomas. The patient recovered completely and was discharged.
著者
伊藤 亮
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

音声を用いた種内コミュニケーションを行わない動物が、音声コミュニケーションを用いる動物と同じような音声学習を行っている可能性を示すという観点から、鳴かないトカゲ類であるキュビエブキオトカゲによる他種警戒声盗聴行動の発達的変化と、その盗聴能力について調査した。その結果、キュビエブキオトカゲの盗聴行動には明確な発達的変化があることが示された。この盗聴行動の発達的変化は音声学習によるものであることが示唆される。そのため、キュビエブキオトカゲにおいて音声と嫌悪刺激との間に連合学習が成立するか否かを検証した。しかし、音声と嫌悪刺激との連合学習を示す結果は得られなかった。
著者
山本 大策
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.227-236, 2012-09-30 (Released:2017-05-19)

本稿では,近年英語圏で「地理的政治経済派」と呼称されつつある視角から,地域格差研究に対するいくつかの問題提起をする.とくに主流派経済学との対比において,地理的政治経済派がどのように日本の地域格差変動に関する経験や知見を整序し,独自の論点を提供しうるかを試論的に考察する.
著者
山口 雄大 進 訓央 兼川 雄次 松浦 恒明 圓尾 明弘
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.96-100, 2020-03-25 (Released:2020-04-30)
参考文献数
5

脛腓骨骨折術後感染再燃にiMAP(intra-medullary antibiotics perfusion)が有効であった1例を経験したので報告する.症例は61歳男性.階段を踏み外した際に左足を捻ってついて受傷.エックス線写真で関節面に骨折線のある脛腓骨遠位骨幹部骨折を認め,locking plateとK-wireによる固定を行った.術後1か月時に創部より排膿を認め経静脈的抗菌薬投与開始,症状軽快し以降は血液検査上CRP陰性であった.術後10か月時に創部より排膿再発し,皮膚欠損も認めた.深部感染を併発したと判断し,抜釘・掻爬自家骨移植・一期的に髄内釘に置換し,脛骨にiMAP-pinを2本と皮下にセイラムサンプチューブを留置した.ゲンタマイシン40mg/50ml生理食塩水/dayを3箇所から持続注入し,創部より持続陰圧を行った.2週間後にiMAP-pin抜去し,アンピシリン/スルバクタム点滴投与を2週間継続したところ,創部は徐々に閉鎖していった.以降感染再燃所見は認めず,疼痛なく歩行可能で経過している.圓尾らが開発したiMAP-pinは従来使用されていた東北大式骨髄針よりも抜けにくい構造となっており,骨接合術後の感染に対する治療法として有効であった.
著者
東 奈々 江見 圭司
雑誌
研究報告コンピュータと教育(CE) (ISSN:21888930)
巻号頁・発行日
vol.2018-CE-143, no.2, pp.1-4, 2018-02-10

クリエイターの育成システム (もしくは Web サイト) を制作するにあたり,効果的な教育方法を考察した.Pixiv に sensei という e ラーニングサイトがあり,sensei と pixiv 自体にもアクティブラーニングのための機能があるが使われておらず,パッシブラーニングのみの状態になっている.クリエイターの育成には,パッシブラーニングとアクティブラーニングを合わせたブレンディッドラーニングが最も効果的であるため,今回,アクティブラーニングを合わせたブレンディッドラーニングシステムを試作した.
著者
黒木 優一郎 上原 なつみ 中西 徹
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.53-54, 2017-04-01

56歳の男性.現病歴 2か月前から1日数行の下痢としぶり腹とが出現した.発熱や食欲低下はなく様子をみていたが,3週前からときどき血便が混じるため来院した.
著者
檜杖 昌則
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.136, no.6, pp.349-358, 2010 (Released:2010-12-06)
参考文献数
25

マラビロクは,HIV(human immunodeficiency virus)が宿主細胞に侵入する際に補受容体として利用するCCケモカイン受容体5(CCR5)に対して選択的に作用するCCR5阻害薬である.既存の抗HIV薬とは異なり,細胞膜上のCCR5に結合してHIV-1エンベロープ糖タンパク質gp120とCCR5との結合を遮断することによりCCR5指向性HIV-1の細胞内への侵入を阻害するという新規作用機序で,抗ウイルス作用を発揮する.CCR5指向性実験室HIV-1株および臨床分離株を用いた抗ウイルス作用の検討では,マラビロクはすべてのクレードのCCR5指向性HIV-1に対してほぼ同等の抗ウイルス作用を示した.一方,CXCR4指向性および二重指向性HIV-1に対しては作用を示さなかった.また,逆転写酵素阻害薬耐性またはプロテアーゼ阻害薬耐性ウイルスに対しても野生型と同等の抗ウイルス作用を示した.In vitroでの検討で耐性ウイルスの出現が確認されたが,これらはCCR5指向性を維持しており,指向性変化は認められなかった.他の抗HIV薬による治療歴がある最適背景療法(OBT)実施中のCCR5指向性HIV-1感染患者を対象に行われた主軸となる2つの臨床試験では,ベースライン値から投与48週目までのHIV RNA量の減少量は,OBT単独群(プラセボ)に対し,マラビロク300 mg 1日1回または2回投与群で有意に減少幅が大きく,また,CD4リンパ球の増加量においてもプラセボ群より有意に高い結果が得られ,OBTにマラビロクを上乗せすることでOBT単独よりも優れたウイルス学的,免疫学的効果が得られることが示された.マラビロクは,新しい作用機序を有する抗HIV薬であり既存の薬剤に耐性のHIV感染症にも有効であることが示唆され,HIV感染の薬物治療の新たな選択肢として重要な役割を果たすことが期待される.
著者
吉田 崇裕 久野 遼平 大西 立顕
雑誌
研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:21888779)
巻号頁・発行日
vol.2019-NL-241, no.6, pp.1-8, 2019-08-22

トピックモデルは自然言語処理を始めとして多くの分野で用いられる手法である.トピックモデルの基本形である Latent Dirichlet Allocation (LDA) の提唱後,様々な LDA の改良モデルが提案されてきた.例えば Correlated Topic Model (CTM) は LDA が文書中のトピック間の相関を十分に考慮できない点に注目したモデルであり,汎化性能が向上すると報告されている.Gaussian LDA は LDA が単語間の意味的な近さを十分に考慮できない点に注目したモデルであり,トピックの意味一貫性が向上すると報告されている.両者を組み合わせた Correlated Gaussian Topic Model (CGTM) と呼ばれるモデルは上記二つの欠点を同時に補うのみならず,単語の埋め込み空間上でトピックの相関構造を可視化することができ革新的である.しかし,文書内におけるトピックの関係性は,CGTM が対象とする単純な相関構造だけで表現できるものではない.実際日常生活においても,例えば 「経済」 - 「金融政策」 - 「出口戦略」 のように話題の階層性を意識し会話をすることは多々ある.そこで本稿では階層的トピックモデルとして最も単純な PAM (Pachinko Allocation Model) とGaussian LDA を組み合わせたモデルを提案することで,トピックの階層構造を単語埋め込みベクトル空間上で分析する一歩としたい.
著者
独立行政法人科学技術振興機構
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
JSTnews (ISSN:13496085)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.12, pp.3-7, 2014-12-01 (Released:2020-03-31)

私たちの生活は、新しい物質の誕生で便利になってきた。未知の化合物が本当に「新しい物質」かどうかは、分子構造を調べて特定する。構造を推定する分析法は幾つも開発されているが、簡単かつ完璧な手法はない。一番信頼性が高いX線回折法では、これまではきれいな単結晶づくりに苦労していたが、結晶化の手間がかからず、かつ極微量でも簡単に解析ができる「結晶スポンジ法」を東京大学の藤田誠教授らのグループが開発した。結晶学100周年の節目に急浮上した画期的な結晶スポンジ法の特長、開発経緯と今後の展望を聞いた。